それでは10話です。
ーー海軍本部ーー
「ーーなんだと?直ぐには決められない?」
「えぇ、適当に制圧してから話し合いをしましたが、時間が欲しいと言うので」
「解放したのか…?」
「はい、連絡は伝書バットを寄越すとの事です。」
迂闊としか言えない対応に顔を覆う。
「…逃げられたな、恐らく七武海勧誘は蹴る。体良く逃げる口実を作ったのだろう…」
「まぁ、まだ決まったわけではないですし。取り敢えず私は寝ます。久々に調きょーーコホン、運動したので」
「ん…?まぁいい、ご苦労だったなシルヴィア君」
何かシルヴィアの口からトンデモナイ言葉が聞こえた気がするが気のせいだろう。疲労が溜まっているようなのでこれ以上引き留めるのも悪い。
「あ、はい。では失礼しました」
シルヴィアはテクテクと足早に部屋を出て行った。おそらくいち早くダラけるためだろう。
「はぁ…五老星になんと報告するべきか…大将が出向いたというのに逃げられたなどあってはならん。」
しかし任務遂行に余念がないシルヴィアにしては何かが引っかかる報告だった。普段なら手紙など面倒な手間をかけずに連行するというのに、逃走するのが目に見えている案を飲んだというのか…
彼女に限ってそれはないと思うが。
「…まずは火拳からの伝書バットを待つ他ないか…」
五老星への説明を熟考しながらガープの置いていった煎餅に手を伸ばした。
▽
「ーーエース、七武海にならない?」
「は?」
うわ、露骨に何言ってんだコイツ?みたいな顔された。いや大体予想はついてたけど、ここまで露骨な呆れ顔で見られるとは…!!
でも私はめげんぞ。
「…だから、王下七武海。知ってるよね?」
「あぁ、知ってる。海軍お抱えの海賊だろ?」
「そうそう。七武海になれば政府公認で海を航海出来る権限がーー」
「断る、海軍の犬なんざお断りだ。」
海軍の犬って…あの海賊たちは犬なんて可愛い気のある奴らじゃないよ。狂犬よ狂犬。下手すると噛み付いてくるし。
ま、エースの事だから断るのは知ってた。
「…デスヨネー。そう言うと思ってた。」
「なら誘うんじゃねぇよ。突然変な事言うから呆れたぜ」
「念のためってやつ?ま、なってくれればおーけー、駄目なら予想通り。しかし私の予想は外れないな、やはり出来る女は違う…」
私の勘は百発百中。ついでに言うと嫌な予感も百発百中。ま、まぁ…メリットとデメリットを差し引きしたらメリットの方が多いから、やはり私は出来る女…
「…毎度自画自賛してるけどよ、空しくねェのかそれ?」
「ない。事実だから」ムフー
ん?なんだエース。その可哀想な物を見る目は?なぜ私を捉えている?
まるで分からないな。
「…なぁ、姉貴。一つ教えてくれ。」
「なに?」
「俺を殴ったよな、どうやったんだ?」
ふーん、やっぱり気になるかー。でもなぁ…姉に対してその不遜な態度は改めてねばなるまい。
「いずれ分かる、って突き放しても良いんだけどなぁ…。エースがそれ相応の礼儀と態度を示してくれれば私の口も滑りが良くなるかもなぁ…なんて、ねぇ?」
ほれほれ、交渉材料皆無の君には私に頭を下げる他ないのだよ?んん〜?
「…ぐっ…!お、お願いします…、教えやがれ下さい…!!」
私の意図に気づいたエースがギリギリと歯軋りしながら唸り声のように喉を震わせた。
私が期待していたリアクションどうも。それではおかわり。
「ん?聞こえないな?」
「お、おおおお教えやがれ!!………下さいッ…!!」
面白過ぎる。もう少し遊んでいたいけど、これ以上はエースの血管がプッツンしかけない。十分楽しめたし、教えてしんぜよう。
「ま、妥協点かな。いいよ覇気っていうのはねーー」
ーー少女(アラサー)説明中
「ーーそんなものがあったのか…!?」
前半の海で覇気使いなんて早々いないし、知る機会ないよね。やはりというか当然のごとくエースは覇気に関して無知だった。
「ま、覇気は一応誰にでも素養はあるけど簡単に習得出来るものじゃないし。前半の海だったら
覇気は万人が持つ素養であるだが特殊な訓練を積まなきゃ習得出来ない。中でも覇王色の覇気は異質で数百万人に1人が持つと言われる。
そして、新世界では能力を過信した
「武装色の覇気か…」
「ちなみに私が止めなかったら桐代の刀でさっくりと逝ってたね。スパッと」
桐代ヤル気満々だったからね。武神怪鬼の名は伊達ではなく、戦闘のエキスパートである桐代は他の追随を許さない覇気の練度を誇っている。九蛇の戦士にすら勝る覇気使いなのだ。
そんな桐代の刀で斬られたとあれば斬られた事に気付かずにあの世行きである。
「やっぱりあの女も使えるのかよ…」
桐代が大分トラウマなのかエースは苦虫潰したような顔で呻いた。
「ま、姉として忠告しておくけど。覇気使いに限らず回避っていう選択肢を念頭に置いておくこと。分かった?」
エースは勘がいいから覇気で攻撃されたら野生の勘を発揮して避けるとは思うけど。別に逃げ腰になれと言っている訳ではない、避けるのも立派な戦法だ。
エースの顔を覗き込んで武装色の覇気を纏わせ鼻を突っついた。
ほれほれー、しっかりと戒めろー
「い、痛ェ!?…分かった!分かったから…離れろ!!」
肩を掴まれ強引に突き飛ばされる。危うく転んで尻餅をつくところだった…。
ほう…姉に対してこの仕打ち。そうかそうか、君はそういう奴だったんだなエース君。
「あ…す、すまん!!つい…」
「…エース君。ここで一つ、私が覇気の特訓をつけてあげよう。」
「え?」
「見聞色の覇気。これの特訓をつけてやろう。まずは視覚を奪って…」
エースに目隠しするように両手を翳して視覚を奪う。物理的にではなく、能力によって。そのため翳した両手を離してもエースには何にも見えてない。
「うわ!?なんだ!?真っ暗だ!!何しやがった姉貴ーーぐぇ!?」
「見聞色の覇気が習得出来れば視覚を絶っても敵を把握出来るし相手の攻撃も読める。その習得方法は…目隠しをして私の攻撃を避ける事。ま、私が今適当に考えた特訓方法だけど。」
さて、特訓と称した調きょーーゲフンゲフン。教育を始めようか。
「はぁ!?そんなの無理に決まってーーうわらばっ!?」
無防備に喚き散らすエースの腹を武装色の覇気を纏わせた腕で殴る。エース、愛の鞭なのだ…決して楽しんでやってるわけじゃないんだ…ホントだよー(棒読み)
早々に根をあげたエース君。アドバイスをあげよう。
「
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「ふはははははは!!これが終わったら武装色の覇気の特訓だ!!」
この後滅茶苦茶特訓した。
瀕死のエースを尻目にシルヴィアはホクホク顔で本部に帰投したとさ。ちゃんちゃん。