存在を奪われた元赤龍帝   作:kind090daichi

5 / 12
 師匠が登場。

 力も一部覚醒。

 師匠はあの人ですよー。

 


我慢の限界はとうにぶっちぎっている

~一誠side in~

 

 

 アイツが家に来てからそろそろ3年になる。その間にはいろいろな事があった。もう限界だ。

 

 

 

「行ってきます」

 

 いつも通り学校に行くために鞄を背負い、家を出る。

 

 通学途中で同じ駆王小に通う奴と会うと急いで遠ざかったり、わざとぶつかって転んだ俺を嗤ったりといろいろな反応を見せてくれる。

 

 去年まではよかったのだが、今年になって誠二が入ってくると一変した。

 

 今まで仲良くしていた奴らが、いきなり手のひらを返したように俺のことを虐めてきた。

 

 最初はどうにかしようと話しかけてみたりしていたが・・・特に改善出来なかった。そして今はもう・・・諦めた。

 

 学校に着いて下駄箱を見ると、死んだ蛙が大量に詰まっていた。面倒臭いなぁ。これでまた、殺した蛙を下駄箱に保管している異常者、みたいな噂が流れるんだろうな。

 

 俺の噂は多分、全て誠二が絡んでいるんだろう。だいたいの見当はついている。というか、アイツは初対面の奴にも俺のことを話しているらしい。悪い方に誇張して。

 

 なんで俺がこんな目に遭わなくちゃならない。俺が何をしたって言うんだ。

 

 そんなことを思いながら今日も学校を過ごす。先生でさえ、俺のことをやっかいごとを持ち込んでくる問題児だと思っている。

 

 出来るだけ問題を起こさないようにはしているんだが、何気ないことで揚げ足をとられる。

 

 今日こそ平和に過ごそう、そう思っていると、

 

「おい雑魚。お前、誰の許可を取って学校に来ているんだ?」

 

 突然後ろから声をかけられた。

 

 はぁ、またか。

 

 声だけで分かる。決意したばかりだが、早々に平和とはおさらばしなければならないようだ。

 

 後ろを見ると複数の生徒を連れた誠二がいた。体つき的に見て、1年生から6年生までいるだろう。

 

 今度は何なんだ。

 

「よぉ、誠二。なんだ?」

 

「いや、なに、また酷いことをしたらしいから家族として落とし前をつけなきゃなぁと思って」

 

 はぁ、またか。毎回こうやって難癖をつけてくるのだ。

 

 しかも理由がよく分からない。なんで落とし前の付け方が暴力でなければならないのか。

 

「全く身に覚えがないんだが?」

 

 ダメもとで聞いてみる。

 

「か・え・る・の・こ・と・だ・よ。まさか知らないとは言わせないよ?だって俺たち、みんなで見てたんだからねぇ?」

 

「それまたずいぶん毎度の事ながらタイミングが良いこって。思わず俺のことを誰かが監視しているのかと疑っちゃうよ」

 

「それまたずいぶん毎度の事ながらタイミングが良いこって。思わず俺に見せているのかと思ったよ?」

 

 うぜぇ。その言ってやったぜ感がすごい。

 

「おい誠二、さっさとやるぞ」

 

 1番がたいの良い男がそう言うと、まわりのモブどもが俺を取り囲んで1番見つかりにくい校舎の裏にある少し大きめのプレハブ小屋みたいな所へ引っ張って行く。

 

 ドカッ

 

 連れ込まれてからすぐに後ろから羽交い締めにされ、腹を殴られた。

 

「グゥ.....」

 

 おなかを殴られたことにより、呼吸が出来なくなった。

 

 ドカッ バキッ ドンッ

 

 そこからは人数に任せた暴力の嵐だった。

 

「お前なんて!いなくなれば!良いんだよ!」

 

「動物を平気で殺すなんて、どんな神経してんだ?」

 

「誠二だって!お前を止めるにはこうするしかない!って悲しんでいたんだぞ?何で分かってやらない!」

 

「いなくなって!くれさえすれば!みんな!平和に過ごせるんだっ!」

 

 そんなことをほざいている間にも手は止めない。

 

 誠二がそんなことを思っているはずがない。だって動物を殺してるのアイツだもん。

 

 それを俺に全ッ部なすりつけて、俺から周りの人間を遠ざける。

 

 しかし、俺ももう限界だ。いい加減にしてくれ。

 

「・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・から・・・・・・・・・だろ」

 

「あぁ?何言ってんのか聞こえねぇよ!クソ雑魚!」

 

「3年間も我慢したんだからもういいだろ!」

 

 そこで俺はブチ切れた。

 

 まわりに群がっていた奴らの腹と喉を1発ずつ殴りつけると、反撃されるとは思っていなかったのか簡単に沈んだ。

 

「巫山戯んなァ!!3年、3年だ!お前がおれの所に現れてから3ッ年も我慢してきたんだ!本来ならお前が消え無きゃならないはずだ!!」

 

 誠二に向かって力の限り叫ぶ。

 

 が、誠二は何も感じないようで相変わらずにやけるのをやめない。

 

「弱い奴が何を吠えたって無駄なんだよ」

 

 その言葉を聞いて俺は誠二に殴りかかった。自分の力を見せるために。

 

「おおぉぉぉぉぉぉお!!」

 

 距離を一気に詰めてお腹を狙う。

 

 バチンッ!

 

 だが、俺のパンチは余裕で受け止められる。

 

 俺は信じられないものをみた。

 

 パンチを受け止めた方の手が違う。いきなり誠二の左手が赤い籠手に変わったのだ。

 

 その籠手から、

 

 Boost

 

 と音が鳴る。そして、驚いて呆然としている間にもう2回鳴る。

 

「これが俺とお前の格の違いだ。この赤龍帝である俺に、敵うわけがない」

 

 そう言うやいなや、人とは思えないような速度で近づいて殴ってくる。

 

 当然よけられるはずもなく、まともに拳を食らってしまう。

 

「ウッ・・・・・・!」

 

 正確に鳩尾に叩き込まれた拳を捻って内臓を潰してくる。

 

「ゴフゥッ・・・・・・!」

 

 そこからは子供同士の喧嘩ではなく、一方的な蹂躙だった。相手を生かそうという意思はなく、ただ自分が満足するまで殴り続ける。

 

 痛い痛い痛い痛い・・・・・・。クソ、なんだよ、同じ位の年なのに、何でこんなに違うんだ、もっと、もっと俺に、力があれば・・・・・・・・・。

 

 骨が1本や2本くらい折れながらそんなことを思っていると、頭の中にある光景が流れ込んでくる。

 

 これは、なんだ。至る所に剣が刺さっている。その中心に男がいる。

 

「やぁ、初めましてかな?安心して、僕は君だ。正確には君と体を共有しているって所かな。まぁいいや」

 

 訳の分からないことを良いながら微笑んでくる。

 

「ずっと見ていたけど大変だね、君の人生は。だからそんな君にプレゼント。これをあげるよ」

 

 男が差し出してきたのは2本の剣だった。

 

「それじゃ、あまたいつか」

 

 その言葉とともに剣で埋め尽くされた世界は消えていく。

 

 気がつくと両手にはさっき渡された2本の剣が握られていた。

 

 すごい。

 

 痛くて指一本すら動かせなかった指が動く。体には今も激痛は走っているが。 

 

 これならいける。

 

 起き上がると立ってこちらを見ていた誠二に向かって踏み込み、上段に構えたそれを振り下ろした。

 

 スパンっと紙を切るかのごとく簡単に、誠二の服を切り裂いた。 

 

 咄嗟に後ろに引いたのか、体に刃は届いていなかった。

 

 さすがの誠二も驚きを隠せなかったのか唖然としている。

 

 しかし、すぐに立ち直り、さっきよりも強く殴ってくる。

 

 顎に1発入ったのを最後に俺は意識を失った。

 

~一誠 side out~

 

 

~誠二 side in~

 

 どうせ、雑魚のことだから倍加3回で十分だろう。そう思っていたが、そうはいかなかった。

 

 一誠が倒れ、意識がもうろうとしているであろう状態だったが、いきなり両手に剣が現れた。

 

 そして意識を回復させると、さっきとは比べものにならない速度で向かってきて剣を振り下ろした。

 

 咄嗟に下がったから服だけですんだが、危なかった。

 

 少し驚いたが、もう大丈夫。改めて念入りに一誠の意識を断った。

 

「巫山戯るなよこのクソ雑魚が。元主人公の癖してオリ主である俺を殺そうとするなんてなぁ」

 

 いっそのこと殺してしまおうかと思い、一誠の首に手をかける。しかし、こっちに来る人の声を聞いたので、急いで倒れているほかの奴らを起こして戻る。

 

 やはり人間関係の断ち方が甘かったか。

 

 まぁその辺は大丈夫だ。こいつが刃物を持って襲いかかってきたことにすればいい。

 

 今度こそ、完全にこの世界から存在を消してやる。

 

 俺はそうほくそ笑み、この話をするために、職員室に向かった。

 

~誠二 side out~

 

 

~一誠 side in~

 

 起きると保健室のベットの上だった。

 

 隣を見ると両親が顔を真っ赤にして怒っていた。

 

 内容をまとめると、こうだ。

 

 

 誠二が一誠の行動に対して数人で注意する。

 ↓

 一誠が切れて周りの人間を殴って気絶させる。

 ↓

 誠二がそれを止める。

 ↓

 またそれに一誠が切れて刃物を取り出して斬りかかる。

 ↓

 誠二がその刃物を奪って一誠を気絶させる。

 

 

 こんな感じになっている。勿論全くの嘘だ。

 

「一誠!あんたなにやってるのよ!注意した弟を刃物で殺そうとするなんてどうかしているわよ!」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「だいたいねぇ、あなた3年前の誠二の誕生日からおかしいわよ」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「本当に、誠二を見習ってほしいわ。あなたなんかもう知らない」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「母さん、落ち着いて。何か理由があるのかもしれないじゃないか」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「一誠、どんな悪いことをしたんだ?怒らないから言ってみなさい」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「さぁ、誠二に一方的に暴力を振るったことを謝るんだ」

 

 うるさい・・・・・・うるさい・・・・・・うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

 

 なんでアイツをわからない。

 

 なんで俺を理解しない。

 

 もういい、俺の護るべきものはもうすでに壊れていたんだ。

 

 ベットから勢いよく起き上がると、誰かの制止も振り切ってどこかへ向かう。

 

 

 

 

 30分くらいだろうか。当てもなくただ走ったり歩いたりを繰り返してとにかく遠くへ行こうとした。

 

 だが、所詮は小学生の足である。すぐに体力も無くなって名前も知らない公園のベンチに腰をかけた。

 

 もう、どうでもいいや。

 

 全てを諦めてしまおう。

 

 もう十分苦しんだ。

 

 やることもなくてぼーっとしていると後ろから声がかかる。

 

「こんな所で何をやっているの?」

 

 追ってきた誰かと思い後ろを振り返る。しかし目の前にいたのは違った。

 

 ダークグレーの髪を長さが少し足りないのか無理矢理後ろで縛っている中性的な顔をした男の子がいた。

 

 身長は俺より少し大きいから2、3位年上か?

 

「お兄さんは誰?」

 

 するとお兄さんは苦笑いをしながら言う。

 

「一応は何も怪しくはないとでも言っておこうか?」

 

「君さ、面白い目をしているよね。誰かに捨てられて絶望しているっていう顔」

 

「分かるよ、僕もそんな体験してきたから」

 

「良かったら僕と一緒に来ない?」

 

 俺はお兄さんに尋ねる。

 

「ついて行ったら俺は強くなれる?」

 

「勿論」

 

「ついて行ったら誰かに何も奪われなくなる?」

 

「勿論」

 

「ついて行ったら俺の大切なものを守れるようになる?」

 

「勿論」

 

 だったら、もう俺の答えは決まっている。

 

「連れて行って・・・・・・。俺を連れて行って下さい」

 

 そう言って俺は頭を下げる。

 

「君の名前は?」

 

「兵藤・・・・・・いや、ただの一誠です」

 

「そう、じゃあ一誠、ついてきて。僕の名前はナルヴィ。今はそう名乗っておくよ。強くなったら本当の名前を教えてあげる」

 

 そう言ってナルヴィは光り輝く翼を背中から広げると俺を抱えてとぶ。

 

 空を飛べることに驚いたが、強くなるならこれくらいの事には慣れなければならないだろう。

 

 護るべきものを守れるようになる。

 

 幼き頃に決意した事を再び決意し、雲を抜けてどこまでも飛んでいく。

 

~一誠 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 マジでヒロイン誰にしよう.....。

 ナルヴィの正体って簡単に分かっちゃうか?

 あと、次回から多分新章に入ると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。