戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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多分今回で3.5は終わりかな? 特にエピソードがなかったら4期に行くと思います。
4期はルートをショトカなどではなく、確実に話にオリジナル要素が増えます。


#74『課題完了!』

「私の息子が大変申し訳ありませんでした」

 

「本当にすみませんでした」

 

「大丈夫ですよ。何故か全く痛くありませんし」

 

 熱気すらも感じるほど弦十郎の謝罪に立花父は少しだけたじろいだ。

 

 

 **********

 

 

 奏が憑依して、流の体で響の父親である立花(あきら)を出会い頭に殴った。

 奏はどうやらアニメの立花父とここにいるこの人を混同させてしまったらしい。

 

 アニメの立花父は家族が大変な時にDVをして、最終的には蒸発し、響のおかげで元鞘に戻った。

 この立花父はDVもしていないし、蒸発もしてない。そのおかげで響はそこまでメンタルがボコボコにならず、アニメでは稀に口にしていた「私、呪われてるかも」という言葉が全くなかった。父親から受け継いだ「平気、へっちゃら」しか使っていない。

 

 流のアニメシンフォギアの知識は既に消えたが、奏はその知識を流から共有し、まだ保有している。

 その奏は家族の敵を討つために、死ぬまでノイズを殺し続けた。人を助ける喜びを知り、恋もしたが、それでも死んだ後ですらノイズ憎しという想いは変わっていない。流に有用だからこそ、ノイズを黙認しているだけであって、害を及ぼすようになったら、流にノイズを皆殺しにさせる気だ。

 

 そんな彼女だからこそ、家族の窮地から逃げ出し、アニメ3期後半でいきなり父親を始めた洸が許せなかった。人間誰しも間違いを犯すが、いくら自分が傷ついたからといって家族を傷つけ、家族を捨てた人間を奏は許容しない。

 

 その奏は殴ったあと、その許容出来ない人間と姿形は一緒だが、見捨てていない存在を殴りつけてしまったことに、セレナや流の言葉で気が付き、思いっきり落ち込んでいる。

 

 

 洸を殴りつけたあと、すぐに流は勘違いで殴ってしまったとその場で頭を思いっきり下げて謝った。イマイチ要領をつかんでいない洸だったが、流の態度と娘の言い分を尊重して、ひとまず許した。殴られたはずの頬も何故か痛みが消え、腫れもなくなっていたのも、すぐに許せた要因の一つだろう。

 治療した流も効果に驚き、イザークの治癒錬金術はとてつもなく優秀であることがわかった。装者や流はイザーク錬金術が必要な怪我をしていなかったので、今回が初めての使用だった。決して実験台にした訳では無い。

 

 その後洸も連れて流の家に皆で帰り、少しして弦十郎が吹き飛んできた。文字通りベランダに大きな音を響かせて飛んできた。

 そのあとすぐに冒頭のやり取りがあった。

 

 弦十郎は流達を監視しているS.O.N.G.のエージェントから連絡が入り、一般人を殴り飛ばしたと聞くと、権限を了子に一時委任して、高速で飛んできた。

 

「許しますので、何故この子がウチの子と一緒に居たのかを教えてもらえませんか?」

 

 九人の女の子の間に男が一人だけいれば不審にも思うだろう。しかもキャロルやエルフナインはとても幼い容姿をしている。

 

「わかりました。ご説明しましょう。流は立花さんにお茶の用意をしてこい」

 

「はい」

 

 弦十郎も飛んできてその場で頭を下げたので、まだ席にすら座らずのやり取りだった。装者達は弦十郎と立花父が座る場所とは別の席に座り、どんな対応をするのか見守るようだ。

 弦十郎に言われて流はキッチンに来ると、既に調がお茶とお茶菓子の用意をしておいてくれた。

 

「ありがとう」

 

「おさんどんは私の役割でもあるから当然。でも、何でいきなり殴ったの?」

 

「……えーっと、俺が絶対に許せない事をした人に似てて、気がついたら体が! って感じだった」

 

「気をつけてね?」

 

「ああ。それじゃ、持っていくね」

 

 調の用意したものをお盆を持ち、立花父にお茶と茶菓子を出して、弦十郎にも出す。流はとりあえずお茶だけで、弦十郎の近くに座った。

 

「えっとですね。まず風鳴翼をお存じですか?」

 

「……やっぱりあの青髪の子はトップアーティストの風鳴翼さんなんですか? 響が凄い大ファンで、部屋にポスターを貼ったりなんかしてますよ!」

 

「ちょ、お父さんそういうのはやめてって!」

 

 弦十郎が指し示す方には、変装になっていない変装を解いた翼がいて、弦十郎のモーションの後、立花父が見てきた時に一礼した。

 立花父の反応は娘のことを話すのが楽しいのか、少し自慢げに娘紹介を始めて、思いっきり響に怒鳴られた。

 

「それは私も把握しています。そして私の自己紹介を。私は風鳴弦十郎、翼の叔父です。こいつは風鳴流といい、私の息子ですね」

 

「風鳴翼さんの繋がりで一緒にいたという事でしょうか?……待って。響! なんでお前はトップアーティストと友達になっているんだ!」

 

 立花父は納得しそうでしなかった。まず自分の娘は()()()()だと思っているので、世界レベルのアイドルと平然といるのがおかしい。実際は歌いながら戦う少女に変貌しているし、その体は女性的な柔らかさを残して完全に鍛えてられているがそのことを知ることは無い。

 

「リディアンで知り合って、友達になったの。それで師匠には武術を習ってるよ。その兄弟子が流先輩」

 

 響は父親を巻き込まないために、嘘ではないが真実をぼかした言い方をして、関係性を口にした。

 

「あの風鳴翼と学校で友達になって、一緒に街を歩くなんて、響も凄いじゃないか!」

 

「えへへ、でしょ!」

 

 響はみんなの前で褒められたせいか、少しだけ恥ずかしげにしている。そんな中チャイムがなった。

 流が玄関まで行き、扉を開けると、八紘が入ってきた。

 

「……近くを寄ったから来たが、また面倒なことをしたな」

 

「どっち?」

 

 流は今、Dノイズを作成したことと、一般人である立花洸を殴り飛ばしたこと。二つ怒られそうな問題がある。八紘は腕を組んでため息をついてから、Dノイズについて話そうとしたら、見知らぬ男が家の中から覗いているのが見えた。八紘は小声で流に問いかける。

 

「後ろの方は誰だ」

 

「響の父親で俺が出会い頭にぶん殴った人」

 

「……すまぬ、イマイチ聞き取れなかったようだ」

 

「出会い頭にぶん殴った。絶対に許せない人に似てて鞘走った」

 

「……それで中に弦もいるのか」

 

 ベランダから登場した弦十郎の靴は玄関にあり、弦十郎がある程度強く踏み込んでも壊れない靴を履いているので、知っている人なら見ればわかる。流は右足ならともかく、左足はデュランダルと化しているので、そういった靴を履いても簡単に壊れてしまう。

 

「とりあえず入りなよ。翼もいるよ?」

 

「翼は居ようが居まいが……もう強がらなくてよかったな。翼にも顔を合わせたい。中に入らせてもらう。君たちは……どこかに待機できる部屋はないか?」

 

 もちろん八紘が一人で出歩くはずもなく、後ろにはいくつもの黒服が待機していた。

 

「応接室も一応作ったからそこに居てもらえば? 響の父親はそういった対応をするよりも、響と同じ空間に置いてあげた方が気も楽だと思って、リビングに向かわせたけど」

 

「わかった。お前達は流に従って、部屋の中で待機していてくれ」

 

「かしこまりました」

 

 リーダー格の黒服の人が指示に返事をして、流の指示の元、応接室に向かった。それを遠くで見ていた調がお茶を用意して、応接室へ持っていっているのが見えた。

 ちなみにこのリーダーさんは八紘が翼と切歌と川の字に寝ていて、翼にくっつかれて寝ていたおかげで、優しい寝顔を晒していたのを写真に撮った人だ。

 

「待て流、一つだけ聞かせろ。立花さんはお前の許せない奴に似ていたと言っていた。実際、立花さんのことはどう思っている?」

 

 八紘は流がいつも事件に先手を打つことを知っている。なので、今回のこれもそれに相当するのかと勘ぐっている。

 

「……どうでもいい。俺は響が大事だと思うなら助けてやる。俺は身内以外はどうでもいいと思っていることは知っているだろ? あいつは身内に入っていない。敵でもないけどね」

 

 前にカリオストロが分析していたように、流は身内か無関心か敵しかいない。身内の中にも少し分類があるが、だいたい分かるだろう。装者やOTONAは身内だし、アニメちゃん達も身内に入っている。

 もし流は立花洸を殺さないといけない状況になったら、なんの迷いもなく殺す。その状況で響が止めたならば、流は殺すことは無い。結局は身内にとって、敵か味方かに変わる。

 立花洸を覚えていた当初の流は嫌っていた。だが、今はアニメの記憶なんてないし、響が父親を好いているのはわかるので、積極的にでは無いが守るだろう。奏も今では反省していて、この人は別に悪いことをしていないとわかったので、落ち着いている。

 

「ならば良い。お前が殺す気であれば、誰も止められんからな」

 

「父さんや緒川さんなら止められるけどね」

 

「いいや、お前は本気を出さぬではないか。慎次と弦と戦う時、一度もノイズを出したことがないとか」

 

「……まあいいじゃん。殺さないし」

 

「そうであったな」

 

 八紘は流の頭を軽くポンポンとしてから、家の中に入っていった。少しだけ流はそれをくすぐったく感じる。

 

「初めまして、私は風鳴八紘と言います」

 

「どうも、私は立花洸と言います。あの風鳴八紘さんといえば、数年前まで内閣で政治をしていた、あの風鳴八紘さんですか?」

 

「ええ。今も国の仕事を陰から支えていますよ」

 

「……響! なんでこんなお偉いさんとまで顔見知りなんだ!」

 

「翼さんのパパさんだもん」

 

 自己紹介で既に圧倒され、娘の顔の広さに立花父は顔を引きつらせている。この家だって立地がいいのにワンフロアをまるまる使っている。それをまだ18歳の少年が所有しているとか。住む世界が違うと頭の中を掠めるが、響のために親同士の繋がりを強化することになんとか務める。

 

 それから社交辞令が始まり、流の事を再び謝罪した。賠償しようとする八紘をなんとか立花父が止め、また当たり障りのない話が始まった。

 夕飯の時間が近づき、流は離席させてもらい、調が作る料理のサポートをしながら、どんどん作っていく。立花父は夕飯を初めは拒否していたが、響が美味しいから食べていった方がいいと強く言ったので頷いた。

 

 女が三人集えば姦しいというが、おっさん、それも父親が三人集まっても姦しい……ウザイ感じの空間が広がっていた。

 

 夕飯と一緒に晩酌としてお酒を出したのが間違いだったと、流と調は思った。

 

「それに比べて翼さんはいい! うちの娘は元気が取り柄ですけど、お淑やかさというものがありませんからね」

 

「いいでは無いですか。娘は少し静かすぎる気がするんですよ。あと家事は壊滅的ですからね」

 

「響くんは元気だし、翼は礼儀作法もしっかりしていていいじゃねえか。うちの息子なんて、問題を起こして、なんとかそれを収束させたらすぐにまた問題を持ってくるからな? 兄貴は信じられるか? 俺が書類仕事を何時間もしてるんだぞ? あの俺が」

 

「弦が書類仕事をするようになったのなら、それはそれでいいではないか。洸さん、こいつは今は治安維持の仕事をしているのですが、公安の時はそりゃもう酷かった」

 

 割とギリギリの情報を口にしながら、八紘と弦十郎は立花父を洸さんと呼び、立花父も八紘さんと弦十郎さんと呼んでいる。

 

「流! すまん、お代わりを頼む」

 

「もう用意しておいたよ。ほどほどにしなよ?」

 

 青菜炒めのお代わりを持ってくると、家に置いてあるマリア用のお酒の大半が開けられていた。マリアが飲む時は本来なら年齢的に駄目だが、流と翼がマリアに合わせて少しだけ口にする。流は口にしているように見えて、実際はウーロン茶に変えていたり、アルコールを入れていなかったりしている。結構お酒に弱いマリアにバレることはなく、暴れだしたらSAKIMORIがどうにかしてくれる。

 

「お父様は私の事をあんな風に思っていたのか。やはり家事は自分でやらねば」

 

「俺がやりたいからやってるの」

 

 家事をすればやる仕事を増やす不思議な魔法が使える翼の言葉に流は速攻で反応して、調やマリアも頷いている。

 響は酔っ払った父親が娘自慢を連呼した辺りで、響達の私室になっている部屋に逃げていった。切歌とクリスは風呂だ。本来なら他人がいるのに入らないが、多分これは深夜コースなので、そそくさと出ていった。

 

 その日は夜遅くまで父親たちの語り合いが行われたが、司令代理を押し付けられたのに、その本人は酒盛りをしている事を知った了子と、仕事があったのにそれを忘れて翼についての愛を語っていた八紘は黒服に怒られ、立花父は奥さんが迎えに来て、タクシーで帰っていった。

 次の日は了子が上機嫌でお肌がツルツルになっていたので、夜に色々あったのだろう。

 

 

 **********

 

 

「流さん出来ました。どうですか?」

 

「……うん。しっかり習得できてるね。これなら二学期の中間は高得点狙えるんじゃない?」

 

「よかった。これで響にも教えてあげられます」

 

「流出来たデス!」

 

「私の方が早くできた」

 

「切歌はまた同じ所でミスってるよ? 焦らず見直し。調は少しケアレスミスしてるかな。こことか」

 

「……ホントだ。でも切ちゃんよりも点数は高い」

 

「イヤイヤ、正解数は私の方が多いので、私の勝ちデスよ!」

 

 父親懇談会が行われてから数日経った。最近は軽く運動したあと、勉強会を開いている。響と未来は一々往復するのが面倒なのか、着替えを持ち込んで住み着いている。部屋は二人分用意しようとしたら断られ、ベッドもシングルが一つで、それに二人で寝ている。

 

 未来は元々ある程度予習もしていたようで、一週間もすれば二学期の勉強範囲も習得しつつある。調と切歌は緒川と翼に教えて貰っていたので、どちらが頭がいいかで競っている。報酬は最近発売された限定品のチョコのケーキだ。

 翼とマリアはアイドルの仕事を日本で軽く復帰している。パヴァリアの件が終わらない限り、ロンドンに戻ることは出来ないだろう。クリスは流と一緒に教師役。

 

 エルフナインはキャロルに錬金術を習っているようで、その技術を更にシンフォギアに活かすんです! と張り切っていた。

 

「……終わったああああ!!」

 

 響が自分で採点して、流が設けた基準の7割が解けるようになり、一学期の2ヶ月の間に出された課題をすべて終わらせ、ある程度は習得することが出来た。

 

「響おめでとう!」

 

「ごめんね未来。未来だけなら三日前に終わってたのに」

 

「ううん。私も勉強をもう少ししないとなって思ってたから、ちょうど良かったよ。じゃあ、()()()()宿()()()()()()()

 

「これで遊べるぞ〜!…………え?」

 

 響はこれで水族館に行ったり、今やっているギリシャエジプト展などに行けると跳ね上がっていたが、未来の言葉で動きを止めた。

 

「響いいか、よく聞け。今やっていたのは一学期の間の課題だ」

 

「……聞きたくない! 嫌だああああ! それ以上は聞きたくない!!」

 

「そして、まだ夏休みの宿題はたっぷり残っている。ちなみに未来はもう終わらせたし、調と切歌はあと少しだ」

 

「イヤああああああああ!!」

 

 ここ最近頑張って勉強できたのも、流やクリスの教え方が良かったからでもあるが、未来や皆とコレが終わったら遊べるんだ! という思いがあったからだ。

 

 なのに、その教師役の流が夏休みの宿題のプリントや冊子を響の前に置いた。

 

「流先輩のいつものジョークですよね? 嫌だな、未来もそんな嘘ついちゃって」

 

「響、平気、へっちゃら、だよ?」

 

「平気じゃないし、へっちゃらでもない!」

 

 響はその場に立ち上がり、壁と天井で三角飛びをして、玄関に逃げようとしたが、流が真横を追走していた。ついでに調も一緒に遊んでいた。

 

「響さん諦めるべき。響さんだってやれば出来るんだから」

 

 調のNINJAから学んだ拘束術によって、リビングに戻された響は、泣きながら宿題をやることになったのだった。

 

 

 

 

 そしてS.O.N.G.の緊急招集が入ったのはこれから三日後の事である。響の宿題はまだ半分しか終わっていない。響は宿題を終わらせることが出来るのか!?

 




響は一学期の課題は、終わりました。夏休みの課題はありますけど。

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