11月7日、二日前は小日向未来の誕生日です。誕生日おめでとうございます。
あと前回の話は読み返して分かりずらかったです。作者がわかりづらいという事は読者の方はちんぷんだったと思います。
呪いは人の想いに反応して、その効果を強めてしまうという事が前回は言いたかったんですね。あとサンジェルマンは救われたら自分を責め続けるみたいなことも書いてありました。
流と他国の模擬戦が確定し、日程調整や条件が詰められた。訃堂は対戦相手がどのような奴等か見て、流を傷つけられないと分かったので手続きを進めた。
この事は日本国内では正式に知っているのが訃堂のみ。訃堂はこの事を最重要機密として自分だけが扱った。
非公式にこの事を知ったのは了子だったが、同じく敵の武装などの一覧を見て、流が絶対に傷つかないことがわかり、メールだけ送って対処はしなかった。
『もう秘密裏にこういう事をするのはやめなさい。流がそういう事をして、守ろうとしている事を彼女達が知ったら、彼女達が悲しむのよ?』
了子は流に効く様な書き方をして流に注意した。無駄でも言っておかないと、流は人間に嫌気の指したカストディアンのようになってしまうかもしれないから、絶対にそんな風にはさせてはならない。
そして了子は後日、その模擬戦の日程を知り、少しだけキレた。
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「すみません」
「なんであんたが謝んのさ」
「……そうですよね」
米国でも日本でもないある国の、ある競技場に流は来ていた。もちろん飛行機なんてものに乗ってきていないし、パスポートを通していないが、国連には初めから告知しておいた。
流が乗った結果撃墜されたら周りの人が可哀想だし、直前まで色々と準備をしていたので時間がなかった。
流はこれから国籍を伏せられた少数の軍人や、何かしらの格闘技を会得した人間と戦うことになる。事前告知では異端技術の行使者は記述されていなく、異端技術行使者が来るかと思ったが、参加者の想いを流動させて読んだ限りは特にそういうことは無かった。
色々と事前準備に手間取っているようで流は呼ばれた時間に来たが、控え室で待機させられている。
その控え室にはバルベルデの重鎮にしては若過ぎる男性、流と国連の場で唯一会話を行った人が流の相手役としてこの場にいる。
「……質問よろしいですか?」
「一々畏まらなくていいから。反応兵器とか撃ち込まない限り、暴れたりしないし」
「分かりました。流さんは世界的ヴァイオリニストの雪音雅律さんと声楽家のソネット・M・ユキネさんを知っていますか?」
バルベルデの男性はいきなりクリスの両親の名前を出してきた。
流は明確に見捨て、復活させることの
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流はバルベルデに神となったあと行った。もちろん雪音夫妻の何かしらを手に入れるためだったのだが、バルベルデには何も無かった。
前までは異端技術関連に触れている人で無ければ霊体と接触できなかったが、
なので、見れるはずなのだが雪音夫妻は居なかった。そしてこの前皆が用事があり、訃堂の元へ遊びに行った日、あの時雪音夫妻に会った。
流は全員の部屋に勝手に入って、掃除と寝具の天日ぼしをした。部屋の片付け自体は翼の部屋以外は特に問題はなかった。
そしてクリスの部屋に入り、部屋の奥にある仏壇に目を合わせた時、雪音夫妻がいた。
仏壇には先祖の家という意味合いも含まれているし、クリスはそれを目的で買っていた。
元々夫妻は死んだ時、クリスに憑いていたらしく、クリスが仏壇を設置してくれたあとからは、そこでずっと見守っていたそうだ。
『君の独り言は聞いていたよ。僕達は君に想いを告げてしまうと、成仏してしまうんだったね』
「ああ、だからやめろ。今すぐ俺に憑依させろ。復活させるから」
『やめてちょうだい。私達はもう十分娘の成長を見届けたわ。あなたのせいで少しだけおかしな娘になっちゃってるけどね』
しっかりと魂と想いを持っている霊なので、流ならある程度時間をかければ、セレナに無理やり肉体を持たせたソロモンのように復活させることが出来る。だが、二人はそれを拒否した。
クリスと同じ銀に近い長い髪を持つクリス母親に、茶髪で長身のダンディな父親。どちらも既にやり切ったような顔をしている。
その二人を見て、何故クリスはあんなに背が小さいんだ? と思ったが、全てはバルベルデのせいだろう。あとクリスのたまに出る独特な話し方はこの二人が教えたはずだ。
「……何故復活したくないのか俺には理解できない。でも、あんた達がしたくないならいい。だけど、クリスに何かを残してほしい」
『それだよ。僕達は爆発で急に死んでしまったから、クリスに言いたい事を言えなかった。クリスの机の上から二番目の引き出しに、ちゃんとしたメモ帳があるから、それを取ってくれないかい?』
「娘の部屋の物を把握している父親ってどうなんだ?」
『この人はクリスを溺愛していたからしょうがないわよ。初めは君の事もクリスに近づいてきた蛆虫とか言ってきたものね?』
『あははは。今も思っているけどね? 日本人なら、交際相手は一人を選ぶべきだ。クリスとか』
流は日本人の基準から考えたら、有り得ないことばかりやっているので、クリスの父親の話を無視した。
父親が言った場所には確かにしっかりとしたレターセットが入っていた。
『代筆してもらおうと思ったけど、君に憑依する事も出来るんだったかな?』
流はこの時点で二人の考えを無視する事にした。
二人はクリスと会うことが怖いのだ。確かにクリスは二人の為にこの仏壇を買ったし、毎日綺麗に掃除をして、ちゃんと管理をしているし、帰って自分の部屋に入ったら真っ先に挨拶をしている。
だが、自分たちが死んでしまったせいで、クリスはテロ組織に色々された。
「うん、出来るけど、もっといい方法がある」
『クリス、お手洗いとか適当に言って、教室から出て』
『流? わかった。いきなりだなにしても』
流は夫妻と話しながら、テレパスでクリスと話して教室の外に連れ出した。錬金術でも割と難易度の高いテレパスをクリスの元に媒介を召喚して通信するのではなく、直接テレパス同士で会話をした。
クリスは流がいつでも話せる様に、テレパスをAXZ事変の間に学んでいた。2ヶ月修行の時にガリィに錬金術の基礎を学んでいて、クリスの柔軟性でたった数週間でテレパスだけを習得した。
クリスが人の目がないところに移動したとテレパスが来たので、流はこの場にクリスをテレポートさせた。今はクリスは生身だが、ソロモンが一度弦十郎達も通れる宝物庫の開け方をこの体でやっていたので、流はそれを覚えた。
『なっ! ここにクリスを呼んでも、私達は会えないんですよ!』
「どうしたんだ?」
「今からクリスの両親と会わせる。いいか、お前の両親はビビって、お前と直接会うのを避けていたが、無理やりこの場に姿を表させる。でも、この方法はちょっと無理をするものだがら、少し話したら雪音夫妻は成仏してしまう」
クリス夫妻の心残りはやはりクリスを置いていった事だ。
今の流では魂や想いを代償にして一時的に精神体を実体化させられるだけだ。ソロモンのように肉体を与えられないし、相手はその気が無いのにやるため少しだけ反動がある。だが、これをやらなくても、流に遺言を書かせて勝手に成仏するのだがら、これでもいいだろう。
『待ってくれ。心の準備が!』
「数分しか話せないが、精一杯話してくれ。クリスのために」
流はデュランダルでフォニックスゲインを増幅させて、ソロモンの指輪の力を最大限に引き出して、二人にその力を行使する。流が最大限に引き上げても、造り手たるソロモンを超えられる気がしない。
流が左手でクリスの父親に触れた瞬間、その姿はクリスにも見えるようになった。すぐに流はクリスの母親にも触れて、一時的な実体化を行う。
「パパ、ママ!」
「ク、クリス」
「久しぶりねクリス」
流は愛あるやり取りを耳で聞きながら、
**
そのような事があり、クリスと二人は話したあと、成仏するように消えていった。本当は流は復活させたかったのだが、
「クリスの両親だよね? もちろん知っているさ」
バルベルデの男性の質問に流は答える。その回答に男性は笑顔で頷いてきた。
「夫妻が行っていた支援で私の知り合い達は育ちました。今では私は国の中枢にいますけど、少し前までは食事もありつけないようなひどい生活を送っていました。私が政策に逆らったせいなんですけどね」
この男性は雪音夫妻と会った事があるそうだ。その時色んな話を聞き、その時に得た経験で物事を判断し、結果今の立場にいるそうだ。
旧バルベルデの政治家達に反を唱え続けた甲斐があったと言っていた。
「あとバルベルデでも私達を助けてくださった雪音クリスさんにも感謝と謝罪をしたい気持ちで一杯です」
この男性はテロ組織によって夫妻が殺されたことを後から知ったらしい。お世話になった夫妻の娘さんは生きている可能性があることがわかり、探したが、見つける事ができなかったと、先程の表情とは打って変わって暗い表情で話してきた。
「クリスには伝えておくよ……あっ、もしかしてお前クリスに惚れてたりする? 流石に許さないよ?」
「そんなそんな。ただ単に恩人のお子さんにも助けられ、感謝の気持ちしかありませんよ」
実際はどうだったのかは分からないが、流はそういう事にしておく事にした。皆は美人でいい子ばかりなので、惚れられたとしてもしょうがない。
そのあとも流はこの男性と色々と話し、時間が来たので、競技場へと向かった。
『まず今回の戦いにおいて、風鳴流を対戦者が誤って殺してしまっても罪には問われません。そして風鳴流は対戦者を殺さずに制圧する……本当にこれで宜しいのですか?』
「構わない」
控え室でいい感じに流と話していたせいで、国連での流の窓口に決定されたバルベルデの男性が、戦いの条件を読み上げる。
『対戦者は風鳴流をどんな方法でもいいので制圧すれば良い。方法は問いませんが、味方を傷つけたりなどはしないようにとのこと』
流はスーツを着たまま、軍隊装備に身を包み、十数メートル先で構えている最小小隊に、ある程度手加減して敵意を向け続ける。
心に直接届く、弦十郎レベルの精神力による敵意は相手の心を折るほどの力があり、小隊は何とかその場に立っているといった状況になっている。
『では、始めてください』
「爆振!!」
シンフォギアのようにピョンピョン跳ねる人達にはあまり効果がないが、地面から離れられない人達にとって、いきなり足元が震脚の衝撃で爆発するという現象からは逃げられない。
数十人いるにも関わらず、流の敵意とたった一撃で全ての人が倒れた。
「負けたこの人達を処刑とかそういった事をしようとするのも禁止されてるって事を肝に銘じておけよ? 次! 時間が無いんだ!」
結局異端技術の行使者は居らず、現代兵器では忍者の回避力を突破できず、武術家達は弦十郎の下位互換でマトモに殴り合えずに一瞬で倒された。
描写すら殆どされなかったこの戦いで、流に異端技術を行使せず、己の肉体と武術と忍術と想いの強さで完封した。
「用事があるんで、もう帰りますね」
しかも戦いが終わると、バルベルデの男性に後始末を全て任せて、流は急いでテレポートした。
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「間に合った!?」
「遅いぞ流! 何してた!」
「ちょっと喧嘩してた!」
流は急いでシャワーを浴びて、何故か
今日は流の力を国連が試す催しがある日だったが、それよりも重要な風鳴弦十郎と櫻井了子の結婚式がある日だった。なので、流は面倒にならないように異端技術を使わず、武術と忍術だけで急いで戦っていた。
特に宗教観のない洋風の結婚式をあげるために作られたその場所を金の力で貸切、この場にいるのは弦十郎や了子の知り合いしかいない。
本来なら風鳴の宗家の血を継ぐ弦十郎の結婚式なので、和風で宗家の敷地でやらないといけないのだが、
「やっぱり和服よりもウェディングドレスよね」
という一言があり、弦十郎と八紘が頑張った結果、身内だけの小さな結婚式を行うことになった。
どうせ風鳴でも結婚後、披露宴のようなものをやらないといけないので、別にあげてしまっても構わないとの事だった。
流は既に身内の皆やアニメちゃん、板橋達もちゃっかり居たり、事情を知っている身内しかいないので、式場の一角に宝物庫ゲートを開いて、レイア妹やノイズなんかもこちらを眺めている。というか、あまりゲートを広げられないので、ぎゅうぎゅう詰めになってこちらを覗き込んでいる。
板橋達は流石にノイズのことは知らなかったので、一悶着あったが、ノイズが作ったお菓子を渡すと
『アニメみたいに分かり合えるのね!』
板橋のアニメ理解によって、色々と収まった。
そして流は参列者の場所には居らず、司祭の居るべき場所に立っている。
『新郎入場』
藤尭のアナウンスで周りが静かになり、弦十郎が介添人を連れずに歩いてきた。流が全体を見渡せる場所にいるので、介添人が必要なことは全て宝物庫越しに出来てしまうのでいない。
弦十郎は珍しくグレーのしっかりとしたタキシードを、ちゃんと着こなしている。
弦十郎は珍しく緊張しているのか、少し硬い動きで祭壇前右側まで歩いてきた。
「あー、緊張する」
「父さんでも緊張するんだな」
「そりゃするさ。了子くん……了子の晴れ舞台を台無しにしたくないからな」
「そうだね」
弦十郎はチラチラと入口を見て、普段は絶対にしないキョロキョロとした動きを繰り返す。
『新婦入場』
アナウンスと共に現れたのは、真っ白なドレスを着て、眼鏡を外した了子だ。裾を持ってもらって歩けばいいのに了子は器用に一人で歩いている。
了子の隣には父親代わりなのか、八紘が了子の腕を引いている。
『私達の身内の中で、一番父親っぽいじゃない?』
という事で、フィーネとしての父親いないし、同じく親族は流だけなので八紘が了子を引っ張って来た。
了子は表面上は全く緊張していないように見える。流はちょっとした気まぐれで想いの流動が来るようにすると、了子がガチガチに緊張しているのがわかった。
了子も本当の、本心の結婚式はこれが初めてなので、内心は結構テンパっているのだろう。
「八紘ありがとう。もういいわ」
「分かっている。弦、これからが色々と大変だぞ?」
「ああ、そんな事は百も承知だ」
フィーネの器とされている了子との結婚には、色々な柵が付いてくるが、それでも弦十郎は了子と添い遂げることを選んだのだ。今更心変わりなどするわけがない。
八紘のエスコートから弦十郎の腕に移った了子は、息子が何故かトーガを着ていることに吹き出しそうになる。
「なんでそんな物着てるのよ」
「俺の尊敬できる父親の一人がこういう格好をしていたからね。神父服はちょっと」
「まあいいわ。宜しくね」
「うん」
藤尭は流達のやりとりが終わったのを確認してから、またアナウンスをする。
『聖歌斉唱』
聖歌の元を崇めている人はここには居ないが、歌で新郎新婦を祝うというのはいい事だ。最も統一言語に近く、想いを乗せることが出来るのが歌だ。
ここにいる九人のシンフォギア装者に、リディアン生、歌を歌う錬金術師、キャロルと違いの出始めたオートスコアラー。そしてこの場にいる人達によって、二人を祝う歌が捧げられた。
「新郎弦十郎は、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その
「……誓います」
「新婦了子は、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その
「誓うわ」
流は神の力をこの時使っていない。流はどこぞの神に誓わせず、流自身が神として二人を祝福したかった、だがあんな星だか地球だかわからない神の力を使って、二人を祝福したくなかった。
だから流は聖歌斉唱によって生じたフォニックスゲインを使って、二人の魂に、想いに、体に祝福を掛けた。
「指輪の交換を」
流は了子の持っているブーケや手袋をゲート越しに受け取り、了子は素手になる。
司祭役の流が弦十郎に指輪を渡し、弦十郎は了子の左手薬指にその指輪をはめた。了子もまた同じ様に流から受け取って、弦十郎の左手薬指に指輪をはめた。
「誓いのキスを」
弦十郎は了子のベールを取ると、涙で顔を濡らしている了子がいた。
弦十郎と了子は
これを見ているのは若い女性も多いので、結構ざわついたが、静かになったのを確認してから流は最後の言葉を口にする。
なお、何人かから期待する目線が飛んできているが、流は肉体をどうにかしないといけないので、少し待ってほしいところだ。
「汝らの誓い、私が見届けた。汝らが例え死がふたりを分かつとしても、私がその様なことをさせないとここに誓う」
流はいつもと違う一人称だが、流石に俺をこの場で使う気になれず変えた。
流は二人の誓いが決して破れぬように、流自身も誓った。
退場前に了子にブーケや手袋を流は返して、二人はバージンロードを歩いていこうとする。
『新郎新婦の退場です。皆様は』
「ちょっと待って。ここって外とかない事ですし、ここでブーケトスしちゃうわ」
その言葉に装者達乙女が喚き立ち、了子が割と強めにトスしたブーケは何人もの手で弾かれる。
「了子くん。最後まで真面目にやったらどうだ?」
「結婚初夜はしっかりやるわよ? まあ既に初夜は過ごしているわけだけど」
「息子がいる前でそういうのはやめろ」
「「「「あっ!」」」」
「え? えーと、ありがとうございます!」
ブーケは弾かれて弾かれて、最後にキャッチしたのは友里だった。だが、友里は忙しさにより最近は出会いすらないので、若干落ち込んでいたりする。
こうして最後まで真面目にできない結婚式は幕を閉じ、近くで借りたホールで披露宴のような何かをするのだった。
一応AXZ4.33はこれにて終わりです。最後は特に話の盛り上がりはありませんけど、弦十郎と了子の結婚式で終わらせたかったので満足です。
そして次回からは時系列無視の番外編。サンジェルマン達がなんか普通に仲間面していたり、アダムが何故か居たりしますが、しないシンフォギア時空よりも更に優しい世界仕様になります。なお轟轟は今後一切出てきません。
あと本編が終わったらギャラルホルンさんに色々してもらう話が見たいとの要望があったのですが、現状の装者だと本編では使われなかったイグナイトの新形態があり、カルマに苦戦しないのでやりません。ギャラルホルンは5期に出番ありますし。
同じようなことを活動報告にも書きますので、何か要望がありましたら、そちらにお願いします。感想でそういった事をするのは禁止されているので。