天使の名を持つが、天使とは程遠い容姿であるガンダムスローネ。
ビームサーベルを構え、グレイズの前に立つ。
「ギャラルホルン火星支部実働部隊、クランク・ゼントだ!」
「私はヨハン。ガンダムスローネのパイロットだ」
「……あの時のガンダムか」
両者共に構えを取り、敵の動きを探っていた。
だが、先に動きを見せたのはヨハンだった。
「むっ……!」
「そこだッ!」
ビームサーベルを一本投げ、もう一本のビームサーベルで攻撃を仕掛ける。
グレイズはスローネの動きに反応できないと判断し、大きく右に移動した。
「ッ、我々の知らないビーム兵器……!!?」
「やはり、真っ向勝負でいくしかないか」
スローネライフルで足元だけを狙い、即座に回避させ、その間に投げたビームサーベルを拾う。
「……ビーム兵器で作られた武器と考えるのがいいか」
「ビーム兵器はナノラミネートアーマーで無効化されるという話を聞いたが、果たしてどこまで耐えれるか、気になるものだな」
ビームサーベルの出力を上げ、再び襲いかかる。
だが、グレイズは今度は避けようとはしなかった。
「武器はビーム兵器のみか……。変わったモビルスーツだ……!!」
「ただのビームサーベルだと思わない方がいい!」
グレイズのカウンターともいえる攻撃を難なくかわす。
一点のみに集中したビームサーベルは確実にグレイズの武器を所持している手のみを狙った。
「こちらのビーム兵器と私たちのビーム兵器はどうやら原理が違うようだな。そして、GN粒子のビーム兵器はナノラミネートアーマーの装甲では完全に防げないことが今判明した……!」
スローネのGNランチャーが展開され、ほぼゼロ距離でグレイズに構えられる。
「……勝負、あったか」
「確かに貴方の腕は確かだ。そして、貴方は話の分かる大人だと考えている」
ヨハンはコックピットから降り、姿を現す。
「貴方が負ければどうするかを聞いていない。だから、私が決めてもいいかな?」
「……なに?」
「貴方には、私たちの指揮官として働いてもらいたい。給料に関してはオルガと話し合ってもらう」
現在のCGSには戦力として考えるには実戦経験か足りない人間が何人もいた。その仲間たちがギャラルホルンとの戦闘を行うのは困難と考えていたのだ。
そこで、必要となるのは目の前の男のようなしっかりとした戦いの基礎を知る者からの知識だとヨハンは考えた。
「……俺は、ギャラルホルンの」
言葉を遮るように、銃声が響き渡る。
「ギャラルホルンのクランクはたった今死んだ。ここにいるのはCGSのクランクだ」
ヨハンは真っ直ぐクランクを見つめた。
拒否権などないのだと言うように。
「……そうか。今の私には、死ぬことさえ許されないということか」
クランクは諦めたかのように、グレイズを降りる。
そして、ギャラルホルンの服を脱ぎ捨てた。
「確かに、子供たちを導くのは大人の仕事だ。その責務、俺が受け持とう」
勝負の末、CGSはグレイズ一機とクランクという男を確保することに成功した。
仲間を殺したギャラルホルンの人間とはいえ、クランクはそのことに謝罪し、その命をCGSの為に使うことを誓ったことでCGSの皆は納得した。
それ加えて話の分かる人物であることと、三日月たちとは違ってちゃんと戦い方を教えることが出来る人間として受け入れることが出来ていた。
「……でーも、やっぱGNランチャーもギャラクシーランチャーとかカッコイイ名前にしようぜ!」
「はぁ!? スローネライフルはまあ認めるとしても、そんなダッセエ名前を兄貴のガンダムに付けるんじゃねーよ!!」
「じゃあスローネランチャー?」
「……まあ、それなら別に……」
「ミハエル、勝手に決めるのはよくないぞ」
クランクの受け入れが無事に終了し、ヨハンはミハエルとシノのいる場所に向かった。
「だが、確かにここではスローネ専用の武器とも言える。GNランチャーもスローネランチャーに変えても問題はないか」
「……兄貴、そんなノリでいいのかよ」
「頭が硬くてもいいことはないと学んだからな。ここでは色々と自由にやらせてもらうさ」
ミハエルが意外な者を見るようにヨハンを見る。
すると、何かに気付いたのか服を確認する。
「その服、どうしたんだ?」
「これか? ついさっきオルガがCGSの名前を改めたからな、それに合わせて新しい服を決めているところだ」
「お、それってどんな名前なんだ!?」
「それはだな……」
ヨハンはこれからのことを考える。
その先にあるのは、栄か、滅びか。
一つだけ、確かに言えることがあるとするのならば
「――鉄華団だ」
今度こそ、この手で幸せを掴み取ってみせるという覚悟があることだ。