戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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ここら辺から主人公はなんだよって感じに更になると思います。
前話にて、マリアがメディカルルームに居るような誤字をしてしまいましたが、まだマリアはバルベルデにいます。このミスはやってはいけないミスですね。すみませんでした。


#82『科されるトラウマ』

『……んでこんな所を心に刻み込んでんだよ!』

 

『天羽の死んだ場所がここなのか』

 

『そうだよ。なんであんなに扉があんのに、こんな初っ端から胸糞……ああ、そうか。あたしが死んじまったから、流の心に残り続けているのか』

 

 扉が沢山あり、白亜のホールの中で一番近い扉を開いたら、奏が死んだ戦いによって荒廃したライブ会場についた。

 シンフォギアを纏う奏は雄叫びと共に、自らの持つ槍のガングニールを一閃すると、地面が大きく抉れた。

 

 胸糞が悪くなるが、これも奏が死んだが故に、流の心の中に残り続けているのだと分かると、少しだけ落ち着くことが出来た。

 

 

「……」

 

「大丈夫、響?」

 

「平気……へっちゃらだよ」

 

 さっきまでは奏が現れたことによりテンションが上がっていた響の顔は真っ青になっていた。

 ライブ会場での奏の後ろ姿から始まり、二週間もなかったが確かに心に傷をつけた迫害の日々と、それでも()()や母親、お婆ちゃんが守ってくれた温かさ、未来の献身などを思い出していた。そして響はある事を言っていない事も思い出した。

 

「了子くんは何隠れているのかな?」

 

「ちょっとお腹が痛くて、しゃがみ込んでただけよ? だから弦十郎くん、無理やり私を持ち上げないでくれるかしら」

 

 画面の奥の惨状、奏が死ぬ間接的な原因であるノイズの大量発生を行った犯人、了子は気まずさを感じて、机の下に隠れようとしたが、弦十郎にお姫様抱っこで抱き抱えられた。

 そんな了子を響や精神世界にいる人以外は、ジト見し続け、無言の圧力を了子に与え続けた。もう了子は奏が死んだ時のようなことは絶対にやらないことをもう一度誓わされた。

 

 

 その間にも精神世界は話が進む。

 奏が心を落ち着かせるために軽く歩みを進めて、真ん中に差し掛かった時、そいつらが現れた。

 

 ピコっピコっ

 

『……そんな所まで再現されんのかよ!!』

 

 オレンジの夕日に照らされて、奏の目の前には大量のノイズが現れた。

 

 奏は聞こえるはずのない悲鳴が聞こえる気がする。翼の苦悩する声、流が泣きついてきた時の声、小さな女の子の命の灯火が消えそうな音。様々な音が奏の耳を通り過ぎ、過去の記憶を想起させる。

 

 そんな状況をクリスは見ていたし、これが彼女のトラウマである事もなんとなく分かる。ならばこそ、自分が対処しようと武器を構える。

 

『動けるか? 天羽。もし動けないなら後ろに下がってろ』

 

 前方にいるライブ会場を埋め尽くす程のノイズは、一年前ならクリスも辛かっただろう。だが、今のクリスならば、ただ攻撃をばら撒くだけでいい。それだけでノイズはすべて消し飛ばすことが出来る。

 腰のギアや肩や手に持つギアを大型展開し、いつでも放てるようにする。

 

『……いい。あたしがやる』

 

 奏はLAST∞METEORを放つ事にしたのか、槍の穂先を回転させていき、怒りに任せてそれを放とうとした。

 その時ふと思った。

 

 心象風景ならば何故誰もいない? この場所でこの時間帯でノイズがいるのならば、何故死にゆく人々という舞台装置が居ないのだろうか。何故自分も流も翼も居ないのだろうか。

 

 奏は殲滅する前に一つだけ試してみたくなった。穂先の回転を止めて、槍を地面に突き刺して一言。

 

『ノイズ達、整列!!』

 

 如何にもノイズっぽい感じに動いていたノイズ達は、奏の命令に従って、綺麗に整列し始めた。大型も小型もごちゃごちゃだったので、アイロン手ノイズが交差した時にぶつかって、コケたりしていて、最近よく見るノイズの雰囲気を醸し出している。

 

『えぇ……』

 

『ノイズは流の言うことを聞くだろ? 流が飼っているノイズは、ある程度ならほかの人の命令を聞くからな』

 

 ノイズは流、次に霊体の二人、次に装者とキャロル達とOTONAの順に命令権限が強く、ある程度の命令なら杖なしでも、統一言語なしでも聞いてくれる。

 奏は自分の死んだ悲劇の惨状が起きた場所で、ノイズが綺麗に整列してこちらを見上げている。その事に色々と耐えられなくなったのか爆笑し、少ししてから吹っ切れた顔の奏がそこにはいた。

 

『ここはハズレだったみたいだから、別のところに行こう』

 

『……わかった。天羽がいいのなら』

 

 奏は自分の握る槍を一瞥してから、その場から踵を返した。

 

 

 **********

 

 

『次はあたしが開けるわ。天羽が開けるとろくなことにならねえ』

 

 クリスが少し歩いて吟味した扉の前で奏にそう言う。

 先ほど出てきた扉は、入る前はただの真っ白な扉だったのに、今では白と黄色のカラーリングの配色に変わっている。

 二人や外部の人達はまるでゲームのようだと思った。

 

『本当に大丈夫か? ここには流は居ないから、鬱状態になっても抱きしめてもらえないぞ?』

 

『う、うっせえ! 大丈夫だから行くぞ!』

 

 クリスは流の記憶で出来上がった奏と言い合うのは分が悪いことを悟り、話を切り上げて、扉を開けた。

 

 そこは小汚いコンクリートの建物だった。奏には見覚えがなく、クリスはなんとなく嫌な予感がしてくる。手足が冷え、力が入らず、少しずつ体が震えてくる。

 

『響みたいに繋ぐことに特化した手じゃねえけど、手を繋いでやることくらいは出来る』

 

『……頼む』

 

 奏は槍を腕のギアに戻して、クリスと手を繋ぐ。建物内を進んでいった先には、銀髪のピンクの服を着た幼い少女がいた。

 

『……はぁー、はぁーッ!』

 

 クリスはその場で蹲り、必死に吐かないように手で口を教えている。

 幼い少女はクリスであり、着ているピンクの服はボロボロになっていて、変な汚れが服の下の部分に大量に付着している。幼いクリスは部屋の端っこで耳を塞ぎ、目を閉じて、必死に外界と自分を遮断している。

 

 先ほどとは違い、部屋の外からは暴力の音や現代兵器を使った戦闘音なんかも聞こえる。幼い少年少女の苦痛に歪む悲鳴も聞こえる。

 

『……了子ッ! 一度映像を切れ!』

 

「わかったわ。でも完全には切らないわよ? 私だけは何かがあった時のために監視するわ」

 

 メディカルルームで監視をしていた了子は奏の声にすぐに反応して、部屋についているディスプレイに見えていた映像と音声を切った。今唯一精神世界を見えているのは、了子の手元にある端末だけだ。

 

「今のってクリス先輩デスよね?」

 

「多分バルベルデ」

 

 了子は内部とのマイクも切り、まともではない環境を見てしまって、正気が削られている少女達に声をかける。

 

「今のは多分クリスの幼い頃、捕虜として捕まっていた時の記憶ね。なんで流の潜在意識の世界にあるのかは分からないけど、クリスはもうあの過去とは決別を終えているわ。変に哀れんだり、励まそうとしたら、私は貴方達を許さない」

 

 そしてこの事実を皆が知ってしまう原因を作ってしまった流は、自分のことをまた責め立ててしまうだろう。

 了子は何故クリスの幼い頃の世界が流の中にあるのか、イマイチ分からない。推測や憶測を建てられても、確信を得ることは出来ない。

 

 

 

 見た目上は冷静さを取り戻したように見えるクリスは、その場から立ち上がった。

 

『天羽、部屋から出ていてくれ』

 

『何をする気だ? ここは一応流の精神で構成された世界なんだ。勝手はやめろ』

 

『流なら許してくれるさ』

 

 クリスはギアを完全展開して、奏にも威嚇している。そんなクリスに対して、流を出して止めてみたが駄目だった。これ以上は奏は言えることは無かった。

 流は前に言っていた。

 

『救えたのに見捨てた』

 

 流は無茶をすれば、クリスが捕虜になることもなく、奏が死ぬこともなく、セレナが死ぬこともなく、響が一切迫害されなかった世界を作ることが出来た可能性もあると言っていた。

 その時はちょうど三年目の奏の命日だった事もあり、流はその日になると、どうしても色々考えて弱ってしまう。普段は言わないことも流は口にする。

 

 奏も今に比べて、フィーネと戦った時の流と比べると、確かに今の方が格段に強くなっているが、戦う姿は昔の方が好きだった。奏は絶対に口にしないことの一つだ

 

 流は見捨てたからこそ、この四人の本当の願いは拒まない。流がこの実験に付き合うのを奏が止めなかったのは、自分のお願いなら通ってしまうからだ。流がクリスとイチャついていてイラつくが、止めないのは、奏はクリスの過去を流から流れ込んでくるアニメの記憶として知っているからだ。

 

 例えシュミレーションのように作り出された、自分の過去を破壊しようとしていても、奏にも止める権利はない。

 

 

 

 だが、この場面を見ている人はもう一人いた。その人はこの世で最も自由で空気を読まず、人生経験が豊富な出来る女。

 

「なるほど。クリスは流を信じられないみたいね。まあ、いいんじゃない? それでも。やりたいなら勝手にやれば」

 

『……あ?』

 

 櫻井了子は周りに聞こえない声量で、クリスに対して投げやりに言葉を言い放つ。クリスは乙女がしてはいけないキレ顔でそれに答えた。

 

「いい、流の精神世界にクリスのトラウマがあるのは、流はそれを受け入れたいと思っているからじゃないの? クリスの全てを受け入れるために、クリスのトラウマから楽しいこと、全てを知りたいと思っているんじゃないの?」

 

 了子の痛みこそが愛という考えを流は否定しない。もちろん女の子達に対してそれをやるのは否定的だが、自分に対する痛みなら受け入れる。

 それと同じように、流は好きな相手の全てを、トラウマから何から何まで受け入れるために、何らかの方法で自分の精神に受け付けて、自らを痛めつけているのかもしれない。

 

 そんな事を嘘八割でクリスに言い続ける。

 

(実際はどうかなんてわからないのだけどね。だって、流は私の息子だけど、狂い過ぎてて何を考えているのか分からないもの。それに流が上位存在に呪いをかけられているのだから、思考ルーチンがおかしい可能性もある)

 

 弦十郎は理解できる了子だが、流を理解するのは無理なので、流の考えを自分なりにアレンジして、クリスを元気づけた。了子からしたら、弦十郎と流の次に大切な存在はクリスなのだ。

 

『流がこの過去も本当に受け入れる気なのか?』

 

『そうじゃなきゃ、流の頭の中にこんな世界は作られねえよ』

 

『……流が寝取られの性癖がある可能性はないか?』

 

 クリスは何をトチ狂ったのか、奏に流の性癖、それもやばい感じのものを聞いてくる。

 少し過激な雑誌にそんな物もあると書いてあったので、クリスは逆に心配になった。自分が酷いことをされているのに興奮していたら、流石にクリスも一歩引いてしまう。

 

『それはない。流なんて独占欲の塊だろ』

 

 子供の頃の流の性癖を構成する時に、意図的に自分のキャラに近い本を流の本棚に混ぜたりした乙女が口にする。

 

『わかった。でも、一つだけやりたいことがあるから、先に出ていてくれないか?』

 

 クリスは展開していたギアを解除して、いつものシンフォギアの姿に戻った。

 

『無茶じゃないんだな?』

 

『ああ。それは保証する』

 

 奏は片手をあげて、その部屋から出ていった。

 

 クリスは心を保つために、外界と遮断している幼いクリスの元に行き、覆うように抱きしめる。驚いて顔を上げた幼いクリスを優しく抱きしめながら撫で、過去の自分に言葉を残す。

 

『今はとっても辛いだろ? あたしもそうだった。だけどな、未来はきっと幸せで満ち溢れている。無茶をし続ける男かもしれない。利用するだけして捨てる女かもしれない。話し合おうと言うくせに拳を握って殴ってくる女かもしれない。常在戦場とか言ってお堅い女かもしれない。それ以外の人があたしを救ってくれても、きっとあたしは幸せに、その場所に安心して幸福に暮らせるようになる。だから、生きるのを諦めるな! あたしならきっと出来る』

 

 幼いクリスの頬にクリスは軽くキスをして、強く抱きしめたあと、その場をあとにした。

 

 

 **********

 

 

『もういいのか?』

 

『沢山扉があるんだから、一つの扉で時間も掛けてられないしな』

 

『……そうだな。次行こう』

 

 奏とクリスが扉から出たのを確認してから、了子はメディカルルームの映像と音声を回復させた。

 

『お前らもすまねえな。ちっとばかしブルーになっちまったけど、あたしはもう大丈夫だから!』

 

 クリスは改めて過去の不幸を恨まず、今の幸福に喜ぶことにした。きっと恨んでいたら、今の幸福すらも霞んでしまう。

 

 

 その後もどんどん扉を開けていった。

 響が迫害されているシーン。奏が適合実験をしているシーン。セレナがアルビノネフィリムを止めて死んだ場所。()()()()()()()()()()()()()()。イザークが火あぶりにされるシーンなどなどなど。それ以外にも、流はみんなと行った遊園地やふらわーなどの場所もあった。

 

 外部で見ている人も色々苦悩する場面や、この世界では発生しなかったシーンなどもあり、色々と大変だった。

 

 しかし、扉を開ける枚数が増えるたびに、奏は疑問が強くなっていった。

 

(流の潜在意識の世界なのに、流自身がいない)

 

 他人の記憶が混在していたが、それでも流と一緒に行った場所もしっかりあった。

 

 例えば真新しい遊園地。奏と翼と流で行って、その日は翼がまだビビりだったので、遊園地程度で寝れなくなり、三人で川の字で寝た。その思い出もあったのだが、登場したキャストは幼い奏と翼だけだった。

 例えばヴェネツィア。霊体の奏とセレナ、それに流と最近行った場所。その記憶にも流はいなかった。

 

 まず潜在意識のはずなのに、最近の記憶が多すぎるし、流が関わっていないものも多すぎる。

 

 

 そしてセレナの一言である疑問が表面化した。絶対になくてはならないものがないのだ。

 

『流さんって、前世の記憶はないですけど、潜在意識の世界にも、その記憶はないんですね』

 

 この言葉である。

 

 セレナに比べて奏は流の記憶の共有を多く受けている。だからこそ、流がこの世界の転生してすぐの記憶もある。

 流は赤ちゃんの時から、体に見合わない意識を持っていて、子供の頃から将来が有利になるように動いていた。

 

 ということは、流という人格を形成する潜在意識と、もしくは思い出がどこかにあるはずなのだ。しかし生まれた時の流には前世の記憶はなく、潜在的な記憶もない。ならば、流が流としての人格を始めから保有しているのはおかしい。

 だが、この潜在意識を観測できるようにした世界には、前世に関わる記憶は一切ない。

 

 そこまで奏は考えて、ある事を思い出した。

 

 流は生まれた時、分娩室で取り上げられたという記憶を、記憶が消える前の流は覚えていた。流は思い出すことは出来なかったけど、奏はその記憶も共有している。だけどおかしいのだ。流は母親のお腹から生まれたわけではなく、培養槽から生まれたのだから、そんな記憶があるわけがない。

 

(植え付けられた記憶があったって事か。でも、それって……)

 

 そこまで奏は考えて、流はどんな成り立ちがあっても流には変わりないのだから、これ以上はやめようと考えを放棄した。

 

 沢山あった扉もどんどん開けられて、はじめの場所から見える扉はひと通り開けた。奥に進めばまだまだあるが、ウェルがデータは取れたと言っているので、そこから二人は離脱しようとした。

 クリスのエピソードなら赤、奏なら黄色、響ならオレンジといった感じに、白亜な場所にカラフルな扉が並んでいる中、いつの間にか金色と水色の扉、デュランダルカラーの扉が現れていた。

 

「扉」

 

「デュランダルみたいな扉デスね」

 

 きりしらの言葉で内部の二人も気がついた。

 

『どうする奏』

 

『ラストに開けるか』

 

 色々なトラウマを互いに刺激され、死者と生者であるが、その間には確かな絆が生まれていた。

 その扉をクリスが開けようとしたが、鍵が閉まっているのか開くことが出来ない。

 

「お前達もう少し近づけ。陣が張ってあるから、俺が解析してやる……わかんない」

 

 扉にはペンタクルに星図が描かれ、そこ上から更に何かしらの術式が書き込まれていた。この中で一番錬金術に詳しいキャロルが大口を叩くが、キャロルは分からなかった。解析が進むうちに、少しずつ涙目になっていったが、錬金術じゃないのでしょうがないだろう。

 

「キャロル落ち込まないの。説明して?」

 

「小日向……これは錬金術じゃない。了子はわかるか?」

 

「どれどれ。この私にわからない異端技術なんて……あれ? これ記述古くない? なんで私が知っている言葉よりも古い言葉が使われているわけ? 先史文明期後期で古代文字って呼ばれていたやつよこれ」

 

 どうやら了子も分からないようだ。しかもフィーネの時代よりも更に前の言葉のようだ。

 

『開かねえなら、無理やり……開くじゃん』

 

 頭のいい人達が軒並み敗れ落ち込んでいる中、シンフォギアのパワーで多少無理やり開けようとした奏は、普通にドアノブを回すことが出来た。

 

『はあ? いやいや、メチャクチャ硬かったからな?』

 

『……見てればわかったよ。じゃあ行こうか』

 

 奏はクリスに問いただしている時、ちょうど()()()()が見えた。いつの間にか付いていた指輪が少しだけ煌めいているのが分かり、何故自分が開けられたのかを理解した。

 本来なら左手薬指に指輪は無かったのだが、奏は頑張ったらそちらの指に移すことが出来た。

 

 指輪は流が父親に貰ったのに、それ記憶を燃やす前から思い出すことが出来なかった。そしていつの間にかこの指輪がソロモンの指輪である事を流は知っていた。

 もしかしたら扉の向こうにいるかもしらない何者かが、流に教えたのかもしれない。

 

 二人が扉に入ると、扉は強制的に閉まり、扉自体が消えた。

 

 そこは不思議な空間だった。バビロニアの宝物庫のような場所なのだが、星が煌めいていて、まるで宇宙空間のようだ。

 二人は透明な地面の上に立っていて、特にこれといって何も無い。

 

『何も無い?』

 

『なんだここは?』

 

 二人が疑問の声をあげて、外部の人達も全員がその場所の綺麗な、そして何も無い果てしない闇に対する恐怖を抱いた。

 

『何故天羽奏、君が流の精神世界に入ってきている。君は止めるべき立場の人間だろう。それに盲目なる依存愛を抱く銀髪の少女、雪音クリスはとうとう好きな相手の中にまで入ってきたか』

 

『誰だ!』

 

 声の方向にクリスが拳銃を向け、奏は槍を向けた。

 

 そこには古代ローマなどで着用されたトーガに身を包み、金銀宝石のアクセサリーをふんだんに付けた男。髪は紫混じりの黒に、腰にまで伸びたその髪、前髪は顔の()()でピンによって止められている。

 その男の顔を一言で表すなら、『ただの美形』。

 

『初めまして、私はソロモン。君達にお仕置きをする存在だよ』

 

 もし流がシンフォギアAXZまでの記憶があり、奏がその記憶を共有していれば、真っ先にこう叫んだだろう。

 

『なんでアダム・ヴァイスハウプトが流の中にいるんだ!』

 

 髪型などが左右対称であるが、確かにソロモンと名乗った男の顔は、パヴァリア光明結社の統制局長、アダム・ヴァイスハウプトと瓜二つだった。




流は認識出来なかった流の中にいるソロモンの容姿がやっと書けた。

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