勝手に逃げておきながら偉そうに現れた一番隊はギャラルホルンとの戦闘を勝手なことと言い放ち、オルガに対して暴行を行った。
ヨハンとミハエルは実際に見たわけではないが、彼らのやることは大体分かっている。
「兄貴、これどうする?」
「グレイズの所持していたものはまだ使えるが、グレイズに関しては捨てておく」
ミハエルは久しぶりに見たヨハンのパイロットスーツに懐かしさを覚えていた。
「……あーあ。オレもツヴァイがあればあのパイロットスーツで戦えるのによー」
ミハエルもパイロットスーツの状態だった為、いつでも着ようと思えば着れる。
しかしそうしないのは彼なりのケジメなのだろう。
「……あ、あの!」
二人の元にクーデリアがやって来る。
クーデリアとヨハンは既に顔見知りだったが、ミハエルは彼女の顔を見ていない。
それに加えてミハエルは仲間を失ったこともあり、クーデリアのことを完全に忘れていたのだ。
「あぁ? 部外者がなんの用だ」
故にいかにもお嬢様という格好のクーデリアに厳しい言葉を放った。
「やめろミハエル。彼女はクーデリア・藍那・バーンスタインだ」
「……あ、やべ……」
まともに考えればCGSで彼の知らない人物は今のところクーデリアのみだというのに、それを忘れていたミハエルはやってしまったという顔をする。
「いえ……、彼の言うことは、間違っていませんから……」
おそらく誰かが厳しい一言でも放ったのだろう。
この手の人物は面倒だと感じたヨハンだが、放っておくわけにもいかない。
「クーデリア・藍那・バーンスタイン、貴方が気に病む必要はない」
「それは……分かっているのです。ですが、私だって……」
「……私たちは、一つの目的の為に産まされた。そこに私たちの意思はなく、ただ任務を遂行するだけだった」
ヨハンは言葉を続けた。
そこには多少の嫉妬のような感情が現れる。
「だが、貴方は違うはずだ。貴方は自分の意思で革命の乙女となり、火星を変えようとしている。私たちよりも立派だ」
実際、彼は嫉妬していたのだ。
不自由なく生活がおこなえ、自分の意思で何かを出来るという彼女が羨ましかったのだ。
「だから、貴方はこれからも貴方がそう進むべきだと思った道を進むべきだ。誰かにそう言われたからではなく、貴方自身の意思で」
「……えぇ、分かっています」
そう言った彼女の瞳は何かを決心したようだった。
これなら問題はあるまい。
「……さっすが兄貴、オレもそーいうカッケーこと言いてえな〜」
「心配しなくとも、ミハエルなら大丈夫だ」
お互いに笑い合い、クーデリアも多少とはいえ手伝ったこともあり、すぐに回収は完了した。
その後、クーデリアはCGSへと戻って行ったが、ヨハンとミハエルは別の方向に向かう。
その先にはオルガと三日月の姿があった。
「……オルガ、話は済んだのか?」
「あぁ、準備は整った」
その一言にヨハンは笑った。
しかし、優しいものではなく冷酷な笑だった。
「――俺たちCGSを乗っ取る。あいつらの言いなりになるのは今日で終いだ」