「くそっ!IS委員会め、勝手なことを!このままでは計画が…!あ"あ"っ!」
黎斗は社長室の机を叩き、辺りに何かの設計図を大量に撒き散らしていた。黎斗の眼は充血しており、目の下には隈が出来ていた。
「…檀黎斗は何故あんなに怒りをだしているのだ?」
社長室のドアの隙間からその様子を見ていた赤いロングコートの男はメディックに問いかける。
「なにやら昨日IS委員会から連絡があってずっとあの調子なのですわ、ハート様…。」
「IS委員会からだと?」
《どうやら織斑一夏の専用機を造る件が勝手に白紙にされたそうだ。》
ハートとメディックが話していると、後ろから低めの声が聴こえ、振り替えると黒い機械のコウモリが飛んでいた。
「あら、コウモリさん。ごきげんよう。」
「詳しく話を聴かせてくれないか?キバットバット二世よ。」
《よかろう。》
◇
一週間前、黎斗は織斑一夏がISを動かしたことにより、IS学園に是非、彼の専用機を造りたいと言いその許可を得て、幻夢コーポレーションの力を注いだISを設計していたのだが…。
「…え?倉持が織斑一夏のISを開発することになった…?ではわが社のISはどうなるのですか!?」
昨日IS委員会から連絡があり、倉持技研が織斑一夏のISを造ることが決定したのだ。しかも織斑一夏の姉、世界最強のIS操縦者である織斑千冬の後継機を造るそうだ。
「ふざけるのも大概にしてください!わが社の力を使えば最強のISが完成するのですよ!?しかも倉持は今、日本代表候補生の専用機を造っているはず!その専用機はどうするつもりですか!?」
そう、倉持技研は今黎斗が言った通り他の専用機を造っているのだ。そこにもう一つ専用機を造るとなると莫大な時間とコストがかかる。だが非常にも返ってきた言葉は…。
「なっ…!?人員を全て織斑一夏の専用機開発に使い、日本代表候補生の専用機は開発を中止!?何を考えているのですか!?もう少し考え直してください!その代表候補生の努力はいったいどうな…っ!」
電話は途中で切られ、黎斗は受話器を叩きつけた。女尊男卑に染まっているIS委員会からすれば、男女平等を掲げ、得体の知らないパワードスーツを造る幻夢コーポレーションにISを造らせたくはないのだろう。だが一週間も不眠、不休で試行錯誤し、やっとの思いで完成した設計図をなんの相談も無しに捨てられたのであれば、黎斗の努力は無駄となってしまう。黎斗にとってそれは一番の侮辱であった。
◇
《と言う訳だ。》
「それはあまりにも酷いな…。」
「ええ。ISは嫌いですが、その日本代表候補生もなんだか可哀想ですわ…。」
《それよりもだ。》
キバットバット二世がドアの隙間から見ると、黎斗は先程より発狂していた。
「そうだぁ!この際IS委員会もろとも全てのISを滅ぼしてくれよぅ!私に歯向かった事を思い知らせてやろぉう!ブァァァァァァァハハハハハハハハ!」
《これは重症だな。仕方がない…。》
キバットバット二世はスィ~っと空中を浮遊し、黎斗の頭に突進した。
「あ…。」
何処かでゲームオーバーの様な残念な音楽が流れ、黎斗はバタリと倒れた。
《このまま過労で死なれても困るからな。ありがたく思え。》
その後黎斗はハートに担がれ、医務室でメディックの治療を受けることとなった。そして三日間は目を覚ます事がなかった。