戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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流や奏サイドの話。そのあと風鳴の話。


#113『S2CAツインブレイクtype-(デュランダル)

 翼が流の母親だと轟が暴露してすぐ、『神いずる門』が開いた。

 

 主に翼達装者が驚きのあまり動きが止まっていたが、弦十郎は赤い光が天から集まってくる事を了子に報告した。もちろん了子もその事は確認している。

 

「なるほど、あれが神の力」

 

 訃堂の姿をした轟はやっと翼から目を離して、天から降りてくる赤い粒子のような光を眺めて顔を大きく歪ませている。面白いものを見たかのように歪むその顔は、普段の訃堂よりも大分悪に染まっている。

 

『皆シャキッとしなさい! 翼ちゃんがクリスみたいな聖遺物上の繋がりがないのに、流の居場所を何となく察せていたのはそのせいよ』

「知っていたのですか櫻井女史!」

『知ってたけど、なんで翼ちゃんの遺伝子を半分、検査結果上では翼ちゃんが母親になっているのかは分からなかったのよね。今なら、翼ちゃんの遺伝子データが使われたって事なんだろうけど……』

 

 翼と流は年齢が一つしか離れていない。翼が一歳にもならない内に、翼の遺伝子を取り、流を製造した……それでは年数が合わないのだ。

 流はソロモンから十数年前から肉体が出来ていて、そこから目覚めるのに時間がかかったと聞いていた。ソロモンの生い立ちと流に願った永遠の死の話からして、そんな所で嘘をつくメリットがない。なら、ソロモンは流に本当の話をしたはずなのだが……。

 

「向こうも着々と計画が進行している事だ。俺も計画を早めよう。流を殺してその肉体を奪う」

 

 翼が母親であることについて話そうとしていた轟だったが、アダムが完全に神の力を行使し切る前に奪わないといけないので、轟はすぐに流の肉体を殺し、魂及び精神も諸共に殺してからリーンカーネーションするつもりのようだ。

 

「流は今すぐあいつに攻撃を当てられるか?」

「無理」

「なら……ここは任せて先にいけ。一度は言ってみたかったセリフだな」

「いや、それ死ぬからね? あとそれって元ネタ映画じゃないでしょ」

「細かい! こいつに攻撃が当たらなく、アダムに対して流の方が有効だろ? なら行け!」

「分かった」

「行かせると思っているのか?」

 

 弦十郎や流程ではないが、充分早い速度で流に接近して攻撃をしようとした。

 

「させぬ!」

 

 翼が間に入り、轟の持つ草薙剣を翼の天羽々斬で受け止めた。もし翼以外なら力技で斬り捨てる事があったかもしれないが、轟の目的は翼のようなのですぐに彼が引いた。翼もそれがわかっていたので間に入った。

 

「奏くんもクリスくんも向こうを頼む! 翼も」

「私も風鳴です。身内の問題は身内で」

「分かった。お前達、向こうは頼んだぞ!」

「チッ!」

 

 轟は翼をあまり傷つけたくないようで、翼との打ち合いでは動きが鈍くなっている。その隙を弦十郎がイヤらしく突き、流達を追わせないようにしている。

 

 

 **********

 

 

「ママ! 敵の神の力を術式を阻害する対策を立ててたんじゃないの?」

 

 流達は弦十郎と翼を信じて、赤い光の柱の元へ向かっている。すぐにテレポートしないのは流が斬られてから少し不調で、空間の狭間に挟まれたくないから走っている。シンフォギア装者と流なのですぐに着くだろう。

 

 移動中に流はインカムで了子に質問をする。S.O.N.G.としか繋がらないが了子なら勝手に電波をキャッチするので問題ない。

 

『あー、それ。無理だったのよね』

「えぇ!?」

『地上の鼓星の神門はレイラインの制御でどうとでもなったのよ。でもね、天を塞ぐのは出来ないし、術式干渉は無理。結果、そのあとの対抗策を練ることにしたのよ。流石の私でも天の星々のエネルギーを無理やり制御はできなかったってことね』

「なら何が最善?」

『そうね……』

 

 天の配置を変えるでもしない限り

 

「私か響がぶん殴るのが一番早いんじゃねえか?」

『……それはどういう事?』

「今までこれは確証がなくて言えなかったんだけどさ、流って素でデュランダル並の防御力があるだろ? でも、私が抓ったりこずいたりするだけで痛がるんだよな。幽霊の時も今もそうだ」

「実演して抓るのはやめてって。後でいくらでもやっていいから……クリスも抓らない」

 

 親だとはもう思っていないが、親に殺す気で斬られた事は予想以上にダメージだったようで、流はそれを消すために精神を落ち着かせている。なのに、ちょっかいを掛けられると()()()()()()()()()

 クリスも負けじと流を抓っているが奏のように痛みは発生しない。

 

『奏ちゃんはガングニールの特性を引き継いでしまったのよね?……ガングニールの必中が作用しているのかしら? ガングニールに神殺しの逸話自体はあるけど、それは神が神を殺したエピソードであって、人が神を殺したわけじゃない……分からないわね。でも、それでとりあえずは時間を稼いでみましょうか』

「それでも時間稼ぎなのか……流、アレをやろう」

「アレって?」

「あれ」

 

 流は始めは言っている意味がわからなかったが、流が奏にやらせたくないナンバーファイブに入るものだったので気がつくのが遅れた。

 

「やれるけどやらないって決めたよね?」

「そんな悠長なことを言って、私みたいな犠牲者を増やすのか?」

「うぐっ」

『奏さん、まだその体は調整が出来ていないんですよ? あれをやったら』

『大丈夫だって。魂を消耗する類のものじゃねえし、ダメだったらまた流に体を今度こそしっかり作ってもらうから』

 

 流は奏のように死人を出してしまうことだけは絶対にしたくない。それを本人に指摘されると流は何も言えなくなってしまう。

 

「なあ、あれってなんだ?」

「すぐに分かるさ。クリス、あたしと流は少しだけフロンティアに行く。その間何としてでも皆を守ってくれ」

「いきなりだな。でもそれが一番いい方法なんだろ?」

「ああ。あともしガングニールが神殺しなら、アダムは知っている可能性がある。響を狙うかもしれないから気をつけてくれ。いざとなったら……」

「ああ。まだあたししか使えない本気を使ってやるさ。流の為だからな? 終わったら色々してもらう」

「いいよ。何でも言う事を聞いてあげる」

『あっ』

 

 流の言葉に満足したのか、クリスは手を振ってその場をあとにした。

 

『今の何でも聞くはヤバそうですね』

「だな。クリスの事だから、本当になんでもいいそうだわ。本当そういう約束の仕方やめろよ」

「なんで? 責任とれって言われても取るよ?」

「……流の頭がぶっ飛んでるのを忘れてたわ。少し離れただけなんだけどな」

 

 流と奏、そしてセレナはフロンティアのジェネレータールームへと宝物庫テレポートした。

 

 

 **********

 

 

「ネフィリム……いや、犬みたいな姿でお腹をださなくていいから。撫でなかったからって落ち込むなって」

 

 流がフロンティアのジェネレータールームに入り、ネフィリムを呼び出すと速攻で外壁の岩や土で肉体を作ってネフィリムが現れた。

 

「ネフィリム……嫌だな。はぁー、限定解除用のリソースを俺に流してくれ」

 

 このフロンティアを稼働させているジェネレータールームのコアに流は全身デュランダルの状態で触れ、ネフィリムにそうお願いをする。

 

『流さんの体を変圧器にして、奏さんに流します。きつかったら言ってくださいね』

「余裕余裕。血肉はガングニールで出来ているようなもんだしな」

 

 流達は流を挟んで、奏にフロンティアのエネルギーを注ぎ込み、無理やりシンフォギアのロックを外して、限定解除モードに移行させようとしているのだ。

 

 だが、それは可能なのか?

 

 まずシンフォギアは歌の力、フォニックゲイン以外のエネルギーは受け付けない。これは歌が最も統一言語に近く、その歌の力が最も聖遺物のエネルギーとして適しているからだ。

 シンフォギアは元々歌の力で起動させる為に作っている。初期神獣鏡などの例外もあるが、それだとあまり効果が期待できない。規格外の電圧を電化製品に流れば壊れてしまうのと同じだ。

 

 流が聖遺物を命令するだけで起動できたのは、統一言語が使えるため、起動することが出来ていた。逆にフロンティアは聖遺物ではあるが、地球の聖遺物とは別のものであるので、流には反応しなかった。

 

 次にネフィリムに性質についてだ。ネフィリムは取り込んだ聖遺物をエネルギーに変換できるし、心臓はそのエネルギーを増幅できる。現在ネフィリムが増幅させているのは流の与えたエネルギー、デュランダルで作っているエネルギーだ。それは普通ならフォニックゲインとは別のものであり、それを奏に与えれば壊れてしまう。

 だが、流は電力で無理やりデュランダルを起動させられたあとに、ガングニールの欠片による便乗フォニックゲインという歌由来のエネルギーも受け取っていた。

 

 当初はまだ聖遺物やシンフォギアについてそこまで詳しくなかったが、皆のブーストになるかな? という思いで、流の中のデュランダルの増幅させるエネルギーを全て便乗フォニックゲインにしていた。

 故に流の内に流れる力は男では微々たる量しか生産できないフォニックゲインを聖遺物で無理やり増産し、そのエネルギーをネフィリムは増幅させている。

 

 結果的にフロンティアの賄う力は全てフォニックゲインなので、奏に送り込んでもシンフォギアが壊れることは無い。流が変圧器代わりにならないと、ネフィリムでは丁寧に人間が耐えられるエネルギー供給量に出来ないので、勝手に使ったら肉体が死ぬが。

 

 アニメとは違う数ヶ月も稼働し続けているネフィリムの心臓は、その巨大な入れ物(フロンティア)に限定解除をしてもあまりあるエネルギーを内包している。

 そして何より、ネフィリムは装者とOTONAと流に協力的なのだ。

 

「……奏流すよ?」

「いつでも来い」

『私も協力しますから』

 

 ジェネレータールームにある結晶が黄金の光を放ち始める。どんどん光が強くなっていくそのエネルギーを、ネフィリムは少しは手加減して流に送る。総量が多いため気休めにしかなっていないが。

 

「ぐうおおおおおおおお!!」

 

 流の体が、響の体からガングニールの結晶が生えて高熱を発する時のように温度をあげていく。だが、奏と繋いでいる手の周りだけは、熱を無理やり別のところへ移動させる。

 

「うぐっ、限定解除になれるエネルギーを受け取るのってこんなにやべえのか! 響とマリアはすげえな」

 

 響が束ね、マリアが制御する『S2CA・ヘキサコンバージョン』。あれはイグナイトで負荷を分散し、六人でやるからこそいけるものなのだが、それを人外と人造人間と霊体で再現しようとしている。

 

「体がめっちゃ熱いんだけど!!」

「あと、少しだ!!」

『ネフィリム! あまり乱暴に送らないで!』

 

 口々に文句を言いながらも、S2CAよりもゆっくりとだが確実に奏にエネルギー、フォニックゲインを送っていく。

 数分掛かったが、シンフォギアの全てのロックを解除するに足るフォニックゲインがチャージし終えたようで、奏は光に包まれる。

 

「……理論上出来ることは分かってたけど、もうこの三人じゃやらねえわ」

「だな。響やマリアを交えてやらないと辛すぎる」

『今ので寿命が数年分減った気がします……霊体に寿命はほぼないんですけどね……はぁ、疲れた』

 

 カ・ディンギル以来久しぶりの限定解除、XDモードなのにとても締まらない感じになっているが、今回のこれによって限定解除すら戦略に組み込めるようになったのだ。もう奇跡でも何でもなくなった。

 まず流からしたら、聖遺物をフォニックゲインでブーストさせて100%で扱うのなんて、自分がいつもやっていることとさほど変わらない。その感覚はこの作戦を考えた奏もセレナも変わらない。

 

「じゃあ、ちょっくらぶっ倒してくるわ」

「先行ってて。スグに行くから。無茶はもうしないでね」

「はいよ」

 

 いってらっしゃいのキスでもすればいいのに、戦友との暫しの別れの時に行われるような拳と拳を握って当てた。奏は流が開けた赤い光のあった場所の上空へのゲートに向けて、宝物庫内で飛行速度を上げてから一気に敵へと突っ込んでいった。

 

「……ねえ、セレナ」

『なんですか?』

「鼓星の神門は生命エネルギーを集めるための門なんだよね?」

『そうですね』

「……地上の神門はレイラインのポイント上にある神社を起点にしてたんだよね?」

『そうですよ? 何考えているんですか?』

「いやさ、皆と日本で結婚するためには、並大抵の事ではできないと思うんだよね」

『本当に戸籍とかを入れるつもりだったんですか?』

「そうじゃないと不幸になるじゃん。皆を正式に愛したい」

 

 流はアダム達の上空に開いたゲートから見えるオリオン座を眺めながら、セレナに問いかけた。

 

「神に人間の法って適用されるのかな?」

『ちょっ!』

 

 セレナは気が付かなかった。アダム達の上空にゲートを開いたということは、天より降りてくるエネルギーが近くを通っているという事を。流は何もしなくてもその体が神の器であるため、赤い星々を巡る力が流に流れ込んでいたことに。

 

 

 **********

 

 

「……まあいい。Dは最終的に手に入れればいいのだから。それよりも翼を確保する」

 

 轟は翼との打ち合いから距離を置き、人を殺す剣術から無効化する剣術へと意識を変えた。

 

「私が流の母親とはどういう事だ?」

「時間稼ぎ……という事はないか。純粋に疑問に思っているのだな。いいだろう、答えてやる」

 

 翼が会話を求めているのが分かったのか、轟からしたら話題はつまらないが、戦闘よりも翼との会話を優先した。

 

「俺は天才だった。幼き頃にソロモンを呑み込み、膨大な知識と力を手に入れた。だが、それ故に俗世には興味が出ず、俺は風鳴を捨てたんだ。俺はその力をこの地を守るためになんて使いたくなかったからな。そして俺は若さを維持したまま、数十年が経ち、運命に出会った」

 

 弦十郎も翼も風鳴の闇の全てを理解している訳では無いので、そういうこともあるのがしれないと思った。次期風鳴トップの婚約を回って蠱毒のような殺し合いが平然とされていたのだ。これくらいはあるだろう。

 

「俺は翼……の母親を見た時、運命の相手だと思ったよ。だけど、その女は既に別の男がいて中古品だった。いやー、あの時は悔しかったね。タイムリープを研究しておけばよかったと何度も悔やんださ」

 

 翼は訃堂によって不幸にされ、ほとんど会うことのない母親を思い浮かべた。ほとんど会っていないがそれでも母親なのだ。怒りで斬りかかりそうになるが、流が知りたがっていた自分の事を知ってあげられるチャンスだ。何百と人を殺し続けて、自分の身を守ってくれていた流に比べたら、このくらい我慢しなければならない。

 

「その時八紘を殺そうとしたが、俺を見つけた訃堂が俺に風鳴へと戻って来るように説得してきたよ。国防のためってな。八紘も殺させないときたもんだ」

「……だが、あなたは」

「ああ、戻っていない。色々便利だから仕事を手伝う代わりに少しの間居たことはあるけどな。そこで分かったのは翼の母親が風鳴の遠縁で、たまたま恋愛をしたが、それが無くても八紘に与える気であったという事だ。血を濃くするためにな」

 

 ここまで言われれば翼でも分かる。色々と風鳴を引っ掻きましたのはこの男である事が。

 

「俺は訃堂に交渉を持ちかけた。この国の国防を盤石にするための方法、神の器を創造し、使役する。そしてその器と風鳴の血が濃い人間と交合わせ、神の器の力を持った風鳴を作る計画をな」

「……貴様のせいなのか」

「俺のおかげだ。訃堂はアメリカの力が強大になり、聖遺物の研究も進歩せずに苦戦していた状況で絶対なる力が手に入る計画を聞いてしまったら? しかもそれは失敗してもさほどデメリットがない場合は? あいつはそれをやる事に踏み切った」

 

 二人は怒りでどうにかなりそうだが、了子がインカム越しで止めているので、何とか動きを止めていられている。そして二人の後ろにいきなり気配が現れた。

 

「そうして、私の妻は父訃堂に手を出されたのだな」

「お父様!?」

「八紘兄貴、何故ここに?!」

「これは風鳴の問題だからお前もこいと、お前の嫁に無理やり送られたんだ。斯波田さんがメインだから良かったものを」

 

 了子は風鳴の話になった時点で、後のちに共有するのが面倒なので音声を八紘の端末に送っていた。

 了子は八紘は割と好意的に見えている。弦十郎曰く、訃堂が関係を壊さなければとても良い夫婦だったそうだ。今の了子は割と恋愛脳なので、弦十郎と同じように八紘が妻を優しくしていたのだろうと感心していた。だが、それはこの男に踏み躙られた。なら、復讐の機会を与えてやった方がいいと了子は思い、この場に送った。

 

「……お前は八紘か。お前の嫁を訃堂が孕ませたおかげで、翼も俺好みな体型になり、俺に相応しい強き乙女になったよ」

「……流の元父親は、その巨乳好きだったのではないのか?」

 

 弦十郎は翼から目を離して、轟に質問した。弦十郎の事を翼が見ているが、流は小さくても大きくてもどちらでもウェルカムだが、父親の影響で巨乳好きだったはずだ。

 

「あ? あんな脂肪要らねえだろ……ああ、流を育てたのは俺じゃねえからな。そんな面倒な事は全て呑み込んだソロモンにやらせたさ」

 

 轟轟の妻、芽羽咲(つばさ)。その女性は流を育てるのが面倒な轟が、暗示によって無理やり妻にして適当に据えただけの存在だった。だが、夫婦を演じるのも面倒だったので、呑み込んだソロモンの意識データをサルベージして力を与えずにその時の轟に上書きした。そのあと轟の精神はすぐにリーンカーネーションで訃堂の中に飛んでいた。

 轟轟の体がノイズに炭素変換された時の意識はソロモンであり、流の父親と言ったのはそういう事だったのだ。家の地下のビデオレターは知識を改変された状態で、できる限り流にヒントを残そうとした結果だった。

 

「……貴様がやはり外道であることはよく分かった」

「だが、何故自分の好いた女性を父訃堂に孕ませる必要があった」

 

 話の流れを見るに、翼の母親が既に手をつけられていたのを嫌がっているのはわかった。だが、何故訃堂を通して翼を作ったのかが分からない。

 

「いいか? 風鳴の血は想いを反映されやすいんだ。弦十郎、貴様のその常人を逸した力は貴様の想いと鍛錬によって生み出された。だが、風鳴の血がない状態で同じ事を、同じ才能の奴がやってもその域には到れない。翼の母親の血を引いた最上の風鳴と、その最上の風鳴の血を引き、優秀な俺の血を混ぜた素体D。最高の組み合わせだとは思わないか?」

「……いいや思わん。それはやはり翼の母親を愛しているわけではなく、ただその血と容姿に引かれただけだ。自分に相応しいと思っただけだろう。それは本当に愛なのか?」

 

 弦十郎はこの男はきっと流の体を奪い、翼をも奪って作った子供に乗り移ることもするだろう。ただ自分が優秀でありたいだけであり、道を間違った流のようにも見えた。

 

「……貴様のその程度の思いで、私の嫁の心が壊れたのだと思うとやりきれん」

「貴様はここで成敗する。流のために、そして皆のために」

 

 聞きたいことも聞けた。そしてやはりこの男は間違っていて、キャロルやマリア達のように話し合う余地もない。これは明確な悪であり、いつかは世界を滅ぼしかねない存在だ。

 

「そうか……やはり俺は人とはズレているんだな。まあ、治す気などサラサラないが。叔父と育ての父親を殺されて、Dの体を手に入れたらまずは教育からやってやるよ」

「翼、天羽々斬を一本借りれるか?」

「はい、お父様」

 

 翼は天羽々斬を一本作り出し八紘に渡した。フォニックゲインを供給できない八紘だとすぐになまくらになるが、なまくらでも岩を切り裂くのが八紘だ。

 

「弦、翼、こやつは我々で始末をつける」

「はい!」

「ああ、兄貴!」

 

 三種の神器を携えた訃堂の体を奪っている轟と、翼と弦十郎と八紘の三人が戦いの火蓋を切った。




血は貧乳派。教育によって巨乳派。よってどちらでもウェルカムに。

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