とりあえず7話です。
庭に出るとすでに藍と紫の姿は見えず、代わりに尻尾の二本ある茶色の猫がいた。
ん?あの尻尾どこかで見たような。
そんなことを考えながら猫がこっちに来るよう促してみる。
すると、人懐っこいのかすぐにこっちに来た。
しかし、あと少しで触れられる距離になったところで急に襲いかかってきた。
「うわっ」
透夜はしゃがんでいたため後ろに尻もちをついてしまった。
顔を上げ、正面を見ると猫がいるはずの場所には月華と同じぐらいの少女がこちらを睨んでいた。
「は?」
「なんで人間がこんなところにいるんです・・・あれ。」
驚いた俺は思わず間抜けな声を出してしまった。あれ?この少女どっかで見た気が・・・
向こうも何か気付いたような顔をしている。
「あっ、あの時紫を呼びに行った。」
「あっ、紫様がお連れした。」
お互い話してはないが一度、顔を合わせていることを思い出し、立ち話もなんだから縁側に腰を下ろし、話し始めた。
「初めまして、黒凪透夜です。
紫に助けてもらって今はここで面倒を見てもらっています。」
「藍様の式の橙です。気軽に橙と呼んでください。
紫様のお客様と知らずに襲い掛かってごめんなさい。」
「いや、別に気にしないし、透夜でいいよ。」
藍の式ということはここに住んでいるのだろう。
自分の家に知らない人がいれば攻撃するだろう。あっちも憶えていなかったようだし。
あれ?でも昨日の夜いなかったよな、それに
「紫の式じゃなくて藍の式?」
「そのことについては私が説明しよう。」
そう言って向こうから藍が来た。
あっ、橙が藍のところへ行き、抱き着いた。
「起きたようだな。
夕飯の支度をしようと思って呼びに行ったらいないからどこに行ったと思ったぞ。」
橙と会ったときはまだ明るかったが、もうすでに日が沈みかけていた。
「すみません。
それで、どういうこと?」
「まぁ、私は式の中間管理職のようなものだ。
簡単に言えば一人でまとめられないものを分担してまとめている感じだな。まぁ式は全然いないが。」
なるほど、大体わかった。
「それにしても、ずいぶん好かれてるな。」
「まあな、うまく育てた自信はあるぞ。たまにいないこともあるが。
それより手伝ってくれ。」
「はい。」
「橙は少し遊んできなさい。もう少しでご飯だからあまり遠くはいかないように。」
「わかりました藍様。」
そう言って橙は庭に駆けていき、俺たちは台所へ移動し料理を始めた。
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「よし、こんなもんだな。
それじゃあ私は運んでおくから透夜は橙と紫様を呼んできてくれ。」
「わかった。」
そうして俺は料理ができたことを伝えに橙と紫を呼びに行った。後ろから誰かの視線を感じながら。
とりあえず俺は、橙と別れた庭に来ていた。
しかし、後ろから感じるもの以外特に何も感知しない。
「あれ、どこにいるんだ?」
仕方なく俺は消費霊力を増やし索敵範囲を広げた。
すると、庭から少し出た森の中に橙と思われる反応を感じ、急いで迎えに行った。
「橙、ご飯できたぞー。」
「わかりました。・・・それじゃあ行きましょう。」
「ああ。でもその前に、紫、いるんだろ。」
俺は後ろを振り返りながらそう言うと、紫がスキマを開き、顔をのぞかせた。橙も驚いてる。
「ほんっと、なんでばれるのかしら?」
「ちなみに藍を手伝っているときから気付いてたぞ。」
「藍様の手伝いですか?」
「そうだよ。」
「なんか面白いことでも起きるかなと思って見てたけど、特に何もなかったわね。」
「そりゃあ残念でしたね。」
「ハァ、それじゃあ先に行ってるわね。」
そう言って紫は自分一人だけ行こうとするところ、引き留める。
「ちょっと待って紫。」
「なぁに。」
「なんでここで呼んだかわかるよなぁ。
俺たちもスキマで連れて行ってくれよ。」
スキマを通るのはあまり好きではないが、霊力を鍛えるチャンスだからな。
「はぁ、いいわよ。透夜も鍛えられるし。」
「おお、ありがと・・・」
俺が紫に感謝を伝えようとすると急に浮遊感に襲われ、
ズシン!
「うわ!」
俺は居間に落ちた。
「イタタ」
「大丈夫か、透夜?」
どうやら藍を驚かせてしまったらしい。
あのやろーと思いながら落とした犯人がいるほうを見る。
すると、すぐにスキマが開き、紫が橙を抱えて出てくる。
「大丈夫~透夜。」
「大丈夫ですか、透夜さん。」
橙は心配そうにしているが、紫は面白がっている。
「紫、取り合ずお前は後で切り刻んでやる。」
そう言って俺は紫を睨むが相変わらず面白がっている。
「それはそれは、楽しみにしていますわ。
それより早く食べましょう。」
「ああ、そうだな。せっかくのご飯が冷めてしまうからな。」
「はぁ、後で憶えとけよ。」
「それじゃあ皆さんご一緒に」
「「「「いただきます」」」」
そうして、いろいろとゴタゴタしたが、俺たちは食べ始めた。
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夜ご飯を食べ終え、俺は昨日と同じように庭で刀を振っていた。
一応藍に皿洗いを手伝うか聞いたところ、狭いからということで断られてしまい、紫は食べ終わって早々、スキマで逃げた。
そんな感じでやることがない俺は風呂まで刀を振っているというわけだ。
それにしても、あまり使ったことがないはずなのに何故こんなに身体が憶えているのだろう。もしかしたらあそこに来る前では刀を使っていたのかもしれない。
・・・いやいや、流石にないだろう。見た感じ15歳ぐらいの奴が過去に刀を使っているなんて。それにあそこに来る前だから何歳の時だよ。
そういや、こんなことを考えながら刀を振っているけどこんなんで大丈夫なのか。
刀を振りながら自問自答していると紫の気配が伝わってきた。
「はぁ、毎度何の用だ、紫。」
すると、いつも道理、スキマから紫が出てくる。
「お風呂焚けたから呼びに来たのよ。」
「わかった、ありがとう。」
そう言って俺は月華を地面に突き刺し、少し妖力を送る。
「ところで紫、さっきの忘れてないよなぁ。」
そうして俺は月華に妖力を流し込む。
紫はスキマに逃げようとするがもう遅い。
紫の周りから生えてきていた茨は瞬く間に紫を捕らえる。
「きゃっ、何よこれ。イタッ。」
自力で抜け出そうとするが徐々に茨が肌に食い込んでいく。
今回は妖力は吸収していない。ちょっとした罰みたいなものだしな。
「そろそろ懲りたか?」
「えぇ、もう懲りたから早くこれを解いてくれない?」
そうして俺は妖力を流すのを止めた。すると、紫に絡みついていた茨が消えていった。
「便利だな、これ。」
「それよりも、いつこんな能力を手に入れたのよ?」
俺は紫に事の経緯を話した。
「ふーん、なるほどね。」
放し終わると紫は面白そうに刀を見ていた。
「よかったわね。手札が増えて。
あっ、そうそう、近々神社で宴会があるみたいだからそこに出席してきなさい。もう話は通してあるから。」
「宴会?」
「そ、宴会。大丈夫よ、私も一応出るから。」
なら大丈夫そうだ。実際俺はまだここから出たことがないし、神社って言われてもどこにあるのかわからなかった。
だけど紫がいるなら大丈夫そうだ。
「わかった。」
「なら向こうにも伝えておくわね。」
「ありがとう、紫。」
「別にいいわ。
それよりも早くお風呂に入ってきちゃいなさい。」
「あぁぁぁぁ!」
忘れてた。
すでに紫と話し始めてから結構時間がたっている。
なんか、俺が入った後に紫、そして藍が入るようなのだ。
紫は知らんが藍は毛で湯が汚れることから最後に入るらしい。
そのため、入ってる時間が長いと藍が怒るみたいなのだ、早く入りたいから。
そうして俺は急いで風呂に入ったのだった。
そして、出た後に藍にちょっと怒られたのだった。
いかがだったでしょうか?
ぶっちゃけ全く話進んでねぇ。
今回何したんだよ。橙が出てきただけだろ。
7話まで来て東方キャラ3人はまずいだろ。
まぁ、あと何話かで宴会の回が来るから大丈夫でしょう。大変そうだけど。
それはそうと、今回もお読みいただきありがとうございました。
次回は土曜日の投稿になります。なるべく早い時間に出せるようにします。
それではまた次の話で。