「最近ね、実ちゃんが少し元気がないのよ。」
「そうなのか?」
「そうなのよ。だから少し見ていてくれない?」
「え~俺にも仕事が・・・」
「別れようかしら。」
「任せて貰おうかマイハニーよ!」
そんなこんなで現在息子を陰ながら尾行中である。
俺のヒーロー名は『ザ・チェイサー』。
仕事でフリーのサイドキックをしている。
個性は追跡。どのように追跡出来るのかというと、俺の頭の玉は所謂防犯用のカラーボールとなっており、中の液体には俺だけが分かる信号が出ている。
液体が極少量でも着いていれば相手が何処にいようとも俺には筒抜けになるのだ。ちなみに調子が良いときは話し声まで聞こえる。つまりは通話しっぱなしの携帯を無理矢理相手に着ける感じだな。
効果の期間、それは液体を着けた時の想いの強さに比例するが平均的には約三ヶ月程だ。
そんな液体を息子に今朝方着けておいた。
まあ、個性の話はどうでもいい。今回は居場所云々ではなく様子も見なければならないため、遠目で息子を確認しながら尾行する。
確かに息子は元気が無いようだ。ため息をつく回数が多い。
もしや思春期きたか!恋の悩みか?!
おいおい息子よ~それなら早く俺に相談しろよな~。恥ずかしくて言えないのか?しょうがない。俺から聞いて
「てめー最近ちょうしにのってんだろ!」
おっと、一体何が起きた?ちょい考え事をしている間に息子が喧嘩を売られているぞ。
え?まさかイジメ?!イジメられてて元気ないとか?なんてことだ!路地裏に連れ込まれたぞ。早く駆けつけなければ!
そう思い、走りだすと、居場所の信号と共に会話が聞こえてくる。今日は調子が良い時らしい。
「てめーら、よってたかって女子をイジメるなんて男のかざかみにもおけねーぞ!」
ん?この声はさっきのイジメっ子の声だが路地裏に他の誰かがいたらしい。
「はん!やっぱガキだな。イジメなんてしないさ。時間が経てばコイツも喜ぶだろうからな。意味が分かるかなぁ?お子ちゃま共~?」
下卑た笑い声が聞こえてきた。察するにこれは18歳未満禁止の展開を止めてる声か?
「意味わかんねーけど、なんか頭に来るから殴る!」
バリィ!!
電気が走る音が聴こえた。
「俺の個性はスタンガンの個性だ!触りさえすれば大抵の奴は無力化できる。」
はぁ?!マジか?!個性を使ったのか!!クソが!一気に戦闘案件になっちまった!
早くコスチュームに着替えなくてはならなくなった。
現在の法律では戦闘案件の場合、ヒーローはコスチュームを着ていなくてはならない。
緊急の場合はそうではない。ではないのだが後に緊急だったと証明しなくてはならない。
これは普通、事務所に所属していれば事務所内の事務員が証明作業をしてくれる。
だが俺の場合は事務所に所属していないので証明作業をする者がいないし、路地裏に監視カメラがある訳もなく証明しようがない。
そのため俺の場合は戦闘案件に何としてもコスチュームを着なくてはならないのだ。
普段なら中に着こんでいるのだが今日は仕事ではないため持ち運んでいるだけであった。
急いで着替え始める。
「こ、個性は・・・ヒーローがヴィランに使う以外に・・・使っちゃダメなんだぞ。」
そうだ!その通りだ少年。
「バ~~~~カ。そんなもん守ってっからガキなんだよ。」
うおぃ!中々のクズじゃねぇか!
「「び、びっちゃんがやられた。に、逃げろ~。」」
そうだ!早く逃げてヒーローでも警察でも呼びなさい。
「だーはっはっは!ダッセーな!」
ダサくない。逃げるとは当たり前のことだ。
そう思っていると息子の反応が動き出した。
二歩ほど歩く。方向は路地裏から出る方向だ。
よし、良い判断。
そう思っていると俺も着替え終えたので!直ぐに路地裏に走った。
すると、アホな言葉が聞こえてきた。
「おい。」
「あん?」
「お前ら、土下座。」
「はん?何で俺らが、んなもんすんだよ。」
「そうか。しないならさせてやんよ。」
何やってんだ息子ーー!!
路地裏に到着し、息子の反応がある方向に走ると煙が溢れてきた。
?!何だこの反応は?!動きが速い?!
息子から発信されている信号があまりに速く動いた。そのことに驚きながらも現場に到着。
煙が晴れると中学生と思われる程の三人の子供が跪いて頭を垂れさせている状態になっており、そんな状態の彼らをゴミでも見るかのような目をしながら息子は立っていた。
背中がゾクリとした。
これは本当に俺の息子、いや、子供なのか?
今思えば色々とおかしいのかも知れない。この年頃にしては息子は遊ばない。普通なら友達を作り、何時でも遊んでいる年頃である。
なのに息子はそんなこと一切ないようなのである。そんなことがあるのだろうか?
色々と思考している内に息子は少女に向かって歩き出した。そして、少女の近くに行くと息子は少女に抱きつかれた。そして一度離れたものの、もう一度抱きつかれた。そしてそのまま動かない。俺は不審に思い息子の顔が見える位置まで来た。
・・・うん。俺の息子だったわ。少しでも疑ってスマン。
カシャリ
とりあえず携帯を出して写メっておいた。何ともだらしない顔である。だが俺には気持ちが分かる。あれは確実に女性が持っている二つの山を堪能している。最高だ!とか思ってるね。確実に俺の息子だわ。
その後、何やら息子は自分の個性である玉を少女に渡し、少女は走って帰って行った。
息子は見送ったものの、ハッとした顔をして困り出した。当然である。被害者を助けたものの被害者が行方不明となってしまったのだ。何とも詰めの甘いこと。このままでは最悪、警察が来た時に中学生共はいきなり襲われたとでも言って息子を凶悪犯に仕立て上げるかも知れないのだ。
しょうがない。そろそろ俺が出てってやるか。そう言えば俺の職業を息子に言った覚えがないな。ふふっ、どんな反応するか楽しみだ。
「遅ればせながら・・・俺が来たー!もう安心だぜ、小僧ども!!」
これでまた暫く書けません。
申し訳ありません。
リアルなんてなきゃ良いのに。
次回は何の話になるやら。修行編かな?
あと二話もしたら雄英高校受験編にしたい。