総合評価4000超え、しおりが1000超えしました。嬉しいです。
ミカは『鳥』ノイズと共に戦うことで機動力にエネルギーを割かずに済むようになり、今は片方の腕に手のパーツを付けているので、圧縮カーボンロッドの瞬間発射本数自体は減ったが、手があることでロッドの叩きつけやロッドを巧みに動かすことが出来るようになっていた。パワーが少し落ちたが、テクニックが大幅に上昇。
ガリィは以前にクリスの修行を手伝い、クリスはただの弾丸やガトリングすら相手を追尾出来るようになった。そして本人もその修行で強く……なっていない、別にその修行では強くならなかったのだ。
しかしガリィはこの世界で最強の人間や
例えば相手を溺れさせたり、相手が呼吸する時にその口の周りの空気の温度を一気に下げて肺胞を壊したり。
レイアは巨大なノイズと遊んでいる妹を眺めることが日課であり、ノイズ達にトンファーでの戦闘やコイン撃ちを教えていた。最初は両手で数える程しかいなかったのに、ラグビーや水泳がオリンピックで活躍したらブームになるように、バルベルデの時にレイア直伝戦闘術を扱って活躍したノイズ達がいた為、大部屋にも収まらないほどのノイズ達がレイアの教授を受けることになった。
その結果、大隊単位でのコイン撃ち部隊が出来上がるが、錬金術までは流石にノイズは学べていないため、ひたすら地味にコインを錬成するレイアが居たとか居ないとか。それでもその顔は嬉しげにニヤついていたとガリィがオートスコアラー全員に暴露した。
『私に地味は似合わない。でも部下のためにコイン錬成は楽しいの、キラッ』
そしてファラは哲学兵装のソードブレイカーだけではなく本物に比べたら劣化しているが、『不朽不屈』を持つデュランダルのプロトタイプを片手に、錬金術をブーストさせながら戦う。ただそれだけであるが、デュランダルを持てばあの翼にも剣の戦いで勝てるほどにまで成長している。
「創造主に逆らうからだ」
だが、オートスコアラー達四人はキャロルに敗北した。
「反逆出来るようには造っていないはずだが……それにお前ら、俺を襲ったのに傷つける気が全くなかったな。どういう事だ?」
想い出の詰まった王座の間は荒れに荒れ、流しそうめん台は細切れになり、キッチンも強烈な風にでも切り裂かれたのか粉微塵になっている。
もちろんオートスコアラー達も体の至るところが壊れていて、口もまともに動かせぬほどが、半壊程度でなんとか済んでいた。
オートスコアラー四人はキャロルに傷ついて欲しくない。そんな思いを抱きながらも倒さないといけないとはわかっていたが、精神が成長しすぎた彼女達は明確な一撃を与えられなかった。
「ミカが倒されたのに俺に抗う気概を見せるか」
「『鳥』……逃げるん、だゾ」
「……」
ノイズは喋らない。喋る器官がないのだが、ミカを乗せていた『鳥』ノイズは猛禽類に似た美しい翼を広げてミカとキャロルの前に立つ。きっと口があれば威嚇の声をあげていただろう。
ミカの指示にも首を振って拒否して、キャロルなら指を軽く動かすだけで殺されるにも関わらず、主たるミカを護る。
本来ならば戦いの余波で消え去るはずの『鳥』ノイズや、他にも戦いをサポートしていたノイズ達は皆が皆、胸元に
「…………興醒めだ。おいミカ、何故お前たちは俺に抗った」
「マスターが……可哀想、だからだゾ」
「お父上の……お言葉も、忘れた……マスターを」
「派手に、救うのが……私達の役目」
「あー、死にそ」
キャロルも何故自分を真に心配しているオートスコアラーをぶっ壊さないといけないのかと顔を歪ませていると、ミカが大声を出した。
「あああぁ!!」
「どうした!?」
「カレーが、零れちゃった、ゾ」
「……は? カレー? そういえばなんでミカに手が付いて」
ミカが近くに転がっている寸胴のナベに手を向けている。
キャロルはそんな光景を見たことは無い。ミカのカレーなんて食べたことがあるはずがないのに、何故かそのカレーが食べたくなる。きっと自分は美味しく食べられるように作ってくれたと不思議と思える。
キャロルは中身がほぼ零れてしまっているカレーのナベの内側に指を滑らせ、そのカレーをひとくち口にする。
その瞬間、キャロルは走馬灯のように過去の想い出が頭をめぐり、あるエピソードを思い出した。
『マスターはお子ちゃまお口だから甘々なカレーを作ったゾ』
『は? 舐めるなよ。俺だって中辛のカレーくらい喰えるわッ!』
『それなら本日は派手に辛口と行こうじゃないか』
『まさかマスターともあろう方が、辛口のカレーすら食べられない。そんな訳ありませんよね?』
『あ、当たり前、だろ。俺を誰だと、思って……る。俺は神だって分解してみせた大錬金術師だぞ!! パパが美味しそうに食べている辛口くらい余裕だ。
『阿呆ですね。ガリィちゃんがしょうがないから甘々なラッシーを錬金術でパパっと作っておきますか』
『いただきます……あああああ、口がああああああああぁぁぁ!!』
『あああああぁぁ! 僕に辛い想い出を移さないで!! ガリィ〜!!』
「想い……出した!? 何故俺はパパ、風鳴流を忘れていたんだ! 何故あいつらが全員パパを忘れている。何故弦十郎に了子に緒川がパパを忘れているッ!! お前ら、ここを片付けていつも通りにしておけ。あとミカは
「ちょっと、今外に……ってマスターはやっぱりパパっ子ですね。何も見えなくなるお馬鹿さんになっちゃうもの」
キャロルは風鳴流の存在を思い出すと、オートスコアラーの言葉を全く聞かずに再びテレポートをして、S.O.N.Gに、
「また、マスターが忘れちゃうゾ」
「第三番隊、私達を地味に、エネルギー結晶のところまで、連れて行け」
「エネルギー補充をしたら、一度修理をしましょう」
レイアが指示をするよりも早く、ノイズ達はえっちらおっちら担架を持ってきて、四人をフロンティアから導管の代わりとして伸ばしている結晶によって造られた、エネルギー充填場所に運んでもらう。想い出に比べたら補充に時間がかかるエネルギーだが、フロンティアにいるネフィリムが無限に増やしているエネルギーのため、多少時間がかかっても迷惑をかけずに補充ができる。
「それでどうだって? あの
「無事流を回収したそうよ。これから派手に動くと連絡が来ていたわ」
「ほう、派手に動くか。それなら私達も協力しよう」
「シンフォギア装者と本気で戦えるのなんてなかなかないゾ! 楽しみだゾッ!!」
一人だけ担架ではなく『鳥』ノイズに運ばれているミカも、他のオートスコアラーに併走しながら、体をバチバチいわせつつも楽しげに話す。
彼女たちは結局呪いの旋律の収集という最大の目標を達成出来ず、またそれは一生達成出来なくなった。
それでも四体は流以外にも四人と数えられるようになるほど、人に近い感性を持ち始めている。今では更に個性が強くなり、趣味も全然違うし、キャロルの潜在意識では無いであろう考えも持つようになった。
その自由意志によって、流の帰還を知って、状況を理解したオートスコアラー達はティキに連絡を取り、アダムを動かしてもらったのだ。全てはキャロルの幸せなために。
そんな優しさを持った彼女たちも学んでいる。決着のつかなかった戦いに決着を付けたいと、悔しい、リベンジをしたいというチャレンジャー心を高ぶらせ、今から流が暴れるのが楽しみだとレイアは柄にもなく大きな声を出して、安静にするようにとノイズ達に怒られていた。
そしてキャロルは当然の結果のように、世界規模の記憶の上書きによって記憶を書き換えられた。
「記憶を封じたくらいで俺の
しかしその彼女の脳裏には、流を始めとした煩く、お行儀も良くない食べ方をするばかりの装者達との夕食というありふれた幸せな日々を思い出し、取り返してみせると軽く拳を握った。
キャロルはS.O.N.Gに戻ると、チフォージュ・シャトーでもデュランダルについての情報は手に入らなかったと報告しする。
***
「……流ッ! 寂しかった! 皆が流を忘れて、私とツキだけが流を覚えてて、皆と紡いだ想い出も皆の記憶には無くて、私達が間違っているんじゃないかって、私達は変な世界に迷い込んだんじゃないかって」
「ごめん。もっと早くに帰って来れれば良かったんだけど」
「皆優しさを忘れて、響さんも翼さんも心に壁があるみたいに!」
「
現在流は本来の自分の住むべき家。皆の記憶が上書きされる前、流が異世界に転移させられるよりも前に暮らしていた家の一室。調と切歌の二人部屋に流はソロモンの杖を使って、バビロニアの宝物庫経由でこの場所にテレポートしてきた。
以前同様、今のS.O.N.Gも
もし完全に流の痕跡を消したいのなら、封印ではなくそこも上書きをした方がいい。しかし実際に部屋が残っていることから、人の記憶は弄れるが、物体やそこに付随する情報は改変出来ていないと当たりをつけた。
ならば、流が普段からバビロニアの宝物庫経由のテレポートを連発していたため、そのテレポートを使う度にソロモンの杖のアラートが発令所で出ていたから、了子と弦十郎の権限で索敵対象から外していたのだ。
試しに他の場所へ一度転移してみても、その場所にS.O.N.Gが駆けつけなかったため、こうして流は唯一記憶のある調に会うことが出来た。正面から鍵を使って乗り込むことも出来るが、この建物のセキュリティは了子と流とキャロルで構築しており、流でも完全に回避することが出来ない。改竄することも出来るが、特別な施設もない現状では了子にその痕跡がバレてしまう。
ベッドのふちに座る調の後ろから優しく抱きしめ、何度も何度も彼女を落ち着かせるために、流は
現在の調は流が風鳴宗家に異世界から帰還した時の戦闘からずっと体調不良ということで部屋に籠っている。何故なら
「流のことが大好きな奏さんもクリス先輩も、流を……デュランダルを持つ人を倒そうとしてる。皆が流を倒す為にシミュレーションルームに行って、了子さんと対策会議をして、司令が流を敵として倒すために特訓してる」
「今の俺は全世界にテロを起こしたヤバい奴ってことになってる……いや、以前も国連に反応兵器で脅したような。あれは反応兵器を打ってきたからノーカンだな」
「でも! 私達……ううん、私の……大好きな流を倒すために対策をしている人達の場所になんて行けない、行きたくない」
調は後ろを向き、流の胸元に顔をくっ付けて、顔を見られないようにするが、隠しきれていない耳は真っ赤に染まっている。
調とも割と際どいスキンシップも行っているし、クリスとかと一緒に風呂へ突撃してきたりする調。更に切歌にはよく大好きと言葉にしているが、流に対してその言葉を言うことはあまりない。それもこれも、流が消えるという現象が起きてしまい、言葉に出来ずに後悔した想いがあるからこそ、調は流に想いをコトバにして告げた。
「俺も大好きだよ。でも調が大好きって言ってくれるのなんて凄い久しぶりだよね」
「言葉にするのは恥ずかしい」
湯気すら上げてしまうほどに顔を真っ赤に茹だらせている調を見て、流の心に了子のようなお茶目心が起き上がる。
「切歌にはよく大好きって言ってるよね」
「それは切ちゃんだから」
「ねえ、調」
流は調の頭部の両サイドを手で挟み、顔と顔を対面させる。限界を超えて顔を赤くしているが、流がじーっと真っ直ぐ見てきたことに根負けして、彼と目を合わせる。
黒目に金と水色の光が渦巻き、もう片方の目は紫色一色の球体が埋め込まれた人外の瞳をしている。だが、調はその眼がカッコイイとすら思ってしまう。惚れた弱みではないだろうか。
「切歌と俺、どっちの方がより大好き?」
「……」
その問を聞いた瞬間、調の顔はきょとんとしてから、眉をひそめて考え始める。
明らかに女々しい質問ではあるが、調は知っているのだ。流は複数人の女性、というかシンフォギア装者スキーであり、装者を皆愛しているが、それと同様に独占欲が神をも超えている。
調にとって、切歌と流は好きのベクトルが違うため、こんなことは言われてもとても困ってしまう。泣きそうな顔をしそうな時、流は軽く頭を下げてきた。
「冗談だよ。切歌も俺もどっちも大事だってことはよくわかってる。
「どういう事?」
「……装者がセレナだけの世界」
「え?」
「色んな世界がある中で、この世界は唯一奇跡的に正解を引き続けられた世界なんだよ……そんなことはいいんだ、重要な事じゃない。俺なら迷わず皆好きだッ!! って言っちゃうから悩む調は可愛かったよ」
「バカッ!」
流に言葉と共に平手をお見舞する。その後彼から離れた調は目を閉じて、彼女に憑いているツキと会話をしてから、決心したような表情で流を見る。
「流は顔を見せに来ただけじゃないよね?」
「正解。俺は調を攫いに来た。今の調はとても危険だ。下手したら記憶を書き換えられている人達に捕まるかもしれない。今の世界において、風鳴流というデュランダルの行使者を擁護するのはおかしいからね」
「来てくれたのは嬉しい。でも私は行きたい……けど行かない」
決意の篭った瞳でそう告げられた時点で、流はもう何も言えなくなってしまった。普段アホをやっている切歌と同じようにアホをやっている調だが、頭自体は流や了子の英才教育でむしろ良く、この場面でそう決意をしたのなら間違いはないだろう。しかし流は
「なぜ?」
「私は女子高生で、S.O.N.Gのエージェントで、シンフォギア装者。そして私は忍でもある」
素早い動作で裾の内側に隠しておいたクナイを取り出して調は構える。流が消え、世界がおかしくなっても、緒川に習った忍びの術は鍛え続けてきたのだろう。
体格もそうだし、流は色んな技術に手を出しているので、今では忍術だけで言えば調の方が上である。
「怪しまれず、元々の構成員として敵対組織に潜入できているこの好機を捨てるのは勿体ない。流でもS.O.N.Gのデータベースにハッキングするのは難しいはず。そういう内側で情報を得ることを私はやる」
「危険だから却下したい」
「駄目。私も流と居たい。流を忘れたこの空間に居たくない。でも、今の状況で私が今の場所を捨ててしまうのは、忍としての術を習った私には出来ない」
もし今の調の力量で初めてあった時のようにシュルシャガナのペンダントを出会い頭に奪おうとしても、上手くいかない。そう思わせられる程に調の想いは研ぎ澄まされている。
「……はぁ。俺の好きな子達は覚悟がガンギマリし過ぎていると思うのよね」
「翼さんには勝てない」
「翼は幼い頃から覚悟が決まってるちょっとおかしい女の子だから比較するのはちょっと。無茶はしないでね」
「引き際は弁えてる。それに緒川さんがいるから、もし動けるとしても一度か二度だけ」
「わかった。適度に頑張ってね」
「うん」
目を閉じて、顔を流の方に向けてきた調に答えるように、彼女の小さな唇に唇を合わせ……。
『カミサマも知らない、ヒカリで……』
「……女の子と会うならマナーモードは必須」
「いや、これアダムに貰って音設定した後にすぐに来ちゃったから……その、ごめん。もっかい今からキスを」
「月詠調は心の壁を建築した」
「本当にごめん。出るね」
「うん」
アダムから貰った端末がちょうど着信メロディの『逆光のフリューゲル』を垂れ流す。
深くため息をつく調に平謝りしながら、空気の読めない通話に苛立ちげに出る。
「空気を読んで欲しいんだが」
『黙れ。今すぐにS.O.N.Gの発令所をソロモンの杖で覗き見よ』
「高く付くからな」
訃堂がいきなり要件を伝えてきたが、流と訃堂のやり取りはいつもこんな感じであるが、訃堂は無駄な事は一切しない。
流は口の前に指を持ってきて調に静かにしているようにお願いをしてから、S.O.N.Gの発令所の一角に瞳一つ分くらいの穴を作って、ソロモンの杖で空間を繋げる。
そこには
「我が名はシェム・ハ。人が仰ぎ見るこの星の神、アヌンナキの一人であり、最後までバラルの呪詛を施そうとした他のアヌンナキに抵抗した一人。我がここ、S.O.N.Gに降臨したのは他でもない。現代でデュランダルを操り、人類にバラルの呪詛を施したアヌンナキの一人、ゼウス。かの神の打倒を掲げている我はゼウスに狙われている。故に遺憾ではあるが、神の力を得たアダムを打倒した人の集うこの場所に現れた。我は人類をバラルの呪詛から解き放ちたい」
ピンクと白の肌をして、
「頼む。ゼウスを打倒する手助けをしてくれ」
下げる顔から滴る水滴。それを見ている装者達や弦十郎、そしてあの方と同じアヌンナキをその目で見た了子は顔が引き攣っている。そこに居るキャロルは顔を強ばらせる。
バラルの呪詛を施し、アダムを追放し、あらゆる混沌を作る元凶のはずのアヌンナキが、創造物らしい人類に頭を下げている。
その光景を見た瞬間、流はバビロニアの宝物庫を閉じる。
「巫山戯るなああああああああぁぁぁ! あいつ、絶対に
原作知識でメタ読みして、フロンティア事変や魔法少女事変を未然に防いだ男が吠える。
XVFのテーマは因果応報とバタフライエフェクトと愛です。
シェム・ハさんが原作知識持ち?ではという超速理解を流がしましたが、流自身は4期までの知識しかありません。4期は現代に転移した時に見ました。描写してなかった。
アヌンナキが人類に頭下げるとかおかしい=外的要因=アニメだろというアニメちゃんみたいな思考回路しています。
理由は次回。キャロルの想い出のバックアップの方法はちょっと後に出てくると思います。