戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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お久しぶりです。
7月からシンフォギアXVが始まりますので、そろそろこの作品も動き出そうと思います。

この話を合わせて4話は各章の振り返りをラスボスたちに語ってもらいます。今回は無印の範囲です。
作者も忘れてしまっていることが多いので、読み返しながらフラグなどをまとめられたらと思っています。

完全に振り返りですので、新しい話以外興味ねぇという方はシンフォギアXVF(エクシヴエフ)までお待ちください。

ちなみに『しないシンフォギア』よりもメタメタなのでそこだけはご了承下さい。


第4.5期 おさらいシンフォギア
#132『了子(フィーネ)は無印を思い出す』


 彼は指定された日時に届けられたそれを地面に投げると、錬金術の陣が展開され、設定された場所に飛ばされた。

 

 カツリ、カツリと足音が鳴り響くその場所は、錬金術の叡智の結晶であり、夜ごと悪徳に耽った忌城の名を冠した巨大装置。様々な聖遺物、または聖遺物由来となる異端技術のパッチワークにして、 キャロルたちの元居城でもある。今では()()()()()()()()()()()その場所はチフォージュ・シャトー。

 

 ソロモンの杖によって開かれるバビロニアの宝物庫の中にあるその城は、キャロル・マールス・ディーンハイムが想定していた内装から大きく変わっているが、それが逆にキャロル自身は気に入っていたりする。決してそれは口にしないが、彼女を守るオートスコアラー達は皆分かっている。というか、彼女以外の皆がそれに気がついている。

 気に入っているのはいいが、王座の間にシンクやコタツやテレビ、本棚にはアニメや漫画、もちろん専門書もあるけどそれも一部。カオスの極みであるが、皆の好きな物を詰め込まれている王座の間がキャロルは好きだ。

 

「遅いぞ、アダム・ヴァイスハウプト……いや、今は(とどろき)アダムだったか?」

 

 キャロルは風鳴流と出会ってから紆余曲折あって、彼女の父親であるイザークといた時のような少女なキャロルに戻っているが、真面目なことをやる時は錬金術師キャロルになることが多い。

 今も錬金術師の服装で()()()の前に立っているが、アダムの格好を見て頬を引くつかせている。

 

「アダム……あなたのトレードカラーの白、白い服に身を包んだ男だったじゃない。あれ捨てたの?」

「白は汚れが目立つからねぇ。ちなみに一番最初に捨てたモノは倒置法な喋り方だよ。ティキに一般人には難しいから止めなさいと怒られてしまってね」

「私だって弦十郎さんが『買ってきてやろうか、牛乳とあんぱんをよ』なんて話し方されたらネフシュタンパンチしてやるわよ」

「……本来の人間ならば即死の筈なのに、風鳴弦十郎だと無傷だと思えてしまうのが恐ろしい」

 

 アダムの服の色に反応したのは櫻井了子改め、風鳴了子。とうとう風鳴弦十郎と結婚した了子は幸せいっぱいな日常を謳歌していて、現在の目標は子供を授かることという、とても平和な女になっている。

 元々はフィーネと呼ばれる緑の勇者が戦う厄災よりも粘っこい黒幕だったが、弦十郎と息子の流によって、今を生きることを選ばされた。もちろん今ではその選択は間違ってなかったとカストディアンのアヌンナキに薬指を立てながらだって言える。

 

 高校に通っているJK妻でもあるティキが、アダムの白い服好きは良いが、作業着や部屋着は黒などの汚れが目立たないものにして欲しいとお願いをしたため、アダムが今着ているのは黒いジャージだ。上下合わせて2千円しないプライスとなっている。

 既にアダムは農業王や天才発明家などと呼ばれるようになっていて、金銭的に問題ない状況なのだが、ティキとアダムが人に転生した時、心許ないお金で苦労したため貧乏性が身についてしまっている。

 

「おい、遅れてきた癖に無駄話をするな! 始めるぞ!!」

「キャロル……ミクロで考えすぎだろう。マクロな視点で物事を」

「黙れよロリコン」

 

 アダムは見た目の年齢的にそこまで老けてはいないが、若い訳でも無い。対してティキは高校に通っていることからわかる通り、女子高生と言っても通じる見た目なのだ。

 そんな親子ではなさそうな二人が同棲している。最初は通報を実際にされたこともあり、知りもせずに影でご近所さんの一部はアダムをロリコンと呼んでいるのを彼自身理解している。

 

 しかし何も知らない人々がそれを言うのは致し方ないが、事情を知っているキャロルがそれをゲスの極みな笑顔で口にしたのだ。いくら愛を知って本当の意味で大人になったアダムでも、キレるものはキレる。激おこである。

 

「……大人しく言わせておけば、ファザコンの癖に。しかも未だに流をパパと呼び、一緒に寝てもらっているそうじゃないか」

「只人となった貴様が俺を怒らせたらどうなるか、思い知らせてやろうか?」

「只人風情に心を乱されるなんて、修行が足りないんじゃないかい? そんなんだから、最終形態になる前に流に負け……いや、懐柔されたんだったかな? ぱぱぁ〜ってね」

「戦う前に終わったのはウェルも一緒だろ! 俺だけじゃない!!」

「僕を不毛な戦いに巻き込むな!! 早く茶くらい出せ! 早く話を始めろ愚図共がァ!」

 

 出オチ代表のように扱われたウェルだが、世間ではアメリカの独断での宇宙逃亡を阻止し、アメリカの月の落下軌道予測がデマである事を伝え、世界を救うためにフロンティアの浮上を行う決意をし、その為の戦士を育て上げ、そのフロンティア操作に必要な人材の体調を管理し、見事月の軌道を修正した世紀の大英雄と呼ばれている。

 

 実際に行ったのは二課であるが、それでもフィーネという人格の被害者として司法取引のようなものをしている了子、錬金術で世間で暴れ回り、実際に多くの命を奪ったが対錬金術師対策として司法取引をしているキャロル、パヴァリア光明結社のトップという闇の一角から、明けの明星という異名と悪魔信仰を利用して悪魔(ルシフェル)になり、最後は神と同一視されている天使(ルシフェル)となって神化し、世界を作り替えようとした結果只人になったアダムに比べたら、立場は雲泥の差なのだが、

 

「登場から一話で息子に負けた雑魚よね」

「ウェルは俺たちラスボス四天王の中でも最弱」

「影縫いからの峰打ちでやられるとはラスボスのツラ汚しよ」

「……あれを風鳴弦十郎に伝えるから。エルフナインにあの事を報告する。アダムはティキに」

「「「……申し訳ありませんでした」」」

 

 ウェルは冷静に弦十郎とエルフナインとティキに連絡を入れようとする。彼、彼女たちはあれやあの事何てものが何を指しているか分からないが、了子はウェルの端末に送金し、キャロルはその場で頭を下げ、アダムは土下座を敢行する。

 パートナーや強がるべき相手がいないウェルはこのメンバーの中では最弱だが、故に最強であることはこの場で証明された。

 

 

 ***

 

「煎餅を焼いたゾ! カーボンロッドで焼いた焼きたてだゾ!」

「ティキには負けるが、それでも君の入れたお茶は美味しいと思うよ。褒めてやろうじゃないか、このアダムが直々にね」

「……この場に集まって貰ったのは他でもない。俺やアダムは流がしてきた事を報告書と、ウェルの作ったアレでしか知らない。その時の他者が思っていたことやバックボーンを知らないんだ。これから行われる戦い、アヌンナキとの戦いにおいて、過去を知っておくことは重要だと思う。故にこの場で了子やウェルが知っている過去を教えて欲しい」

 

 四人がコタツに入り込んで、料理をするようになったオートスコアラーのミカからお茶や茶請けを受け取ったあと、キャロルは本題を話し始めた。

 

「……本来私たちはこんな会合をしないわ。この空間はしないシンフォギアの番外編のような扱いだから存分にメタ発言したも大丈夫よ!」

「本来の僕は5期の物語が始まって、事件が起きて関わりを持つまでは一切君たちと繋がりを持たないはずだ。只人となったアダムを流は必要としていないからね」

「ちなみに先程キャロルが言ったアレとは、電界顕微観測鏡WELLのことだッ!! ダイレクトフィードバックシステムの改良型の機械一式であり、僕中心としたチームにて開発された、人間の脳内に直接的に介入する装置を改良したこの装置は、脳領域の観測と解明、そしてその人の深層心理を読み解く機械である!! アニメのマリアとエルフナインが使っていたものよりも優れていて、これは相手の脳内世界にダイブせずとも、特定の記憶を見ることが出来る!!」

 

 了子もアダムもウェルも今まではアニメのような等身だったのに、いつの間にか『しないシンフォギア』のようなデフォルメされた空間と見た目になっている。

 そして一人取り残されたキャロルは……

 

「ウェル……長い、短く!」

「流がノイズと初遭遇した時からの記憶を僕達は見ている前提で話を進めるというわけだね!」

 

 キャロルもしないシンフォギアGXの時のような等身になり、ゆるふわ空間が訪れた。

 この空間なら例えモブがノイズと握手をしても問題にならないくらいゆるふわな場所となっている。

 

「今回はルナアタックまでを振り返ろうと思うわ」

「当事者の了子以外はあまりその事件を知らないからちょうどいい。俺はその時期、シャトー建造に掛かりきりだったから日本の事なんて知らないし」

「僕はいつも通り無能を晒しながら風呂に入っていたかな」

 

 了子は喋らなかったウェルからも了承を取り、コタツのすぐ傍にあるテレビを付ける。そこには簡単にルナアタックが起きるまでの流れが書かれている。

 

 

 

 

「弦十郎さんが公安から二課、特異災害対策機動部二課の司令になった時の話は別にいいわね。私こと櫻井了子が翼ちゃん、風鳴翼が発動させた第一号聖遺物である天羽々斬のフォニックゲイン」

『オニックゲイン……』 

「フォニックゲインよ。それをこの体の魂に受けた事により、フィーネが転生してきたわ。その裏ではD計画という、対異端技術殲滅計画が動いていたの」

 

 何処からともなく未来さんの肉の波動が聞こえてきたが、櫻井了子は決してお肉に負けることは無い。

 

「流は元々アヌンナキが作り出した異端技術を破壊することこそが史上という考えの人格をインストールするための器だった。神自身が入り込むことも想定されていたはずだ。それらは僕の事変の時に語ることになるから今はスルーでいいんじゃないかな?」

「そうね。D計画でフィーネが生まれたあとに流が生まれたの。流の肉体年齢が六歳くらいの年齢の時に自我が解放され、それ以前は擬似的な記憶を埋め込まれて普通に生きていた事にされたわ」

「その後はソロモンというアヌンナキに人生を操られ、死後も使役された哀れな玩具と、アヌンナキの意志によって受け継がれてきたD計画の主導者に選ばれた轟轟(とどろきごう)、旧名風鳴轟の化かし合いが起き、仮初の母親と轟轟の肉体はノイズに炭素化され、流は二課に回収されたと」

 

 D計画回りは作者も忘れていて、読み直している途中なので今は詳しく書けないのだとアダムはカタコトで語っていたが、その言葉はテロップとかそんなものであり、彼ら彼女らが認識することは無い。

 ちなみに轟轟の肉体が炭化する時に、ソロモンの指輪を流はソロモンの人格から受け継いでいる。

 

「一つの脆弱なる魂が、異世界のシンフォギア装者たちへの全ての愛を引き連れ、その肉体に宿り、彼は風鳴弦十郎や」

「櫻井了子と出会ったのよ」

 

 当初の流は了子はフィーネであることを意識し、とてつもなく警戒していたが、洗脳やらで了子を疑う記憶ごと封印されていた。

 ある拍子にその洗脳も破ったが、了子が流に対しては母親として普通に接していたので、流が親子の関係でいることに折れた形となる。その更に裏ではF.I.Sで非人道的実験が行われていたが……。

 

「当初の流は弦十郎くんや緒川に比べて、私への当たりが強かったのよね。すぐにいい子になったけど」

「洗脳しておいてよく言う!」

「……あの時は特に何故? と考えなかったけど、流は私がパラダイム・シフト時に現れる黒幕フィーネであることを知っていたのよね」

 

 流が風鳴弦十郎、緒川慎次、櫻井了子に鍛えられ、一年が経つ頃には強者の領域に足を踏み入れていた。

 響に才能があったのはもちろんだが、神の器として造られた流の体もまた才能があり、響とは違って一年中鍛えられ続けた結果、風鳴弦十郎(人間の限界ライン)に近い域にまで入り込んだ。

 

 そして学校に行く気のない流を他人と交流するために会わせたのが、風鳴翼と天羽奏だった。

 

「最初流は奏ちゃんにも翼ちゃんとも仲良くする気がなかったみたいなのよね」

「未来を知っていたが故に親しくなればその者が死んだ時に悲しみを背負う。ならば初めから親しくならなければいい。彼はそう思ったのだろうねぇ。この時の流は歴史を変える気はなかったんだろう」

「あのアダムらしくないが、オートスコアラーへの愛で神になった今の貴様なら、まあそんなものか」

「ティキはもう人間だけどね!」

 

 結果的に流は翼とも奏とも仲良くなり、あの天羽奏が死ぬライブ時に奏の手によって眠らされ、彼女を救える可能性を天羽奏自身が摘むことによって、ガングニールは問題なく立花響に継承された。

 

「奏ちゃんのピンチに遅れた流は、その後数年は翼ちゃんと険悪な関係になってしまったのよね。あとその頃には既に私は流が神の使者なのではないか? と内心疑っていたりしたわ」

「は? まだノイズを素手で倒せるだけの天羽奏を失った流を疑っていたのか?」

 

 キャロルの疑問に了子は深く頷く。まず素手でノイズを倒せるのがおかしいのだが、ここにいる人達はそれ以上におかしい人が多いので特段反応はない。

 

「だってあの子ってあの時期には南米の特定の場所にエージェントを送って、クリスの捜索をしていたのよ? 今まで他人とは仲良くしようとしなかったのに雪音クリスを目的にエージェントを送る。それだけじゃないの、流は奏ちゃんを失ってから架空に話しかけていたのよ?」

 

 幼少時に両親のNGO活動に同行して訪れた()()で内戦に巻き込まれた雪音クリス。4期の原作知識はなくても、合間合間に出てきていた過去の回想から必死に場所を特定し、候補地にエージェントを送っていた。

 更に1期の翼のように妄想だと思っていた天羽奏と会話していたため、櫻井了子には色々と疑問の目を向けられていたのだ。

 

「結果的は神の器でソロモンの指輪を持っていたおかげで

 霊体の天羽奏と話していただけだったというね! それとこれも全部全て」

「愛ってやつじゃないかな?」

「貴様ァ! 僕の決めセリフを盗むな!」

「傲慢じゃないか? ウェルキンゲトリクス。愛によって神に神化した僕を前に愛を語ろうなどと」

「高校生の尻に敷かれて悦に浸っている男には言われたくないねぇ!」

「……くっ! ただの英雄に対して言える嫌味が見当たらない!!」

 

 アダムが勝手に敗北している中、グレープノイズさんがアダムの肩を叩いて励ましている。当然グレープノイズさんは炭素化機能を切っているので、人になったアダムは炭素化されることは無い。

 

「ライブの時に流はガングニールの欠片と奏ちゃんの魂を回収していたのよ。後者は勝手についてきたらしいけどね。そのあとはライブの生き残りの社会的立場を守るために動き回っていたわね」

「この作品の響は『私って呪われてるかも〜』という口癖を言っていないのは、父親が蒸発していないからか」

「その通り! やはり何でも愛で片付くんだよ。アメリカのケツカッチンなアホどもはそれを理解できていなかったけど」

 

 立花響の父親である立花洸は、本来なら会社の上司の娘さんがライブで命を落とし、対して響は生き残ったことにより、色々と立場が悪くなりリストラにあう。更に世間の悪意に晒され、響や母親を捨てて蒸発するはずだったのだが、異物が介入したのならより良い未来へ、誰ももう見捨てないという奏の約束を守るため、流は響やライブの生き残りのサポートを秘密裏にしていた。

 奏がライブ前から覚悟がガンギマリしていて、絶唱を歌うのが早く、そのおかげで会社の上司の娘さんは死ぬ事がなく、洸は蒸発しなかったのだ。

 

「そのあと響ちゃんがリディアンに入って少ししてガングニールを覚醒させてから、私は動き始めたわね」

「全裸で」

「全裸黒電話だっけぇ?」

「やはりラスボスは全裸になるべきだろう。そう、黄金錬成をした時の僕のようにッ!」

「……」

「ありえないね」

 

 少女? が一人、露出想像をして顔を真っ赤にしながら、興味に引かれているが、それを無視してアダムは口を開く。

 

「ちなみにもし天羽奏の魂が流の持つガングニールの欠片に宿らなかった場合、流はパヴァリアに合流し、最終的に4期のヒビトラマンのようになって、世界滅亡エンドになっていたようだね」

「俺の陣営に参加していたら、世界解剖が完成していたと考えると、天羽奏が居て良かったよ。パパに会えずに、パパの好きな世界を壊すところだった」

「僕は速攻で殺されてたらしいけどね」

 

 電波を受け取ったアダム、キャロル、ウェルはそれを口にしたが、それ以上は不味いので了子は話を戻す。

 

「んんっ、コホン……響ちゃんは奏ちゃんの置き土産のガングニールを持っていたけど、この時期の翼ちゃんはライブで助けにこず、寝ていた流に怒り心頭だったのよね。そのおかげ? で響ちゃんとは早く仲良くなれたわ」

「確かその時の風鳴翼はあの流を殺せる技を考えていたんだったな」

「あれだろ、あれ。居合斬り」

「実際、神の器たる流は神と同一視もされる龍の八岐大蛇を屠った天羽々斬で首を斬られていたら、あの時期の流なら死んでいたからねぇ。ちなみに神化した僕を殺せる可能性があったのは立花響や天羽奏ではなく、風鳴翼だったからね。八岐大蛇()の首を斬ることで殺した天羽々斬なら、神化した僕の首を斬れたら、僕は死んでいたし」

「でも風鳴で一番戦いたくないのは誰? せーの」

「「「風鳴弦十郎!」」」

 

 ラスボス達に自分の夫が認められているのに気分を良くした了子は、ミカが持ってきたおでんをつつく。

 まだキャロルが世界解剖を企んでいた時は戦闘しかできず、手もなかったミカだが、今では手も手に入れているし、オートスコアラーの中で一番料理が得意になっている。

 ミカと装者の中で一番仲が良いのは調であり、料理の話を端末で話していたりするらしい。

 

「一方流はオーディンと名乗って、フィーネ陣営に参加して、クリスを即堕ちさせたわ」

「フィーネを鞭に見立て、流は飴しか与えないという好プレーが光ったワケダ。SMプレイは相性が良ければずっと……」

「すまない。昔の部下(プレラーティ)が何故か居たようなので、昔の部下(サンジェルマン)に押し付けてきた」

 

 大きなガマ口ぬいぐるみを持ったロリっ子を、白い服を着たたやマ(ただのやさしいマリア)になり掛けている元部下が連れていった。

 

「オーディンはクリスがネフシュタンで戦う代わりに戦って、翼ちゃんのお腹を傷つけて、なんやかんやして、翼ちゃんと仲直りができたのよ」

「……随分と雑じゃないか?」

「だって、入院お見舞いあとのアニメの響ちゃんの立場が流になっただけだもの」

「……そ、そうか」

 

 了子が話したいのはその先なのだ。具体的にいうと弦十郎に勝ったところとか。

 

「クリスと流が仲良くなりすぎないように、流が裏切り者だったように嘯いてクリスを離脱させ、クリスの心臓付近に爆弾があると嘘をついて、息子の流にデュランダル融合実験を行い、ラストの」

「待った! 君のデュランダル融合というやらかしのせいで、僕やキャロルは流に負けたようなものなのだけど……謝罪して欲しいねぇ、過去の僕達に」

「俺はイザークパパに会えたから別にどうでもいいけどな」

「……どうせデュランダルがなくても、原作知識のある流にはワンパンされますよー。ああ、ムカつく。ミカ! お菓子お代わり!!」

 

 もしフィーネがあの時、流を完全聖遺物融合症例にしていなければ、キャロルはともかく、アダムは勝利していただろう。アダムも今のティキとの生活は楽しいが、それはそれ、これはこれだ。

 しかし了子は謝罪要求をスルー。フィーネは決して媚びぬし顧みないッ!!

 

「弦十郎さんとの戦いもクリスの心臓に爆弾のワードで完封して勝利して」

「嘘ついてばかりだなこの女」

「荷電粒子砲カ・ディンギルで月を穿とうとしたけど、流の想いの乗ったカ・ディンギルは迎撃に出たクリスにダメージを与えずに、軌道をずらされて月を軽く削るだけに」

「一発だけはカ・ディンギルを撃たせると約束していた流は二発目が撃たれる前に、人格が初代ソロモンと入れ替わり、デュランダルの必殺『Synchrogazer』で真っ二つにされ」

「まさかの両腕を折られた風鳴弦十郎が足だけで戦場に赴き、ネフシュタンだけではなく、ソロモンの杖も融合させようとしたフィーネから杖を蹴り飛ばしてセーブしたと。風鳴弦十郎……完全は彼にこそ相応しいと思えてしまうねぇ」

 

 初代ソロモンがあの時に聖遺物を扱う方法を流の体に教えこんだおかげで、基底状態以上の聖遺物なら操れるようになった。流がバグったのはフィーネの次にソロモンのせい……いや、強さの面なら結局全部風鳴弦十郎のせいだ。

 

「ちなみにあの時、腕を折られても私を守るために蹴り飛ばしてくれた弦十郎に恋をしたわ。胸に走る痛みが今でも忘れられないもの。ベッドの上でも弦十」

「痛みは愛と言っていたらしいけど、本当にそう思っていたのか。愛は人それぞれだし、僕の愛は英雄としてあるべきな僕自身にしか向かないから分からないけど、それも愛の形だと認めよう」

 

 科学で割り切れない部分は愛でフォローする天才の意見に、愛ゆえに神になれた悪魔で天使な彼は肯定するべく、頭を深く縦に振った。

 決して了子が夜の事情を話そうとして、うざくなって被せた訳では無い。

 

「……あの頃の流は自分が異物であるという考えと、奏ちゃんとの約束だけで生きていた生ける亡霊だったのよ。そんな状態だったのに、奏ちゃんを実質殺した私を庇ってくれて……なんか私情けないわね」

 

 今の弦十郎とのラブラブ生活は息子がお節介を焼いてくれたおかげであるのだ。そう考えると、了子は流にどれだけのことをしてあげられただろう?

 今度弦十郎と了子と流の三人で外食に行った時にでも、ちゃんと二人にお礼を言おうと、左手薬指の指輪に誓うのだった。

 

「なんか俺が流から聞いた(本編は呪いで語れない)原作知識とさほど変わらないな」

「この時の流はまだ生き残る事に必死で、知っている知識を歪めたくなかったんじゃないかしら」

「……なら、僕にももう少し優しくしたって良かったじゃないか!」

「ウェルキンゲトリクスは英雄になれたのだからいいだろう? アメリカと違って敵対もしていないのだから」

 

 ウェルはため息をつきながら、了子と座っている場所お変わる。今の場所でもいいのだが、語り部となるものはそちらに行くという謎ルールで、ぬくぬくのコタツから出されたウェルは不満げに、テレビの画面を切りかえて語り出す。

 

「僕が君たちに語るのは、僕が勇者的な英雄を諦め、魔王を倒した勇者パーティーの僧侶になったお話だ」




こんな感じであと3話やっていきます。
それではまたシンフォギアXVの話が終わるまで宜しくお願い致します。

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