東方黒雷伝   作:chaco

7 / 18
どうも、勉強しなきゃいけないのにする気が出ないchacoです。
今回は藍との模擬戦ですが先に言っておくと、結果は皆さんの予想と同じだと思います。
それでは、どうぞ!!


6話 模擬戦と妖刀

「それじゃあ、始め!!」

 

透夜は紫の合図と同時に飛ぶ技術を応用させ、藍に向かって一気に踏み込み、居合切りをした。

 

「ハッ!!」

 

しかし、藍は危なげなくそれを後ろに大きく飛ぶことで躱し、お返しとばかりに妖力で作った無数の苦無を透夜に向かって一直線に飛ばしてきた。

流石に苦無と苦無の間隔が狭いため横に移動することで避ける。が、藍も透夜を近づけないためか苦無を放ち続けている。それでも少しずつ距離を縮めている。

あと少しで刀が届く範囲に近づくと藍は苦無を飛ばすのをやめ、後ろに下がろうとする。

しかし、透夜はそれを許さず、さっきと同じ要領でさっきよりも半歩奥に踏み込み刀を横に振った。

藍はそれも避けるがさっきよりも結構ギリギリで避ける。

そのため、距離をとることができず透夜に反撃することもできずにいた。

 

「くっ、なかなかやるな透夜。」

 

藍は透夜が振るっている刀をギリギリで躱しているにもかかわらず笑みを浮かべながら言った。

 

「ありがとうございます。

でもいいんですか?そんな余裕あるんですか?」

「そうだな、攻撃され続けるのも面白くないからそろそろ反撃させてもらおうか。」

 

そう言って藍は透夜が縦に振った刀を人間が反応できない速度で躱し、そのまま蹴りを放った。

 

「がはっ」

 

俺は刀を振った直後で当然防ぐことができず、そのまま吹っ飛んでいった。藍はその隙を逃さず苦無を飛ばす。

しかしそれらは当たることがなかった。

何故なら、透夜の周りには黒い雷が発生しており、苦無をすべて消しとばしていた。

 

「なるほど、それがもう一つの能力か。」

「はい、これが俺のもう一つの能力、『雷電を操る程度の能力』です。」

 

『雷電を操る程度の能力』、文字通り電気や雷を操る能力。これが透夜が持つもう一つの能力だが、妖力を使っているため今はそんなに持たない。

 

透夜は自身の傷を確認した。

 

あそこまで派手にぶっ飛んだのにそんなに傷ついてはないな。流石に手加減してくれたか、体中痛いけど。

それに、妖力の使い過ぎか頭もクラクラするけど、まだいけるな。

 

そして透夜がまた居合切りの構えをとった瞬間に

 

「そこまで!!」

 

と、紫の声が響いた。

 

なんで?俺は紫のほうを見て、「まだやれる」と眼で訴えた。

 

「いいえ、これ以上妖力を使うと倒れるわよ。」

「確かに頭もクラクラしてるけど、妖力を使わなければまだ戦える。」

 

そう言って俺は紫に戦えることを伝える。

 

「えぇ、確かに透夜の言う通りだと思うわ。それならまだ戦えるわね。

でも、もしこれが模擬戦でなく本当の命のやり取りだった場合、あなたはその状態で正常な判断ができるの?出来るんだったら続けても構わないわ。」

「・・・ッ」

 

そう言われ俺は言葉を失う。

 

確かにそうだ。あれだけ命のやり取りをしてきたのに、自身の判断ミスで死んでしまう場所にいたのに、そのことをこの模擬戦では忘れていた。あくまで模擬戦で戦うことは変わらないのに。

 

「透夜、今日はもう終わりにしよう。ゆっくり身体を休めるといい。」

「ああ、そうするよ、藍。その・・・ごめん、紫。」

「そこは『ありがとう』じゃない?」

「そうだな。ありがとう紫、藍。」

 

そう言って俺は藍に言われた通り、身体を休めるために部屋へ、向かった。

 

 

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

 

 

透夜が部屋に戻った後、紫と藍は彼について話していた。

 

「戦ってみてどうだった?」

「楽しかったですよ。なんせいろいろと驚きましたからね。」

「ふふ、それは見ていてもわかったわよ。

そうじゃなくて、強かった?」

「えぇ、強いと思いますよ。

私が本気を出してないにせよ、あそこまで攻められるとは思いませんでしたよ。

彼、本当に刀を持ったのは初めてですか?」

 

そうだ、本当に初めてなのか?

 

「まぁ、記憶にある限りでは数回振った程度みたいだからほとんど素人同然みたいな感じで言ってたけど・・・。」

 

紫様も私と同じで疑問に思ったのだろう。

数回振った程度であそこまで正確に相手を追い詰める動きができるのだろうか。

今回は私が相手だったから躱せたものの、人間だったらすぐに斬られるだろう。

 

「でも素人同然の彼にあそこまでできるのかしら?」

 

やはり紫様も思っていたらしい。

だが、いくら考えても答えなど出ない。当たり前だ、そんなこと本人じゃないとわからないからな。

 

「ですが、大丈夫そうですね。

あれだけできるのなら簡単には死なないでしょう。」

「そうね。本気ではないにしても藍相手にあそこまで戦えたなら無茶しない限り死なないでしょう。」

 

・・・不安だ。

さっきのを見ると無茶しそうだ。

だが、一応な納得はしていそうだったからしばらくは大丈夫だろう。

 

「そういえば藍、透夜が敬語をとってくれたのよ。

こんなにも早く慣れてくれるなんて思わなかったわ。」

 

そう言って紫様は嬉しそうにしていた。

紫様の前では透夜は私に敬語を使っていたから自分が透夜が最初に敬語をとってくれたのだろうと思っていそうだ。

私に対しては午前中にすでに敬語がなくなっていたので実際は私が最初なのは言わないほうがいいだろう。

 

 

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

 

 

紫と藍が話しているころ、透夜は部屋で寝転がって考え事をしていた。

 

さっきの藍との模擬戦、なんか刀が自分の手足のような感じがしたなぁ。刀なんてほとんど使ったことがないはずなのに。

 

実際、透夜はあの場所では数回しか刀を使ってない。

 

だけど懐かしさ?が刀を振っているときにすごい感じた。憶えてはないけど身体が憶えている感じ。

 

そんなことを考えていると急に頭痛が来た。

しかもそれは時間がたつにつれてどんどん強くなっていく。透夜は痛みに我慢出来ず、意識を手放した。

 

 

眼を開くと透夜は一面真っ白な空間にいた。

 

「なんだここ?」

 

そう言って辺りを見渡すと、後ろに様々な花が描かれた着物を着た少女がこっちを見ていた。少女の腰には見覚えのある刀が差してあった。

そう、その刀は昨日、紫からもらった月華だった。

それを見た透夜は若干怒気を放っていた。

 

「お前、誰だよ。なんでその刀を持ってんだよ。」

「あれ、名前を聞くときは自分から名乗るのが礼儀って教わらなかった?

でもいいよ。もう知ってるから。」

 

そう言って少女は笑いながら自己紹介をした。

 

「私の名前は『月華』、あなたの持つ妖刀の魂。

だからなぜ持っているか?っていうのはそういうこと。

よろしくね、し、じゃなっかった、透夜。」

 

透夜は自分の名前を教えてないのに呼んだことに驚くと同時に本当に月華なんだと理解する。

自分の名前は他にまだ紫と藍しか知らないはずだし、妖刀は生きてるみたいなことを紫が言ってたのを思い出す。

 

「あ、あぁ、よろしく月華。

ところでここはどこなんだ?」

「ここは透夜の刀の中の空間だよ。

なかなか来ないからこっちから呼んじゃった♪」

「呼んじゃった♪ってあっちに行くのじゃダメだったのか?」

「うん。私がこうやって姿を現せるのは透夜の意識が現実から離れた時だけみたいなの。声も向こうには届けられないみたい。」

 

そうか、なら仕方がないな。

しかし声が届いたらサポートぐらいはしてもらおうと思ったけど無理ならしょうがないな。

 

「そっか、そういえば俺の名前の前になんか言おうとしてたみたいだけど?」

 

俺は月華が言った「し」についてちょっと気になった。

 

「え、あっ、別に気にしないで。ちょっと間違えただけだから。」

「そうか。」

 

いや、流石に無理があるぞ。まぁ、言いたくなさそうだから無理には聞かないが。

 

「ところで、月華は俺を殺すのか?」

 

俺は気になっていたことを聞いた。

紫が言うには殺さないらしいが本人(?)がいるならそっちに聞いたほうがいいだろう。

 

「ううん、殺しはしないよ、死んだあとは魂をもらうけど。

むしろ力を与えるよ。」

 

そう聞いて俺は安心した。

死にたくはないが死んだ後なら別にどうなったっていいしな。それよりも

 

「力を与えるってなんだ?」

「私がまだ刀じゃなかったときに使えたものを少しだけど使えるようになるよ。こんな感じだね。」

 

そう言って月華は刀を下に突き刺した。

すると、下からいくつもの茨が生え、透夜に絡みついた。

棘は体に刺さり、血を滴らせ、霊力と妖力を吸い取り、さらにきつく絡みつく。

 

「おい、何しやがる!」

 

そう言うと茨はきれいさっぱり無くなった。

 

「何って私の力を見せただけだよ。

これぐらいが限界だけど透夜も使えるよ。私が今やったように地面に刺して、妖力か霊力を刀に流せばできるよ。」

「そうか、ありがとう。」

「ふふーん、もっと感謝するのだ。」

 

なんだか月華がすげー子供っぽく見える。

 

「ああ、ありがとな。これからもよろしく、月華。」

「うん、よろしくね透夜。

それじゃあまたね。」

 

月華がそう言うと、だんだんと周りがぼやけ、俺は目を覚まし、外を見る。

 

「あれ、まだ結構明るい。それなりに向こうにいたはずなのに。」

 

そう言って透夜は手に握っていた月華を見る。

意識を失ってからかなり時間がたっていた気がするが、考えたって仕方がないので次に月華に会ったときにでも聞くことにした。

 

「何はともあれ、よろしくな月華。」

 

そう言って俺は月華を持ったまま庭に出た。

 

 




いかがだったでしょうか?透夜、負けましたね。
まぁ、無双なんてさせる気はないです。勝ち続けるのもあんまり好きじゃないんで。
個人的に負けながら成長していくほうが好きなので、透夜には負けまくっていただこうかな、なんて考えたりもしてます。
あ、あと月華、いいね。
透夜と話しているときの姿は小学五年生ぐらいを想像して書いてます。
別にロリコンというわけではないですがやっぱり小さいものは可愛いと思います。
ちなみに、月華が使った技ですがアニメにもなっているとある小説の技がモチーフになっています。
これからもそういうのが出てきますがご了承ください。

それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。次回は土曜日の投稿になります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。