東方黒雷伝   作:chaco

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12話 買い物

早朝、朝帰りになってしまったが藍が俺たちを出迎える。

 

「おかえりなさい紫様、透夜。」

「ただいま~」

「ただいま、藍。」

「どうでしたか?宴会は。」

「楽しかったわよ~」

「ああ、俺もいろんな人と話せて楽しかった。」

「そうか。それはよかったな。

それより紫様、もう少し早く帰ってくることはできなかったのですか!!透夜も霊夢たちと同じぐらいなのですからしっかり寝れるときに寝ないと!」

「大丈夫よ藍。あなたは誰に対しても過保護すぎるのよ。それにいろいろと話し込んじゃってたんだからしょうがないじゃない。」

「はぁ~わかりました紫様。半日透夜を連れていたんですから明日は私が借ります。」

「別にいいわよ~」

 

ん?どうしてそうなるんだ?

 

「ちょっと待て。俺の意思は?」

「関係ないな。透夜にとっても大切なことだからな。」

「なにするん?」

「明日の午後に人里へ買い物に出かけるぞ。食べるのがなくなってきたからな。」

 

オーケー。それなら問題ない。幻想郷の地理はスキマで移動しているおかげで全然わからないからな。

 

「わかった」

「それじゃあ午前中は自由に過ごせ。宴会とはいえ初めて会う人ばかりで疲れただろうからな。昼ごはんを食べたら行くぞ。」

「りょ~かい」

「それじゃあゆっくりしていてくれ。」

 

そう言って藍はどこかへ行ってしまった。

いつの間にか紫もいないし。

午前中に休みができたといっても特にやることがない俺はとりあえず自室に月華を取りに行った。

 

庭で刀を振っているうちに本格的に朝日が昇り、橙が起きてきた。

 

「おはよーございます、透夜さん。今日は休みって聞いていたのに刀振っているんですか?」

「昨日午後は何もやってないから少しでもやっておこうと思って。」

「そうですか。藍様も何か用事があるようなので朝ご飯は作ってありましたよ。」

「わかった。あとで食べるよ。」

「それとお願いですが、ご飯食べたら私と遊びませんか?」

「ならさっさと食べてくるよ。」

「わぁー、ありがとうございます。それじゃあここで待っていますね。」

「わかった。じゃあ食べてくるよ。」

 

そう言って俺は朝ご飯を食べに居間に向かった。

最初は出てこなかった橙が遊びに誘ってくれるなんて、嬉しいな。

弾幕ごっこではかなりしょげてたみたいだからてっきり嫌われたかと思った。でも遊びに誘ってくれるってことは少なくとも嫌われてはいないみたいだな。

透夜はそんなことを考えながら藍の用意した朝食を完食し、庭に戻る。

 

「ちぇーん、今戻ったぞ~」

「お帰りです透夜さん。」

「それで、何するんだ?」

「追いかけっこです。」

「はい、あの森でお昼まで追いかけっこです。」

 

追いかけっこかぁ。妖怪である橙相手に体力がもつか?

まぁ何事も経験だ。

 

「わかった。それじゃあルールは?」

「ルールはですね、お昼までに私を捕まえたら透夜さんの勝ち、捕まえられなかったら私の勝ち。飛ぶのは禁止。それ以外だったら能力でもなんでもオーケーです。」

 

能力を使えるんだったら場所はすぐにわかるな。

これでも森の大半は感知できるようになったぞ。多分。

実際、普段はそんなに広くは感知してないけどそれなりの広さは感知できるはずだ。

 

「私が森に入ってから10秒後に透夜さんはスタートです。それじゃあスタート!!」

 

そう言うと橙は森の中に入っていった。

それを確認した透夜は頭の中で10秒数え、橙のあとに続いて森へ入っていった。

森の中は意外と暗く、木々が生い茂っているため見通しも悪い。そんな中、ここで遊び慣れている橙を探して、さらに追いかけるのはほぼ不可能だろう。

だけど能力を使えば難易度は多少下がるだろう。

透夜はそう考え、索敵範囲を広げる。森全体とはいかないがかなりの範囲を把握することができた。

そして透夜からあまり離れていない位置に橙らしき者を感知する。しかし森の中に橙とも草木とは違うものも大量に感知した。

 

「橙はここからそう離れていない場所にいるけど他にもなんかあるな。まぁとりあえず橙を追いかけるか。」

 

透夜は橙を捕まえることを優先し、橙以外の反応物はあまり考えないようにした。幸い橙は移動する気がないようであまり動いていない。

 

「それじゃあ行きますか。」

 

そうして肉眼で橙が見える場所まで移動し、木の陰に隠れ、息を潜める。

橙は相変わらず逃げる様子がない。透夜に対して背中を見せ続けている。

 

よし、やるなら今だな。

 

そう思った透夜は橙に向かって走り出したその時、足元で何かを切る感触がし、一拍遅れて上から網が落ちてきた。

それに驚き思わず声を出してしまう。

 

「うわっ」

 

そして、それに気づかない橙ではない。

 

「わーい、引っ掛かった引っ掛かった。」

 

罠にかかった透夜を見つけると、とても嬉しそうに近寄ってくる。

 

「この森には大量の罠が仕掛けてあるんですよ。動かさなきゃいけないものから今みたいなものまでたくさんあります。透夜さんは私の位置がわかるから動かさなきゃいけないのは使えないですが勝手に動くのには注意してください。それじゃあ頑張ってください。」

 

橙はそう伝えると逃げて行った。

透夜も網から脱出すると橙を追いかけて行った。

 

なるほど、この追いかけっこ体力だけじゃなくて罠にも注意をしなきゃいけないのか。状況判断もできるから遊びだけじゃなくてちゃんと特訓になってる。

 

透夜は罠を躱しながら橙を追いかけるが橙のほうが速く、結局見失ってしまう。

さらに橙に隠れながら近づこうとしても化け猫である橙には気付かれてしまい捕まえられない。

橙が仕掛けた罠に掛けようともうまくいかない。

そして、結局橙を捕まえられないままお昼になってしまった。

 

 

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*

 

 

「わ~い、私の勝ち~」

「ハァハァ、速すぎるだろ橙。勝てないわ。」

「だってこの森は私の遊び場だもん。」

 

橙は誇らしげにそう言った。

 

「そりゃあ勝てないわ。」

「二人ともここにいたのか。もうお昼はできてるぞ。」

「「藍(様)」」

「ごめん藍。作るの手伝わなくて。」

「いや、大丈夫だ。今日は簡単なのにしたし、休んでいいって言ったからな。それに橙と遊んでくれたようだからな。逆に疲れただろう。」

「いや、全然大丈夫。楽しかったし。」

「そうか、ならいいんだ。」

「藍様~

今日は透夜さんに追いかけっこをしてもらいました。」

「そうか、よかったな橙。」

「はい!」

 

そうしてお昼ご飯を食べながら嬉しそうに追いかけっこのことを話した。

そして藍もその話を楽しそうに聞いていた。

 

 

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*

 

俺と藍は今、ご飯を食べ終わり、買い物に来ていた。

 

「ところで藍、何買うんだ?」

「今日は主に数日分の食べ物だな。」

「ふーん」

「そういえば透夜は何か食べたいものはあるか?」

「食べたいもの?

そうだなぁ、美味しければ何でもいいかな。」

 

藍とそんな話をしながらあることに気づく。

 

「魚って売っていませんね。」

「ああ、幻想郷には海がないからな。川魚をとるにも里を出ないといけないから魚屋はないんだよ。

妖怪に襲われることを考えるとリスクが大きいからな。」

「へーって今更だけど藍は妖怪だけど人里に入っていいの?」

「本当に今更だな。

それはな幻想郷のルールで昼間は人を襲えないからな。まぁ夜でも人里で襲えば霊夢が退治しに来るしな。だから知性ある妖怪は昼間は人を襲わないし人里では夜も襲わない。外にいるなら別だがな。」

「へーそうなんだ。

それであとどれくらい買うの?」

「もう十分買ったからそろそろ帰るが。」

「ならちょっとお酒の選び方を教えてくれないか?」

「お酒か。なんでだ?」

 

透夜は藍に今、萃香に家を建ててもらっており、何か個人的にお礼がしたいと紫に言ったところ、萃香ならお酒がいいと聞いたことを藍に伝えた。

 

「そういうことか。確かに萃香には酒がいいな。

だが透夜、お金はあるのか?」

「あ・・・」

 

そうだった。こっちに来るときは寝ていたところを紫に拾われたからお金どころか何にも持ってきていない。それどころか外の世界にいた時も囚われていたから持ってこれるものもない。

透夜のお酒を買えないことを知った表情を見た藍はクスリと笑った。

 

「萃香には紫様が報酬を渡すから感謝の気持ちだけでもいいと思うぞ。それに、それ。」

 

そう言って藍は懐から一枚の厚みを帯びた封筒を透夜に渡す。

 

「なんですか、これ?」

「いいから開けてみろ。」

 

そう言われ透夜は封筒を開ける。

 

「ッ!」

 

中にはいくらかのお金が入っていた。

 

「えっ、藍、何これ?」

「何ってお金だ。紫様から透夜への報酬だそうだ。」

「報酬?」

 

なんか仕事したっけ、俺?

 

「ああ、紫様からの監視の仕事を請け負っただろ。それの報酬で先に渡しておくそうだ。それだけあれば一か月は余裕だろうとのことだ。ちなみに監視の報酬はそれより少なくはなるが、毎月始めに渡すようだ。」

 

この金額なら確かに一人で生活するには余裕を持てるだろう。だが、

 

「いいんですか?まだ何もやっていないのにもらっても?」

「紫様が渡すと言っているのだからもらえばいいだろう。

それは紫様がお前に対してのお礼なのだから。」

「あ、ありがとう。」

「お礼なら帰った時に紫様に言え。

ほら、酒の選び方を教えてやるからさっさと酒屋に行くぞ。」

 

そう言うと藍は歩き始める。

 

「あ、ああ。ちょ、待ってよ藍。」

 

そして透夜は藍の後ろについていった。

 

 




いかがだったしょうか?
今回は話が進みませんでした(笑)
「(笑)じゃねえよ。進めろよ、話。」
うん?あぁ透夜か。
「おう、今回も俺だ。」
透夜って初めより性格変わったよね。
「そうか?そんな感じはしないけど。」
まぁ性格についてはそれなりに考えているから。
っと、今回はそろそろ終わりにしよう。
「もう終わりか?早くねぇか?」
ぶっちゃけ眠い。
「ふざけんな」
ということで先に言うと次回はあっち側の話になります。
「はぁ、ったく、それじゃあ挨拶するぞ。」
「「ここまで読んでいただきありがとうございました。」」
引き続きこの作品をよろしくお願いします。
「評価や感想、質問をくれると有難いぜ。」
「「それではまた次の話で!!」」

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