CGSとギャラルホルン。
モビルスーツ、グレイズの登場によりCGSの敗北に見えたが、そこに現れた二機のガンダムによって状況は一気に逆転する。
「敵モビルスーツを撃破。機体性能の確認とはいえ、少し威力を出しすぎたか」
コックピットも破壊され、頭部しか残っていないグレイズを足場の邪魔になるために蹴り飛ばす。
前線では三日月の乗るバルバトスが暴れ回っていた。
「三日月、一機ずつ確実にだ」
「了解……!」
バルバトスに突っ込んでくる一機にスローネライフルを構える。
それを合図にバルバトスのメイスを投げ飛ばす。
『武器を投げ捨てるなど……!!』
投げ飛ばしたメイスを難なくかわすが、それもヨハンの計算内であった。
バルバトスの後ろにはスローネがその時を待っていたかのようにスローネライフルを構えていた。
「しまっ……」
「スローネライフル、撃つ!」
放たれたスローネライフルを避けることが出来ず、両腕を失う。
「狙いが外れたが、そこの一機も素人か……。三日月、奥のグレイズは隊長格だ」
「グレイズ? ……あぁ、そんな名前だったか」
投げ飛ばしたメイスをそのまま掴み直し、奥のグレイズに攻撃する。
ヨハンの予想通りそのグレイズだけは動きが違っていた。戦い慣れている。
「危なくなったらこちらに退け。追撃したところをスローネライフルで狙う」
「そう? でも、ヨハンの出番は無さそうだ……!」
バルバトスの攻撃は止むことなく続き、グレイズも防戦一方であった。
誰が見てもどちらが優勢かは一目瞭然だった。
「……あれ?」
だが、突然バルバトスの動きが止まる。
「どうした?」
「なんか、バルバトスが動かない」
これは三日月自身も知らなかったが、バルバトスはスラスターが切れかかっていたのだ。
「……整備の不完全は致命的だ。あまり無理をしすぎるな」
「でも、それだとあいつらが……」
三日月のバルバトスが敵を深追いしようとするが、それをヨハンが止める。
「敵もこれ以上は襲ってこない。……来たとしても、我々の敵ではない」
ヨハンは威嚇するかのようにGNランチャーを構える。
その危険さを感じ取ったのか、隊長格と思われるグレイズが撤退しようとしていた。
『……最後に聞きたい。まさかとは思うが、その白いモビルスーツに乗っているのは子供、なのか?』
「そうだ。ここにいるのは戦わなければ生きられなかった者たちばかりだ」
『それは貴様も含めてか?』
その言葉がヨハンに過去を思い出させた。
かつて世界の変革の為に生み出されたと思い、戦った時のことを。
「……そうだ。我々もその為だけに造られ、生み出された」
重みのある言葉を放つと、グレイズたちは何も言うことはなく立ち去った。
「……あいつら、きっとまた来るよ」
「だが、もう失うことはない。あの程度ならば私たちだけでも事足りる」
「……そう……か……ッ」
それを最後にバルバトスからの、三日月からの通信が途切れる。
阿頼耶識のガンダムはモビルワーカーよりも負担が大きいのだろう。
ヨハンは三日月が起きるまでここで待っていようと思った。
「……ふっ、私も随分甘くなったものだな」
コックピットから降り、空を見上げる。
ここに来たばかりの頃を思い出していた。