戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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物凄く今更ですが、ここの弦十郎は幼き頃よりその片鱗を見せていて、公安の時に色々あり、鍛えた結果、OTONA超人に覚醒したという設定にしています。

今更の表記で申し訳ないです。


#36『ゆっくりしない初詣』

 今年の内に緒川と了子は流の家に着いた。弦十郎も風鳴に行っているので、S.O.N.G.は大丈夫なのか? と聞く人がいた。

 

「独身の我々が虚しく監視していますので、緒川さんは義理息子の元へ帰ってください。あと了子さんもウザイので一緒に帰っちゃってください」

 

 などと藤尭や友里、他独身スタッフが気を使ってくれたらしい。緒川は挨拶と流やマリアにもお年玉を渡して、颯爽と帰っていった。

 

「……何枚入れてんの父さん」

 

 数枚では出ない厚みを放つ封筒を覗く。金銭感覚の狂っている流と、流に甘やかされているクリスと、風鳴の娘である翼以外は凄い騒いでいる。

 騒ぐのはいいが、響はふらわーのお好み焼き換算で表すのはどうなのだろうか?

 

「ねえ、私はお年玉って歳なのかしら?」

 

「21歳なのにお年玉を貰うとか……トマトは高いのじゃないと食べられないからね、マリアちゃん?」

 

「流! 今度こそ許さない!……大丈夫ね、Seilien coffin……」

 

 今年が終わる前に一度くらいは流をぶん殴ろうと、linkerまで使ってマリアはアガートラームを纏った。変身する時、未来と響からしっかり離れて、周りに流以外がいないかを完璧に指差し確認したあと、変身していたのは未来を393と認識しているからかもしれない。

 もちろん流はマリアの変身時に瞬きせず、刹那の見切りをして巨乳を眺めた。

 

(ガングニールを纏った時に比べて、栄養が取れているからでかくなっているだと!?)

 

 家具を壊さない、遠距離攻撃をしないというルールの元、ほとんど動かずマリアは流に攻撃を続け、流はマリアの攻撃をさばき続けた。他の人の視線を把握して、流は無駄に胸部へ攻撃し、更にマリアの怒りを買っていた。

 

 調が蕎麦を茹でる時間が迫っている事を告げた時点で、マリアは変身が解け、地面でしょげていた。シンフォギアを纏ってはいたが、格闘戦(ナイフあり)で流にはまだ勝てなかったようだ。格闘戦で勝てるとしたら、この家では響と未来だけだ。未来は流の武術と忍術を使うので、シンフォギアの身体能力と合わさり、ガングニールの共鳴がなしの流だと未だ勝率は0%。

 

 そのあと流と調がみんなの年越しそばを準備して、年越し前には全員分が揃った。その間に空いている部屋に置かれた装置で、マリアは体内洗浄をしていた。

 

「海老天と黄身とお揚げとネギ。長寿のシンボルに繁栄の願いを込め、金運に恵まれ一年を(ネギら)う。ギャグじゃなくて、昔からの言い伝えだからな? 切歌はこれで俺を笑ったらエビ抜き」

 

「わ、笑ってませんよ! そんなことするわけないじゃないデスか! 日本人の常識デスよ常識」

 

「あとマリアの分は少し冷ましておいたから、ふーふーしなくても食べれるからね。運動後だし少し濃いめにもした」

 

「私は別に猫舌って……もういいわ。あまり熱くないならありがたいわね」

 

 切歌は笑いそうになっていた所に突っ込まれ、マリアは毎度同じ事を言われていたので諦めて、猫舌であることを認めた。流はマリアを猫舌ネタで引っ張るのが割と楽しかったので、少しだけ落ち込んだ。

 

「あれ? なんで私にだけ海老天がないの? ねえ、母親イジメ? 家庭内DV?」

 

 了子の器には、一人だけ海老天が乗っていない。シンフォギア1のDVの権化が流に家庭内暴力か尋ねた。

 

「DVをしたのはママだけどね。いや、ママは長寿を願掛ける意味ある?」

 

「……えっと、あまりないかもしれないけど、やっぱり海老天って特別な感じがして、食べたいじゃない? 美味しいし。みんながサクサク鳴らしてる横で、お揚げだけって言うのは少し寂しいと思うのよね」

 

「……嘘だよ。ちょっとママをイジメたかっただけ。一番でかいのをあげよう」

 

 流はキッチンに戻り、宣言通り一番大きな海老天を了子の器に入れた。

 

「……息子が私に似てきて辛い。でも、大っきいのを貰えたし別にいいか」

 

 了子は前向きに考えることにした。

 

 奏とセレナもコタツに入っているのだが、コタツの布を突っ切っている。肉体がないが、それでも温かさは感じるらしい。

 更に、二人は蕎麦の入った器を持っているが、それは何故か周りから見えなくなる。奏が翼の前で海老天をふらつかせているので間違いない。

 

 流は奏とセレナがみんなに混じって食べても、不振に思われない辺りに色々な秘密がある気がしているのだが、それを検証できるほどの知識もなく、追求する気もないのでずっと放置している。

 

(二人がみんなと同じ場所で、同じものを、同じ味で食べられているんだから、別にいいよな)

 

 奏とセレナの喜びを取り上げる事になるかもしれないので、詳しく調べようとしない。二人が拒否している死者蘇生などの例外はあるが。

 

「「「「頂きます!」」」」

 

 蕎麦は好評で、馬鹿みたいにおかわりをして、お腹をぽっこりさせて倒れている人が何人もいた。明日にはおせちが控えていてるので、響は流石にストップを掛けられた。

 

(調の体型でぽっこりお腹はなんだか可愛い。後で撫でよう。響はあんなに食ったのに全然膨れてない。やはり鍛錬の賜物だな)

 

 流は未来から不意打ちで顔面を殴られた。どうやら神獣鏡のフィードバックの動きの内、正拳突きだけは纏ってなくても使えるようになったようだ。流を吹き飛ばしたので、なかなかの腕前だろう。

 調がまた流の事を介抱してくれた。お腹を撫でても怒られず、代わりに切歌に折檻された。

 

 

「3」

 

「「2(デス)!」」

 

『『1!』』

 

「「「「明けましておめでとうございます!」」」」

 

 1月1日0時丁度に、皆で決めておいた新年の挨拶をし合った。決めないとグダグダになることは目に見えていた。

 

「いや〜、ギリギリだったね。動けるようになるのに結構時間かかっちゃったよ」

 

「お揚げとのコンビネーションが強すぎた」

 

「海老が私のお腹を破裂させる気だったデスよ、あれはヤバいデス。流のセクハラもヤバイデス」

 

「ねえ、流って響ちゃん以外におかわり制限掛けないの? あれは流石に食べ過ぎよ?」

 

 どう見ても食べ過ぎな子供達を見て、了子は流に問いかけた。

 

「太ったらそいつだけ食べる飯がコンニャク米や豆腐麺、ササミと緑野菜。それに朝の俺のランニングに付き合わないといけないから、結果的に贅肉太りは絶対にないんだよね。俺に走りを合わせたり、周りが美味いもの食ってるのに自分だけ貧相なのは嫌みたい。響は単純に肉体の限界まで食おうとするから止める」

 

「……そ、そう」

 

「ママもダイエットする? 少し体重増えてるよね? 多分全裸フィーネをしたら、だらしない感じになるよ?」

 

「い、医者に激しすぎる運動は禁止されているから駄目よ。私はいくらでも痩せる方法はあるもの」

 

「それを教えて下さい了子さん! いえ、フィーネ!」

 

「私達にとって死活問題」

 

「お願いするデース!」

 

 了子は錬金術の使用リソースを贅肉に指定して、いい感じにダイエットをするつもりなのだろう。流が前に『ダイエット』『錬金術』というワードを研究室の入口前で聞いたことがある。

 

「駄目よ。これを使うと流は怒るはずだしね」

 

 三人(F.I.S.組)は流を縋るように見てくるが、もちろん怒ることを口にする。

 

「日頃から調整を行っていないから、体型の維持に手間取るのだ」

 

「翼もクリスマスから今日まで、割と食事ルールを緩めてたよね? 体重計乗ってくる?」

 

「私はただの女の子なので、異性の前で体重計に乗るのは拒否させていただく」

 

「あっそう」

 

 シンフォギアを纏って、S.O.N.G.のシミュレーションルームで相当量の戦闘訓練をする装者達が年始にいたとか。

 

 

 **********

 

 

「さて、初詣行くか。って、その前にお年玉を配るね」

 

 流はお年玉をまず調と切歌に渡し、遠慮する響と未来にも渡し、同じく遠慮する防人にも渡し、逃げながら、

 

「養われてるのに、年下にお年玉を貰うのだけはイヤあああ!!」

 

 と叫ぶ21歳歌姫(たやマ)谷間(たにま)に投げて投函し、嫌がらないクリスには少し目を逸らしながら渡した。緒川よりも一人多い数を入れてあったのは、決して偶然ではないだろう。

 

 まだ流はクリスと目を合わせたり、手を握ったりする行動に緊張してしまい、手汗や鼓動が聞こえないか気にしてしまっている。

 露骨に距離を置かれてクリスはむすっとするが、流はそそくさとクリスから離れた。その様子を了子に見られていることに気が付かず。

 

「次は着付けだな」

 

「……ん? 私は着物を持ってきていない」

 

「待て、それ以前にあたし達は着物を持ってないぞ! 先輩じゃねえんだし」

 

「ふははははは。ちょっと前に全員分の着物を買っておいたのさ! せっかくだし派手な振袖を各シンフォギアカラーで合わせておいた!」

 

 流は高笑いをしながら、着物が入っている衣装棚ごと持ってきて、皆の前で披露した。流は普段スーツや店頭の合わせてある服しか着ない。自分の格好には無頓着だからだ。

 だが、周りの女性は皆が可愛く綺麗なので、出来る限り着飾らせたいという思いがある。

 

「待って! 着物って凄い高い物じゃないの? 何故そんな贅沢をする必要があるの! 勿体無いじゃない」

 

 マリアが着物を見て倒れそうになっている。それを調と切歌が支える。

 

「振袖か。小紋などの方が、利用できる場があったのではないか?」

 

「確かにそうだけど、せっかくなら派手なのがいいじゃん?」

 

「確かにそうだな。着付けができるのは……私と流か。私は着せることは出来るが、それ用のメイクは出来ないから頼んでもいいか?」

 

 流以外が目を逸らした。流は弦十郎から袴の着方を覚えさせられた時に、一緒に覚えてある。

 

「もち」

 

 何故か装者達のサイズにピッタリな振袖を翼が着付けし、流がメイクや髪を整えていく。

 

「私も買おうかしら。弦十郎くんも流も和服持ってるものね」

 

「ママの着物なら父さんが買ってたよ。父親と息子は和服を持ってるのに、母親が持ってないのは良くないとかで」

 

「そう……ふふ」

 

 了子は嬉しそうに少し微笑んだ。流は手を動かしながら、気になったことを聞いておく。了子関係はミスると手遅れになることが多い。

 

「……ねえ、フロンティアで月を起動させた時、なんであんな複雑そうな顔してたの? やっぱりぶっ壊したかった? そういう機能あったでしょ、きっと」

 

「な!」

 

 メイクを受けているクリスは流の言葉で動いてしまい、頭を叩かれて怒られた。メイクをしている流は付き人モードなので、扱いがマリアに対するそれになっている。

 

「まあ、そうね。あれだけのエネルギーに、何億人ものフォニックゲイン。やろうと思えば、月と地球をぶつける事なんかもできたと思うわ。そういう機能があった事を分かってたのに、私にやらせるなんて流も意地悪ね」

 

 アニメでウェルが月の落下を早めた機能があったので、あれよりももっと直接的に月に干渉する機能があってもおかしくない。しかも、ウェルが使った機能を心臓エネルギーと億人フォニックゲインで使えば、地球を崩壊させることも出来るのではないか? と流は思っていた。

 

「ママの子供だからね。そりゃ意地悪にもなるさ。でも、もうママは勝手にそんな事をしないって信じてたから」

 

「狡いわね。まあ、私はもう月をどうこうする気は無いのよ。問題はカストディアンの遺した機能を使ってしまった事。それを利用できるだけの設備を運用できるようになったことが、カストディアンに伝わってしまったかもしれない」

 

「人が力をつけ過ぎたから、塔が破壊されて統一言語を封印された。なら、封印している遺産を動かせるだけの力を人類が手に入れれば、カストディアンがまたちょっかいを出してくるかもしれないってこと?」

 

「かもしれない、だけどね。今どこで何をしているのかも……分からないもの。いいえ、私が巫女だった時も、真意を理解出来ていたのかすら分からなくなってしまったわ」

 

 了子が近くにあったクリスの頭を優しく撫でる。その手は恐怖ゆえか、信じていたモノが分からなくなったためか震えている。

 

「……でもさ、別に神とかどうでも良くね? それよりもママは早く弦十郎父さんと結婚しろよ。弦十郎父さんだって好きなはずだし」

 

「そうよ! 弦十郎くんは私の事が好きなはずなのよ! それなのに一切手を付けないってどういうこと!」

 

「フィーネは頭を掴むな! せっかく整えてもらった髪型が崩れるだろ」

 

「あら、ごめんなさい。私は帰るわね。弦十郎くんが帰ってきた時に家にいてあげたいし」

 

 了子はクリスの頭を軽く叩いて、家から出ていった。

 

「今聞いた話は秘密ね」

 

「そんなにまずい事だったのか?」

 

「ウェルが知ったら面倒になるし、マリアも操作権限持ってるから、変な重荷にしたくないからかな」

 

「……わかった。メイクもまだ終わってないからやってくれ」

 

「うん」

 

 クリスはくすぐったそうにメイクを施された。

 

 

 **********

 

 

「うわぁ、人混み凄いな。あたし達はあそこに行くんだよな? 帰らね?」

 

「何を言っている。初詣とは一年の感謝を捧げ、新年の無事と平安を祈願するもの。ないがしろにして良いものではない」

 

「そうよ。文化の一つなのだから、こういう事は大事にしないと」

 

 翼とマリアが動く気を削がれたクリスに注意しているが、その二人は着物を着ているのにサングラスを掛けている。

 

「……シュール」

 

「変質者一歩手前デスよねあれ」

 

「翼さんもマリアさんもそのまま初詣に行ったら、混乱必須だからしょうがないよね。凄い見た目だけど」

 

「あと流さんがいるから隠さないと」

 

「スキャンダルになるもんな。今はスーツの付き人じゃないし」

 

 流は皆に合わせて袴を着ているので、流石にこの姿では言い訳できない。なので、翼とマリアが気を使ってくれている。

 お参りするために長い列に並んでいる中、翼は辺りをキョロキョロ見ている。

 

「普通の神社はこんなにも混みつくものなのだな。風鳴が初詣に行く神社は屋台もなく、静寂に包まれているから、雰囲気だけで楽しい」

 

「関係者以外立ち入り禁止とかなんだろうな。りんご飴買ってくるわ。欲しい奴いるか?」

 

「欲しい」

 

「クリスちゃんお願い!」

 

「デース!」

 

「……なら、私も」

 

 調、響、切歌と来て、控えめに翼が手を上げた。流はマリアが飲みたいと言った甘酒やその他を買ってくると、翼の頭には既にライダーな仮面を付けていた。

 

「凄い満喫してるね」

 

「せっかく皆と共に居られるのだから、遠慮をする気は無い」

 

『屋台のお好み焼きもやっぱり美味いよな。ふらわーの方が味はいいけど、祭りって感じがして』

 

『たこ焼き熱いけど美味しいです』

 

「セレナは猫舌じゃないのか」

 

『マリア姉さんは熱いものは全部ふーふーしますよね。私は猫舌でもトマトが食べられないわけでもないですよ?』

 

『……よし! 次はイカ焼きだ、流、行くぞ!』

 

 一般人に比べたら多く、響基準だと少なめに屋台の売り物を食べまくった。

 

 列もやっと進み、賽銭箱の前まで来た。二礼二拍手一礼をしてから、流は目を閉じた。流は何となく神に祈るという行動があまり好きではない。意味は無く、神に対して怒りをぶつけたりするが、このような時に神に祈ると、何かが起きてそうなので何も考えず、周りがお祈りが終わると一緒にその場をあとにした。

 

「未来は何をお願いしたの?」

 

「響……達が安全に暮らせますようにって」

 

「私はね、ご飯がいっぱい食べれるようにとか、未来と同じ争いが起きませんように。あとはお父さんとお母さん、おばあちゃんの安全祈願とかかな!」

 

「響らしいね」

 

 響と未来が手を繋いで、願い事を言い合っている。調と切歌は他人に言ってしまうと、願いが叶わないと思っているようだ。

 

「流は今回も前と同じなのか?」

 

「まあね」

 

 流が神に祈らなくなったのは、本当の両親が死んでからだ。それ以降、流が神に祈らないという事は奏と翼なら知っている。

 

「何となく、神頼みはまずい気がして」

 

 1月1日は流の誕生日だが、彼は祝われるのが嫌いなので、流の誕生日を知っている人は大人達と翼と奏だけ。翼は一言、奏も同じく一言だけのお祝いで終わらせた。

 

 

 **********

 

 

 時が少し経ち、場所は鎌倉。流は正月の『風鳴翼誘拐』についての罰を言い渡されることになった。

 前回と同じように無礼な態度で、障子やふすまで遮られた部屋に入ると、今回は訃堂一人だけだった。

 

「今日は翼の生放送があるから手早く済ませてくれ」

 

「風鳴流、風鳴翼誘拐の罰として、指定した人物を暗殺せよ。日本の政をしている数名が、国防を害する密約を交わしている事が判明した。直ちにそれらを殺害し、工作も完璧に行え」

 

「……その程度ならお前らがやればいいだろ」

 

「厳しき事を言えば、貴様は反発するであろう。ならば、あ奴等に任せれば失敗するであろう些事を罰とし、貴様を使った方が物事が段取り良く進む」

 

 訃堂が言っている通り、訃堂の腰巾着達の保有する戦力よりも、流単体の方が強い。だからこそ、翼の権利を持ち続けている。訃堂は腰巾着では暗殺は出来ても完璧な隠蔽は出来ないと思っているようだ。

 流だって完璧な隠蔽など出来ないが、一つだけ方法がある。ノイズに襲わせれば不幸な事故として処理される。

 

「それをすると、S.O.N.G.に勘づかれるぞ」

 

「標的の奴等は密会するべく、人の少なき所へ赴く。一度ならば弦十郎もさほど強く言えんだろう」

 

「了子ママはどうするんだよ。絶対わかるぞ」

 

「彼奴は既に抜け殻よ。貴様が適当にはぐらかせ」

 

 もう終わりだとばかりに訃堂は部屋から出ようとした。だが、流はここ最近ある作戦を練っているので、この爺にも協力させようと考えつく。

 

「国防に関して提案がある」

 

 流のその言葉に訃堂は立ち止まり、再び席に戻った。

 

「申してみよ」

 

「日本は専守防衛とか色々言っているし、S.O.N.G.になった二課も、元々の二課も事が起こる前に動けないし動かなかった。当たり前だよな? 後者二つは異端技術に関する事変が起きたら動くことが前提だ」

 

「貴様なら此度(こたび)のフロンティア計画を未然に防いだように、新たなる火種を潰せると?」

 

 訃堂の反応は流が思っていたよりも良い。

 それは流がフロンティア計画という、外の国(アメリカ)が日本国内で暗躍しようとした事変を最小限で抑え、更に異端技術に関するプロフェッショナルを引き抜いた実績があってこそだ。

 

「潰すのは難しいけど、先制攻撃は出来る。俺の情報筋によると、欧州に蔓延っている奴等の一つが日本で色々やろうとしている。これはある女性からのリークで知った。裏は取れている」

 

「で、貴様は何をしたい」

 

「俺にこの国から出る許可をくれ」


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