いけないとわかってはいるんですが、辞められないっすねぇ~。
~一誠 side in~
「あ~もうっ!分かんねぇ。あいつら何を企んでやがるんだ」
俺は欲しい情報が得られないことにイライラしてフードをとってダークグレーの髪をかきむしる
レイナーレが誠二に接触してから二日経っても未だに今回の堕天使の行動の主目的と思われる『あの子』について何一つ分からなかった。
会話の中から得られた情報は、
・ 『あの子』はドーナシークという堕天使とはぐれエクソシストがつれてくるらしい
・ 『あの子』によって堕天使たちは至高の存在へとなるらしい
この2つだけだったので圧倒的に情報量が足りない。
そのドーナシークという奴が見つかれば楽なのだが、そう都合良く見つかるなんて事は無かった。
さて、街を見回ってみたところ特に怪しい動きもないし、どうしたものか。
堕天使、堕天使、堕天使、堕て…………と呟きながら街中を歩いていると、いつの間にか町外れの方まで来てしまった。
「あぁ、変なところまで来たな。戻るか」
ここら辺には特に何も無いので引き返そうと歩く方向を変えながら首がこっていたので回してゴキゴキならす。
「んぁ?」
ちょうどその時に一般的な住宅では見られない屋根が向こう側にあるのを視界の隅に捉えた。
そちらの方に顔を向けてみると、どうやら教会のようだった。
「あそこは……まだ見たことがないな。行くか」
そして街に戻らずに新たにそこを目的地に設定する。
しかし抜かったな。ここら辺があまり人のいない土地だったせいで見回りがおろそかになっていたな。
いざ教会の前に来るとそこは荒れていた。壁の塗装ははがれ落ち、腐って少し湿っぽい両開きの扉は左側が半開きになっている。覗いてみると中もぼろぼろで、かつて暖かい雰囲気に包まれていたはずのその空間は既に色あせてしまっていた。
「うっわ。こりゃひでぇ」
中に入ろうとして扉に触れると、ガタンと外れてしまった。
割れたステンドグラスから入ってくるムラのある光は幼きイエスを胸に抱くマリアをもの悲しく照らし出し、ここの廃れ具合をより一層印象づけていた。
異常が無いかどうか左右に視線を走らせ、最後にかつては神父が説法を説いていたであろう台に目を向ける。
その台を見た瞬間に俺はある違和感を感じていた。
その正体が気になって近づいて詳しく調べてみると、絨毯の色が変わっている部分と台の位置が少しだけずれていた。
「最近動かした後がある。と言うことは地下が存在するのか」
地下の存在を確信した俺は台を横にずらしていく。
その下に敷かれていた絨毯をめくると、本来継ぎ目のないはずのコンクリートの床にちょうど人が一人か二人くらい入れる程度の大きさの溝があった。
その溝に指をねじ込み、持ち上げると下に階段が現れた。
下っていくとそこに見えたのは、二十メートル四方の部屋の中に十字型のはりつけ台と床に描かれた半径二メートル程の魔方陣があった。
床に描かれたそれにはちらほらと堕天使の術式が含まれていたので、レイナーレたちがつくったものに間違いないだろう。
奴らの本拠地を見つけたのだ。
さらに魔方陣を調べていくとこれは
堕天使、
なるほど。
「理解できてきたぞ。これで抜いた
それが分かりさえすればっと。
俺は手早く磔台を壊して、魔方陣も消した。
「これでよし。あとはアーシア……だっけ?の救出だけだな」
しかしどうしようかな。アーシアがいつ連れてこられるのか分からないからな。とりあえずあいつらでも監視しておけばいいか。
レイナーレたちを探すべく俺は教会を後にした。
レイナーレを監視していい加減に飽きてくると西の方の廃墟から戦闘音がした。
「おーおーはぐれ狩りかな?ご苦労なこった。まぁ、ちっと見てくるか」
屋根に飛び乗るとそのまま最短ルートで音がした方へ音もなく駆けだした。
それほど距離も離れていなかったので、ほぼ一瞬で着いた。
やはりグレモリーがはぐれ狩りをしていた。
幸い林が近くにあったので木で身を隠しながら近付けた。
「あちゃー。あいつら戦闘力の差が分からないのか?いや、力を過信しているな。特にグレモリーはなまじ滅びの性質が強すぎるせいで酷いな。あいつらじゃ無理だっての。まぁ助ける気もないがな」
そう、これは自業自得だ。弱いのが悪い。
ついでに言うとここであいつらがいなくなれば俺が楽。
そうこうしている間に誠二が出張ったが瞬殺。予想の範囲内だな。
あぁ、グレモリーもダメか。せめて逃げるなり滅びの魔力を使うなりすればいいのに。戦意喪失が1番ダメだよ。
あとはグレモリーたちを殺したあのはぐれを俺が狩るだけだと思っていたのだがここで俺も予想だにしないことが起きた。
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然この廃墟に悲鳴が響いた。
駒王学園の制服を着た女子がそこにいて、はぐれの標的にされたのだ。
完全に気を抜いていた。
すぐに助けに向かうが、
「チッ!間に合わねぇか。仕方ねぇな。『フェーズ1解放』」
体内にある封印を少しだけ解除する。
一誠の周りに黄金のオーラがまとわりつく。
これは魔力による身体強化とは強化する倍率が桁外れに違く、あくまでも人間の一誠には若干負担がかかる。
そしてその副作用みたいなもので力を解放する段階によって髪の色素が抜けて最終的には真っ白になる。
今は術で変装しているため、外見的な変化はない。
「
「干将・莫耶」
急いでフードを被るとはぐれが武器を振り上げた刹那に女子をかばうように前に立っていつもの如く白黒の双剣を使って攻撃を防いだ。
「一般人に手ぇ出すなっての」
攻撃をいなした剣を流れるような動作で再度振り、腹でバイザーを吹っ飛ばした。
そして一般人を危険にさらした無能なゴミに対して怒りがわいたのでついののしってしまう。
「お前ら悪魔はほっとけば増える害虫みたいなものだ」
目線の先にいる
それはほっといて一誠はまずこれ以上負担をかけないように被害者の女子を記憶を混濁させる特殊な札を使ってから気絶させた。
そして吹っ飛ばされた痛みから立ち直ったバイサーに向けて殺気を放つ。
「おいそこのはぐれ、名前なんつったけ?」
「バイサーだ」
「バイサーさんよぉ、俺ら超常の存在は一般人に関与しないのが暗黙のルールだよな?それを今俺ら日本神話の領地で行った。よって断罪する。反論は無しだ。死ね」
言いたいことを言うと
「なぁっ!………ギャッ!!」
バイサーは反応しようとしたのだろうが、その圧倒的なスピードの前に動けず両手両足を一瞬で切り落とされて達磨になった。
「あっけねぇな。さて、最後だ。何かあるか?」
何も出来ないまま四肢をもがれたことにやっと恐怖を覚えたのか数瞬沈黙したが、なんと命乞いを始めた。
「す、すまなかった。少しだけ調子に乗っただけなんだよ。もうおとなしくどっか行くし謝るからさ、許してくれないか!頼む!」
おいおいこいつは話を聞いていないのか?
「さっき殺すって言ったよな?反論はなしってな。それは聞き届けられないからもう何もないって事でいいな。はい、バイバイ」
無理矢理話を終わらせるとバイサーの首を切り落とした。
「『フェーズ1封印』」
また、自分の力を封印して、干将・莫耶も消した。
「さて、終わったことだし帰るか。あっと、この女子を忘れてたわ。危ねぇ。こいつを送ってっておしまいだな」
帰るか、そう思ったときに後ろから不快な声が聞こえた。
「あなた、誰よ。日本神話ってどういうことよ!ここは私の領地よ?あなた、こんなことして我がグレモリー家が黙ってないわよ。場合によっては魔王様も出てくるわ」
面倒臭いのが復活したなと、ウンザリしながら振り返るとそこには案の定無能姫がいた。そして言葉を続ける。
「そうねぇ、それがいやだったら私の下僕になりなさい。あなた大分強そうだし、ルークなんかどうかしら?今なら好待遇で迎えるわよ?」
あの、あなたさっきまで恐怖で震えていたのでは?ずいぶんとお早い復活ですね。
「はぁ、お前分かってないのか?力量もないのに格上に挑んで負けて、危うく一般人を殺してた所なんだぞ?そんなゴミの下になんかつくか。温室培養された見せかけだけの強者気取りが。上級悪魔が聞いて呆れるわ」
その言葉が気にくわなかったのかやはり顔を真っ赤にして怒っていた。
「そう、あなたは今自分の命を無駄にしたわ。悪魔が管理している領地で好き勝手やった事を魔王様に報告して討伐対象に認定して貰うわよ。さぁ、それが嫌なら私の下僕になりなさい」
何言っても無駄だな、こりゃ面倒だし早々に退散するか。
「だからお前らになんか従うかっての。さっさとここから出て行け!この無能が」
言いたいことを全部言い切ったので、地面に寝かせている女子を担いで未だにキャンキャンうるさい奴に背を向けてここを後にした。
ここの調査が目的だったのだが、最初から目立ちすぎたことを若干後悔しながらどうやって任務を続行するか考えながら帰路についた。
~一誠 side out~
一誠の能力が一部解禁になりました。
一誠は修行して手に入れた力が強すぎて封印していないと体に負担がかかるため、いつも封印しています。
封印解放のフェーズが進むたびにスーパーサイヤ人、2、3…………みたいな感じで身体強化&能力が解放されていくと思ってくれればOKです。
フェーズ1は身体強化のみです。
一応スーパーサイヤ人ゴッドまでなのでフェーズは6段階でしょうか?
まぁ、楽しみにしていてください。
次はアーシア編に突入しようかなぁ。
ではまた次回。