透夜は今、湖のすぐ上を水しぶきを上げながら飛んでいた。
沈みかけていた太陽は厚い雲に隠れ、強くはないがすでに雨も降りだしてきている。
「うわぁ。これ家に戻るより博麗神社に行って雨宿りするほうがよさそうだな。紫も顔を出しそうだし。」
そう言って俺は雨宿りするために速度を上げ、切っていた能力を万が一のために発動させる。
とりあえず近くに危険なのはないな。
湖を渡り切り、安全を確認すると高度を民家よりも少し高いところまで上げ、人里の上空に入ろうとしたとき、不意に目の前で爆発が起きる。そのため俺は爆風に錐もみされながら地面に落ちる。
「チッなんだなんで急に爆発したんだ?」
そう言いながらも俺は周囲に怪しいものがないか確認する。しかし爆発したところには何もなく、周りにも何もなかった。いや、一つあったのが湖の周りの森にあった反応がこっちに向かってきていることだ。ちなみに藍だと思われる人里の前にある反応も見つけているがこっちは特に動く気配がない。
ひとまずこっちに向かってくる反応の方向を見ていると急に森から火の気が上がる。そしてその中に見覚えのあるシルエットを見つけ、一瞬で血の気が引く。
「なんであいつがここに・・・」
自分でも聞こえるかわからないぐらいの声だったが、まるで聞こえたかのように火の中の人物はこっちに向かって走りだす。
「見つけたぞ108ばぁぁぁあぁん!!!」
透夜は一歩後ずさり、スペルカードを宣言する。
「雷電『雷光蟲』!!」
透夜の周りから無数の電気の球があちこちに散らばっていく。もちろん突っ込んできた人物の方向にも飛んでいく。
それを見た襲撃者は走るのをやめると中腰で居合切りの姿勢を作る。すると右手から炎が噴き出し刀の形を作り出す。そしてそのまま火で出来た刀を振り抜き正面に来ていた透夜のスペルを消滅させる。
「久しぶりだな108番。脱走した罪は重いぞ。」
「な、なんでここにいるんだよ、レイナ。」
「あ?そりゃあお前を回収しにさ。お前は数少ない成功体みたいだからな。てか私の名前憶えてんのか。」
「そりゃあ散々身体ん中弄られれば嫌でも覚えるわ。」
よし、こっちの話に乗ってくれたみたいだな。クソ、こんなことなら月華を置いてくるんじゃなかった。レミリアのところだし必要ないなって思った自分を殴りたい。
「ふーん。お前、記憶無くなったと思ってたのにまだ残ってたんかよ。」
「嫌な記憶ほどずっと憶えてるんだよ。」
よし、藍が月華を持ってきてくれたみたいだな。
「で、時間稼ぎはもういいか?それじゃあ死ね!」
そう言ってレイナは炎の刀を振りかぶる。が、それは透夜に届くことはなかった。
レイナは自身の攻撃が阻まれたと知るとすぐに後ろに飛び、距離をとる。
目の前では藍が結界を張っていた。
「助かった。ありがとう藍。」
「まったく、武器はしっかり持ち歩きけって言っておいたはずなんだが?」
そう言って刀を投げ渡す。
「すまん、今回は必要ないと思った。」
「これに懲りたらしっかり持ち歩け。」
藍はそう忠告すると不機嫌になっているレイナの方を見る。
「で、うちの透夜に何か用か?」
「用も何もそいつをこっちに渡せよ。」
「悪いが透夜はうちの者だ。渡すわけにはいかないな。」
「そう。なら死ね!」
レイナは炎の刀を振りかぶってこっちに攻撃してくるが、藍の結界が攻撃を防いでいる。
そんな中、藍はこちらを振り返る。
「透夜、あれはお前の敵だろ。だからお前が決着をつけろ。」
「え?」
「あいつに身体を弄られたんだろ?ならお前がやるべきだ。その怒りをあいつにぶつけろ。あいつを乗り越えろ。」
「ああ。それもそうだな。」
「ふふ、勝ってこい透夜。死ぬのは許さないからな。」
「死なねぇよ。少なくとも恩を返すまでは。」
「いくぞ!」
俺は藍の掛け声で居合切りの姿勢をとり、結界が消えると同時にレイナに向かって駆け出す。
レイナは結界を壊せないと悟ったのか離れた場所で結界が消えるのを待っていた。そして透夜が動くと同時に動き出す。
「やっと動いたか。」
そう言いながら五発の火球を飛ばす。
しかし俺はそれをすべて躱し、レイナとの距離を詰める。
そして刀の射程範囲内に入ると同時に一気に振り抜く。
「ハァァア!!!」
「爆。」
しかし攻撃がレイナに当たる瞬間に二人の間で爆発が起き二人とも吹き飛ばされる。
俺は地面を転がり、立ち上がると同時に月華に妖力を流し込む。月華は俺の妖力に反応し地面から茨を生やし、レイナを捕縛しようとする。
レイナも捕縛しようとする茨を躱しながら接近するが、足元から急に出てきた茨に反応出来なかった。
「な!!」
茨に捕らわれたレイナはあっという間に全身を巻きつかれ、茨の中に閉じ込められた。
透夜は地面から刀を抜き安堵のため息をついた。
しかし、安心した次の瞬間、茨と茨の隙間から炎が溢れ、ついには耐えきれなくなったのか炎が茨を包み込み崩壊する。
中から出てきたレイナは棘の刺さったと思われる場所からは血が流れているがさほどダメージは入っていないようだった。
「チッやってくれるじゃねぇか。もう面倒だし本気で行くか。」
そう言ってレイナは何もないところから一振りの大剣を取り出す。
それに対し俺はまともに打ち合っても分が悪いと感じ、後ろに下がり刀を鞘に戻すと同時にスペルカードを使う。
「雷電『雷光蟲』!!」
「またその技か!」
雷光蟲はさっきと同様あちこちに散らばっていくがレイナの前に行ったものは大剣によってかき消されている。それどころか周りにある雷光蟲も風圧によって消滅する。
純粋に霊力や妖力で出来た弾幕を放ったがそれらも雷光蟲と同様、消滅させられてしまった。今も打ち続けてはいるが足止めにもなっていなかった。
まったく効かない自分の攻撃に思わず歯がみをする。
こんなことなら攻撃用スペルも作っておくべきだった。
『黒雷砲』は火力が高い分、隙が大きいからな。『スパークフィールド』も攻撃用じゃないし。
そんなことを考えている間にもレイナはこっちに向かい大剣を振り回しており、接近されてしまえば今の透夜には逃げることしかできなかった。しかし、今の状況を突破する方法を考えてしまっていたせいか横から来た大剣に対処できず吹き飛ばされる。
幸いにも切れ味は良いというわけではなく軽く斬られ、吹っ飛ばされるだけで済んだ。
しかし、大剣自体が熱いのか傷口が尋常でなく熱い。
傷口からは血が流れているため火傷はしていないが火傷の一歩手前といったところだろう。
俺は傷口を手で抑えながら立ち上がる。
「私の一撃を食らってまだ立つのか。大抵の奴なら気絶するか死ぬんだけどな。」
レイナは自身の大剣を見ながら続ける。
「やっぱり切れ味はいいほうがいいな。浅く斬ったところをそのまま熱で苦しめようと思ってわざと切れないようにしたけど思い切りやってあの程度ならやっぱ駄目だな。」
それを聞いた俺はイチかバチかシオンに教えられたことを試す。
あれだったら接近戦もできるし防御もできるはずだ。成功するかわからんが。
心の中で成功したときをイメージし、短くつぶやく。
「竜化」
すると腕の皮膚がどんどんと罅割れ、黒い鱗に変化していく。それに加え腹の傷の周りにも竜化を施す。
それを見たレイナは苦虫を潰したような顔をする。
「お前、竜魔族だったのかよ。めんどくせぇな。それに黒い鱗とか嫌なものを思い出させる。」
俺はレイナの言ったことを無視し、続けてシオンの応力を使う。
「黒化」
黒化を施すと一瞬意識を持っていかれそうになるがどうにかこらえ、目を開いた。
すると黒化を施す前は透き通るような黒色だったのが黒化した後はまるで光を逃さないような漆黒に染まっていた。
俺は驚いている藍に刀を投げ渡す。
「悪い藍。預かっといてくれ。」
「あ、ああ。了解した。だがその姿は「悪い、こいつを倒したら全部話す。」・・・そうか。わかった。」
藍が聞き終わる前に後で伝えることを言うと素直に聞き入れてくれた。
そしてそのままレイナの方を向き、自信満々に
「それじゃあ第二ラウンドと行こうか!!」
どうもこんにちは。chacoです。
今回は誰もここには来ていません。
で、本編入ってからの初めての戦闘回だったのですがどうでしたでしょうか?
今回、戦闘シーンを書いててやっぱり難しいなと思いました。それと同時に戦闘シーンを書いている人ってすごいなと感じました。
本当はもう少し書きたかったのですがどうやって書けばいいんだろうと悩みながら書いていたら結局いつもと同じぐらいの長さになってしまいました。
自分、成長するんですかね。
と、この作品のことはここら辺にしてちょっとリアルでの話を。
えーと、率直に言いますと受験近い、勉強しなきゃ、投稿減るかも、そんな感じです。
以前、減らさないと言ったのですがこのままだと本格的にヤバいということで投稿が減るかもしれません。
個人的にはいいところなのでペースを保ったまま投稿したいのですが一旦受験勉強に移ります。
ですが、全く投稿しないというわけではないですし、週一は無理でも一ヶ月に一話は最低でもあげるつもりです。曜日も相変わらず土曜日に投稿します。
投稿頻度は減りますがこれからも読んでいただけるとありがたいです。
それではこの辺で、ありがとうございました。