青年Aは歩きながら本を読む。
「あ~今月も楽しかったなぁToらぶる。次は週刊のシャンプ読まんとね~。今週の幽奈さんは何処かなーっと・・・。」
自分はこの青年Aです。見ての通り少々Hな漫画が好きです。ただまあ、青年と言うには年をとって・・・まあ、気にしないで頂きたい。心も体も清いままなので青年で良いのだよ。むしろ少年と言っても良いかも知れない。
青年は目次を見て幽奈さんが何処に載ってるか探す。
「あったあった。僕のヒーローアカデミアの次か。ついでにアカデミアも読むかな。しっかし、あれだな。この漫画のこのキャラって、存在として必要なのかね?」
青年は紫色のぴったりスーツ、下半身には卵形のオムツのような衣装もとい防具を着けているキャラクターに目がいっている。
そう、峰田実である。
彼はスケベである。変態である。情けない奴である。
いまいち自分は好感が持てない。
パラパラとある程度の流し読み・・・
嘘だろ?!
もう一度最初から読み直す。
「・・・くっ?!マジか!!」
峰田実がカッコいいだと?!
コマの中で峰田はこう言っている。
今回ばかりはオッパイお預けだぜ。
「くっそぅ!何でだよ!お前だけは信じてたのに!」
あれだろ。お前は作品の中で必要性ないやつだろ。いつまでも主人公みたいにカッコ良くなれないやつだろ!それなのに何だよ!カッコいいじゃないか!お前だけは・・・そう・・・だよ。お前だけは・・・下だと思ってたのに。
いつもこの漫画を見ながら思ってた。峰田は
俺よりも下だと。スケベだし、変態だし、情けない奴だし。漫画のキャラクターを下に見ながら心の安定を保っていたのだ。
・・・我ながら情けない。
「はぁ。マジか~。」
今、気がついた。下に見ながらも優越感は感じなかった。人間とは相手が完全に下だと思った時、相手に好感が持てるはずなのだ。何故なら優越感を得るための人材なのだから。しかし、自分は峰田に好感は持てなかった。これは・・・
「同族嫌悪ってやつか。」
スケベで変態で情けない奴。
これは自分にも言えることだ。ただオープンスケベかムッツリかの違いだけ。
男はだいたいが変態であるし、漫画のキャラクターでも下に置かないと精神を安定をさせられない情けない奴である。
そんなことを考えながら俯き歩いていると
「危ない!!避けろー!」
声が聞こえた。その後、強い衝撃が突如襲ってきた。そして急な視界の切り替わり。気がつけば空を見ていた。
「な・・・ん・・・?」
声も出ない。首から力がなくなり強制的に横に顔を向ける形となった。視界の先にはビルが立っており、綺麗な鏡のようなガラスが目に入った。自分の現在の姿と共に。
やっと自体が飲み込めた。どうやら引かれたようだ。車に。
引かれた自分は血だらけで服が赤黒く染まっている。
「ははっ、潰れた葡萄みたいだな。」
それが最後の言葉となった。
ここは?
気がつけば自分は小さな炎になっているようである。何故炎になっているかと思ったのは俺の視界に炎の列がならんでいたのだ。
つまりは此所は・・・死人の世界ってやつだな。たぶん。
目の前の列はどんどん進んで行き、炎が道の途中で右へ、左へと凄い速さで仕分けされるように別れていく。その分岐点で居たのは
「こんにちは。」
鬼だった。自分の鬼のイメージは上半身裸の虎柄パンツを履いてるものだったのだが、鬼はビッチリしたスーツを着ていた。出来そうな男風であった。
「え~と、君は・・・ふむ。なるほど。」
初めて流れが俺で止まった気がする。
「ふむ。転生だな。葡萄の樹行き。」
何故、葡萄?地獄とかじゃなくて?
「?ほう、意識があるのかね。珍しいな。」
あっ、ちゃんと聞こえてるんですね。
「ああ、聞こえているよ。喋る魂は珍しいな。久しく見たよ。」
そうなんですか。あのさっきの質問の答えを知りたいのですが
「ああ、葡萄のことかい?」
それです。差し支えなければ教えてください。
「まあ、良いだろう。葡萄の樹行きとは言葉の通り、葡萄の樹に転生するのだよ。葡萄とは実を沢山つけるだろ?それを人や動物が食べるよな?それは言うなれば身を犠牲にし、相手を助ける行為にあたる。」
はあ。なるほど?
「あまり分かっとらんな?つまりは地獄での責め苦でなく現世で働き贖罪を成せということだ。」
あ、はい。分かりました。
「えらく素直だな?普通なら泣き叫ぶ奴も居るのだがな。」
いえ、地獄とかじゃ無かったので。それよりかはマシかと。
「ほう。達観しておる。いや、諦めと自分への嫌気か?」
・・・分かりますか。そうです。何となく自分が嫌になってて。そんな時に死んだんで。
「そうか。まあ、転生すればある程度は忘れてしまうさ。後は本人の頑張り次第で次の転生も可能だからな。うむ、頑張れよ。」
・・・・・・はい。やってみます。
自分は鬼の言葉に頷いた。
それを見た鬼は満足そうな顔をして何かのスイッチを取り出し、ボタンを押す。
すると、足なんて無いが足元の感触が急に無くなり、ふわりと落ちていく感覚に襲われた。落ちながら自分は聞こえてしまった。
「あ、間違えた。」
そんな鬼の言葉が。
「はがっ??!!」
俺は飛び起き、辺りを見渡す。どこかの教室のような場所だ、
「夢か?」
・・・夢じゃ無さそうだ。記憶がある。所謂、前世にあたる記憶。そして此所は・・・
「幼稚園か、保育園か。」
俺の周りには小さな子供が何人も寝ている。
つまりは
「葡萄の樹じゃなくて人間になったってことか。」
そりゃ確かに間違いだね。鬼さんや。
しかし、何でまた人間と葡萄の樹と間違えたんだ?違い過ぎるだろ。
そんなことを思っていると起きている俺に先生が気がつき話かけてきた。
「あらあら、まだお昼寝の時間よ?」
「あ、えっと、目が覚めちゃって。」
・・・ヤバい。なんだこれ。めっちゃ恥ずかしい!
何プレイだよ。子供プレイだけど。でしかないけど!恥ずかし過ぎる!
そんな恥ずかしいという気持ちがアクセル全開状態の自分に先生は急ブレーキをかける一言を発した。
「じゃあ、峰田くんは私と遊ぼっか。」
「あっ、はい。・・・・・・はい?」
え?今、峰田くんって言った?言ったよね?!まさかっ?!!!
焦る気持ちを押さえきれず自分は
「あの!トイレに!トイレ何処だっけ?!」
「?廊下に出て右だよ。」
「ありがと!」
走って教室を出た自分はトイレに直行。そして鏡を見て
「葡萄・・・・・違いです鬼さん。」
僕のヒーローアカデミア、唯一の変態であるキャラクターのトレードマーク、頭の葡萄を確認してしまった。
「なんでやねん。」
わりと本気の絶望した一言である。
続くかは分かりません。
やるとしても更新は遅いです。
リアルなんてなければ良いのに。
申し訳ありません。