戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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予約投稿をミスっていた。クソ悔しい。



#123『彼女の誕生日』

 流はソロモンの指輪を使って精神を復活させた。流を作ったソロモンが好意的だったので、割とあっさりと復活することが出来た。

 

 しかし最近の流は怪我をしても腕が砕けても、デュランダルに頼って再生させていた。

 神の力による覚醒、度重なるデュランダルによる無理くりな再生、幾度と打ち込まれた強烈な攻撃、そして流の中の精神が何度も入れ替わった。

 

 流は確かに神の器として作られたが、それでも一応人間なのだ。ギリギリなんとか人間なのだ。

 そんな時に神の力をほぼ全て肉体内で生命エネルギーに変えて放出してしまった。

 

 流は皆にありがとうと言ったあと、またいつものようにぶっ倒れた。

 

 

「体がくそダルい」

「しょうがないデスよ。流は無茶ばっかりデスからね」

「もう少し休んでもバチは当たんねえよ。それに最近流とあんまし話してない気がする」

「そういえばクリスとはステファンの時以来あんまり話せてない……デースね」

「真似するなデス!」

「ゴフッ!」

 

 現在流はアニメで翼が入院した病院にまた入院している。流が幼い頃に何度も入院し、頭の上がらない看護師のおばさんがいる場所だ。

 ここは元二課のダミーカンパニーで、流の入院の頻度が多かったので、病室の一室が流専用になっていた。今はナスターシャが使ったり、S.O.N.G.関連の人が使う部屋になっている。ステファンもここで入院していた。

 

 そこに流とクリスと切歌がベッドにいる。

 

 クリスと切歌は絶唱を使うために『リンカー model WELL』を使った。一つ前の愛のリンカーはリンカー組が一本のリンカーで戦えて尚且つ薬害を減らせていた。

 

 新しいWELLは聖遺物との垣根を大幅に減らし、絶唱によるバックファイヤーを無効化しようというコンセプトだった。

 結果は成功し、ちょっと吐血しちゃう程度でその後も戦えていた。だが、まだ完成したばかりで調整が不十分であり、効果を上げたため、薬害が少し強くなっていた。

 

 それでも薬害の強さはmodelK、奏が使っていた初期リンカーよりは楽なのだが、大事を取って入院することになった。

 

 シンフォギア関連なので入院するとしたら、潜水艦の方がいい。だが、流を縛るために同じ部屋で入院させた方がいいし、この病院では流も割と逃げられない。

 

「てかさ、今日こそは退院手続きを通さなきゃ」

「そうデスよ! 流に巻き込まれて、響さんの誕生日会に参加出来ず、病院の薄味で過ごすのは嫌デスよ」

「あら、私達が作ってあげてるのに、その言いようは酷いんじゃない?」

「ノックくらいしてください」

「何だかんだ弁えてるあんたなら、こんな所でやったりしないでしょう? 別にいいじゃない」

 

 流の監視の巡回に来たのか、流が頭が上がらない年配の看護師が病室に入ってきた。

 

「それで?」

「昔に来た嬢ちゃんの誕生日なんでしょ? だから、頑張ってあげたわよ。雪音クリスさんと暁切歌さんは今日で退院。あんたらは経過を観察したかっただけらしいからね。流は明日帰ってきて、もう数日入院ね」

「何でさ」

「あんたの体はドラマみたいな事になっているけど、相当なハードワークをしていたんでしょ? いい、あんたは翼ちゃんとかこの子達を守りたいのはわかる。でもね、あんたが動かなきゃいけない時に、もし疲れていて動けませんでしたってことになったらどうするんだい! 今日は無駄に料理のうまいあんたも一時帰宅していいけど、明日は帰ってくるんだよ!」

 

 流の頭を軽く一度叩いてから、必要書類を流に渡して、看護師は部屋から出ていった。嵐のように騒ぎ、流に反撃の隙を与えず、嵐のように去っていった。

 

「流が了子以外に頭が全く上がらないのを初めて見たデス!!」

「あたしも」

「……いいからお前達は退院の準備。使用済みの衣服は家にテレポートさせてるから、あとは細々したものを準備して」

「準備しすぎデス」

 

 弦十郎以外で久しぶりに頭を叩かれて流は怒られた。何だか少しだけ嬉しくなりながらも、病衣から着替えるのだった。

 

 流は一度神として覚醒したおかげで、人の想いが無造作に流れてくることは無くなった。読み取ろうと思えば出来るが、人間としてそれはあまり良くないので、控えることにしている。

 

 

 **********

 

 

 エージェントが運転する車に乗り、流達は家に帰ってきた。今日は未来が響を夕方まで連れ歩く事になっているので、まだ数時間は帰ってこないだろう。

 家に帰ると、響と未来の装者組はみんな居て、キャロル達はパーティーには来ると言っていた。ちなみにサンジェルマン達は日本政府に軟禁されている。流にした様な拘束の仕方ではなく、ちゃんとVIP待遇で軟禁されている。

 

 家に帰ると、リビングでマリアとセレナが話していた。数日前からずっと二人で話していて、マリアがセレナを離さないのだとか。目を離すと消えてしまうかもしれないと考えているようで、セレナも何だかんだ付き合っている。

 キッチンでは調とミカが料理をしている。

 

「おかえり切ちゃん、流、クリス先輩」

 

 調の挨拶に返事をしていると、翼と奏が帰ってきた。

 

「今帰った」

「おかえり二人とも」

「流はこの後台所に入るのだろう? その前に錬金術師についての情報を持ってきたから、それに目を通して欲しい」

「わかった。調とミカ! これが終わったら手伝いに行くから」

「わかったゾ!」

 

 流はクリスと切歌から離れ、この家で重要書類が保管されている書斎に向かった。

 

「調も料理を手伝って欲しそうだったし、結論から告げるぞ?」

「ああ」

「流が望んでいた通りになった」

「どんな工作をすればキャロルと同じ保護観察になるのだ? キャロルは表立った活動は日本以外ではなく、キャロルが大きく動く前に、流が動きを止めたからこそ、今後来たる錬金術師への備えにする。そういう考えはわかる。だが、サンジェルマン達は明らかに度を超えていた」

 

 翼があげた通り、キャロルは表立って動いたのは日本だけだ。

 だがサンジェルマン達、パヴァリア光明結社は分かっているだけでもEUの裏での暗躍から始まり、バルベルデにアルカノイズの販売、日本での風鳴施設の消滅、そして日本でアダムが大暴れした。

 

 控えめに言っても、利用されたあと極刑は免れないほどの事をしている。特に普通の人達では太刀打ち出来ないアルカノイズを増産し、それを売ったのはあまりにも残虐極まりない。

 

 だが、国連がサンジェルマン達三人に下したのは、S.O.N.G.に合流し、キャロルと同じようなに事件解決に協力すること。それと今回の事変での事後処理の積極的協力だけだった。

 日本政府はS.O.N.G.の対応に異議を唱えず、追加の罰すらなかった。

 

「風鳴が動かないのは分かる。あの人は国防の益になるパヴァリアの幹部三人を実質的な部下に出来たのだ。だが、国連はあまりにも軽すぎる」

「私達が知らないところでなんかしたか?」

 

 こういうあからさまに辻褄が合わない事は大抵了子か流が関わっている。そしてパヴァリア三人娘に割と好意的な接触を行っていた流が犯人のはずだと、二人は問いかけていた。

 

「国連とは話しただけだよ。全ては神となって、櫻井了子、いや風鳴了子によって倒されたアダム・ヴァイスハウプトが悪いってね」

 

 アダムはあのシャトーの分解で死んだことになっている。あのシャトーによる攻撃の余波で、周囲の観察機器が全て壊れ、あの後のやり取りは全く記録されていない。

 唯一シンフォギアのマイクやレンズ越しに撮してた映像があるが、それは了子がロックを掛けたので絶対に見ることが出来ない。

 

 そしてS.O.N.G.はパヴァリアの行った事の真実、カストディアンが来るからこそアダムは最終的に神となった事を隠し、アダムが人間となって生きている事も隠蔽し、殺したことになっている。

 ちなみに流が殺したことになっている。

 

「なるほど、で? 嘘はいいから」

「私も流の嘘が分かるようになってきた。誤魔化しも不要だぞ」

「……はぁ。まずみんなが戦っていた裏であったことなんだけど」

 

 流は言いたくなかった。世界を守ろうとしていた装者達を国連が殺そうとしたことを。だが、奏には誤魔化しは聞かないし、翼は繋がり故か嘘や誤魔化しすら見破るようになっていた。

 流は弦十郎達もあえて言うことは無いと言って、装者達に告げていなかった、反応兵器発射から流が国連にお願いした事を話した。

 

「は? 流って反応兵器持ってるのか?」

「五発あるよ」

「距離を関係なく転移できる人間が反応兵器をちらつかせたら、逆らえぬのも道理であろうな。流、お願いだから、人類と無駄に争いを行おうとしないで欲しい」

「分かってるよ。攻めてこなきゃ何もする気は無いし。てか、みんなとの時間が削れて嫌だし」

 

 翼は流の肩を掴み、目を見て流に懇願した。流にストッパーを掛けられるのは身内の中でも装者達しかいない。それを分かっている翼は流に頼んだ。

 

「あたし達の時間を優先するために、世界を征服出来るのにしないってのもなかなかぶっ飛んでるよなやっぱり」

「それが流らしいと言えばらしいのだが」

 

 子供の頃は奏と翼しか流の世界にはいなかった。だからこそ、あの頃は今以上に二人にべったりだったので、ここまで流が大きくなればこうなることは分かっていたことだ。二人はため息はつくが流から距離を取ることは無い。

 

「そういえば、翼はもう可愛い翼の話し方やめたの? 恥ずかしくなっちゃった?」

「う、うるさい!」

「あたしにも防人語ばっかなんだぜ? 『奏……今日は一緒に寝てもいい?』 ってこの前言ってくれた翼はもういない!」

「やめろおおお!! 終いには天羽々斬を抜くぞ!」

「「来いよ」」

「Imyuteus…………。抜剣!」

 

 ダインスレイブ

 

 翼は昔と同じように二人に弄ばれ、二人に翻弄されるのだった。なお、翼が家計簿や税金関係の書類がいくつか斬り裂いてしまったため、マリアにがっつり怒られる三人だった。

 

 

 **********

 

 

「次は○鉄を何人かに分かれてやるぞ! 今度こそ負けない!」

「キャロルじゃ顔に出ちゃうから勝てないよ?」

「そんなことは無い! 私はこの中で一番年上なんだぞ!」

「そうだな、よしよし」

「パパは頭を撫でるな!!」

 

 未来と響は控えめに昼食にふらわーのお好み焼きを食べて夕方に帰ってきた。

 それまでに響の好きな家庭料理から始まり、ありとあらゆる響が好き、もしくは好きそうな料理を作っていった。

 

 切歌が八紘を呼び出していたし、弦十郎達は当然参加。響の家族も来て、大騒ぎしながら響の誕生日を当日に祝った。

 響は物凄く食べられるがそれを超える量作っていたため、響はソファーでお腹をぽっこりさせてうずくまっている。

 

『皆が私のために作ってくれたなら、頑張って食べないと!』

 

 後日食べればいいという声を無視して、響は美味しそうなものを片っ端からお中に入れた結果だ。流が軽く触ろうとしたが、未来に神獣鏡ガードをされて撃退されたりしていた。

 

 先程まで人生という名のリセットできないゲームをボードゲームにした物をやっていたのだが、キャロルは奏に喰ってかかった結果、ボコボコにされて最下位だった。

 ならばと、友情崩壊ゲームを取り出してきたので奏はそれを受けて立つことにした。

 

 ちなみにキャロルは始めから目的地を狙うが、奏は都市近郊にあるレアカードが出るカードマスに直行していた。簡単に言うと、この友情崩壊ゲームは奏が好きなゲームであり、サイコロの周期を無理やり読んだ流くらいじゃないと勝てないほどの豪運を持ちながら、卓越したプレイヤースキルを持っている。翼と流はキャロルや切歌などの、ゲームに参加して更に賭けまで始めたメンバーに黙祷している。

 

「先輩……少し、いいですか?」

「いいよ。場所は変える?」

「はい」

 

 クリスと切歌とキャロルが奏にカモられるのを、翼達と見ていた時、響が流をベランダに誘った。流は未来を見ると、納得していない顔でこちらを見ているので一応話は通しておいたのだろう。

 

 もう夏が終わったが残暑でまだ夜も暖かい。あと二週間もすれば夜も一気に冷え込んでいくだろう。長くなりそうだったので、友里に流は温かいものを入れて貰ってから、響の待つベランダに向かった。

 

「……あ、ありがとうございます」

「勝手に持ってきただけだから」

 

 二人は温かいものを軽く飲み、流は響が話し始めるのを待とうとしたが、その前に聞くことがある。

 

「めちゃくちゃ盗み聞きされてるけどいいのか?」

「はい……多分」

 

 響らしくない歯切れの悪い言葉で肯定したので、流は放置することにした。クリスを筆頭に了子までも色んな方法で盗み聞きをしている。

 

「流先輩はやっぱり強いですよね」

「まあな。神モードになればエクスドライブのシンフォギアと単騎なら勝てる。流石に皆と手を取り合って戦われたら勝てないだろうけど」

「融合症例だけど、先輩は生身ですからね?」

「生身(デュランダル)だからまあ」

「……その見た目でデュランダルでしたね」

 

 響は流の肌は日本人特有の色をした肌にしか見えない。だが、やろうと思えばいくらでもあの肌は硬くできるし、見た目も人外になれる。

 

「私は今回の戦いで、この拳で敵を殴っていいのか分からなくなりました」

「どういう事? てか、それは未来と話すべきでは? 俺殺されたくないんだけど」

「未来とは話しました。私の選択を尊重してくれるって」

「未来らしいな」

 

 未来のことを話す時の響はとても楽しそうにする。今の響の顔には影がかかっていたので一度未来の話題を出しておいた。

 

「サンジェルマンさん達は純粋に世界から支配をなくそうとしていました。その手段は過激でしたけど、しっかりとサンジェルマンさん達の正義がありました」

「奴隷だったサンジェルマンだからこそ、思うようになった正義だな」

「はい。そしてアダム……さんも私にはあまり理解出来なかったんですけど、人類の行く末、私が見ているよりもさらに遠くの未来を見て、最後には戦ってきました。初めのアダムさんは酷い人……? でしたけど、最後の神々しく見えたアダムさんなら、人を正しく導けるかもって一瞬でも思っちゃいました」

「俺も思ったさ」

 

 響は神となったアダムに初め屈してしまった。だが、流がそれでも関係ないとばかりに飛び出し、奏と共に戦う力を得て、やはり人が未来を決めるべきだとは思った。

 だが、今もう一度考えると、本当によかったのだろうか? という考えが芽生えた。

 やはり昔に人が人を迫害するというのを知った響には、少しだけ揺らぐものがあったのだろう。

 

「でも、先輩はすぐにあのアダムさんに立ち向かいましたよね?」

「……あー、響が聞きたいことはわかった。正義を持っている人と戦うのが辛い。本当に戦っている自分の正義が合っているのか? もしかして人類から見たら間違っているのか? って思っちまったのか」

「はい」

 

 響はあまり頭がいいほうではない。なので、本当は間違っているのではないか? と思ってしまったようだ。あのアダムを見てしまったからこそ、響は自分の拳に疑問を抱いた。

 

「それは俺に聞かれてもわからん」

「え?」

「響、俺はな。もしお前達を守るのが悪だ。その行為は世界を崩壊させる行為だと言われても守る。俺はな、極端なことを言うとみんなが居ればいい。それ以外の人類は死んだっていい。でも、皆と楽しく暮らすには食わないといけないし、色々なものが欲しい。だから、それを維持するために、俺は敵と戦っているだけ」

「……自分のため、そしてみんなのためって事ですか?」

「ああ」

 

 響は流がこういう人だと分かっていた。だが、アダムの神々しさに当てられて変に考えすぎていた。

 そして流のアホさ加減に腹を抱えて笑った。そう、自分達を愛し、守る人はこんな人だったと再確認をした。

 

「響がもし間違っていたとしても、それはみんなが止めてくれる。一人で戦っている訳では無いからな。だから、迷わず思った通りにやればいいさ」

「はい!」

 

 未来と似た言葉だったが、それでも全く意味合いが違く聞こえるその言葉に、響は笑顔で頷いた。

 

 

 

 そして響がこんな風に不安になってしまう原因を作ったカストディアンに、やはり流は怒りを向けていた。




流がカストディアン絶対殺すマンになりつつある。5期大丈夫だよね? 神アダムよりもカストディアンは強いよね? ノイズが出ないと弦十郎無双になってしまう予感ががが。

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