戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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今回の話にはシンフォギアXV3話の内容が含まれています。視聴していない方はご注意下さい。


#137『/失ま○◆カウン■ダウ★』

「りんごは……」

「りんごは……」

 

 マリアとセレナは風を感じながら、故郷の歌(Apple)を二人で歌っていた。赤や黄の葉が舞い散り、舗装された道を秋の色で染め上げる。そんな中を真っ赤なオープンカーで二人の歌姫を乗せてひた走る。

 

 年が終わる数ヶ月前、()()()()()湿度が低く、寒い日には気温もマイナスが顔を出すこともあるこの場所で、二人の歌姫と()()()()()()()()()は快適に風を感じていた。

 

「ホント無駄に高度な()()()()を搭載した車だな。これ作ったのは絶対に了子だろ」

「当たり。弦十郎くんカラーなら最強じゃないとね! とか訳分からないことを言いながら、昔に乗っていたピンクのオープンカーを改造して作られたのがこれ」

「……無駄過ぎる。何故オープンカーに断熱フィールドを貼ってるんだよ。しかも生半可な現代兵器じゃ貫けないシールドもって、了子は自重する気はないのか? 俺も了子も一応司法取引中なんだぞ」

「断熱フィールドの効率化は僕も手伝わせて貰いました! 了子さんが使う紫色のシールド、アースガルズを上手く現代科学と錬金術だけで表現するのに苦労したんですよ!!」

「おー、よしよし。最近のエルフナインは更にママの技術を覚えてるな。性格や考えはママはもちろん、俺や弦十郎父さんのも学習しちゃダメだぞ」

「…………無駄過ぎる」

 

 空を飛んだり海の中を進むことは出来ないが、海の上や砂漠も走れ、戦車の砲撃程度なら問題なく耐えきれる特別な車を流は運転している。

 防御力はもちろんのこと、シンフォギアにも搭載されている断熱フィールドによって内部の環境は快適そのもの。全く揺れることも無く、どんなに危険な運転をしても内部の人を保護するという、本当に無駄なものが出来上がった。

 何故無駄なのか? S.O.N.Gは特異災害や異端技術と戦う組織であり、そういう組織の人達の攻撃には耐えられないからだ。

 

「ね、ねぇ……あとどれくらいなの?」

 

 あのおかんのマリアは歌い終わると、いつもは絶対にしない貧乏ゆすりまでしながら、流に何度目かになる到着予想を質問する。

 

「あと20分くらいかな? でも良かったのか? ()()()()に来るなら花が咲き乱れている季節の方が良かったんじゃ」

「いいのよ。おばあちゃんもこの季節の想い出の場所は紅葉も素敵な場所だって教えてくれたもの」

「紅葉も綺麗だってネットにそういえばあったか。マリアとセレナがいいならそれでいいんだけど」

「私はマリア姉さんと流さんが居れば何時でもいいですよ! 今回は奏が居ませんし、居ませんし!!」

「セレナ……!」

 

 本来なら宝物庫を経由したテレポートで数秒で辿り着けるのだが、それでは風情がないという指摘を皆から受け、少し手前にテレポートをして、車も一緒に持ってくる無駄をしていた。先程からキャロルが無駄と何度も口にしているのはそういう事だ。

 

 そうして目的地だった草原に辿り着くと、疎らに存在する秋色の木々はマリアの記憶にはない色だが、一目見ただけでわかる。そう、ここが想い出のお花畑であることが。

 F.I.Sに捕まる前、セレナが死んでしまうもっと前。彼女達は確かにここで姉妹の絆を、暖かな陽だまりのような想い出を作ったのだ。

 マリアの目にはお花の王冠を作りあって、互いの頭に乗せ合うそんな光景を幻視する。幼い幼いあの日の想い出が領空侵犯……溢れ出る。

 

「おかえり」

「やっと一緒にまた来れたね、マリア姉さん」

「ええ、そうね。せっかくこの地に来れたのに、その、今の想いを言葉に出来ないわ……困ったわね」

 

 過去を想起していたマリアの手を、セレナと流が握りしめる。輝かしき過去を思い出すのもいい。だが、今の彼女はもうそれだけに囚われたりしない。未来にセレナや流、翼などの皆と歩んでいくと、あの日セレナが復活した日に誓ったのだから。

 マリアの瞳から零れる涙を彼は拭き取り、照れながらもまた故郷の歌を歌う二人を眺める。

 

「……キャロル、またパパとの想い出の地に行こう」

「ああ。あの地は前に行った時にテレポートジェムの到着場所に記憶させているから何時でも行けるぞ」

「次はオートスコアラーの四()も一緒がいいです! レイアさんの妹さんは大き過ぎて難しいかもしれませんが」

「そうだな」

 

 五人は各々しみじみとしていると、空気を読まずにセレナの空腹を知らせる音が鳴り響く。真っ赤になるセレナに釣られるように皆は笑いだし、流は煽り、やり過ぎだったのかアガートラームを纏ったマリアにお仕置きされていた。

 

 

 車の断熱フィールドの範囲を広げて、地面に引いたビニールシートを範囲に入れ、五人は雑談をしながら昼食を摂る。

 高いトマトに混じった普通にスーパーで売っているトマトを間違って食べたマリアが泣きそうになるなんてこともあったが、マリアやセレナの認識ではいきなり異端技術の行使者が襲いかかってくるなんてことも無く、平和に時間が流れていく。

 

 この季節になるとシーズンも過ぎていて、観光客向けのお土産も販売していないが、それでもこの紅葉を見るために人は訪れている。

 アメリカの野望から世界を救うために立ち上がり、フロンティア作戦という方法で世界を救った聖女であるマリア。そのマリアに似ている顔を持つ美少女セレナ。こちらも互いに似ていて、美少女であるキャロルとエルフナイン。この四人が集まっているのに注目を集めていないのは、キャロルが人払いの錬金術を使用しているからだ。

 

「……三人ほど送るから」

『分かった。いつも通り判断してから風鳴了子と風鳴弦十郎に引き渡す』

「頼んだ」

 

 大っぴらに錬金術を使っていれば錬金術師の注目を集める。そして今の欧州はパヴァリア光明結社の残党で溢れ返っているのだ。

 知らず知らずのうちに傘下になっていたり、庇護を受けていた一般家庭や企業ならまだ良い。明らかにローブを纏ってこちらを錬金術で覗き込んでいる錬金術師は頂けない。

 

 

 アクシズ事変は全てアダムのせいにした訳だが、当然サンジェルマン達は無罪放免になる訳がなく、司法取引に応じることになった。

 幸いだったのが、欧州の闇と言われているパヴァリアであったが、サンジェルマン達は長い歴史の中で少しずつ生命エネルギーを集めてきた。サンジェルマン達の革命では数百年以上で7万の人間()()殺していないのだ。しかも無垢なる一般人には極力被害を出さずに。

 

 アダムも無能だったし、サンジェルマン達は革命のためなら何でもする気ではいたが、一般人を殺そうとまではしなかった。

 もしパヴァリアを滅ぼすために反応兵器を不意打ちで撃たれたら溜まったものでは無い。少し前の時代なら核兵器、水爆などなど、無駄に一般人を殺せば厄介なことになるので、パヴァリアではアダムとサンジェルマンの名において無駄な殺生は禁じられていた。

 

 無駄な殺生は行わなくても、一般人を使った実験はしていた訳だが、こちらも極力被害数を出さないようにしていたため、欧州の闇と言われながらも世界の敵にはならなかった。

 裏の世界でもその世界に合わせたルールは一定数存在する。それが機能していたからこそ、パヴァリア光明結社は欧州の闇と言われるまでに成長出来たのだ。

 

 しかし今は強大だったアダムは死亡し(た事になっている)、サンジェルマン達は牢獄に閉じ込められているという情報が既に流れている。あの掟を作った二人が居なくなったため、アホな錬金術師は表で暴れようとして各地の異端技術から国を守ろうとしている組織に狩られていた。

 

 流が今回露骨に錬金術をキャロルに使ってもらっているのは、不意打ちされるとマリア達が怪我するので、最初から気が付かせ、流やキャロルが残党の居場所を割り出し、バビロニアの宝物庫にボッシュートしている。

 そして司法取引でパヴァリアの残党を捕らえる手伝いをするように命じられているサンジェルマンに、捕らえた残党の危険度に応じて罪や罰を決めてもらっている。

 

 こんなことを流や弦十郎はやらせたくなかったが、他ならぬサンジェルマン自身がこれを受け入れているので口の出しようがない。

 

 今回も三人の錬金術師がバビロニアの宝物庫にボッシュートされた作られし平和な訳だが、マリア達は想い出の場所を満喫した。

 

「そういえばずっと気になっていたんだけどさ」

「……私自慢じゃないけど、流の知らないことを答えられる気がしないのだけど。了子とかマムとかに聞いた方がいいんじゃない?」

「そんなことは無いさ。マリアとセレナが歌っている故郷の歌にさ、なんでルル・」

 

『なんでルル・アメルなんて言葉が入っているんだろう?』と流は言うつもりであった。だが、彼がその言葉を言い終わる前に、視界にノイズが走った……ソロモンの杖で操れるノイズが視界の中で走った訳ではなく、もちろん流によってデュランダルを埋め込まれている新種とも言えるデュランダル・ノイズなら、アスリートも真っ青な速度で走れるが、今はそのノイズのことを言いたい訳では無い。

 テレビなどで画面に白い点が多数ランダムにポツポツと現れる障害の方のノイズ(スノーノイズ)だ。

 

 視界に、聴覚に、直感に、魂にノイズが掛かったような感覚を覚えた流は、すぐに昼間の空でも薄らと輝いている月を見上げる。月から流に何かしらが流れてきているわけでもなく、変な繋がりがある訳では無い。

 肉体、精神、魂のあるべき場所。全てを一通り確認してみるが、特にこれと言って変なところはない。もし変なエネルギーが流に流れ込んできていたら、こちらを見ている生身でアガートラームの性質を扱えるセレナが気が付くはずだ。

 

「……何でもない。どうせマリアじゃ答えられないか」

「ちょっと! そこで切られたら気になるじゃない。言ってみなさい! さあ、さあ!!」

「マリア姉さん……流さんが頼ってきたからって必死過ぎるよ。だからただの優しいマリアやおかんマリアとか言われるんだよ?」

 

()()()()の遠慮のないやり取りを見ながら、流はテレパスで聞こえてくるサンジェルマンと了子のやり取りを聞き流す。

 ああ、今日もこんな風に馬鹿が出来て良かったと、流は当たっているマリアのふたつの山の柔らかさを堪能するのであった。

 

 

 ***

 

 

 流と了子は()()()()()()()風鳴本家の最奥、風鳴当主と許可をした者のみしか入れない区画に来ていた。風鳴の傘下の旧家において、この区画に呼び出されることこそが最大の目的とも言えるらしい。

 何でも風鳴の全てがここにはあるとか。

 

 流と了子はテレポートで直接風鳴の最奥にある部屋に来たあと、指定された絡繰りを操作すると、地下への入口が出現した。そのまま言われた通りに道を進むと、忍術や科学、()()()などの異端技術の匂いのするギミックに妨害をされるが、全てを二人は無視して歩を進める。そして防空壕として作られたであろう痕跡のある空間に出る。

 

「……要石で封印しないで龍脈上の地下にこんなもん作るなよ」

「凄いわね。ここなら異端技術の研究が相当捗りそう。まあ、今ではネフィリムワンコのいるフロンティア(無限機関)とか、流の近く(無限機関)の方が遥かに効率的なのだけどね」

 

 レイライン、地脈、霊脈、龍脈と、さまざまに呼称される星に巡らされたエネルギーパイプライン。もちろんその上に風鳴本家は存在するのだが、そのエネルギーを上手く取り出すための実験がここで行われていたであろうことが二人には分かる。

 日本は確かに忍術などの異端技術に近い技術を有していたが、シンフォギアのような明確な異端技術の力を獲得したのはここ数年である。それまではひたすらに異端技術の研究が各地で行われていたようだが、今ではその大半が凍結されている。

 

 了子、ナスターシャ、ウェル、キャロル、エルフナイン、サンジェルマンなどの異端技術を行使して、研究する者達の成果を得ている。フロンティアは国連管理となっているが、その実体は流の所有するバビロニアの宝物庫の中にある。そして流に交渉すれば無限機関たるフロンティアを借りられるので、龍脈からのエネルギー精製はもう行われていない。

 元々龍脈の力を使いすぎるとその地の自然の力が衰えてしまう。西日本にある砂丘なんかは地の力を使い過ぎた結果だとも言われている。それは龍脈を封鎖することでも起きることだし、使用することでも起きてしまう。故に国土を疲弊させるような研究はもう閉鎖されていた。

 

 風鳴の研究の跡に二人は口を出しながら、通路の奥まで来ると、風鳴の家紋が描かれた黒いふすまがあった。

 二本の刀がクロスされ、その後ろには鳥の双翼にも、()()()()にも見えるその家紋の奥から、訃堂の中に入ってくるように催促をする声が聞こえる。

 

 億が一を考えて、流は先に位相差を作り出しながら中に入り、新品の匂いがする畳を踏みしめながら問題ないことを確認すると了子を中に呼んだ。

 

 部屋の奥にはこれまた家紋の描かれた家旗が壁に縫い付けられていて、その壁とふすまではない二方の壁には本棚にびっしりと書類や本、巻物が置かれていた。

 そして何より、家旗の前には刀と銅鏡と勾玉が置いてある。

 

 現在はこの国の帝に返却されたはずの三種の神器である天叢雲剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉が安置されていた。いずれの完全聖遺物も既に起動状態のようだが、この風鳴本家に起動している完全聖遺物が存在する反応はS.O.N.Gでは確認出来ていない。

 この部屋はこの国の宝を他国から感知されないように作られているのかもしれない。S.O.N.Gは元々特殊対策機動二課と呼ばれる日本の組織であったので、その探知方法は熟知しているのだろう。

 

 その神器の前にあぐらをかいて座っているのは風鳴現当主であり、流が今の流として造られるきっかけを作り出した黒幕、風鳴訃堂がそこにいた。

 

「何故俺を呼び出した。俺は翼の婿の最有力候補ではなく、確定したんだろ? まだ死合いをしないといけないのか? もしかして引退したくなったのか? 翼がまだ当主を継ぐ気がないからもう少しそこに座っていろ」

「……」

「おい、聞いているのか?」

「しかも私まで呼んで、弦十郎くんは呼ばないなんて。何をさせたいのかしら? この体は弦十郎くんのだから、もう闇に浸るようなことはしたくないのだけど」

 

 未だに目を閉じて腕を組んでいる訃堂に対して、流は明らかに舐めた態度で声を掛け、了子はやれやれといった雰囲気を醸し出している。

 二人は正しく風鳴訃堂に国防の面で評価されていることを知っている。流は異常な戦闘能力と神の力を。了子はフィーネとしての知識や力を。これらは絶対に替えがきかないモノであり、敵に渡ればそれこそ国土が蹂躙されることになる。故に訃堂は決して二人に対して悪くしないし、二人も線引きは弁えている。

 流を監禁したじゃないか? その結果が翼との婚約確定なので流がキレられないことは訃堂自身理解していた。

 

「風鳴流よ! 風鳴了子よ!」

 

 訃堂は齢100を超えるというのに未だに衰えぬその気迫を存分に発揮しながら、開いた目を弦十郎のように赤く輝かせる。こんな事をするから政敵からは悪鬼や怪物、妖などと呼ばれるのだ。

 しかし人間を生殖機能以外辞めていて、神の力を増幅さえすれば神になれる流。弦十郎への愛によって大人しくしているがその本質は月を穿ち、異端技術の力で人類をまとめあげて、再度カストディアンに再会しようとしていた了子(フィーネ)。二人がその程度で精神が揺さぶられる訳もなく、置かれていた座布団に座り、据えられていた菓子に口をつける。

 

「まずは防人たる風鳴の姓を与えられた先史文明期の巫女、風鳴了子。お主は弦十郎が生きている限り、弦十郎を支え続ける。この認識に相違はないな!!」

「当たり前じゃない。例え弦十郎くんが死んでも離れる気はないわ。決して私の愛しい人は離さない」

 

 感情が昂りすぎたのか、了子の瞳がフィーネの瞳の色に変わっているし、髪が不思議と浮き上がっているが、その顔は弦十郎に永遠を誓ったいつまで経っても乙女であることが変わらない風鳴了子だった。

 その了子の覚悟(弦十郎への愛)を確かめたかったのか、訃堂は深く一度頷いたあと、茶に手を伸ばす。

 

『ママ大丈夫? 変な呪いとかまじないとか呪詛とか掛けられてない?』

『問題ないと思うわよ。私も流も感知出来ないのなら負けよ』

『今俺たちに敵対行動を取る意味もないし、心配し過ぎか』

 

 流は風鳴の姓を名乗っていたのに、風鳴たらんとしていなかった血の繋がりのある存在、旧名風鳴轟には舐め腐っていた。故に最終決戦時に魂を握り潰しただけで死んだと思って、後から訃堂に会ってあの存在の魂の残滓を感じ取り、やっと完全にはあの時死んでいなかったのだと気がつく程度だ。

 しかし目の前にいる訃堂に舐めた態度はすれど、決して油断することだけはしない。もし変なことをされれば宝物庫の入口を手の前に、出口を訃堂の背中に出現させ、訃堂自身の存在する位相差を歪め、位相の彼方に吹き飛ばす準備も済んでいる。

 

『……あっ、穴子じゃなくて、鰻でもなくて、蛇のヨナルデパズトーリを放り込みっぱなしだ』

 

 と思い出した時にまたテレビのスノーノイズが視界や聴覚、その他感覚器官に攻め込んでくるが、それを無言で耐えきる。

 この現象は奏やセレナも流の元からいなくなってしまったので、魂の形を模倣する存在がいないからこそ、肉体と魂と精神の繋がりがおかしくなっているのではないか? と流は考えている。

 

「流よ、どれほどまで神の力を扱えるようになった」

「どれくらいって例えばどんな使い方だよ。神の力自体は種火程度なら残しているから、嫌がるデュランダルにお願いすれば増やすことも可能だけど」

「レイライン封鎖後にダメージを負った大地への力の還元、ソロモンがお主の肉体で行ったあれは出来るか?」

「できる」

 

 アダム戦後のアダムとの会話でアヌンナキというワードを聞いたことによって、流は完全に神に乗っ取られ掛けた時、彼を見守っていたソロモンが神の意志の代わりに乗っ取った。その時に神の力をレイライン封鎖で傷ついた自然へと流していたため、その力の使い方は体が覚えている。

 

「人類、この日ノ本の人を創り出すことは可能か?」

「一からは無理だな」

「アダム・トドロキとティキ・トドロキのような、機械人形を元にすれば可能であるか。同じく肉の人形であっても可能かどうか、答えよ!!」

「可能というか、アヌンナキが創り出した定義の人類とは少しだけ違った人類ってだけで、99.99%は同じだぞ? それでいいのなら可能だと言える」

「分かっておるわ……ふむ」

 

 訃堂は顎に手を当てて何かを考え出すが、流は面倒くさいので結論を告げることにする。

 

「翼は決してこの日本を捨てることは無い。世界の歌姫だったとしても、日ノ本の防人であることは捨てない。風鳴であることを捨てない。そしてそんな翼を俺は絶対に捨てないし、捨てられないように努力をする。故に俺はこの国を守ってやる。もし神の力を使わないとこの国を護れないなら使ってやるよ。これで聞きたいことは聞けたか?」

「貴方が弦十郎くんを切り捨てない限りは協力してあげるわよ」

「……左様か。ならば良し! 用は既に済んだ、去れッ!!」

「言われなくても帰るわ」

 

 流と了子はその場で挨拶もなしにテレポートをして、皆のいるS.O.N.Gに帰るのだった。

 そしてその場に残された訃堂はというと。

 

「ふふふ、ふはははははは!! 七度生まれ変わろうとも、神州日本に報いるために必要な、神の力……それは既に日ノ本の(かいな)の中に。不肖の防人は真の防人たらんとし、その身にて神を引き留める。愛ある限り、神は決して翼を裏切らぬ。例え世界が終わろうとも」

 

 国を、そしてこの星のリーダーとして君臨していたアメリカは失墜し、日本の意思(訃堂)は決してアメリカとは手を組まないと決めている。これは流と了子、それに装者達への配慮である。その配慮をするだけで、無限のエネルギーが手に入り、最強の戦力(弦十郎家族)が従順になり、特異災害も発生しなくなる。

 

「出来損ないの我が息子も神の巫女を決して離さず、そして例え死んだとしても神の巫女はこの風鳴の護る日ノ本から消えることは無い。日本の国防の邪魔をする内部の膿も流を利用することで排除出来た。これでやっと、やっと! 日本の国防は磐石となるッ!!」

 

 訃堂の心からの笑みを映し出していた光の点っていない液晶は、訃堂の気迫によって粉々に砕け散るが、国を護れなかった幼き日の屈辱に喘いだ防人も同じく砕け散る。

 訃堂は来たるアヌンナキに対して最大限の警戒を敷くべく、護国災害派遣法による行使できる戦力幅を広げるために改めて動き出す。

 

「我々の勝利だッ!」

 

 その時、確かに藤尭はクシャミをした。




3話最後の黒幕について。
なんでや。お前だけは敵と繋がらないと思っていたのに。
あの黒幕が欲しているのは七度生まれ変わろとも、必要なのは神の力。
既にD計画を使って手に入れているのであの人の暗躍はありません……きっと。故に3話ラストの黒幕がこの作品では変化します。

多分残党の目的は変わりませんが、それを取り巻く環境は大幅に変わると思いますので、お気をつけください。

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