IS-復讐を誓う仮面の戦士たち   作:甘々胡麻ざらし

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今回は少し長めです


それぞれの思惑

「はぁ…はぁ…。」

 

人気のない場所で壁にもたれかかったゲンムはベルトのレバーを閉じ、ガシャットを抜く。すると変身が解け、黎斗の姿に戻る。しかし黎斗の額には汗が吹き出し、息づかいもかなり荒くなっている。

 

「グッ…!やはりデンジャラスゾンビとプロトガシャットの連続使用は負担が大きすぎる…。」

 

黎斗は自分の心臓辺りを押さえ、呼吸を整える。

 

「ひとまず会社に戻るとするか…。」

 

黎斗は少しふらつきながら幻夢コーポレーションに戻っていった。戻ってくるとネガタロスが出迎えたが、黎斗のあまりの様子に思わず駆け寄った。

 

「どうした!何があった!」

 

「無事に027が盗んだガシャットとガシャコンウエポンは回収できた。だが、途中で思わぬ邪魔が入ってね。織斑千冬と、その弟や教師達と戦うことになってしまったよ…。それに確かめたかったとは言え、プロトガシャットとデンジャラスゾンビの連続使用もしてしまった…。」

 

「大丈夫なのか!?」

 

「ああ。教師達は簡単だったが、織斑千冬は危なかった…。デンジャラスゾンビじゃなかったら、完全に負けていた…。」

 

「とにかく少し休んだ方が良いな。」

 

ネガタロスは黎斗を医務室まで連れていき、ベッドに寝かせる。

 

「じゃあ俺は他のやつらに解析などを頼んでくる。」

 

「待て、ネガタロス…。」

 

「なんだ?」

 

「君の体の方は大丈夫なのか?そろそろメンテナンスをしないと…。」

 

そう、ネガタロスは人間ではない。イマジンと呼ばれる未来からやって来た人類の精神が、人間のイメージなどによって誕生する怪人だ。イマジンは、本来人間に憑依し、契約した者の願いを叶え、時の流れを壊す者達だ。しかしネガタロスは黎斗と手を組み、こうして力を貸してくれる。

黎斗とはある契約を交わし、実体化することは出来るが、実体化した姿では見た目のせいで外を歩けないため、黎斗がロイミュードを応用して造った人工の体に憑依している。だが機械の体であるため、時々メンテナンスが必要であり、ちょうどその時期に差し掛かっていた。

 

「お前は自分の心配をしていろ。メンテナンスなど他のやつにも出来る。」

 

「そうか…。では少し休むとするか…。」

 

そう言って黎斗は瞼を閉じ、ネガタロスが去った後、黎斗はパソコンを取りだし、またしてもデータを打ち込み始めた。

 

「すまないね、ネガタロス君…。ゴホッ!っ!」

 

思わず咳き込み口を手で押さえたが、その手には血がベットリと付いていた。

 

「私に残された時間はあまりない…。早く完成させなければ…!」

 

 

一方その頃IS学園では。

 

「千冬姉…。」

 

一夏がIS学園の医務室で項垂れていた。目の前には千冬が眠っていた。

 

「俺がもっと強かったら…。」

 

一夏は自分の不甲斐なさに涙を流すが、その頭を優しく撫でられる。顔を上げると千冬が起きており、優しい笑みで頭を撫でていた。

 

「千冬姉!目が覚めたんだな!」

 

「ああ。少し気絶していただけだ。心配かけたな。」

 

「千冬姉…。ごめん…、俺が弱かったから…。」

 

「いや、お前の様子を見ればわかる。よく"あれ"を使わなかったな。それだけで十分だ。」

 

「でも!"あれ"を使えば勝てたかも…っ痛!」

 

一夏が拳を握りしめると千冬に頭を殴られ、半分涙目になりながら頭を押さえた。

 

「バカモン!お前はそんなのを使わなくても強くなれる。焦らなくて良い。少しずつ強くなれ。あんなのはただの紛い物だ。」

 

「うん…。」

 

 

ここはとある場所。そこではある人がモニターを見てイライラしていた。

 

「何アイツ!急に束さんの邪魔してー!せっかくのいっくんの晴れ舞台が台無しだよ!」

 

モニターを見ていたのはISの産みの親であり、現在世界中で捜索されている篠ノ之束だ。今回IS学園に無人機を送り込んだ犯人であり、目的は一夏の晴れ舞台を用意することだった。しかし突如現れたゲンムにより、それは阻止されてしまった。おまけに一夏や千冬すらも圧倒してしまったのだ。

 

「あーもう!調べても正体わかんないし、なんなのこいつら!」

 

「束様。珈琲でも飲んで落ち着かれてはどうでしょうか?」

 

「あーうん。そうするよ。ありがとクーちゃん。」

 

クーちゃんと呼ばれた少女、クロエ・クロニクルは束に珈琲を差し出した。

 

「うん!クーちゃんの珈琲は美味しい!」

 

『だったら僕にも頂戴よ。』

 

「…チッ!」

 

突然男の声が聴こえると、後ろの方から黄色い布が降りてきて、そこからライオンのような頭、虎のような腕、そして黒い包帯で巻かれた足を持った怪物が現れる。

 

「飲んでも味なんてわかるわけないだろ。ただのメダルの塊の癖に。」

 

『酷い言い方してくれるね。まぁ実際そうだけどさ。』

 

そう言って猫の怪物は金髪に黄色のチェックのシャツを着たチャラそうな青年の姿になった。

 

「カザリ様、いつお戻りに?」

 

「ついさっきだよ。」

 

カザリと呼ばれた青年は近くにあったソファーに座る。

 

「クーちゃん、そんなやつ呼び捨てで十分だよ。」

 

『さっきから随分と偉そうだな。』

 

今度は緑色の布が降りてきて、クワガタの頭、カマキリの腕、そしてカザリと同じく黒い包帯で巻かれた足を持った怪物が現れ、オールバックに緑のジャケットを羽織った青年の姿になる。

 

「ウヴァ様もお帰りですか。」

 

「ああ。それにしてもクロエは丁寧な癖にお前は本当に偉そうだな、束。」

 

「そもそもお前達をここに置くことすら私は嫌なんだよ。」

 

「いいの?僕達が居なくなったら例のシステムは完成しないよ?」

 

「本当にうるさいなぁ。コアを抜き取って黙らせるよ?」

 

「皆さん落ち着いてください。ここで戦っても意味はありません。」

 

束が懐からあるものを取り出そうとしたが、クロエに止められ戻した。カザリ達もクロエの言葉に戦闘体勢を止めた。

 

「束様は彼らからのセルメダルの提供。そしてカザリ様達は束様にコアメダルの捜索。今争っても互いに利はありません。」

 

「今回はクーちゃんに免じて見逃してあげる。」

 

「はっ!それはこっちの台詞だ。」

 

 

「随分と面白いものが見れたわね。」

 

とある場所で黎斗達の戦いを見ていた女性、スコール・ミューゼルは興味深い顔をしていた。

 

「織斑一夏…。檀黎斗…。人類の未来を決めるのはいったちどちらか…。はたまた別の誰かか…。楽しみね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギラ・リントン・リサギゾ・バベダ・ゲゲルグ・ザジラスパ。」

 

そう言い残しスコールは薔薇と共に消えた。


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