戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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あまり話が進みません。本日体調を崩しておりまして、あまり練れていないので、ガバっているかもしれません。
大変申し訳ありません。


#98『古強者の思惑は』

 流は未来に嫌い(ライバル宣言)と言われた後、すぐに全身デュランダルに戻して、無理やり腹の穴を再生させた。見た目はデュランダルだが、肉が内側から再生されるその光景は、近くで微妙に罪悪感を持っていた未来が吐きそうになっていた。

 

「流帰るぞ」

「……いや、先帰ってて」

「は? まだやるの事あんのかよ。今日はやめておけ。再生しても血液を流したんだから、その分弱ってるだろ」

「風鳴に行ってくる。もし色々聞かれたら、本当にやばいこと……死合とか以外なら言ってもいいから」

「ああ、なるほど。そっちも了解」

 

 無事な奏と翼が皆を一箇所に集めて、テレポートジェムでS.O.N.G.の潜水艦前まで戻った。

 別れ際に奏には死合の事を告げないように釘を指しておいた。あれは流自身が生みだした罪なので、知られるのであれば自らの口で言いたい。

 

「さて、怒るか」

『いきなり殺したりしちゃ駄目ですよ? 風鳴訃堂が今死んでしまうと日本が揺るぎかねませんから。皆が不幸になっちゃいます』

 

 奏が居なくなり、唯一流に憑いている幽霊になったセレナは流が笑っていないことに気がついたので忠告しておく。

 訃堂は身内からしたら割とクズだが、国防の観点から見れば基本的に正しい事が多い。未然に防ぐために殺したり、敵になる前に潰したりと裏では過激な事をしているがそれも全て日本のためだ。

 

「わかってるよ。行こうか」

『本当に駄目ですからね? もし流さんが殺ろうとしたら全力で憑依して止めますからね!』

 

 セレナは本来なら心優しく、殺ろうとしたらなどと言う言葉を言う子では無い。だが、長い間意識が朦朧とした状態でマリアが持っていたアガートラームに憑き、その後に奏や流というF.I.S.の白い孤児院には居なかった類の面白い人達に影響された結果、感性がねじ曲がってしまっているがそれでも出来るなら争いをしたくない。

 

 ただし奏との仁義なき戦いは別カウントだ。

 

 流は切歌が世話になったお爺さん達に貰った高い袴に、大きな穴が開いてしまったことに今更気が付く。謝る言葉を考えながら流は訃堂のいる風鳴宗家の屋敷の入口に飛んだ。

 

 

 **********

 

 

 流は入口に宝物庫テレポートをすると、入口の監視場所から人が出てきて流を奥へと連れて行った。どうやら流が脱走したことはバレているようだ。当たり前だが。

 

 流はいつもの訃堂が上座に座る長い部屋の下座から入る。流が知っているよりもだいぶ人数が減った部屋の中で適当に座って訃堂の言い訳を聞こうとしたら、切歌がお世話になったお爺さん達が訃堂の近くで手招きしていた。流は別段何処でもいいのでその呼び掛けに従い向かった。

 

「俺が上座にいると嫌がる奴等いるだろ? 面倒なんだけど」

「そんなもんもう居ねえよ。お前さんはここ。俺達の下で座ってればいいのよ」

 

 どうやら切歌のコネは、訃堂に次ぐ権力を持つ家の当主達との繋がりだったようだ。流は言われた通り爺さん達の下に座る。前を見ると切歌好き爺さんが数名と、他にも数名、そして訃堂しかいない。

 

「揃ったな。此度の風鳴流を餌として国防を害するような契りを他国と行っている者達を全て一掃した。これにて我らは更に結束を固められるであろう。そして此度の功により、風鳴流を正式に次期風鳴当主風鳴翼の婿とする。異議があるものはいるか? 居るのであればこの小僧よりも高い功績を示し、武を示すが良い」

 

『あの爺ふざけてますね。でも、効率はいいですよね。流さんは他国に危険視または敵対されていますから、この機会に内部にいる反乱分子をその方々に手引きをさせて、流さんはもう通常兵器では殺せません。流さんは国防の重要な……道具としても雇われていますから、それを損なうのは国防に反する事になります』

『まあ、実際に変なことをやってなくても、やった疑いを掛けられて切られた奴らもいるだろうね』

 

 訃堂は流に正式な翼の婚約者としての契約をする代わりに、今回のことは見逃せと言っているのだ。だが、今回はちょっとマリア達がクリス達と仲が悪くなってしまった。簡単に許す気はなかったが、これで翼の自由が手に入るなら報復は後のちにしてあげることにした。

 

 訃堂の言葉に乗るような人はおらず、ある人は顔を伏せ、ある人は笑っていて、流の周りにいる人達は切歌に感謝していた。

 

「居ぬのであれば、此度はここまで。抜けた輩の分はまわせるようにしておけ。流はついてまいれ」

 

 訃堂は全員に一言告げてから、流を名指しして部屋から出ていった。

 

「良かったじゃねえか、あと俺が用意してやった袴をもうぶっ壊してるのはどういう要件だ!」

「女性が暴れて止めたら腹を抉られたからしょうがないじゃないですか」

「おめえ、本当は弦十郎と血が繋がってたりしねえよな?」

「そうそう。こいつが弦十郎の血を引いてるってんなら、納得するんだがな」

「俺は養子だから」

 

 この人たちの話によるとS.O.N.G.の装者に手を出さないのは訃堂の念押しもあるが、弦十郎という存在の報復を恐れているためらしい。

 弦十郎が公安時代にちょっかいを掛けたヤツらは、軒並みボコボコにされて今は刑務所の中にいるのだとか。

 

「……いや、お前は呼ばれてるんだから行けよ」

「そうする。服ごめん、あと色々助かった……助かりました。ありがとうございます」

「いいって事よ。切歌嬢ちゃんを泣かせたら殺すからな?」

「そんなことする訳ない」

 

 流は端末のアドレスを伝えて、何かあったらお礼をすると言ってから部屋を出て、訃堂の書斎へと向かった。

 

 訃堂の書斎の前に着くと、すぐに部屋が開けて中に入った。流が入ると、入れ替るように部屋から訃堂以外の人が出ていった。

 

「なに? 俺はマリアを誑かした事を許してないぞ?」

 

 マリアの軟禁はマリアの愛だ。しかしそこに邪な助言があったのも事実だろう。ナスターシャやエルフナインがいたとしても、リンカー組は施設がない限り除染などが出来ず戦えなくなってしまう。それを提供していたのが風鳴宗家。確実に今回の騒動は前前から狙っていたのは自明の理である。

 

「翼を与える。そして貴様を国連に引き渡すのを我自身が拒否している」

「……俺はやっと特異災害に認定されたのか。遅すぎ。どうせ騒いでるのはアメリカだろ? 俺を暗殺しようとして、何度も何度も人員を送って、全て屍で帰ってきてるから相当キレてんだろ。しかも情報を抜き取られてるし」

「さよう。彼国は流を殺すべきだと言っていたようだが、自分達も利用したいのであろう。国連所属という事にすることによってこの国から遠ざけようとしている」

「はぁー、懲りないな」

 

 流は裏でアメリカの工作員と何度も戦っている。全て宝物庫に取り込ませてから、情報抜き出しなどをし、彼の国に生き残りを送っている。

 流は一度なら間違いだとして愛ゆえに見逃す気でいるが、既に敵であるアメリカとは別だ。アメリカ人は悪くないが、流はもし宣戦布告されたら皆殺しにする気でいる。下手に長引かせると装者達に被害が行く。

 

「彼国は風鳴次期の婿に対してアメリカは非道な行いを何度も行ってきた。故に『護国災害派遣法』を忙している。前に説明した新法だ」

「……第一種特異災害以外にも聖遺物や異端技術に起因する災害が起きた場合、軍を使えるってやつだよな?」

 

 第一種特異災害特例である彼は自分が標的にされる可能性がある新法なのに、どうでも良さそうに確認をする。

 

 実際流を対象に日本が護国災害派遣法を使うことは()()()ない。何故なら、流と戦わない方が益が大きくて逆に戦うと辺り一面が焦土になり、ノイズが跋扈する世界になってしまう。それを訃堂や国上層部はわかっているのでそんな決断はしない。

 

「さよう。これは聖遺物を狙って他国が攻めてきた時にも超法規的措置を即時執行し、我が国の軍によって撃滅することが出来る」

「もっとわかりやすく言え。(聖遺物)を狙ってアメリカや国連が攻めてきたら、俺やノイズの大軍を使用した鎮圧行動が即時合法的にできるようになるって事だろ。んな法律作るなよ」

「敵は国連やアメリカだけではない。故にこの新法なくして日の本の未来はない」

 

 訃堂はどうやら流の知らない何かも知っているようで、訃堂は国内の異端技術の監視に力を入れている。ならば、あれを知っているかもしれない。

 

「なあ、俺がどんな生まれか知ってるか?」

「D計画であろう? 知らぬわけがなかろう。何の為に風鳴に他の血を混ぜる気になったと思っておる」

「さいですか。まあ俺の邪魔をしないならいいや。でも、次は絶対に許さないからね?」

「自分一人では愛い奴らを守れぬ故に、我の力を使っている小僧が吠えるな」

 

 流はやはりどうしても訃堂が好きになれない。流は世界の人々を愛しているが、その愛に訃堂は入っていない。何故かどうしても駄目なのだ。

 

「帰るけど変なことしないでね?」

「貴様が怪しき行動をせねばな」

「……あー、もしかしたら怪しい行動するかもだけど、今回もキャロルの時みたいに動くからそこら辺は考慮してくれよ?」

「貴様はあのパヴァリア光明結社まで吸収する気か」

「んなわけねえだろ。ちょっと好きかもしれない人がいて、その人が助けを呼んだりしたら助けるだけだ」

 

 流は言いたいことだけいい、その場から宝物庫テレポートでS.O.N.G.の潜水艦に行った。

 セレナにこんな話し方をするから疑われるのだと何度も怒られるが、流は訃堂へのスタンスは変える気がない。

 

 

 **********

 

 

「確かに言ったはずだよ、シンフォギアの破壊をね」

「申し訳ありません」

「いや、いいんだよ。シンフォギア達は強いからね、彼女の技術を使って作られているだけはあるよ」

「ふん、ならなんで呼び出したのよ」

 

 場所は代わり、パヴァリア三人娘が帰還した後、サンジェルマンはアダムと連絡を取ってアダムの住むホテルへと向かった。アダムは無類の風呂好きなのでこのホテルの部屋にも屋外ジャクジーが備えつけてある部屋を用意されていた。

 今もジャクジーには入りながら三人娘の報告を聞いていた。

 

「心配だからね、僕の仲間である君達が」

「気色が悪いワケダ」

「んなこと本当は思ってないんでしょ? 早く本題に入りなさいよ」

 

 カリオストロはこの後に流との交渉があるのだ。それの是非によってはアダムを裏切ることになる……いいや、彼は元々裏切っているので鞍を変えただけだ。

 本当ならサンジェルマンに情報を渡してすぐにでもアダムから離れて欲しいが、見えない絆があるようで上手くいかない。

 

「もう済ませたんだよね、僕の本題は。本当なんだよ、君達が怪我をしていないかを見るのが目的なのは。僕は怪しいからね、信じられないのもわかるよ」

「前までは人でなしだったワケダが、今は無駄に人間っぽくなったワケダ。優柔不断で気色が悪いワケダ」

「おやおや、随分な言われようだ。僕自身もそう思っているから、まあしょうがないね」

 

 アダムはその後、他愛もない雑談をしてからサンジェルマンだけを残させて、カリオストロとプレラーティは部屋から出させられた。

 今回もティキは居ないようでアダムはうまくティキを操れているようだ。

 

「なんでしょう統制局長」

「心配したよ、本当にね」

 

 アダムはジャクジーから出てサンジェルマンの前に立ち、()()()()()()()()()()()。アダムはその美形が許す限りの最高な心配げな顔でサンジェルマンを見ている。

 サンジェルマンは顔を下に向け、自分を奮い立たせる。そう、アダムは人でなしだが()()()()()一度だってサンジェルマンを裏切ってはいない。

 

「だ、大丈夫です。志半ばで倒れることすら許されないのですから」

「そうだね。やらなければいけない。解き放たなければならない! 僕達が、支配者から!!」

 

 アダムはサンジェルマンの手を取り、もう片方はその想いを示すかのように高らかに腕を上げた。まるでアダムが本当にサンジェルマンと同じ志を目指しているかのように見える。

 

「ええ、我々はその為に数千年生きてきたのですから」

 

 その後もう一度アダムはサンジェルマンを労い、いつも報告を受けている事務手続きをした。するとアダムは何かを思い出したのか話の流れを変えた。

 

「どうだい、前に報告をもらった時に比べて。足りなかったんじゃなかったかな? 生命エネルギーが。確か言ってたじゃないか、大祭壇の安定稼働には程遠いと」

「未だ足りていません」

「だろうね。僕は知っているんだよね、丁度いい礎となるべき人物を」

「それはいったい?」

 

 アダムは指パッチンをして三枚の写真を呼び出した。それには二人の男と一人の女が映っている。

 

「風鳴流、もしくは風鳴弦十郎、そして櫻井了子のいずれかだよ。だが、やめた方がいいね、櫻井了子は」

「何故ですか? 彼女は既にフィーネの空の器。さしたる抵抗も無くいけると思いますが」

「調査中なんだよね、まださ。さて大変だろう、シンフォギアも壊さないといけないんだしね。だけどやって欲しいんだ、風鳴のどちらかを礎とすることを」

「……分かりました。では、また」

 

 サンジェルマンはアダムの言葉を全く()()()、そのままその場所から出ていった。

 

 

 

 アダムは何度か周りを錬金術で確認してからもう一度ジャクジーに入る。そして美形に形度られた笑顔を大きく歪ませる。

 

「本当に良い仲間だよ、サンジェルマンは! 全く変わらないね、出会った時の少女な時と。不完全な生物なんだ! 人間とは! だが、だからこそ、扱い易い! 頑張ってくれ給えよ、僕の真なる目的のために!! あははははははははは!!」

 

 アダムはあの時から人間を極力侮ることをやめた。まず初めにやったのは、サンジェルマンに対して基本嘘をつかないという事だ。ただ一つ、自分の目的以外は全て正直に話し、そしてサンジェルマンの乾いた心をアダムはゆっくりと侵食していった。

 故にサンジェルマンはアダムを疑わず、アダムは支配なき世界を目指してくれていると思い込んでいる。

 

「絶対にやり遂げる。そこにまで迫ってきているんだ、彼らはすぐそこまでね」

 

 アダムはジャクジーの脇に置いてあったシャンパンを一気に飲み干し、ある解析のためにすぐにその場をあとにするのだった。




アダム達が言っているあの時というのは、もうアダムが前に言っていましたが、回想が後のちに来るので、具体的な言い方は避けています。

そして護国災害派遣法が微妙に変わっています。聖遺物などの災害などに適応されるものがアニメですが、それに加えて聖遺物を狙った災害(戦争)も含まれています。

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