収穫作業はいつの間にか三日月とクーデリアも参加し、早いペースで進んでいく。
「はぁ、三日月とクーデリアさん仲いいよね……」
そして、アトラはずっとこんな感じだった。
アトラが三日月のことを好きなのは数人は察しており、ミハエルもその知っている人間の一人だった。
「お前がグダグダやってるからだろ? でも、今はアトラの方が優勢だと思うぜ?」
アトラの顔が明るくなる。
だが、そんな笑顔を壊すように言い放った。
「ま、あれ以上お姫様の料理の腕とか上がっちまうとどうにも出来ねえだろうけどな!」
なんともないようにトウモロコシを収穫しようとしたが、次の瞬間ミハエルは宙に浮いていた。
アトラがミハエルを投げ飛ばしたのだ。
ミハエルは何が起こったのか分からず目が点になる。
「そろそろミハエルは痛い目見た方がいいと思った。反省はしてない」
「わ、悪ぃ……」
気を取り直し、再びに作業を再開しようとした時だった。
「誰か助けて!!」
助けを求める声が聞こえる。
いつもなら無視でもするミハエルがその時だけは殺気を放った。
「……今の声は」
全て放り出してその声の場所に向かう。
三日月と途中で合流していたが、それを気にせずにただ走った。
「こ、こんな時に叫ぶな! あぁもう、大丈夫か――」
ガエリオの言葉は最後まで発せられることはなく、三日月に首を絞められ、ミハエルにカッターナイフを突き立てられる。
「三日月、遠慮なく殺せ。そいつは生かすな」
「言われなくても……」
ミハエルは車の中を確認する。
すると、ミハエルの予想通りの人物がいた。
「……ネーナ!!」
「……ミハ兄? ……ミハ兄!!」
そこにはミハエルの妹であるネーナの姿があった。
「待ってろ、今助けてやるからな……」
「ほ、本当にミハ兄なんだよね!? ヨハ兄は!!」
「兄貴も無事だ。待ってろ、すぐに助けてやるからな……」
前に座るマクギリスを睨みつけ、銃を構えながら中に入る。
「……状況は察したが、先ずはこちらの話も聞いてくほしいのだが」
「ネーナの安全が確保されりゃなんでも聞いてやる。その代わり、くだらねえことなら殺す」
間もなく手錠が外され、ネーナは車の中から脱出する。
外ではガエリオと三日月の和解が行われようとしていた。
「えっと……すいませんでした」
「……あぁ、三日月、なに謝ってんだよ」
「ありゃ勘違いだよ。クッキーとクラッカーが飛び出したところをあの車がよけたんだ」
クッキーとクラッカーの件は誤解だったと話すが、それだけで済むはずがなかった。
「でも俺は違う。妹が拉致されてて助けを求めてたんだぞ……許されねえな」
ミハエルがカッターも持ち、ガエリオに近付く。
「妹!? ……そ、それは申し訳なかった。だが、こちらにも事情があるんだ」
そこからガエリオは宇宙でスローネドライを見つけたこと、当初のネーナは分からない単語ばかりを使っていたこと、ギャラルホルンでは話せないことも多いと考えた二人は火星で話を聞くとにしたことを話した。
「……だからそこの彼女にも言っているが、乱暴なことはするつもりもない。だがらといってすぐに帰すわけにもいかないから事情を聞いてすぐに帰してやろうと思ったんだ」
「そんなに簡単に信用できると思ってるわけ? ギャラルホルンだかなんだか知らないけど、なんでも思い通りにいくと思わないでよね」
「……よく覚えておくとしよう」
ネーナとミハエルはビスケットが話をつけるということでしぶしぶ納得し、その場を後にした。
ネーナの鉄華団加入が認められたのはこの後すぐのことだった。