戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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シンフォギアG編ラストです。
次回からまたしないフォギアになります。

3期のシナリオがまだ固まりきっておらず、毎日投稿が途切れる事があるかもしれませんが、3期までは確実に投稿しますので、どうかお待ちください。
4期はフラグを建てまくってるので何とかやりたい。

しないフォギアは書くことが多いので、少し長めになるかもです。


#31『QUEENS of MUSIC AFTER CONCERT』

 正義のための生放送ライブ「QUEENS of MUSIC AFTER CONCERT」

 

 フロンティアの起動が確認できた数日後、全世界で同時刻にどの放送局も、同じ番組を流すことになった。

 その番組は日本の歌姫風鳴翼とアメリカの歌姫マリア・カデンツァヴナ・イヴが、世界を守るためのライブというお題目で、各国が協力して行われる前代未聞の生放送。

 

 もちろん目的は、月の軌道修正を行うのに必要なフォニックゲインを集めるためで、全世界が協力的な姿勢を示している。あのアメリカも独断行為は無理だと悟ったようで、同じように国内に権力を行使している。まだアメリカのエージェントは、リディアン近くを彷徨いているが。

 

 放送局はこの二人のアイドルを使えるなら大歓迎だが、何故か機材もなし、人材もなし、勝手に局の電波に流すと国から告げられてイマイチよくわかっていない。説明もないためしょうがない事だろう。

 フロンティアの機能で全世界の放送局の電波を乗っ取り、映像を流す方がフロンティアへの上陸人数を減らせるので、そちらの方がいいということになった。

 

 当初は二課のダミーカンパニーがステージを設営して、そこに機材を運び込んで色々やるつもりだった。しかし了子がフロンティアのハッキング能力を見つけたのでそれを使うことになった。

 流はアニメでナスターシャが当たり前のように、世界へ語りかけるために使っていた機能を忘れていた。

 

 

 **********

 

 

 ライブまでの数日、シンフォギア装者は流の家に集まっていた。流が呼び出して、歓迎会をすることになったのだ。二課の歓迎会とは別なので、弦十郎のマジックは後日披露される予定になっている。

 

 遊園地である程度顔を合わせている人もいるが、しっかりとした自己紹介をしていないことをセレナに指摘された。更にあの場には翼もマリアもいなかったので、催すことになった。

 もちろん未来もいる。今では立派な神獣鏡のシンフォギア装者なので、居ることが当たり前なのだが、アニメとのズレで流は少しだけ違和感がある。

 

 現状は翼とマリア、クリスが調と切歌と交流していてだいぶ偏っている。アニメ通りとも言える。

 

「まずはF.I.S.組から簡単に自己紹介をどうぞ」

 

 作ったりデリバリーで頼んだりしたので、テーブルの上は料理でいっぱいになっている。みんながある程度食事を進めたところで、流はこの会の目的を進行させる。

 

「なら、まずは私から。私はマリア・カデンツァヴナ・イヴ。元ガングニールの装者で、今は亡き妹の聖遺物、アガートラームを纏うシンフォギア装者だ。アイドルもやっているわね。これからもよろしく頼む」

 

『私はセレナ・カデンツァヴナ・イヴです。皆さんには声が届かないと思いますけど、マリア姉さんの妹です。よろしくお願いします』

 

「質問いいだろか」

 

 セレナは甘いものを食べている途中でマリアが自己紹介を始めたので、急いで隣に行き、一緒に頭を下げた。皆が歓迎の拍手をする中、流と奏はセレナにも向けて拍手を送る。

 

 少し前にマリアのガングニールを響に渡す場にはいたが、その場では渡すことになった理由しか説明されなかった。色々と疑問に思っていた翼が立ち上がり、マリアの言葉が終わると口を挟んだ。

 

「ええ、いいわよ」

 

「ガングニールの装者だったというのはどういう事か説明してほしい」

 

「フィーネがガングニールの欠片をF.I.S.にも流していたのよ。本当はアガートラームを使いたかったのだけど、その時は使うことが出来なくて、比較的適正の合ったガングニールを纏っていたわ」

 

「……また櫻井女史か」

 

 翼は一つため息をつく。了子のやる事を真面目に取り合おうとするのは、弦十郎と流くらいで、あとは基本的に放置しないと疲れることを皆が知っている。弦十郎はどんな人でも放置する性格ではないし、流は母親に構いたいので無視することはない。

 

「フロンティア計画を始めようとしたら流にご破産にされたの。彼にボコボコにされて、心を折られて、櫻井博士に直してもらったアガートラームはすぐに纏えるようになったから、そのペンダントは立花に授けたわ。これはこの前の説明の時にしたことね」

 

「流はまた一人で戦っていたのか。でも、私の時よりも随分と手加減をしたようだな。オーディンに蹴られたところがまた痛くなってきたかもしれん。あー痛い、凄く痛い。これでは奏の元に旅立ってしまいそうだ」

 

 翼は流がまた一人で勝手に戦っていた事に呆れ返ってる。そして翼は腹を抑えて棒演技で演じ始める。

 

「はいはい、ごめんなさい。俺が悪かったです。土下座でもすればいいの? それとも足でも舐めるか?」

 

「誠意が足りない!」

 

「翼はルナアタック後に、俺の事を散々殴っただろ! 次!」

 

 翼が珍しく流を弄れる口実を見つけて、昔の借りを返そうとするが、流は速攻で逃げた。

 

 そんな翼をマリアは驚いた顔で見ている。翼が人を弄るタイプには見えなかったのだろう。実際、翼がそういう事をするのは、奏と流、最近はクリスも追加されたくらいだ。

 そこにマリアが加わってくれたらいいのになと流は思っているが、まず親しい人、友達の多さでいったら、流の方が断然少ないことを忘れている。

 

「私は月読調。シュルシャガナの装者。切ちゃんと一緒に聖遺物を分身で取られて、戦う前に無効化された……あと胸を触られた」

 

「流ぇぇええええええ!!」

 

「させるか! 一々俺の事を絡めるな! あとあれは事故!」

 

 調が泣き真似をしながら、最後に地雷をワイドアップで全力投球した。

 クリスがその場で変身しようとしたが、流がペンダントを奪うことで阻止する。翼とのシンフォギアでのお遊びは近接武器だから成り立つが、クリスがガンカタなどを始めると家が壊れる。

 

「なんで私の胸は一切触らないのに、あんなペちゃパイは触ってるんだよ!」

 

 調は自分の胸を見たあと、クリスの胸を見て気を落とした。慰めるように切歌が調の肩に手を置く。その時に切歌の胸が揺れ、調はその場で崩れ落ちた。

 結構気にしていた話題を自分で提供して、自爆する哀れな少女がここにいた。

 

「だから事故! あと小さいからって気を落とすなよ」

 

「いいや、ありえない。おっさんと緒川の鍛錬を受けて、ミリ単位の動きにミスなんてしねえだろ! なあ、先輩! バカ!」

 

「有り得ぬな。その程度が出来ぬのなら司令にもう一度鍛え直してもらうべきだ」

 

「クリスちゃん! みんなの前でバカって言うのやめてよ! ちょっと課題の出来が遅いだけだから! 私はミリ単位のミスはほとんどないから、多分わざとかな?」

 

「流ぇぇえええええ!! Killiter」

 

「ごめんなさい!」

 

 クリスはイチイバルを奪われているのに、その場で歌おうとした。装者はやろうと思えば、少し離れたところの聖遺物なら容易に起動できてしまう。このまま歌わせれば家が崩壊するので、流はその場で土下座をして許しを乞う。

 

「絶対に許さねえ。あたしのも触れ」

 

「はい」

 

「あたしのお願いをなんでも聞け」

 

「それはもちろん」

 

「先輩! ふらわーに連れて行って欲しいです!」

 

「わかった」

 

「お小遣いがもっと欲しいデース!」

 

「了解した」

 

「私に奏のガングニールの欠片を譲渡せよ」

 

「それは無理!」

 

 平謝りしつつ要求に答えていくが、途中からクリスの声じゃないものも混ざってきた。最後は防人が混ざり、譲れない一線だったので拒否された。

 

「さて、お遊びはここまでにして、雪音はそういう事は家で……後にしてくれ。今は皆の紹介の場だ」

 

「……あっ!」

 

 クリスは頭に血が上って、この場には流と自分しかいないと思いこんでいた。事の発端は調だが、それすらも忘れていたのだ。

 クリスは顔を真っ赤にすると、自分の部屋に逃げていった。

 

「早く雪音を連れてこい。飼い主の役目であろう」

 

「ああ、少し待ってて」

 

 翼は当然とばかりに流へ命令し、彼は離席を告げてから、クリスの部屋に行った。流はベッドで塞ぎこんでいるクリスを毛布ごと持ち上げて、リビングへ連れてきた。

 

「後輩の自己紹介から逃げるな」

 

「それから逃げたわけじゃねえ! あー、もう! 分かったよ。居ればいいんだろ! 居りゃ!」

 

 クリスは真っ赤な顔で席に座り直した。宙に浮いて食事を取っている奏は何も言わず、不機嫌な顔を無理やり隠している。それをセレナに指摘されて喧嘩が始まった。

 

「次は私デース!」

 

「暁切歌。イガリマのシンフォギア装者で、緑のお野菜をあまり食べてくれない困った子」

 

「調!! なんで言っちゃうんデスか!? 流石にそれはびっくり仰天デスよ」

 

「切ちゃんの事は私が一番よく知ってるから」

 

「調〜!」

 

「よしよし」

 

 切歌は自分の自己紹介を調に乗っ取られたが、調の言葉に絆された。その光景を見て未来がうんうんと頷いている。響はそんな未来を見て頭を傾げているが、理解しない方が響のためになるので流は黙っておく。

 

「次は1号から自己紹介ね」

 

「天羽々斬を一号呼ばわりするのはやめてもらおう!」

 

「はよやれ」

 

 翼はいつものように変身をしようとしたが、新しく出来た後輩の前で下手に暴れるのも良くないと思い、自己紹介を始める。

 

「私は風鳴翼。防人であるが、歌女でもある。最近は歌に対して思う所があり、リディアンを卒業したらイギリスに向かうやもしれん」

 

「翼さんが海外進出ですか!?」

 

「ああ、本当はオファーを蹴るつもりだったのだがな。やはり私は歌う事が好きだったようだ。もっと世界の人々に私の歌を届けるにはその方がいいと思った」

 

「とってもいいと思います! あっ、でも卒業したら離れ離れになっちゃうんですね……」

 

 響の言葉に周りもテンションが下がってしまう。海外に行くということは、すぐに会えなくなるということだ。

 

「響、平気なんだっけ?」

 

「平気、へっちゃら! ですよ!」

 

「別に死ぬわけじゃねえんだし、簡単に会えるんだから、テンションを無駄に下げるな。今どき海外なんて飛行機ですぐだろ? お前は馬鹿みたいに明るいのが取り柄だろ、落ち込んでんじゃねえ」

 

「……そうですよね! それにまだ翼さんは卒業してませんし、もしかしたら留年になるかもしれませんよね!」

 

 響はいつもの元気を取り戻して、そんな妄言を吐いた。

 

「それはない」

 

「留年の可能性があるのは馬鹿だけだろ。続けてあたしの自己紹介をやっちまうぞ。あたしは雪音クリスだ」

 

「終わり?」

 

「もっと自己紹介をするデスよ!」

 

 クリスが名前を言っただけで自己紹介を終えた雰囲気を醸し出す。

 流を宝物庫から助け出した時のクリスの必死さを見て、クリスの事を気に入った調と切歌がつっこむ。真剣な顔で後輩にお願いされたので、渋々クリスは口を開く。

 

「そうは言ってもな。あたしがソロモンの杖を起動させちまったこととか……あれ? そういえばソロモンの杖はどこにあるんだ?」

 

「流が没収したから、彼なら知ってるはずよ」

 

「父さん達に渡した」

 

「まあ、それが妥当だろう。一個人で完全聖遺物の所持など危険が過ぎる」

 

 翼の言葉に一人を除いた装者一同が頷き、奏とセレナは微妙な顔をしている。その除いた一人であるクリスは流の近くまで歩み寄り、顔を近づけて睨みつけている。

 

「な、何さ」

 

「流、今から質問することに嘘をつくな。ソロモンの杖はどこだ」

 

 流は緒川に皆伝を貰える程度にはNINJAだ。なので、表情も完璧に隠せたはずなのだが、何故かクリスにバレた。

 

「響と未来を抜かして自己紹介をさせて頂く。俺の名前は風鳴流。弦十郎父さんの一番弟子にして、緒川家の忍者育成を受け、了子の技術面もある程度受け継いでいる。デュランダルの融合症例であり、ソロモンの杖の完全聖遺物融合症例でもある」

 

 流の左手親指についている指輪は了子でも見えなかったので、付けている本人と霊体の二人しか見えないはずなので言わない。

 

「なんでそんな無茶をした!」

 

「約束する前にやった事だからね? 許して?」

 

「許さねえ! どうすんだよ、響みたいに全身に侵食されてたら!」

 

「それはないから大丈夫」

 

 クリスは響を馬鹿とは言わず、名前で呼ぶくらい取り乱し始めた。他の人、特に響が心配そうに見ている。

 

 今もデュランダルは侵食しているが、響のような体を蝕むようなデメリットはない。何故安定しているのか、了子は知っている風だったが、流に教えていない。

 そしてソロモンの杖は流の体の一部のように馴染んでいるので、全く問題ない。了子はありえないことと言っていて、()()()()()()()()()()()をしている。

 

 流はキレるクリスをゆっくり宥めて、周りにも問題ないことを告げる。響が予想以上に心配していて、彼女自身も融合症例になった事があり、その辛さを知っているからこそ、心配も大きくなったのだろう。

 

「次は響ね」

 

「……はい。私は立花響、15歳。誕生日は9月13日で血液型はO型。身長は157センチで体重は秘密! 趣味は人助けで、好きなご飯はご飯アンドご飯。彼氏いない歴は年齢と同じ! よろしくお願いします!」

 

「あたしにした紹介と同じじゃねえか」

 

「クリスちゃん! しっかり覚えててくれたんだね!」

 

 響は流がどこかで聞いたことのある自己紹介をした。それに感慨深そうにクリスが呟くと、響は抱きつきにいき、クリスが抵抗している。

 

「響、私の自己紹介をするから邪魔しないで」

 

「ちょ! 未来、首が締まってる!」

 

 未来はクリスの元に行き、引き剥がして響の席に座らせた。

 

「私は小日向未来です。元陸上部で寮では響と同室です。好きな人は響で、好きな食べ物はふらわーのお好み焼きです」

 

「いや〜、そう言われると照れちゃうな〜」

 

「あれって」

 

「ガチデスね」

 

 未来の自己紹介に響は照れているが、調も切歌も未来の目が割とガチなことが分かってしまい、二人は抱きつきながら震える。

 

「……ねえ、翼。あれが普通なの?」

 

「一つだけ言っておく。小日向には逆らうな。小日向の前で立花を傷つけたら、きっと死ぬぞ」

 

「またまた。翼にしては冗談が過ぎるんじゃない?」

 

「私も流も司令も小日向には逆らわない」

 

「……気をつけるわ」

 

 翼はクリスの歓迎会でのことを思い出し、顔を伏せてマリアに本気で忠告した。そんな翼を見て、マリアは深刻に受け止める。

 

「一通り自己紹介が終わったね。マリアはトマトが苦手で猫舌でF.I.S.でモルモットにされていたけどいい子。調も同じくモルモットで割とズバッと言い、料理の味付けにうるさいけどいい子。切歌は同じくモルモットで常識人を自称するけど、一番常識がないけどいい子。響は昔色々あって迫害されたことがあるけど、今は元気でいい子。翼は風鳴で色々あるし、闇抱えているけどいい子。クリスは捕虜にされたり、色々やっちまったけどいい子。未来は……いい子。色々抱えている事が多い人達だけど、仲良くしよう」

 

 未来だけ何も言わなかったが、決して未来の視線に屈したわけではない! と流は言うだろう。未来の前以外でなら。

 

「トマトは栄養価的に買わなかっただけであって! あと別に猫舌じゃないわよ!」

 

「モルモット呼びは不愉快」

 

「私は常識人デース!」

 

「それっていう必要あったんですか?」

 

「常在戦場、推して参る!」

 

「バルベルデの事は言うなって!」

 

「それでいいんです」

 

『あたしの紹介はないぞ!』

 

『マリア姉さん、まだトマト食べられないんだ』

 

 流が前に翼にアドバイスした、自分のマイナスな面を見せれば仲良くなると言ったことを思い出し、それを実行したが囲まれてボコボコにされた。全治三日だったとか。

 

 

 **********

 

 

『スペシャルライブ五曲目は私と奏の歌った『逆光のフリューゲル』を歌おうと思う。この曲は奏が死んでから歌ってこなかったが、今ならマリアとこの曲を歌いたい!』

 

『私がこの歌を翼と歌える事を光栄に思う。奏さんの代わりにはなれないけど、精一杯歌うから聞いてほしい!』

 

 現在フロンティアのブリッジで、翼と奏が全世界に向けて歌を歌っている。

 歓迎会から数日が経ち、各国の準備が整ったので、フォニックゲインを集めるためのライブが行われることになった。ライブが始まってすぐに月が落下しそうなこと、月の軌道を正すためには皆の思いが必要なことを翼とマリアが伝えてから歌い始めた。

 

 アニメに比べてフォニックゲインの集まりは悪かったけど、それでも規定量は集めることは出来た。

 

「不思議ですね。世界に反旗を翻そうとした私達が、世界の英雄なんて呼ばれているのですから」

 

「僕は納得してないけどね」

 

「お喋りはここまでよ。ちゃっちゃっとカストディアンの装置を動かしちゃいましょう。流ももう一度、放射角度に問題がないか確認よ」

 

「今やってる」

 

 二人のライブを装者達や弦十郎などは特別にその場で見ている。本来なら必要ない人はフロンティアに上陸させないという契約だが、シンフォギア装者は万が一に備えて連れてきたことになっている。

 そして今、流のガングニールの欠片は翼が付けている。流はモニター越しだが、翼とマリアの隣で、奏とセレナが楽しそうにしているのが見えて、とても満足している。

 

 フロンティアの制御室には、ナスターシャとウェル、流と了子が来ていて、最終確認を行っている。

 

「生で見たかったな」

 

「流ならお願いすれば目の前で歌ってもらえるんだからいいじゃない」

 

「そうなんだけどさ」

 

「こちらの確認は終わりました」

 

「僕は既に終わってるけどね。悪魔()は早く終わらせてくれないかな」

 

「俺が一番面倒くさいことも併用してやってんの……終わったよ」

 

「了解了解。全てオールグリーン! 月軌道修正装置、起動スタート〜!」

 

 了子が一通りコマンドを打つと、フロンティア内の導管の役割をしている結晶を通って、光がフロンティアの頂上に収束し始めた。

 ブリッジにある結晶も更に光り始め、アイドル達は優しい光に包まれた。それに合わせるように、翼とマリアは優しい歌詞の曲に切り替える。

 

「……3、2、1、はい、お疲れ様。これで月軌道の修正は完了よ」

 

 制御室の制御盤に出てくる映像の一つに、月を映し出したものがある。その映像では月に光となったフォニックゲインが送り込まれ、月の欠けた部分に吸い込まれていった。光を送り終わると、欠けた部分に緑の光が走っていて、装置の起動に成功したようだ。

 

「これで、世界が救われたのですね」

 

「なんだかな〜。達成感みたいなのが全然ない。しかも、これで英雄なんだろ? 絶対違うよね」

 

 ナスターシャとウェルが感想を言う中、流は了子の顔色があまり良くないのを確認し、不安になるのだった。


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