地球で騒ぎが起きていた。
ある者はそれを厄祭戦の英雄と、またある者はその映像を見て天使だ、悪魔だというものもいた。
ギャラルホルンでもそれは噂になっており、真っ先にそれを調べようとしたのはマクギリス・ファリドという男だった。
「……信じられなかったが、確かにあるな」
ガエリオ・ボードウィンを連れ、宇宙に漂うソレを確認していた。
一向に動く気配はなく、そもそもパイロットが生きているのか、存在しているのかどうかさえ不明だった。
(なんだあれは……。あれもガンダム・フレームだというのか?)
「マクギリス。……マクギリス?」
「……すまない。手筈通り、コックピットを確認次第回収するとしよう」
突然発見された紅いモビルスーツ。
マクギリスはその機体をずっと見続けていた。
ーーー
その日、火星で巨大な爆発音があった。
対抗するのはCGSの参番隊。
そして、敵は……
「……ギャラルホルン。やはり来たか」
モビルワーカーに乗りつつ、敵を確認する。
いくら旧型のモビルワーカーとはいえ、敵のモビルワーカーはかつて戦ったどの敵と比べても素人当然の動きをしていた。
「ミハエル、今日はファングって叫ぶなよ?」
「うん。あれ煩い」
「分かってるっての! ミハエル、目標をエクスタミネート!!」
ミハエルたちが戦場に向かう中、ヨハンは銃口を敵に向けて狙いを定める。
「……目標を殲滅する!」
ヨハンの攻撃は的確と言っていいほど敵に命中する。
数機ほど狙いが外れたものもいたが、それは前線で戦うモビルワーカーが倒していく。
「……やはりロックオン・ストラトスのようにはいかないか」
もっとも、ヨハンの乗るモビルワーカーは五発中三発は敵を仕留めているために悪いわけではない。
それでもヨハンは自身の精密さに舌打ちをしていた。
「こちらヨハン。オルガ、一番隊はどうだ?」
戦闘から数分経つが現れる気配のない一番隊に嫌な予感を覚えつつも確認する。
「一番隊は来ねえ。どうやら俺たちの為に囮になってくださるそうだ」
「……そうか。なら引き続き援護射撃を行う」
狙いを定め、敵モビルワーカーを撃つ瞬間だった。
「……む、爆風か?」
突然の砂埃により一時的にその場を離れる。
その直後、ヨハンのいた場所が砲撃された。
「敵の援軍か?」
「……マジかよ」
口を開いたのはミハエルだった。
ミハエルの前には一機のモビルスーツが立っていたのだ。
「モビルスーツまで出て来やがったってのか!?」
ミハエルが乗るのはモビルワーカー。
かつて乗っていた機体と同じように動けば確実に死ぬと察知し、昭弘や三日月と共に動き回りながら少しずつ装甲を削っていく。
『その程度の攻撃!』
しかし、モビルスーツの一撃はミハエルたちの技術などお構い無しに周りの仲間たちを奪っていく。
「……ミカ」
この状況を把握し、動いたのはオルガだった。
三日月を自身のところに呼び出した。
「……そうか。ならば私も動くとしよう」
参番隊の大半がモビルスーツの登場によって混乱する中、ヨハンと三日月はCGSのある場所に向かおうとしていた。
「全員無理はするな! ミカが戻るまではミハエルと昭弘が前、他は後ろから援護しろ!!」
「へっ、昭弘がいなくても俺だけで充分だっての!」
「……そりゃこっちのセリフだ!」
お互いが軽口を叩きつつも敵のモビルスーツを翻弄し、他に被害が及ばないようにしていた。
『ちょこまかと……!!』
対して敵はそこまで戦闘慣れしていないのかモビルスーツであるにも関わらずミハエルと昭弘のコンビネーションによって一機も落とせないでいた。
『くそっ……ん?』
不意に足が止まる。
ミハエルや昭弘の死角には弾切れを起こして撤退するモビルワーカーがいた。
それを見たパイロットは……
『……ふ、ふははは』
二人を気にもとめず、そのモビルワーカーを破壊した。
『ははははは!! モビルワーカー如きがこの私に挑もうと――』
それ以上の言葉を発することはなかった。
下から放たれた砲撃によってモビルスーツの下半身部分が消滅したのだ。
『……は?』
「貴様を殺すのは私ではないのでな、三日月が狙いやすい位置にコックピットを置いておいたぞ」
「あぁ、これなら上がってくるのと同時に……」
大きな振動と共に二機のモビルスーツが下から現れる。
「凄いねその光。じーえぬ粒子だっけ?」
「量産も出来るならと考えていたが、それはまた検討しなければならないな」
それはかつての厄祭戦において使用された悪魔の名を持つガンダム。
それに加えて本来ならばこの世界に存在せず、その機体がこうして綺麗に治っていることも有り得ないもう一機のガンダム。
ガンダム・バルバトスとガンダムスローネの姿があった。