戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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今回はAXZの振り返りです。

一部振り返りじゃない部分(ラスト)があります。

あとアンケートに答えてくださった方々ありがとうございます‪。5期は序盤をアダムティキルートで話を書いていきます。



#135『アダムは最後を締めくくる』

「僕は4つのことについて話していこうと思う。フィーネとパヴァリアの因縁。風鳴及び(デウス)計画。現代のパヴァリアの終焉まで。そして今のS.O.N.G.の保有戦力についてを話していこうと思う」

 

 設置されているテレビに映し出されたティキの寝顔から画面を遷移させ、AXZ事変と同時期に進行していたD計画、その前にあった異端技術狩りについて話し始めた。

 

「僕は400年前にフィーネに負けたのさ。完全で完璧だと思っていた僕は、計画の要であるティキを封印されて海の何処かに飛ばされてしまった。その時、僕は初めて人類(不完全)に敗北し、そして初めて見逃された。情けをかけられたのさ……」

 

 異端技術狩りをしていた400年前の海賊帽子を被ったイケイケだったフィーネが、他の奴らよりも戦いがいがあって、楽しかったからティキ(異端技術の塊)だけを封印してアダムとサンジェルマンを見逃した。

 アダムは内心憤慨しながら、人間には舐めてはいけない存在が居ることを理解すると共に、人間を有効活用しようと思い立った。想いさえあればあのカストディアンのただの巫女ですら、自分を倒すことが出来るのだと知った。

 

 まず彼がその後に行ったことは、サンジェルマンに対する態度を少しだけ優しくする事だった。なお、現代においてカリオストロとプレラーティという同志と本音で殴りあった結果、その優しさという名の洗脳は解除されて、敗北する原因(神の分解解剖)を作った。

 

「フィーネは本当に酷い。僕にここまで屈辱を与えながら、全く覚えていなかったのだからねぇ。どう思う? 風鳴了子」

「……弱いのが悪いと思うわ。うん、だって記憶に残っていなかったのだからしょうがないじゃない」

「何故風鳴弦十郎が君を愛しているのか分からないよ」

 

 愛によって神になったことのあるアダムでも、了子(フィーネ)だけは仲良くなれないと確信を持って頷ける。それくらい神になって改心したアダムであっても、フィーネは許容できない存在のようだ。

 クリスや翼などの裏切られたが受け入れている人達もいるが、今のフィーネと比べて、昔のフィーネはあれ以上酷い惨い鬼畜な存在だったのかもしれない。

 

「僕の過去はもういいさ。今では愛せる妻も手に入れたからね」

「ただし戸籍年齢は16歳」

「キャロル! 年齢が低いからといって、人を愛せないなんてことは無い!」

「うっさいぞウェル! 俺はアダムを煽っているのであって、お前と愛論議をしたいわけじゃない!」

「親愛以外に愛を抱いたこともない小娘が、何故僕と愛について議論が出来ると思っている!?」

「貴様だって愛愛と喚いているが、真に愛を抱いたことなんて無いだろ!」

「この愛を司る僕が愛を抱いたことがないなんて、どうしてそんなことが口にできるのさ!」

「なん……だと!?」

 

 キャロルは戦慄した。流がオートスコアラーを単独でボコった時よりも。弦十郎が全身デュランダルの流に殴り勝った時よりも。アダムが悪魔や天使を経て、神となった時よりも。これらよりも強大な悪寒と共に、

 

『あのウェルですら親愛以外の愛を抱いたことがあるのか。フィーネはもちろん、アダムも今はティキを愛している。それなのに俺は……私は……』

 

 あのウェルに一般的な感性で負けたことに膝を着きそうになる。

 

「僕は何度だって言っていた。お菓子のみを食べるこの口が酸っぱくなるほどにね! 英雄たる素質のあるこの僕が、僕自身を愛していないわけが無いだろッ!!」

「……アダム、続けてくれ」

「了解だよ。君の考えは察してあまりあるが、今はつつかないであげよう。おぼこのキャロル」

「とか言いながら弄ってるじゃないか!」

 

 キャロルは金、エーテルの錬金術でアダムを吹き飛ばすレーザーを撃ち出すが、アダムはパヴァリアの総力で作られた帽子を使って、()()()()()語りに戻る。

 

「……風鳴とD計画についてだね。まず風鳴とはカストディアンが降り立った地を護るためにカストディアン達が作り出した特殊な血族だ。今でいうコトバノチカラなどの想いによるブーストが比較的容易にでき、カストディアンを神と見立てて、天使の血を引く一族とも言われているね」

「風鳴訃堂はあの考えに三種の神器を使う才を奪ったとはいえ扱える曲者。八紘は生身でオートスコアラーのファラに刀を使って勝利できるほどの防人。翼ちゃんは覚悟が決まっている天羽々斬の正規適合者でありSAKIMORI。流は風鳴の掛け合わせで色々とぶっ飛んでて、弦十郎くんは最強の人類。確かに風鳴はちょっと所ではないほど…………フィーネよりも異常よね」

 

 風鳴に殺された風鳴訃堂の弟、破門されし風鳴である轟轟はソロモンの指輪を扱い、あらゆる分野の知識を持っていた。まあ、それを有効活用できずに訃堂に操られて死んだ訳だが、強くなれる才能だけは確かにあった。

 

「風鳴はこの地を護るために存在すると言ってもよく、風鳴訃堂はある意味最も風鳴としては完璧だよ。そして風鳴などのカストディアンに近い存在の中から選ばれるD計画の導き手。リインカーネーションと同じようにいきなり現れるソロモンの指輪の担い手。そう、カストディアン……アヌンナキの領域を侵さんとする異端技術を駆逐するための神の器を作り出す計画、それがD計画の本来の目的()()()。そう、だったなんだ。カストディアンに反逆せしソロモンによって、流という存在が生まれたからね」

「……それはおかしいと思うんだけど?」

 

 アダムの言葉に疑問を浮かべたのはウェルだった。手元の渡された書類を数枚めくってから、ひとつ頷く。

 

「君は神の器、確か神話のゼウスのような存在として生まれるはずだった、異端技術を絶対に殺す存在のDを仲間に引き入れようとしていたじゃないか。カストディアンが創り出した生物モデルのプロトタイプである君は、D計画で素体が趣旨通りに造られていたらDの抹殺対象だろう? 何故そんなことが出来ると思っていたんだ? 水と油じゃないか」

 

 アダムは対カストディアンのためにD計画で生まれた流が仲間になるように勧誘していた。結局流の肉体はその計画で造られたが、中身は想定とは全くの別物だったし、仲間を傷つけられた流がそれに頷くことはなかったが、もし想定通りの存在なら流以上に勧誘は無理ということになる。

 アダムはカストディアンに造られた異端技術の結晶のようなものなのだから、異端技術を絶対に殺す人格ならば確実な敵対しか待っていないはずだ。

 

「もし仲間になっていたら概念を付与して、全ての異端技術を破壊する存在に変えていたさ。仲間と言っていたけど、あの時の僕は道具としてしか見ていないよ」

「……なるほど。神の都合のいい異端技術の破壊者ではなく、カストディアンも含めて全てを破壊する者にする気だったと」

「そうさ。それくらいの劇薬でなければ、カストディアンを倒すことは出来ないだろう?」

 

 にも関わらず、まさか人間に変えられてしまうとはね、とアダムは笑いながら片腕に強く触れる。昔のように造られた皮膚の奥にあった機械特有の硬さはなく、人として今を生きていることにアダムは笑みがこぼれる。

 あの人形のままではティキと愛し合うことも出来なかったのだから。

 

「本来のD計画を話したけど、今代のD計画の担い手は計画を己のために使った……いや、使うように操作をされていたんだったかな? 風鳴轟、ソロモンの指輪という知識と強さを与える聖遺物を手に入れたのに、国防のために使う気がなかったから訃堂によって破門された男がね」

「流は私たちに保護される少し前に意識を覚醒させた。肉体自体は前から造られていたけど、精神はその時に初めて覚醒したと」

「轟轟が好いた風鳴八紘の妻を風鳴訃堂が孕ませて生まれた子供が風鳴翼。その風鳴翼の遺伝子と轟轟(風鳴轟)の遺伝子で造られたのが風鳴流。もし流が保護された時に弦十郎ではなく、櫻井了子や緒川慎次を選んでいたら風鳴訃堂はどうしたのやら」

 

 風鳴訃堂は神の肉体を創り出し、それを風鳴で管理して、国防を強化しようとしていた。それには流を風鳴にしなければいけないのだが、まだ武術の武の字すら知らなかった流がたまたま弦十郎を選んだから、現在は風鳴になっただけなのだ。

 そうアダムが口にすると、先程ノイズが運んできたテレビが再び映り出し、風鳴訃堂がそこにはいた。

 

「それこそが風鳴の運命力よ」

 

 それだけ言うと画面が真っ暗になる。

 

『パパがノイズに炭素化されないのは魂の位相がズレているから。もしそれがなかったら、最初の時に死んでいたと思うが……』

 

 ソロモンの指輪があったとしても炭素化されてしまう。それはその指輪を死ぬギリギリまで付けていた轟轟の肉体が証明していた。

 あの時ノイズを嗾けたのはソロモンであり、悪魔や天使を使役していたソロモンだからこそ、流の魂の位相差に気がつけていたが、それを知らなかったはずの訃堂がドヤ顔でその事をさも計画のように語っていたことに疑問が浮かぶ。

 

「本来ならDの体が動いた時点で轟轟はリインカーネーションして、その肉体を奪うつもりだった。だが、轟轟がDの肉体の管理をソロモンに任せていたため、その体に流が生まれ、動くようになったことに気がつくのが遅れた。そして轟轟の肉体はソロモンの呼び出したノイズに消され、リインカーネーションは流の肉体ではなく、風鳴訃堂の肉体へと向かった」

「……もしかしてソロモンと風鳴訃堂は共謀していたのか? 風鳴訃堂は最終的に轟轟からソロモンの指輪を奪い、三種の神器を使えるようにすることも計画していたはずだ。それをするにはリインカーネーションの宿り元にしなければならないだろ?」

「キャロルが言っている通り、ソロモンは風鳴訃堂の性質を理解していたからこそ、裏で共謀していたんだよ」

 

 ソロモンの目的は生まれたDを轟轟に奪われず、最終的にソロモンがリインカーネーションし続けている原因を取り除くこと。風鳴訃堂は強さを得て、国防を磐石にすること。二人の想いは利用し合える点があり、共通していたことは轟轟が邪魔だということだった。

 故にソロモンは轟轟の肉体が炭素化される時、流の肉体へ向かうはずだった魂を、風鳴訃堂へと向けていたのだ。

 

「あとは私たちが見た通りよね。アダムが計画を最終段階に移行した時に便乗して現れたと思ったら、翼ちゃんと弦十郎くんと八紘に敗北して、流に魂の大半を破壊され、最後は風鳴訃堂に全てを告げられた後に死んだ。ただの道化ね」

「……自らの肉体で英雄となろうとせず、全てを人任せで遂げようとしたからそういう事になる! 僕みたいに腕をネフィリムに侵食される位の気概を見せないから殺されるのさッ!」

「お前はネフィリム腕じゃないだろ。だが、言いたいことは分かる。ただ強い力を得て、それを無邪気に振り回したいだけの哀れな子供だな」

「彼には信念がなかったからねぇ。それじゃあ、あの風鳴訃堂には勝てないさ」

 

 ラスボスたちは口々に轟轟を否定するが、ラスボスたちは強い意志を持ってラスボスを張っていたのだ。新たな想いを手に入れたり、途中で頓挫したり、計画を遂行せずに願いが叶ったり、想いを託せる相手を見つけたり、様々な手順で当初の望みは叶えられなかったが、確固たる覚悟が彼ら、彼女らにはあった。

 

「次は僕達パヴァリアの話だけど、最終決戦とその前の少しのゴタゴタ、それと流監禁以外は正史とさほど変わらないね」

「流がいたせいでカリオストロが早期にアダムを怪しんで、もう捨てたはずの詐欺師カリオストロとしての素顔を使ってアダムの嘘を、サンジェルマンの想いを遂げるという嘘を見抜いていたわね」

「そうさ。サンジェルマンとプレラーティが真実を問い詰めてきたからね。その場で殺して、風鳴流に殺されたことにしてしまおうとしたのだけど、流が宝物庫経由のテレポートで逃がしてしまったのさ。まさか敵であるあの二人を助けに来るとは思ってもいなかったのさ」

「実際アダムのその考えは当たっているわよ。流は元々身内以外どうでも良いと思っていたもの。母親のフィーネ、F.I.Sの子達は最初から身内として見られていたし、流はキャロルの目的を知っていたからこそ、世界解剖はさせるつもりはなかった。でも、パヴァリアはどこまで行っても敵だもの」

 

 マリアはある時に風鳴と接触し、流がパヴァリアと繋がっている証拠……捏造や証拠っぽいものなどで何度も揺さぶられ、最終的に流の身の潔白を証明するために、流を軟禁してパヴァリアを打ち倒そうとした。

 流はその時はまだギリギリ体が人間だったので、飲まず食わずでは精神的にも疲弊してしまう。そこにアンチリンカーや『マリアは流を裏切った』という悪魔の囁きで精神の限界を迎えた。

 

 なお、その悪魔の囁きは翼との婚約関係を認めない風鳴訃堂の配下の者共であり、マリアとの約束である軟禁はされず、監禁されながらその否定派に拷問を受けていた。しかし風鳴訃堂はあくまでも流は罪人ではなく、特異災害対策の重要な戦力としていたため、勝手にその戦力に拷問したもの達は一掃された。

 

 疲弊した流の精神は精神世界に引きこもり、そのままゆっくりと朽ちていくはずだったが、彼の中にいたソロモンに何億と殺されるという特訓を課せられる。

 

「精神世界でソロモンに何度も様々な手段で殺された流は色々と頭がおかしくなって、キャロルちゃんのホムンクルス製造機で造られた奏ちゃんの肉体に宿った奏ちゃんが助けに来た時には壊れてしまっていたわね」

「真に愛に目覚めたのさ!! 流は英雄すらも超越したんだ! 全ての人は自分を愛している? 愛を知らぬから悪魔は悪である。マリアが閉じ込めたのも、皆を愛しているから嫉妬して閉じ込めた。あはははは、まさに愛の化身だね!」

 

 それまでは奏が死んだ時に芽生えた愛が足枷となり、流に向けられて歌われた秋桜祭の時のクリスに恋をしていたが、どうしても最後の一歩を踏み出せていなかった。

 それを殺され続けることによってその悩み、複数の人を愛するという悩みがぶっ飛んだのだ。そのぶっ飛びの勢いのまま、皆に愛されたいという想いから、皆を愛する覚悟を決めた。

 

「……まああれは神に近づく事でもあったんだけどね。神の愛はひとつではない。特に彼が元々なるはずだったデウスなんて特にそうだ」

「でもその愛のおかげでカリオストロとプレラーティは流に救われて、アダムに殺されずにサンジェルマンと再度会えたわ」

「最終決戦で親友と想いをぶつけ合って殴り合う。風鳴弦十郎が好きそうな展開だね。もちろん僕も大好きさッ!! 友愛も愛のうちだからね」

 

 未だ他者を真に愛することを知らないウェルではあるが、()()()()()()()()()()()()。決してその本人()にはその事は伝えないが。

 

「流を攫ったマリア・カデンツァヴナ・イヴたちと流を取り戻そうとした雪音クリスたちは何度か茶番劇を繰り広げ、流が天羽奏と復活したことで終結する。そして最終決戦だ」

 

 この中でシンフォギア陣営と戦い、一番変わり、敵であるアヌンナキと同じ頂きに到達した者が、空中にアダム、ディバインウェポンティキ、真なる角を頂いたアダム、神アダムの姿を()()()で投影する。

 

「ティキを空に描いた鼓星の神門(ツヅミボシノカムド)によってディバインウェポンにしたけど、僕は流との戦いに張り付かされ、ティキはガングニールの立花響と天羽奏にやられてしまった。でも、僕は角を頂いた姿を信者の前で事前に見せることにより、アダム・ヴァイスハウプトは悪魔であるという認識を全ての悪魔信仰者に与えて、信仰心とティキから離れた神の力を使って、真なる角を頂いた姿に昇華した」

「その時の流は神の力の影響を多少は受けていたから、慢心や油断をしてしまったのよね。本来の流であっても、愛第一主義になっていたから、改心を促した気がするけど」

 

 本来の角を頂いた悪魔の姿よりも更に禍々しく、そして圧倒的なパワーを持ちながら神の力の防御機構によって、立花響だけが持つ完全なる神殺しの理すらも書き換えて、誰の攻撃も効かなくなってしまった。

 

「しかし、友と語り明かしたサンジェルマンは一発の弾丸、最高純度の輝きを放つラピス・フィロソフィカスの弾丸をプレラーティより渡され、油断して高笑いをしているアダムにぶち込んだのさ! 友愛の勝利だ!!」

「悪魔とは人の認識では穢れの象徴だ。コトバノチカラで力を付けた僕は概念によって不浄と捉えられ、ラピスの輝きに浄化されてしまった。だが、そこでティキの僕を呼ぶ声が聞こえた!」

 

 その身は浄化され、精神すらも浄化されて消え去ろうとしていたアダムは、ティキの声によって更なる昇華、神化を遂げた。

 アダム・ヴァイスハウプトは明けの明星とも呼ばれ、明けの明星と呼ばれている悪魔ルシフェルと同一視された。そして精神すらも浄化され、穢れを焼き尽くす輝きすらも取り込んだアダムは天使ルシフェルとなり、天使とは神と同一視されることもある。アダムはティキへの愛によって、神となった。しかもこの世界の神を信仰する想いすらも力に変えて神となる。

 

「神となったあの時の僕ならきっとアヌンナキすらも屠れたかもしれない。そのくらいの力を得ていた。だが、あまりにも強大すぎる力を得たことによって、僕は敗北した……フィーネ、君は最初から僕があそこまで至ることを予期していたのかい?」

 

 神はその存在だけで小さな世界とも言える。人類を創り、世界すらも作ったという伝承があるからだ。

 神となったアダムをミクロコスモス(小さな世界)と捉え、キャロルが完成させていた世界を壊す歌によってアダムは分解されたのだ。

 もちろんあの世界を壊す歌はミクロコスモス(アダム)よりも、マクロコスモス(地球)を壊す歌だったが、ラピス・フィロソフィカスの輝きを吸収したアダムは完全なる世界と定義され、ラピス・フィロソフィカスを利用した世界解剖の歌を歌っていたキャロルは、分解解剖する対象はアダムだけとなっていた。

 

「映画や根性で装者や流と殴り合う夫(弦十郎)がいるのよ? ラピスの輝きすらも受け入れて、悪魔から天使に反転する可能性も考えるわよ。弦十郎くんが居なかったら、あそこまで綺麗に盤面を整えられなかったと思うけどね」

「そうか……世界ではなく、神を殺す歌を作れたのは愛ゆえにか」

 

 愛によって神になったからこそ、神アダムが負けた原因が愛だったと知れたアダムはホッと胸を撫で下ろした。愛なら仕方ないかと。

 

「最終的にアダムとティキはパパが使った神の力で人に転生させられて、今はなんかやっているんだろ?」

「ちょっとした発明や農業をしていたりしているけど、まあその事はいいじゃないか」

 

 アダムは近況を軽く口にしながら、現在のS.O.N.Gの保有する、もしくは行使できる戦力をテレビ画面に映し出した。

 

「まず大人(OTONA)は強くなり続ける祝福(呪い)の掛かっている風鳴弦十郎。子供を授かるために事件を早期解決する気満々で、ネフシュタンの融合症例の風鳴了子。忍者緒川慎次。もう病気の治ったナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ。英雄に()()()()拘らなくなったウェルキンゲトリクス。既に逸般人の藤尭朔也と友里あおい。ファラと斬り合える風鳴八紘。日本の国防の為だけなら協力するであろう、三種の神器を扱う政界の鬼の風鳴訃堂……」

 

 アダムは一組織の長であったし、()()()()()()、S.O.N.Gが世界に反旗を翻したら終わるなと確信をもてる。

 

「装者は原罪のない響ちゃん。既に覚悟が決まっている翼ちゃん。全ての攻撃を誘導出来るクリス。色々と器用に出来るようになったマリアちゃん。様々な武人に修行を付けてもらった切歌ちゃん。くノ一になった調ちゃん。()()()()()()、多分装者一強い未来ちゃん。ガングニールの融合症例として新しく肉体が造られた正規適合者となった奏ちゃん。ソロモンによって魂から受肉させられたセレナちゃん。装者じゃないけどキャロルちゃんはファウストローブだけど、歌、フォニックゲインをエネルギーにしてダウルダブラを纏えるわね。それは()()()()()()()()()()()()()()。あとはエルフナインちゃんと、色々おかしくなっているオートスコアラーたちもかしら」

 

 現在、シンフォギアはラピスの輝きによるイグナイトの強制解除対策として、イグナイトのエネルギーをシンフォギアのロック解除に使うことで、XDモードほどの出力は得られないが、それに近いだけの力を得られるようになっている。まあ、その新形態は戦いで未だに使われていないのだが。

 

「S.O.N.Gは現在ソロモンの杖を所持している。パパが融合させているが、バビロニアの宝物庫を完全に閉めるためという事になっているな。俺が作った城、チフォージュ・シャトーはヤントラ・サルヴァスパありで残っている。フロンティアもそのまま残っていて、あの船を管理しているネフィリムはパパやOTONAたち、装者たちに絶対服従。なあ、俺たちって世界を征服する気なのか?」

 

 あまりにも、あまりにも過剰戦力過ぎる現状であるが、チフォージュ・シャトーは知られていないし、フロンティアは一応は国連管理となっている。

 全ては世界の指導者たるアメリカがやらかしたが故に、現状を認めざるを得なくなっている。

 

「しかもしかも、僕によって既に愛のリンカーは完成していて、リンカーWELLという絶唱のバックファイヤーすらも抑えられるお薬すらも出来ている。絶唱は作戦に組み込めるモノになっているし、エクスドライブモードもフロンティアにいる(ネフィリム)が増幅させたフォニックゲインがあれば至れる……アダム、これでもアヌンナキは倒せないのかい?」

 

 ウェルは慢心している訳では無いが、現状の戦力でアヌンナキに勝てないのからどうやったも勝てないのでは無いか? と純粋な疑問をぶつけた。

 

「もしアヌンナキが単体ならばいけたかもしれない。しかし、人類に呪いを与えたアヌンナキ共は()()()()()()。故に準備をし過ぎるという事はないのさ……あっ、あと僕はアダム・ヴァイスハウプトだった時の魔力量は既になく、ティキも既に惑星運行観測機としての力を()()()()()。僕が本来、世界を支配してから観測しようとしていた事は()()()()()()()()()。もちろん必要なワードは流たちに伝えているけどね」

 

 アダムはそれだけ言うとコタツから立ち上がり、その場を後にしようとする。

 

「あら? もう帰るのかしら? この後ミカが料理を振舞ってくれるらしいわよ」

「ティキが僕と一緒に食べるためにお腹を空かせて待っているからね。おいとまさせてもらう……世界を頼むよ」

 

 既に戦う力を失っているアダムはアヌンナキと戦う準備を進めている者たちに向けて、軽く頭を下げてから、自宅にマーキングしてもらったテレポートジェムを地面に投げた。

 

「あっ、そういえば私は基底状態のギャラルホルンも管理していたわね」

 

 アダムはその言葉を聞かずにその場を後にした。




次回からシンフォギアXVの内容に入りますので、シンフォギアXVのネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

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