戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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本当に申し訳ありませんでした!
前回、#47でやった八紘とのやり取りをまんま同じ感じで書いてしまいました。作者自身もデジャヴュってたのですが、そのまま投稿し、読者様の指摘で気が付きました。

同じ内容で会話をそれっぽく変えて修正しましたので、その会話のダイジェストを乗せておきます。要らないという方はスクロールお願いします。

「……それでどこまで翼に手を出した?」
「ぶっふ! 出してねえ」
「そんな訳がなかろう。父親が黙認し、手を出したくて仕方がなかったのだろう?」
八紘は血涙を流しながらそう言った。流が手放せば訃堂が手を出すかもしれないので、それに比べたらマシだ。
「出してない」
「プリチーでキュートな翼に本当に出してないというのか!?」
「出してない」
「なるほど、電話では偽っていたがやはり不能」
「ぶっ殺す!」

こんな感じに修正しました。誠に申し訳ありませんでした。二度あることは三度あると言いますが、このような事がないように気をつけたいと思います。


#62 『修行の幕開け』

 翼が八紘の胸の中で泣いたあと、翼とその翼に師事を仰いでいる切歌は、八紘邸で修行をする事になった。流はS.O.N.G.に向かわなければならなかったので、バイクごとバビロニアの宝物庫に入れて、そこを経由してS.O.N.G.の本部である潜水艦にゲートを開き、テレポートした。

 もちろん流はガングニールの欠片は返してもらった。

 

 その時linkerを打ってなかったのだが、特にダメージを負うことはなかった。何故ダメージを負わなかったのかの理由はいくつか想像できるが、後のち検証することにした。

 奏の予想では人間離れし始めているから。セレナの予想では魂が無くなって、宝物庫とこの世界を隔てる位相の壁を通る時に、()()()されるようになったからではないかと言っていた。

 バイクや服、ホムンクルスを作る装置を宝物庫経由でテレポートしても、壊れることはないので、セレナの意見の方が有力かもしれない。

 

 S.O.N.G.に向かう途中、端末に連絡が入った。毎日何回かクリスや調、その他の人達から連絡が来ているので、それかと思ったら『カリオストロ』という表記と自画撮りの画像が表示されていた。カリオストロは端末のアドレスに画像を添付していたことを思い出した。

 流は設定であとから切っておく事を固く誓う。奏やセレナに殴られまくるのでそれを回避するためなのと、一応国連所有になっている、フロンティアを襲った犯人と繋がっているのはやばいだろう。

 

 通話のようなので、奏やセレナに頭を下げて通話に出る許可を得た。

 

「なにさ」

 

『久しぶり。元気にしてた?』

 

「お前らがフロンティアで暴れたせいで、ネフィリムがビビっちまって、S.O.N.G.メンバー以外をフロンティアに上げてくれなくなったりして大変だわ」

 

 ネフィリムは流とOTONAと装者以外はまだしっかり個人を認識していないので、敵として処理してしまっている。現場検証を緒川さんがやらないといけなくなり、結構大変そうにしていた。流は別に大変ではない。

 

『……まあそんな事はいいじゃない』

 

「良くはないけどね? あとS.O.N.G.所属の戦闘員に連絡をしてくる襲撃者の考えがわからなくて頭が痛いくらいかな」

 

『本当は頭なんて悩ませてないでしょ?』

 

「……ポーズとしてやっておかないと。それで要件は?」

 

『だから、前も言ったけどせっかちだとモテないわよ? もう少し会話を楽しんでから、本題に入るのがスマートよ』

 

「はいはい、で?」

 

 カリオストロは周りにいないタイプの人だから、会話をするのは面白いといえば面白い。しかし奏とセレナは何故かカリオストロを偽物と言い、あの乳は絶対に嘘だとか、あの容姿はきっと整形だとか言って、生理的に嫌っているので、会話を終わらせたい。奏だけでなく、セレナも既にキレているので怖い。

 

『今私だけ日本にいるのよ。会えないかしら?』

 

 S.O.N.G.に向かう途中の街中で、バイクを止めて話していたが、カリオストロのその言葉に奏とセレナは流を襲った。

 流は急いで路地裏に逃げてから、奏とセレナに本気でお仕置きをして、気絶させたあと欠片に押し込んでおいた。

 

「……すまん。少し知り合いが暴れてた。今日の夜ならちょうど予定が空いてるけど」

 

『や〜ん。ベッドでお話なんて困っちゃう』

 

「しねえから」

 

『ま、そうよね。了解したわ、詳細はこのアドレスに送ってちょうだい』

 

「わかった。あと店に入るんだけど、セミフォーマルくらいの格好で来てね」

 

『……ん? ドレスコードありのレストランにでも入るの?』

 

「入る。色々あって予約を入れてあったから。その話はその場でするわ」

 

『イマイチ分からないけど分かったわ。じゃあ、よろしくね〜』

 

 カリオストロは軽い口調で通話を切った。

 

 流が奏やセレナを排除してでも通話を続けた理由は、会えないかと言われた時に、カリオストロの声に真剣さや切実さを感じ取ったからだ。それがポーズだったら、しょうがないが、もしかしたら何かがわかるかもしれない。

 

 そう思いながらカリオストロに会ったら、あまり触られないようにしようと思った。愛犬クリスやラビット調は鼻が利くので、ふらっと帰ってきてバレれば多分きっと大変だ。

 それと共に、セレナと奏のご機嫌取りをどうしようか悩む流だった。

 

 

 **********

 

 

「は? なんで俺がここに座らないといけないの?」

 

 S.O.N.G.についた後、指令室に行くと、何故か司令官が居ないといけない場所に、藤尭や友里などによって座らされた。

 

「司令が数日休暇を取るだけなら、今のS.O.N.G.の形態的に大丈夫なんだよ」

 

 アニメでは弦十郎は基本的に指令室に居るような描写をされている。あれは上位の命令できる人が弦十郎と緒川だけなのだが、緒川はエージェントとして動いていたので、命令を下せる人が弦十郎しかいないからだ。

 

 この世界には了子やナスターシャ、性格は微妙だけど有能なウェルなんかもいるので、弦十郎の負荷は減っている。ナスターシャもウェルも途中で編入してきた人たちだけど、世間ではアメリカの蛮行(フロンティアで逃げる)を止めようと、立ち上がった英雄として騒がれているので、ある程度の権力を渡されている。

 

「で?」

 

「風鳴司令が装者の子達を育てるから二ヶ月ほど、S.O.N.G.に来ないと言ってきたんですよ」

 

「知ってるよ。マリアと未来と響を育てるんでしょ」

 

「そう。司令の仕事の一つに装者のメンタルトレーニングや鍛錬を積ませることがあるから、司令のやっている事は仕事の範囲なんだけど」

 

「二ヶ月もS.O.N.G.の司令官としての仕事を、放置しておくのは流石に不味いのよ。で、風鳴司令が選んだ方法が、流くんを司令官代理として置くことだったみたいね」

 

「嫌だね。こんな所に居られるか! 俺は山に帰るぞ!」

 

 流は事務処理だって、何でも出来る……何でもやらされる系忍者である緒川慎次から学んでいる。高官とのやりとりの仕方から司令官としての仕事もやろうと思えば出来る。藤尭や友里、その他スタッフも助けてくれるから、全てをやらなくても指示するだけでもいい。

 

 だが、やりたいかと言われれば絶対に嫌だ。

 

 流は孤島の館なら死亡フラグが立つようなセリフを吐いてでも、ここから逃げようとした。

 宝物庫経由テレポートを使って逃げようとしたが、藤尭が流に張り付いているため、ゲートを潜ることが出来ない。

 

「お願いだから、これだけは読んで! 司令がこれを流くんに渡してって言ってた手紙だから」

 

 藤尭の必死の願いを流は渋々受け入れ、筆で書いたであろう手紙を読み上げる。

 

「俺の日々の苦労を味わえ。あと逃げたらお前の口座を止める。お前はまだ未成年で俺は親で可能だ。出来なくても風鳴もしくは了子にやってもらう…………は?」

 

 流は二つの意味で驚いていた。一つは弦十郎の使う手が汚すぎること。もう一つは了子くんとは表記されておらず、呼び捨てになったこと。前者はストレスのせいだということは分かる。後者はとうとう身を固める気になった意思表明なのだろう。

 周りに公言して自分を追い込み、何としてでも達成しようとしているようだ。

 

『こりゃおっさんもガチだ。本気で修行に明け暮れた生活を送りたいんだろうな』

 

『……そういえば流さんって未成年でしたね。お金の使い方が凄まじいので忘れてました』

 

『風鳴なら簡単に出来そうだよな。しかも弦十郎にゾッコンな了子に頼めば、違法だけど確実にできるし』

 

『奏さん……ゾッコンという言葉はもう古いですよ?』

 

 奏がセレナの言葉に驚き、膝から崩れ落ちるのを流は見届けてから一言。

 

「父さん大人気ねぇよ」

 

 流は指令室に立っているのは癪なので、誰も使っていないトレーニングルームで、了子が作ったイグナイト装者達と戦うことにしたのだった。

 もちろん司令官としての仕事はやってからである。

 

 

 **********

 

 

 ところ変わって、山奥の滝が音をあげて、マイナスイオンだかを放出している場所に移る。

 

 

「痛い」

 

「頑張ってください」

 

「なんでこんな事をやってるのかわからない」

 

「仕来りですから」

 

「なんで緒川さんはそんなに平然としているの?」

 

「忍者ですから」

 

「忍者って凄い」

 

 現在、調は緒川の家が代々修行の場としている山奥に来ていた。

 

 調がここに到着したのは昨日の夜。F.I.S.の時よりも豪勢な、だが普通の食事を出されて、次の日は朝が早いからとすぐに寝かせられた。

 

 調は朝起きて準備をすると、すぐに行衣という滝に打たれる時の、白い格好に着替えるように言われた。その時に流と同じ事をするか、それとも調用に調整したものをやるかと聞かれた。

 

「流と同じがいい」

 

 調はそう()()()()()()()

 

 女性が滝行をするならば、行衣は着物タイプが普通なのだが、()()()()()()()()()なので、道着タイプの行衣にふんどしという格好でやる事になった。

 幸いここには緒川しかいないし、緒川はそういった配慮の出来るOTONAなので、調も恥ずかしくはならない。

 

 そしてすぐに滝に打たれるわけではなく、修法と呼ばれる様々な意味のある行を時間をかけて行った。

 緒川もある程度わかりやすく説明をしたが、調からしたら『気』や『丹田』、『邪気』や『魂』などはイマイチ分からなかった。だが、この修行の説明により流の魂の消滅がとても大変な事だと理解出来た。

 

 緒川とともに修法を納め、やっと滝に打たれてからも大変だった。入る前の修行で体から熱気が出ているので、寒くはなかった。だが、上の会話は普通に会話をしているように見えるが、あれは緒川が聞き取って脳内で変換したものだ。

 実際は滝の水圧や吹き降ろされる風、安定しないヌルヌルな足場に、ふらついた時に踏みしめてしまう尖った岩で、調は泣きそうなのをなんとか堪えて、辛さから意識を逸らすために口を開いている。

 

 その言葉も水圧でうまく話せていないが、緒川はそれを読み取って、調にしっかり聴こえるように話している。その緒川も一緒に滝行を受けているはずなのだが、調に比べて涼しそうに打たれている。

 

 緒川は調の限界が来たら無理やりあげる気だった。だが、その調が涙を堪えながらも何とか踏み止まっているので、止めるに止められない。

 そして時間が来た。

 

「流がギブアップした時間になりましたよ」

 

 その言葉に聞いた瞬間、調は滝行の最中に気絶した。隣で一緒に受けていた緒川が調をキャッチして、瞬間移動で岸辺にある温泉に調を浸けて、体を温め始める。

 調がのちに聞いたのだが、緒川は忍者の時は流と呼び、S.O.N.G.のエージェントやマネージャーの時は流くんと呼び方を変えているらしい。そういう切り替えも忍者には必要だとか。

 

 体が温かさを感じで目覚めた調は、緒川に支えられて温泉に入っていることがわかった。

 

「女性に滝行が人気なんて絶対に嘘。テレビは嘘つき」

 

「少し前にやっていたバラエティ番組ですね。ここの滝は本当に修行をする人が入る場所ですから、観光地の滝行とはレベルが違います」

 

「でもこれで、流と同じ時間出来た」

 

「ですね。本当に凄いと思いますよ」

 

 緒川はこう言っているが、先程の流がギブアップしたというのは、7歳の時の我武者羅に強くなろうとしていた、()()()()()の流がギブアップした時の経過時間なのだが、緒川はそのことは口にしなかった。

 

 

 **********

 

 

 翼は父親との和解を済ませた後、自分の部屋に行って、あえてそのままにされていた自室を見て、八紘に怒った。

 

「この状態を大切に取っておいてくださったことは嬉しく思います。ですが、流石に少しくらいは片付けてくれたっていいじゃないですか!」

 

「翼との思い出をそのままにしようとしてだな」

 

「う、嬉しいですが、流石にこれは恥ずかしい」

 

 翼が見る先には、翼の部屋を一緒に片付けている切歌がいる。幼い頃の流行歌のパッケージや、日本の小学校の教科書なんかを見ながら、翼よりも手早く片付けている。

 

「……あっ、大丈夫デスよ。翼さんの部屋が汚いことはわかっていたデスから。あと流に部屋の掃除や片付けをさせているのも分かってますよ?」

 

 流の家では勝手に入ってはいけない部屋がいくつかある。

 

 一つは流が簡易的な実験を行っている部屋。そこにはlinkerの浄化設備などもあり、色々な機械があるから勝手に入ってはいけない。

 もう一つが翼の部屋だ。汚すぎて足の踏み場はなく、高そうな下着は脱ぎっぱなし、布団は引きっぱなし、仕事の資料は放置していたら山積みになる。片付けを数日怠ればぐちゃぐちゃになるのが翼の部屋だ。仕事道具なども置いてあるので間違って踏んだりしたら大変。そうなる前にメインが流で、サブとしてマリアや調が片付けをしている。

 

 なので、翼の部屋が汚部屋である事は住んでいる皆の共通認識になっている。アニメちゃんこと、板場達も翼は片付けが出来ない人という事を理解している。逆に親近感が湧いたとも言っていた。

 

「慎次の代わりが流か」

 

「ち、違うんです、御父様! 流の家に住んでから、自分でやろうとはしているのですが、流がやりたがるので……」

 

「私もデスけど、下着の洗濯から片付けまでやってもらっちゃってますからね。しょうがないデスよ、流は世話を焼きたがりデスからね」

 

「そ、そうなのです!」

 

 実際はあの家に住む前の、翼の家の清掃も流がやっていたのだが、流石の彼女もそれを父親には言えなかった。緒川の仕事が忙しく、そちらに手を回すならと流が勝手に受けたのであって、翼が頼んだ訳では無い。

 そう、決して翼が頼んだのではなく勝手に流がやっていた事だ。

 

 形の崩れた下着の処分から、新品の買い出し、その他コスメの追加などは、切歌も他の人も自分でやっている。だが、翼だけは流に任せてしまっている。そこら辺の違いには、彼女は目を逸らしているので気が付かない。

 

「……うーむ、まずは洗濯のやり方から教えよう。風鳴や防人とか以前に、人としての教育を放置しすぎたのは駄目だったか」

 

 八紘は本気で過去の自分を責め、どうやったら教えられるか悩みはじめた。

 

「私だって、洗濯機の回し方くらい分かりますから! そんなに深刻な顔をしないで下さい!」

 

 翼は必死に食らいつくが、八紘も切歌も不審げに翼を見ている。

 

「では、翼さんに問題です。赤いシャツ、白いシャツ、ヒラヒラなスカート、ブラジャー。これらの洗濯の仕方はどうやるのデスか?」

 

「…………中に入れて、洗剤を入れて、スタートのボタンを押すのではないのか?」

 

「「はぁ〜」」

 

「何故そんなため息をつく!」

 

 色物はネットなどの簡単な事すら分からなかった、お嬢様である翼は、その日はやることの合間に洗濯のやり方を大雑把に学んだ。

 だが、修行が終わり帰ったあとそれを実践したのだが、あまりにも効率が悪すぎて、家の家事組である流や調、マリアに座っているように言われて、結局部屋の片付けも流に任せるのだった。

 

 

 

 翼は当初、切歌を鍛えるには実践あるのみだと思っていた。自分自身が鎌を使える訳では無いので、似た形の薙刀を生身で使って、ひたすら打ち合うなどという脳筋な考えだった。これが刀やナイフなどであれば、他にやりようはあったのだが、流石に鎌は専門外だ。

 

 だが、図らずも八紘と和解できたので、翼は父親を頼ることにした。

 

「なるほど。暁くん、君はどのように強くなりたいのだい?」

 

「どのようにデスか?」

 

「そうだ。強くなるにもいくつも方法がある。弟の弦十郎のように、肉体を極限まで鍛え、技を磨き続ける。これは生半可ではないが、簡単には折れない強さになる。時間はかかるが。例えば翼、自らの歌を届けたいという思いを胸に、防人として日本を、世界を守護しようとしている。刀しか使わぬが、それを極めんとしている。悪い例だが流、あ奴は弦十郎のような強さを求め、更に系統の違う力を求めた結果、聖遺物の融合を自ら行ったりした」

 

 切歌は特にそのような事を考えていなかった。切歌だって強くなりたいとは思っていたけど、今回は珍しく調が自分の所から離れた。ならば違う人と違う視点で訓練してみようと思った。

 

 弦十郎や響のような野生の勘で物事を済ませるには、切歌は考えすぎてしまう。

 緒川は調がより色んな人と仲良くなるために、自分以外とも接する機会を増やすために離れる気だったので、まず選択肢に入っていない。

 了子は絶対に頭のいい感じの何かをするはずなので、クリスのように頭がいいわけでもなく、論理的に物事を考えるタチでもないので、これもまた違う。

 なら、キャロル? と思ったが、了子が流に錬金術だけはやめろと言っていたのを聞いたので、これを習い始めたらいろんな人に心配させるかもしれないから駄目。

 

 そんな時、視界に翼が入った。同じ斬撃武器使いだし、生身でも刀を使っている。そして翼はみんなを守るために防人たらんとしている。そこがカッコよく好きだ。

 切歌も大好きな調やマリア、ほかの皆を守る力が欲しいと思った。

 

 具体的には言えないが、切歌は思っていることをそのまま口にした。

 分からないなら、わからないと言えばいい。助けて欲しいなら、助けて欲しいと口にすればいい。調を誑かし、あまつさえ自分にも好意を向けてくる流が言っていたことだ。

 

「なるほど、親しい人を守るための力……まず君に謝っておきたい。今の質問は一種のテストのようなものだった」

 

「テストデスか?」

 

「そう。君が危険な思想で力を求めていないか、それを確かめるためのものだったんだ」

 

 八紘は切歌の使うイガリマの絶唱特性を知っている。魂を問答無用で破壊する。この力はあまりにも強力過ぎるため、もし鍛えた切歌が悪に堕ちれば殺さなければいけなくなる。だが、それも杞憂だったようだ。

 

「暁にそんな風に思われていたのだな。嬉しいがやはり好意を直接口にされると照れくさくもある」

 

「……あれ? 口に出てたデスか?」

 

 二人は頷いた。切歌は翼が好きだとかは言う気がなかったのに、いつものように思考とともに口に出していたようだ。

 

「それは君のいい点でもあるだろう。さて、君の思想は問題なかった。翼のような守る力が欲しいのなら、やはり始めは基礎を積むべきだろう」

 

「シンフォギアは纏えば得物を扱えるようになる。だが、応用力や底力を出すためには、その得物を深く知っていた方がいい」

 

 八紘が言おうとしていることは翼が考えていることのようで、二人は交互に色々と説明をしてくれた。最近まではまともに話をしていなかったが、それでもやはり親子なのだろう。

 切歌は少しだけ、ほんの少しだけ寂しくなった。次会う時に母親なマリアや妹や姉である調、父親や兄のように思える流などに甘えようと思った。

 

「私の伝手で鎌を武術として取り入れている人達を呼ぶとしよう。その人たちから基礎を学び、鍛錬し、技を磨こう。私も仕事がある故あまり手伝えないが、今夜の夕餉くらいはともに出来る。切歌くんは料理が出来るかい?」

 

「切るだけなら……」

 

「なるほど。斬撃専門が二人……料理も最低限手伝えるくらいには、この特訓期間に覚えた方がいいだろうな」

 

 その日は八紘と翼と切歌の三人が交友を深める日になった。翼がピコピコと称するゲームをやったり、翼の部屋にあったカラオケで歌を歌った。夕飯は八紘主導で料理を一緒に作り、夜は八紘、翼、切歌の並びで川の字で寝た。

 翼は八紘に、切歌は翼に抱きついて寝ていて、八紘はここ数年で一番穏やかな寝顔をしていたと、屋敷を守る黒服達が皆口にしていた。




次回は描写されていない弦十郎修行と了子修行を描写します。
そしてここでも謝罪を。本当なら二話投稿した方がいいと思うのですが、書き溜めがそろそろ欲しいのでお許しください。

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