戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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ここで注意事項。AXZはオリジナル要素多めです。そしてフィーネとキャロルはある程度違和感がない程度に自重します。しないと終わってしまうので。
ですので、フィーネがいるならこうするだろ! ってのがあるかもしれませんが、もし違和感があればどこかでご報告ください。多分修正しますので。


第4期 シンフォギアAXZ
#75『アルカノイズの軍事転用』


「……ふむふむ、立花さんもやれば出来るじゃない。しっかり自分で課題をやったようですね。これなら夏休みの宿題も期待できそうです」

 

 夏休み後半のある日、一学期の課題を提出しに、響と未来、調と切歌は学校に来ていた。クリスは既に提出を終えていて、一人の家を満喫している。

 調達の希望で年齢に少し無理があるが、響達と同じクラスになっているので、こぞって金髪の先生に課題を提出した。最後に身構えるように響の課題を先生は受け取っていたが、内容を見ると満遍の笑みで褒め始めた。特に急いで書いたような古代文字でない所が良い。

 

「は、はい。頑張ります!」

 

「それでは夏休み明けにまた会いましょう」

 

「「「「ありがとうございました」」」」

 

 1学期の中間で良い点数を取り、期末テストを受けなくて不安だったが、響はしっかり進歩している事に、先生はスキップをしながら教務室へと戻って行った。

 

「響さんってそんなに酷かったの?」

 

「そ、そんなことは無いと思うよ? ちょっと人助けで授業に遅れたり、テストで赤点取っちゃったりしてた程度だよ?」

 

「それって普通にヤバい生徒デスよね?」

 

「今は未来に先輩、クリスちゃんがいるから大丈夫だよ。さて、提出も終わったし、約束通りショッピングに行こう!」

 

 緒川に勉強を教えて貰った調に、翼と八紘に教えこまれた切歌は、先生の態度を見てあからさまに響をジト見している。響はこれからの楽しい日程の話に変えて、そんな雰囲気を吹き飛ばす気のようだ。

 

「本当に宿題は終わらせられるんだよね?」

 

「だって、まだ二週間以上あるんだよ? 難しい物を先に終わらせて、あと半分だけだから、大丈夫だって」

 

「それならいいんだけど」

 

 未来は襲撃者が来たら、そんな余裕はなくなるのではないか? と思っているが、響の笑顔を曇らせたくないので口を噤む。

 

 学校から出て、学生がよくウインドウショッピングをする場所に来た。切歌が良さそうな緑のドレスを見つけたが、結構な値段がしているがそれでも買っていた。

 

「そういえば装者のお給金は結構驚いた」

 

「そうデスよね。なんか桁が違ったデスよ」

 

「私も神獣鏡で響を救った後に、口座番号を提出してって言われて渡したら、びっくりする額が入ってたな」

 

「装者ってお給料貰えるんだもんね」

 

 装者達はお金の為ではなく、平和のためやボランティアでやっているようなものだが、給料自体は結構出ている。それもかなりの額。

 流はそれを超える額を貰っているが、それは道具(聖遺物)の必要のない対ノイズ戦力としてであり、バビロニアの宝物庫の門番としてでもある。前に比べて振り込まれる量が増えていたが、了子と荒稼ぎしているので、その変化に流は気がついていない。

 

「デスけど、私達はあんまり使えないんデスよね」

 

「そうなの? 私も貯めてはいるけど。響はご飯に結構使ってるよね?」

 

「うん。ご飯に使ってるよ」

 

「マリアが何かあった時のために貯金しろって」

 

「口座も別けて定期預金してるデス」

 

 現状流という金蔓とマリアのいうトップアイドルがいるので、お金に困ることなんてほぼ無い。しかしマリアはF.I.S.の時の、あのお金のなさを思い出し、気持ちを引き締めている。

 

「へぇー、凄いね。あれ? そういえば学費ってどうなってるの? 私は()()()()が払ってくれてるけど、もしかして自分で?」

 

 響は奨学金ではなく、普通にサラリーマンしている父親が払っている。そんな立花洸は特に含むところはなく、政治家ではないので腹の探り合いのような、ギスギスした感じはないので、娘同士の繋がりによって仲を得た八紘とは今後飲み友達にまで発展する。そのせいで色々立花洸は忙しくなるが、本編で語られることはないだろう。

 

「流が払ってる」

 

「マリアが払おうとしたら、既に払われてたんデスよね」

 

「やっぱり先輩か……あっ! 未来に似合いそうな服発見! さあさあ、試着をしに行こう!」

 

「ちょっと待って。引っぱらなくても」

 

「服は急がないと逃げちゃうんだよ」

 

 響に引っ張られて入ったお店で、未来と響はお揃いで買った。そのあと街中を歩いていると、響達の横で車が急に止まった。

 仲から扉が開くと、運転席にはマリアがいた。

 

「緊急招集よ。みんな乗って!」

 

「わかりました!」

 

 いの一番に反応した響が車に乗りこんでいる時、未来はこう思った。夏休みの宿題、終わらせられるのかな? と。

 

 

 **********

 

 

 響達がショッピングをしている時、流は鎌倉に来ていた。

 ガリィから早く街に行けるようにしてくれと言われたので、交渉にしに来たのだ。

 オートスコアラーは日本で派手に暴れてしまったため、許可されている行動範囲が狭い。それはキャロルも同じなのだが、キャロルは対錬金術特別顧問になっているので、同行者がいれば国外などを除き動くことが出来る。

 

「駄目だ」

 

 訃堂は一言だけそう言った。

 

「やっぱり?」

 

「貴様も分かっているであろう。異国の異端技行使者が、この日の本に入り込み、命を弄びながら暴れ回ったのだ。その本人は貴様の願い通り認めてやった。だが、機械人形は所詮戦闘のために作られた兵器、物だ。認められるわけがなかろう」

 

「そうだよな。だが、一つだけ訂正しておけ。オートスコアラーは人形だが、あれもれっきとした人間だ」

 

 流はこれだけは認められない。死者蘇生した後の人間も、人為的に作られた人間だし、エルフナインも同じようなものだ。その人達が人間として呼ばれないのは我慢がならない。流の体も作られたものだが、自分が人間だろうが、非人間だろうがどうでもいいので特に考えていない。

 

「貴様は機械人形を人間と申すか」

 

「ああ」

 

「そうか。ならばあ奴らがその権利を得れるよう励め」

 

 訃堂が続けて話そうとした時、障子の向こうから人が話しかけてきた。訃堂が許可を出すと中に入ってきて、すぐに口を開いた。

 

「どうした」

 

「S.O.N.G.がこれより異端技術に対する対抗戦力として、バルベルデへ向かうそうです」

 

「……流、我々が呼び出したらS.O.N.G.よりも優先して戻って参れ。それまでは貴様の好きにすると良い」

 

「助けて欲しかったら頭を下げろ。まずお前らの戦力で先になんとかしろよ? 俺を殺して翼を手に入れようとするアホ共だっているんだから、そいつらを使ってから駄目なら連絡しろ。日本が無くなるのは俺も困るし」

 

 流はそれだけ言って、宝物庫へのゲートを開いて中に入った。最近仕事を押し付けられることが多かったので、少しだけ反発しておいた。

 

 

「やっぱり駄目だったか」

 

『まあ、しょうがねえよ。訃堂が言っている事は今回は全て正しいからな。キャロル達は日本に被害を出しちまったのに、捕まること無く生活出来てるんだから』

 

『マリア姉さんも一歩間違ってたら、どこかの傀儡になってたんですよね。ホント良かった』

 

「……そうだけどさ」

 

 流はグチグチ文句を言ったあと、すぐにS.O.N.G.へとゲートを開いて向かった。

 

 

 **********

 

 

 流がS.O.N.G.について少し経つと、響達とクリス、キャロル達、翼以外の全員が集結した。翼は今雑誌のインタビューを受けているとかで、少ししたらこちらに到着するとの事。

 

「今来れる奴はみんな揃ったな。了子くん」

 

「はいは〜い。解説から開発までなんでも出来る女の出番ね」

 

「いいから早くやれ」

 

 了子がカッコつけている横から、クリスが小突いて、話を急かす。

 

「もうクリスは本当に余裕が無いんだから。これから話すことは特にクリスはダメージを受けるかもしれないから、流にでも捕まってなさい。流」

 

 イマイチ意味がわからないが、流は了子に言われた通り、クリスを抱き上げて足の間において座らせた。周りの視線が結構強くなるがいつもの事だ。まだ外ではないだけマシだろう。

 

「緒川が率いている調査部を私が使って、色々調べたのよ。フロンティアをパヴァリア光明結社のサンジェルマン、カリオストロ、プレラーティの幹部三人が襲撃してきた。あれは国連の管理下に置かれていることがわかっているはずなのにね。舞台の裏側で動いてた奴らが表に出てきたなら、何かしらの行動をし始めるはずなのよ」

 

 了子の言葉に続くようにキャロルが立ち上がった。今は錬金術士の格好をしている。

 

「パヴァリアのあの三人は俺がS.O.N.G.に降伏したことは知っている。あいつらとは少し取引をしていた関係上あいつらの目的が多少はわかる……まあ、あの時の俺は他人の思想とかどうでもよかったから、殆ど知らないに等しいんだけどな」

 

「駄目じゃねえか!」

 

「しょうがないだろ、あの時は世界の分解以外どうでもよかったんだから! で、あいつらはまずやる事はこれを完成させる事だろうな。俺は天才だったから、数百年で完成させた。あいつらはフロンティアから情報を盗み取ったからすぐにでも完成するはずだ」

 

 キャロルが錬金術陣の中に手を突っ込み、引っ張り出したのは、キャロルくらいの大きさのある琴だった。それはキャロルが大人形態になったり、本気を出す時に使うもの。

 

「ダウルダヴラ……ファウストローブか!」

 

「防人が言う通りだ。ファウストローブとは錬金術版のシンフォギアみたいなもので、分野の錬金術を極める程度に力がなくては完成させられない。何故パヴァリアが世界の分解に手伝ったかわかるやつはいるか?」

 

 キャロルは装者達に質問してみた。

 

「……敵の目的が世界の分解だから?」

 

「違う。罰としてスーパーのトマトを夕飯に出してもらう」

 

「それは横暴よ!」

 

「分解した時の副産物が欲しかったからですかね?」

 

 キャロルの問いにマリアが間違い、罰を設定された。それのせいで皆が無謀な突っ込みができなくなっていると、装者に混じっていたエルフナインが口を開いた。

 

「……それは?」

 

「キャロルの分解は分解をするだけが目的で、その分解は世界構造の理解でした。なら、パヴァリア光明結社は世界の構造を知り、ミクロコスモスを理解して、それをマクロである人間の作り出したファウストローブに転用する……ですよね?」

 

 その解答を言い終わると、了子がエルフナインに近付いて、頭を優しく撫でてあげた。そのエルフナインを見て、キャロルは少しだけ笑みを浮かべる。

 

「正解だ。しっかり復習はしているようだな。錬金術は割と大雑把なんだ。大を知れば小も知れる。小を知れば大を知れる。そんな理論があるんだが、これはある意味真理であり、されどこれは口に出すのは簡単だが、真理にたどり着くには膨大な時間が必要だ」

 

「……キャロルちゃん? もう少し簡単に説明出来ない?」

 

「言ってる事が」

 

「全くわからないデース」

 

 マリアや翼も含めて、錬金術の考えなんて齧っていないので、皆が頭に疑問符を浮かべている。装者で唯一例外なのが、ガリィに錬金術の基礎を学んだクリスだった。

 

「要は1+1が分かれば、全ての数式の答えがわかると言ってるようなもんだ。全てを知ってる奴なら、1+1も難しい計算も同じだってことだろ?」

 

「ああ、大体はそういうことだ。フロンティアはこの星の外から来た物だ。きっと定住する星を決める時に、世界構造を解析して、この地球に住み着いたんだろう。俺の計画で世界構造をデータを手に入れられないと見切りをつけたあいつらは、フロンティアを強襲して、無理やりデータを引っこ抜いたんだろう」

 

 クリスの例えで何となく皆が理解した。キャロルはチフォージュ・シャトーの建造協力の代わりに、世界構造の分解解析が出来たら、そのデータを自動で送るように設定していたらしい。なので、そのデータを手に入れるのが目的の一つだと言う。

 

「……えっと、この世界の構造を知れば、キャロルちゃんみたいにファウストローブが作れるってこと?」

 

「ああ。あいつらはファウストローブ自体に何かしらの効果を付与するために、そんな面倒な手順を踏んでいるんだろう。特にサンジェルマンは私以上の錬金術の知識があるはずだから、作れていてもおかしくはない」

 

 キャロルは直接サンジェルマンの錬金術は見たことがないが、テレポートを座標固定なしで使っているのを見たことがあるので、それだけでも相当な実力があることがわかる。

 キャロルは座標のズレや空間に食い込むことを避けるために、拠点への移動にしか使ったことがない。

 

「その情報の何処にあたしが傷つくんだよ」

 

 流に後ろから抱きしめられて満更でもないクリスだが、錬金術の考え程度で、傷つくはずがない。

 

「今のは敵が行うであろう当面の目的よ。クリスが傷つくのはこれ」

 

 今度は画面にある映像が表示された。

 

「アルカノイズ!? でも、後ろには軍人さんが居るってことは、戦おうとしているの? 無理だよ!」

 

「響ちゃんの考えは間違ってるわ。あの兵士達の味方をしているのが、あのアルカノイズなの。しかも、この国は」

 

 一般の兵士の味方をするアルカノイズなど聞いたことがない。映像では確かに兵士を攻撃しておらず、ほかの人を襲っている。アルカノイズはソロモンの杖で命令されたような動きをしている。

 そして次に映し出されたのはある国の国旗だった。

 

「バルベルデじゃねえか!?」

 

 クリスが両親を失い、捕虜にされて数年いた場所だ。僅かに震えだしたクリスを流は強く抱きしめる。クリスが怖がる時は優しく抱きしめるのではなく、居ることが分かるように強く抱いた方が取り乱しが少なく済む。

 

「了子くん説明ご苦労。軍事国家バルベルデにて、アルカノイズを軍事戦力として使用している事が分かった。これを受けて、国連はバルベルデに警告したところ、その使者はアルカノイズによって殺された。異端技術を行使する相手である事がわかったので、我々S.O.N.G.が武力干渉をする事になった。これからすぐに現地へ向かう。服やその他の準備はこちらで済ませてあるので、すぐに飛行機で飛んでくれ」

 

「俺はまだこの国を出る許可を得ていないから、現地の錬金術に関するサポートはエルフナインがする事になる。その代わり解析施設は一式錬金術の空間にいれてあるから、現地でエルフナインが発動させれば、すぐにでも仮説拠点が出来るようにしてある」

 

「僕がキャロルの分まで頑張ります!」

 

 装者一同、クリス以外は返事をして、キャロルとエルフナインに返事をしてから指令室から出ていった。流とクリスはまだそこにいる。

 

「空港には俺がクリスを連れていくから。あと潜水艦で行くんじゃないんだな」

 

「今は日本にはパヴァリアの人間がいるかもしれんから、この拠点は動かせねえんだ。キャロルくんのおかげで施設の移動はスムーズに進みそうだがな」

 

「なるほどね、国防か。じゃあ、また後で」

 

「ああ、頼む」

 

 クリスを抱き上げて、流は指令室から出ていった。

 

 

 **********

 

 

「やっぱり怖いか?」

 

「……クソッタレな思い出ばかりが蘇るんだ。流にもあまりバルベルデの時のこと話してないよな?」

 

「そうだね。俺もあんまり知らないし」

 

 了子の研究室の一角にクリスを連れ込み、クリスに温かいものを出してから、ゆっくりと話を聞い始める。

 

「あたしのママとパパは人道支援のために、色んな国に行ってたんだ。あたしはそれを誇らしく思ってたし、そういう大人になりたいとも思ってた。だけど、パパもママは突然死んだ」

 

「……爆弾だっけ?」

 

「そうだ。テロリスト達が忍ばせた爆弾を受けて、グチャグチャになったみたい。悲しいし苦しいけど、今はなんとか耐えられる。現地に行ったらわかんねえけどな。それで、その時私のお世話係の人が居たんだよ」

 

「なんて名前?」

 

「ソーニャって言うお姉ちゃんなんだけど、その人が荷物を運んできたんだ。もちろんソーニャは爆弾だってことは知らなかったし、今思えば入口の奴らが買収されてたんだと思う。ソーニャが運んだ爆弾が爆発して、その時に私は庇われた。あたしはパパとママが死んじまって、助けられたのに言っちまったんだ『ソーニャのせいだ』って」

 

 流はクリスの背中をゆっくり擦りながら、心に溜め込んでいる思いを口から出させる。

 

「子供の時なんだ。しょうがないさ」

 

「でも、きっとソーニャはそれを気にしている。前に流が流の両親の事を話してくれたことがあったよな?」

 

 その言葉を聞いて、そんな記憶はないとすぐにわかった。きっと両親関係の記憶は既に消えているのだろう。流が思い出せる両親のことは、父親が胸が好きすぎることくらいだ。

 

「あったっけか?」

 

「あったんだ。その時にあたしもいろいろ思い出して、了子に言って調べてもらったんだよ。ソーニャの事」

 

「無事だった?」

 

 クリスは涙が流れるのを無視して、口を懺悔するように開いていく。流はその涙も優しく受け止める。もう流は悲しみで涙を流さないから、大事にぬぐい取る。

 

「ソーニャな。そこまで自分は裕福じゃないくせに、人道支援、パパとママがやっていた事を引き継いでやってくれているみたいなんだ。あたしはソーニャのせいにして、ずっと塞ぎ込んでいたのに」

 

「でも、クリスは何だかんだ辛いことがあっただろ? 言いっこなしだよ」

 

「……あたしは一度でいいから、拒絶されてもいいから、ソーニャに謝りたいと思ってた。だけど、バルベルデでまた戦乱が起きてるって聞いて、行きたくないって思ったんだ。あたし達は戦える力があるから、戦わないといけないのに!……痛っ! え、なんだよいきなり!?」

 

 流は一通り聞いたあと、クリスの頭をチョップした。結構手加減なしだったのに、クリスは涙目ながら、何故か嬉しそうだ。

 

「前に調や切歌言ったし、クリスにも言ったけど、戦いたいなら戦え。戦いたくないなら、俺が守ってやるし、その人の分まで俺が働くから、無理して働くのはやめろ。無理して戦うな。そう言ったのは覚えてるか?」

 

「覚えてるけど! やりたくないからやらないじゃダメだろ!」

 

「ならやれ。クリスがどうしても無理だっていうなら、俺が守ってやるし、救ってやる。ソーニャに会って謝りたいなら行け。もし一人で行けないならついて行ってやるし、恐怖で足が動かないなら、俺がクリスを運んでやる」

 

 流はクリスを抱き上げて、お姫様抱っこする。その後、流が暴走した時につけたクリスの頬の傷を撫でる。流がクリスに付けてしまった傷の一つだ。

 

「クリスにはこれ以上傷ついて欲しくない。皆だってそうだが、()()()()()()()()ではクリスが一番だ。まあ、俺は元気なクリスの方が好きだけどね? いいよ、ニートクリスでも。俺が一生養ってやるし」

 

 撫でていた頬を抓って、クリスをあえて挑発する。その後クリスは少しだけ目をつぶったあと、流を蹴り飛ばして抱っこから開放される。

 

「……はっ! ニートなんかになるか! いいさ、やってやる。バルベルデの戦いを終わらせて、ソーニャに謝って、流が今抓ったことを後から土下座させてやるからな! 待ってろ!」

 

 クリスはいつもの調子でそう言い放って、部屋から出ていった。

 

 なお、皆は既に空港にいて、流達は遅れているので宝物庫テレポートをする必要がある。すぐにクリスは顔を真っ赤にして戻ってきた。


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