戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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響の宿題進行度は9割9分。


#90『夏休みの宿題提出日』

 9月になる前の数日間、クリスと調は今までと同じように探索に出て、翼は八紘邸で神殺しとは何なのかを天羽々斬を纏いながらずっと考えていた。

 

 八紘に聞いても、他の人に聞いても分からなかったが、了子に聞いた時に少しだけ情報を得た。

 

「神殺し?」

「はい、少し気になることがあり、神殺しについて調べているのですがどうしてもわからず」

「……一応言っておくけど、私にとっての神はあの方なわけね? 私はあの方に想いを伝えるためにずっと生き続けてきたの。それなのに私に神殺しについて聞く?」

「櫻井女史は弦十郎叔父さんと付き合い、吹っ切れたのかと思ったのですが」

「まあ、そうよ? 聞いてよ翼ちゃん、この前弦十郎くんが……」

 

 了子はフィーネのような顔つきで翼に問いかけたが、弦十郎のことを言われると顔を一気にデレデレさせて惚気始めた。翼は律義に全てを聞いて、あの弦十郎に結婚相手ができて良かったと思っている。弦十郎は超人過ぎて付き合える人がいないと風鳴では言われていたからだ。

 

「……それで神殺しだけど、まず神は不滅なのよ」

「殺すことは出来ないと?」

「色んなところからエネルギーを集約させて、肩代わりさせたり、いろんな方法で殺されるのを阻害するのよ。エネルギー源が無くなるまで倒し続けるのは無理よ? こちらがエネルギー切れ起こしちゃうもの」

 

 了子はあの方を理解する為に長い間あの方について研究をした。その時の副産物として知ったのが超高エネルギーを持っていれば、そのエネルギーを使って自分の死を無かったことにすることが出来る。

 しかし、そのエネルギーはネフィリムの心臓でも流のデュランダルでも足りない。もっと万物的なリソース、世界を焼却などをしないといけなかったので了子は過去にその技術の研究をやめていた。

 

 だが、パヴァリアのヨナルデパズトーリはそれっぽい事をしていたのがキャロルとその映像を撮っていた藤尭の端末から分かったので、急いで研究し直している。

 

「ならばその源の繋がりを断てば」

「そうなんだけど、簡単には行かないのよね。しかも攻撃自体が全然通らない可能性があるし。ただの刀で流の右腕は斬れないでしょ? 神殺しを成すには神に有効打を与える資格が必要なのよ」

「……」

「翼ちゃんはあんまり別の技術について勉強してないものね。例えば神殺しの逸話がある武器。まあ、それらはそれだけではダメ。人々の想いによって哲学となれば、それはその力を発揮できるはずよ。一番簡単な方法がだけど」

 

 了子が言った哲学の武器という言葉で翼は了子の言わんとすることがわかった。

 彼女は簡単と言ったが、そうポンポンと哲学兵装は作れるはずがない。了子は何故自分の息子が作れたのかがイマイチ理解出来ていない。

 

「ソードブレイカー、哲学によって事象をねじ曲げるという事ですか」

「そう。で、翼ちゃんは流みたいに何かしらの情報を知って先走ってるみたいだけど、私達の戦力には神殺しの力は()()。天羽々斬かザババかガングニール。これらは神が戦うのに使ったと言われているけど、哲学の呪いになるほど有名な逸話で、尚且つ語り継がれているものはないわね。あるとしたらキリスト教のロンギヌスの槍とか。あれは最大宗教なだけあって相当な呪いになっているでしょうね……まあ私たちの手元にはないけど」

 

 了子からしたら神はあの方だけなのだが、世界の人々はそういう訳では無い。キリストという三位一体の神を殺した……のを確認しただけなのだが、その事実がねじ曲がって、ロンギヌスさんの槍は確実に神殺しの力を持っているはずだ。

 天羽々斬もいい所までは行っているのだが日本の神話はあまり知られていないので、知名度ゆえに哲学にはなり得ない。

 ザババの武器もガングニールも神が神を殺すのに使った武器なだけだ。ガングニールなら必中などの哲学になっていてもおかしくはないが神殺しではない。

 

 ぶっちゃけ了子は哲学兵装は扱いづらく、あまり研究していないので詳しくはわからない。しかしもし神が現れて天羽々斬が効いてもおかしくはないとは思っている。だが、ここでは効かないと言っておいた方が翼のためになると思ったので可能性の示唆すらしなかった。

 

 こんな感じで翼達は色々と自分たちで調べながら日々を過ごした。マリア達は自由に動けない身ではあるが、切歌の支えによってある程度は持ち直し始めてシミュレーションなどで鍛錬を積んでいる。

 

 

 9月に始まったリディアンの二学期の初日が終わり、三人はS.O.N.G.の潜水艦に来た。

 

 調は切歌も響も未来もいない状況で自分だけ登校したので板場達に心配されたが、今回のことだけは言えない。曖昧な感じな返事で流すことになった。

 あからさまに何かがあったことが分かった板場達は『自分たちがやれる事があったら何でも言ってね』という言葉をかけた後、いつも通りの雰囲気で騒ぎはじめた。

 

 この人たちともいつかは心の壁なしで話したいなと、調は心が少し暖かくなった。

 

 

「集まってくれたか。本日やっと風鳴機関の暗号解読機の使用許可が降りた。それについて話しておきたい事があってな」

 

 ブリーフィングルームには大人は弦十郎と了子だけで、緒川や友里などは居なかった。了子が入れてくれた美味しくないのにもっと飲みたくなる不思議な温かいもので一息ついてから弦十郎が話を切り出した。

 

「やっとバルベルデドキュメントが調べられるのか。国を守るための資料の解読なのにえらく時間がかかったな」

 

 風鳴機関については大体の説明を翼自身からされていたので、二人は翼に注目したりせずに話をすすめる。

 

「まあな。国防に関わる事だから、すぐにでも解析に掛けられると思ったんだが数週間待たされてしまった。そして更に問題が起きた」

「風鳴関係ですか?」

「そうと言えばそうなんだが……」

 

 弦十郎が言いにくそうにしていたので、了子は弦十郎を座らせた。

 

「風鳴機関は明日の二日にバルベルデドキュメントを解析をしてくれるらしいのだけど、S.O.N.G.は鎌倉には近づくなとのお達しね」

「はぁ!?」

「パヴァリアが狙っているのに……アルカノイズはどうするの?」

 

 調は言い終わってからどうやって対策するのかがわかった。他の人も同じく分かったはずだ。アルカノイズにはシンフォギアをぶつければいい。ここにいない装者達をぶつければいいのだ。

 

「待て待て、先輩が言ってたよな? 風鳴機関を裏から支配してるのって」

「そう、現風鳴宗家のトップ。風鳴訃堂、その本人だ」

「でもその人って確か」

 

 調が自分の心の壁に関する悩みを打ち明けた夜、翼はマリアにしか教えていなかった翼の出生の秘密を暴露していた。「私のお父様は風鳴八紘ただ一人だ!」と声高らかに叫んでもいたが。

 

「……待ちなさい。確かに翼ちゃんの件はなかなか酷い事ではあるけどそれとこれは別よ。もし流が風鳴訃堂の下にいても……多分? きっと? おそらく無事なはず」

 

 訃堂が畜生であるのであれば流が酷いことをされているのは必至。だが、それを周りが口にする前に了子がフォローのようなものをして、一度その流れを止めた。

 

「何故櫻井女史はそう言えるのですか? 私ですら、流を嫌な使い方をされていると考えているのですが」

「これだけは言えないわ。でもね、私の息子はあの老人にとっても必要なパーツの一つなのよ。多分翼ちゃんと同じくらいに」

「……流は風鳴を名乗っているけど養子なんだよな? それなのに本筋の先輩と同じく必要? 強さとかデュランダルとかか?」

「だから言わないっていってるでしょ?」

 

 何故流が翼の遺伝子を半分継いでいるのか。了子は翼は処女であることは確認しているので、最悪な畜生なことは行われていないのはわかっている。そして風鳴機関にホムンクルス技術はないことも分かっている。

 了子は後一歩ピースが足らず頭を悩ませている。了子は技術者としての才覚はあっても探偵としての才覚まである訳では無い。もしDに関することに気がつけても、既に施設は自爆の()()()()()()されている。

 

「……もしバルベルデドキュメントがパヴァリア光明結社にとってあってはならない物であるならば、確実に襲撃が来るだろう。俺たちは事前に現地入りが出来ないが、それでもノイズが現れたら俺たちは向かわなければならない。準備だけは怠らず、事が起こったらすぐに動けるようにしておいて欲しい」

「……誰がバルベルデドキュメントを風鳴機関まで運ぶの?」

「それだ! 輸送の間に襲撃されるかもしれねえじゃねえか! それは大丈夫なんだろうなおっさん!」

 

 バルベルデドキュメントは重要なデータが入っている故に、ネット回線を使わずに輸送することになっていた。だが、装者達はここから動けず、S.O.N.G.は近寄るなとのお言葉。

 

「S.O.N.G.は近づけないが、アーティスト風鳴翼のマネージャーの緒川に直接依頼が来て、今向かっている」

「屁理屈じゃねえか!」

「でも、緒川さんなら問題ない」

「そうだな。飛騨忍軍の流れを汲む緒川さんならば、問題なく輸送をやり遂げてくれるだろう」

 

 先程までの心配とは一転、皆安心した顔になって謎の温かいものを飲んでいる。

 緒川慎次は二人の弟子が出来てから、自分の弟子に負ける訳にはいかないとマネージャーやエージェントの合間を縫って一から鍛え直したりしていた。

 今の緒川と弦十郎が本気で戦った場合、下手したら緒川の方が強い可能性まである。なお、弦十郎が本気で戦った場合、流のようなアホみたいな耐久がないと一撃ノックアウトされてしまうのでどちらが強いかはわかっていない。了子なら判断できるだろうが弦十郎贔屓をしてしまうし、緒川の扱いが割と雑なので公平な評価がされない。

 

「みんなは帰らないでここで待機ね……そうだわ! パジャマパーティーをしましょうか。そう、それがいいわ!」

「ちょっと待って」

「了子引っ張んな!」

「……この櫻井女史からは逃げられぬな」

 

 了子は不理屈で流が変なことをされていないと言ったが、それでも心配している皆を慮り、無理やりS.O.N.G.に設置されている和室へと引っ張っていった。

 

 なお、パジャマパーティーと言っていたのに了子は全裸だったり、翼は浴衣だったりしていた。唐突に始まった枕投げも初めはそこまでやる気はなかったが、了子がクリスを煽り、皆を巻き込んで大騒ぎをしていた。一時的にでも装者のストレスが緩和できるならと弦十郎はそのことを黙認した。だが、壁を壊すのはやめて欲しい。異端技術もやめて欲しい。

 

 

 **********

 

 

「やっぱり無理ね」

「ならしょうがないわ。無茶だけはしないで」

「もうサンジェルマンは心配性なんだから」

 

 鎌倉にある風鳴機関にバルベルデドキュメントが輸送されるとわかったパヴァリア三人娘は、輸送途中に奪取しようとしたが運搬している人を見つけることが出来なかった。

 

 探索に時間を割くほど暇がないサンジェルマンはラピスの完成を急ぐために拠点を帰り、プレラーティもついて行った。

 カリオストロは風鳴機関の周りにアルカノイズをばら撒き、用事のある流を呼び出そうとしたが来たのはマリアと切歌と響と未来だった。

 

 遠くからアルカノイズを多めに展開して戦力を確かめてみると翼達と同じように確実に強くなっていた。全体的に攻撃のキレが上がり、連携もさらに向上していた。

 ラピスなしでは危険だと判断したカリオストロはそのまま拠点へと戻ってきたのだった。

 

 そのアルカノイズの反応にS.O.N.G.は対応しようと人材を送ろうとした時には、アルカノイズ反応が消えていたので鎌倉には立ち入ることが出来なかった。しかし、その対応によって風鳴にマリア達がいる事か確定した。

 

「それにしてもタダでさえ、ユニゾンとイグナイトは面倒なのに、基礎能力までこの短期間で上がるとか何なの?」

「S.O.N.G.には忍者や超人がいるとの噂があるから、きっとそれなワケダ」

「なるほどね〜」

 

 錬金術師なのに携帯端末を取り出してカリオストロは返信が返ってきていないか見るがやはり返事はなし。他二人も軽くは使うが、カリオストロのようにデコレーションまではしていない。

 

「最近そればかり弄っているけどなにかあるの?」

 

 錬金技術の秘奥ラピス・フィロソフィカス。それの最終調整を終えたサンジェルマンは、カリオストロとプレラーティのお茶会に参加している。いつもならば次の仕事に取り掛かっているところだが、明日の夜にはやる事があるのでサンジェルマンも休息を取るように二人に言われた。

 

「えーと、流に連絡をしているんだけど全然返事が来ないのよね。今回の襲撃にも顔を出さなかったし。怪我して入院でもしてるのかもね」

「……カリオストロ。彼をアダムの代わりに使うのはもう無理だと言ったはずよ。この土壇場でそのような変更は計画の失敗に繋がるわ」

「わかってるわよ。でもね、何となく彼は味方につける努力はしておいた方がいい気がするのよね。私の乙女の勘がそう囁くのよ」

 

 実際はアダムが言った、支配なき世界を作るという言葉に嘘があったことを見抜いるので動いている。アダム以外のことならすぐにでもサンジェルマンに報告するところだが、サンジェルマンはアダムを人でなしという割に信じているのでまだ言えていない。

 まず何故サンジェルマンがアダムの事を信じているのかがわからないが、数日前に聞いてもやはり答えてくれなかった。

 

「後から女になった癖に乙女の勘なんて、失笑なワケダ」

「うるさいわね。ロリぺドショタ好きよりもマシよ」

「それは言いっこなしだと言ったワケダ! その挑発受けてやるワケダ!!」

「あらいいのかしら? 私の方が強いわよ?」

 

 ミルク多めのミルクティーを吹き出してプレラーティが笑い、カリオストロが挑発する。プレラーティは太ったカエルの人形の口からけん玉を、カリオストロは谷間から指輪を取り出して構え始めた。

 

「二人が運動をするのなら、私は仕事をしてくるわね」

「……サンジェルマンは働きすぎなワケダ。明日は戦いなのだから万全な体調で挑んだ方がいいワケダ」

「……ちょっとしたお遊びよ。最終調整で全然寝てないんでしょ? 完全な体でも疲れは溜まるのだからサンジェルマンは休んでて」

「そう、ならお茶会の続きをしましょうか」

 

 サンジェルマンは二人の反応を見て、軽く笑みを浮かべてから、お茶を継ぎ足していた。

 

 

 **********

 

 

 9月1日のバルベルデドキュメント輸送の少し前から、風鳴宗家に付き従う家は周辺の家屋に住む人たちを退去させる事に全力を出していた。

 既に流が幽閉されてから日数が経っていて、その間に過激派の殆どが権力を失っていた。

 

 現在流は被疑者として捕まっているが、本来の流は鎌倉でも上位に位置する人間だ。功績が凄まじいので一気にのし上がったが、それ故に恨みつらみが酷いことになっている。

 そして流は存在自体が重要な兵器としての登録もされている。デュランダルとソロモンの杖をその身に宿し、やろうと思えばノイズを大量展開できる点から流は本来ならば丁寧に扱わないといけない。

 

 それをまだ被疑者なのに牢屋に入れられ全裸で拘束されているからといって、勝手に尋問していい者ではない。事実と少しの捏造によって流に手を出した過激派の大半が既に消されている。それを支持した奴らも同様だ。

 故に、次の粛清は自分なのではないか? と脅えながら国防、そして風鳴に従順であることを示すために退去は丁寧に素早く行われた。

 

 そして9月2日、バルベルデドキュメントの解析が始まった日の夜、風鳴機関の正面に大量のアルカノイズが展開された。

 

「私たちが出るわ!」

「宜しくお願いします」

「ナスターシャ博士と僕でサポートしますので、頑張ってください!」

「ええ、マムとエルフナイン、行ってきます!」

 

 風鳴機関の研究員たちは、昨日マリア達がアルカノイズを退けるのを見る前までは装者達を侮っていた。だが、事実としては知っていたが、実際にノイズをあんなにも素早く撃破できるのを見たあとからはとても協力的になった。

 

 ナスターシャがメインで、それをエルフナインがサポートする形で風鳴機関から少し離れたところにある、F.I.S.が使っていた移動式拠点車でサポートしている。

 この後の惨劇を考えれば、マリア達が仲良くなった研究員達が同じ車に乗っていたのはある意味で幸運だっただろう。

 

 風鳴機関の正面入口に四人は向かうとアルカノイズの大軍が待ち受けていた。

 

「このままだと数の暴力で風鳴機関が分解されてしまうわ!」

「なら、イグナイトですね!」

「行くデスよ! イグナイトモジュール」

「「「「抜剣(デース)」」」」

 

 アルカノイズの量が多過ぎて、処理に時間をかければ機関が分解されてしまう。刹那に薙ぎ払うために、イグナイトの使用に踏み切って()()()()

 

 第一抜剣ではあるが、それでも威力の上昇は絶大だ。

 

 マリアは【SERE†NADE】の大振りな大剣状態で振りまわしながら、小型のナイフを操って的確に敵を撃ち抜く。

 切歌は肩アーマーの刃を伸ばして操る【封伐・PィNo奇ぉ(ふうばつ・ピノキオ)】を器用に扱いながら、二本の鎌を合わせて三日月状にする【対鎌・螺Pぅn痛ェる(ついれん・ラプンツェル)】を薙刀のように扱っている。

 響は横からの攻撃には見向きもせず、一番槍をとしての働きを全うするためにひたすら前進している。

 その響をサポートするように横から来るアルカノイズを未来が滅ぼし、問題ない場所には【流星】を撃ち込んでいる。

 

「あれでまだユニゾンしてないから怖いわね」

「でも私たちには赤く輝く勝機がある」

「狙いは暁切歌でいいワケダ」

「ええ、イガリマの絶唱だけは私達でも一溜りもないから最低でもイガリマの破壊だけは行うわ」

「魂を壊すなんて反則よね」

 

 プレラーティとカリオストロは喧嘩しようとした時に出した、赤い宝石のついたけん玉と指輪を構える。サンジェルマンは流との戦いで使っていた、あの時は付いていなかった赤い宝石が添えられた黄金銃を構え、赤き宝石を打ち鳴らした。

 

 三人は赤い光に包まれると、装者達はパヴァリア光明結社の三人の存在を認識する。

 そしてマリアは写真で流と共にいた、カリオストロの姿を認識した。

 

「貴様さえ居なければあああああああ!!」

 

 空中に配置したナイフの上を飛んで、カリオストロの下へ向かっている時、赤い光が弾けた。マリアは錬金術が纏うその姿に既視感がある。

 

「ファウストローブなんて、この一撃で切り裂いてやる!!」

「なんか私に殺意マシマシ過ぎない? まあ、いいけどね。そーれ!!」

 

 パヴァリアの三人よりも上空から落下の勢いもつけて、【SERE†NADE】の大剣でカリオストロを切り裂こうとした。

 それにカリオストロは合わせるように体全身を広げて、水色の光線を途切れることなく撃ち続ける。

 

「この程度!……なっ、ギアが!」

 

 マリアの大剣は少しずつ光線を押し込もうとしていたが、カリオストロの水色の光を浴びたシンフォギアのギアが悲鳴をあげ、マリアは吹き飛ばされてしまった。

 マリアは吹き飛ばされる瞬間イグナイトが解けてしまったこと、その影響か体全身がズタズタになりそうな衝撃を受けたことでそのまま気絶した。

 

「マリアさん!」

「……マリアをよくもッ!!」

「待って切歌ちゃん!」

 

 響は吹き飛んできたマリアをキャッチした。切歌はマリアがやられたのを見て、頭に血が上って突撃しそうになったが未来の言葉でなんとか踏みとどまる。

 翼にあの二ヶ月で習ったのだ。冷静さを失えば勝てる戦場も負け戦となる。

 

「あら? お仲間がやられたのに来ないのね」

「薄情なワケダ、それにしてもマリア・カデンツァヴナ・イヴは弱いワケダ」

「黙れ! マリアを侮辱するな!!」

「はああああ!!」

 

 切歌がいつもの口調ではなくなる。サンジェルマンが銃口を響に向けているのに気がついた未来は、【流星】をサンジェルマンに向けて撃ち放つ。

 

「ふん、無駄よ」

「もういっちょ!」

 

 サンジェルマンは青い龍の形をした銃撃を二発放ち、片方は流星へ、もう一つは響に向けて放つ。更にカリオストロが切歌に向けて、光弾をいくつか放った。

 

 本来の流星ならば錬金術を浄化すべき物として捉え、消滅させることが出来たが、イグナイトを纏ってしまっている。青い龍の銃撃に流星は飲み込まれて未来は吹き飛ばされた。

 響はマリアをその場に置いて龍の形の銃撃を拳で迎撃したが、こちらもギアが悲鳴をあげて響も吹き飛ばされる。

 

 切歌はマリアや未来の現象を見て、触れてはいけない攻撃だと分かり、ギリギリで避けたが、

 

「それは爆発するのよね」

「ぐあああああ!!」

 

 避けたはずの光弾が背後で連鎖的に爆発し、切歌のギアも悲鳴をあげて吹き飛ばされた。

 

 ファウストローブによる攻撃を受けた四人の装者は、イグナイトの使用時間に猶予があるのにも関わらず解除され、強制解除の負荷により体が引き裂かれるような痛みを感じている。

 そんな四人の前にサンジェルマンは歩み寄り、サンジェルマンの銃口は切歌のペンダントに向いている。

 

「ラピス・フィロソ」

「駄目じゃないか、敵に情報を与えるような手加減をしては。徒人(ただびと)も舐めてはいけないよ?」

 

 サンジェルマンが口上を述べようとした時、空から男の声がサンジェルマンを咎めた。カリオストロとプレラーティはそちらを見て顔を引きずらせる。

 

「なっ! なんでその光をこっちに向けてるのよ!」

「不味いワケダ」

「……統制局長アダム・ヴァイスハウプト。何故ここに!」

 

 パヴァリアのトップであるアダムが超高熱の玉を手の上で浮かべていた。玉が一度煌めくとアダムの服を軒並み燃やし尽くした。帽子は上手くどこかへ飛ばしていた。

 

「……ソロモンさん、なんで?」

 

 持ち前の頑丈さで唯一意識を失わずにいた響は、空でダイナミックに全裸になった男を見てそう呟いた。

 パヴァリア光明結社総帥アダム・ヴァイスハウプトの顔やその姿は、流の潜在意識の世界にいたソロモンと名乗る男と瓜二つだったのだ。

 

「ソロモン? 私はアダム・ヴァイスハウプトだよ、ガングニールのお嬢ちゃん」

 

 アダムの目には風鳴機関の施設は映っておらず、響がその瞳の中心にいた。




宿題は終わらなかったです。まず学校にいっていない。

そしてアダムとかが介入した結果、未だにサンジェルマン達の目的が語られていない。
フィーネは情報をマジかで知っていているからこそ、ロンギヌス=ガングニールとかいう事実とは違うことはわかっていません。

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