名探偵ミューズ   作:sunlight

9 / 13
遅くなりました。前回の続きです。


美術館殺人事件 捜査編

パシャッ! パシャッ!

 

 

音ノ木美術館の地獄の間に警察のカメラのフラッシュが焚かれる、あの後、穂乃果たちは美術館の人に報告し、警察に連絡を入れて、今は警察の現場検証の真っ最中だ。

 

 

「えー、死亡したのは祝迫弘文さん、56歳、この音ノ木美術館のオーナーです。死因は鋭利な刃物でノドを刺されたことによる失血死です。死亡推定時刻は午後4時から5時の間だそうです」

 

流水亭の事件のときの刑事である石田が手帳を見ながら報告をしている。

報告を受けているのはこの事件の担当者の捜査一課の森警部だ。

 

「そして、第一発見者は君たちだよね?」

 

石田が穂乃果たちを見て言った。

 

穂乃果たちは全員「はい」と返事を返す。

穂乃果たちは事件のときの状況を説明する。

 

「私たちがこの地獄の間に来たときにはもう、祝迫オーナーはノドを刺された状態で死んでいました…」

 

穂乃果言うと森は今度は集まっていた美術館の職員たちを見た。

 

「そうかあ… なら、誰か犯人を見た人は?」

 

「そ、それが誰も…」

 

森が犯人を見たか美術館の職員たちに訪ねたが美術館の職員たちは全員首を振った。

 

「あっ!」

 

その時、美術館の職員である有馬が何かを思い出したかのような声をあげた。

 

「刑事さん! この美術館には各部屋ごとに防犯カメラがついているんです! もしかしたら防犯カメラに犯人が映っているかも!」

 

「わかるんですか?」

 

「ハイ! いつも撮ってありますので……」

 

 

 

有馬が言うと森たちは防犯カメラの犯人の映像をチェックするために警備室に向かった。

 

 

警察が美術館の監視カメラを見に行こうとしている頃、μ’sの9人は集まって話し合いをしていた。

 

「二手に分かれよう、私とことりちゃんのと海未ちゃんと真姫ちゃんは警備室に映像を調べる。残りのみんなはこの地獄の間と祝迫オーナーについて調べてもらえる?」

 

実は事件現場ではいつも穂乃果がこんな風に役割分担をするのだ。

穂乃果曰く、一つをみんなで調べるよりも手分けして調べて、集まった情報で推理した方が効率が良いとのことだからだ。

 

穂乃果の分担にみんなは納得し、それぞれの場所に向かった。

 

 

 

 

ー警備室ー

 

警備室に着くと早速、映像を見るために全員が画面を見る。

穂乃果たちは警察に完全な信頼を置かれているため一緒に見ても何も言われない。

 

映像が巻き戻され死亡推定時刻の時間から再生された。

 

「あ! 祝迫オーナーが来た!」

 

再生されると画面には祝迫オーナーが映っていた。

時計を見てキョロキョロしていることから誰かと待ち合わせをしているようだ。

 

これに犯人の姿が映っていることは間違いない。

 

「さあ出てこい犯人! お前の面をしっかり見届けてやる!」

 

1人の警官がそう言った次の瞬間!

 

 

「「「え?」」」

 

 

全員が目を疑った。

なぜなら画面に映っている映像が信じられなかったからだ。

 

 

何故なら祝迫オーナーの後ろにあった甲冑が剣を振りかざし祝迫オーナーに襲いかかったからだ!

 

 

「「「な⁉︎ なにぃ⁉︎」」」

 

 

警備室で映像を見ている全員が驚いて声を上げるがその間も映像は再生され続ける。

 

甲冑の騎士は祝迫オーナーに剣を振りかざすと後ろから背中を斬りつけた。

祝迫オーナーは何かを甲冑の騎士の背に向けて何か言っているが防犯カメラの映像には音声は流れないため、何を言っているのか聞こえない。

 

甲冑の騎士の後ろにいる祝迫オーナーは慌てて何かをしている。

 

そして、甲冑の騎士は背中を抑えて逃げようとしている祝迫オーナーの前に逃さないとばかりに前に回り込み腹部に剣を刺し、そのあと素早い動きで祝迫オーナーの首を掴み…

 

 

 

 

グシャッ!!!!

 

 

 

剣を祝迫オーナーの首元に突き刺した…

 

 

 

 

 

 

それは、誰もが目を瞑りたくなるほどの惨劇の瞬間だった。

 

 

防犯カメラの映像を見ていた全員が言葉を失っていた。

 

 

ピッ

 

 

かろうじて理性の残っていた穂乃果が一旦映像をとめた。

 

「のど元を一突きで殺すなんて…」

 

森警部が呟いた時、「ん⁉︎ これは!」と急に海未が大声をあげた。

 

「どうしたのかね⁉︎」

 

森が驚きながら海未に聞くと海未は答える。

 

「この絵の構図、あの死体の近くに展示されていた絵とそっくりなんですよ!」

 

海未が答えると絵を見た穂乃果たちもそうだと頷く。

 

「ほ、本当か⁉︎」

 

「はい! 確か題名は『天罰』というものです!」

 

海未はそう言うと映像を指差ながら言った。

 

「おそらく犯人はあの絵に重ね合わせるためにこんな派手な殺し方をしたんでしょう…」

 

海未が言うと石田がくちをはさんだ。

 

「しかし、大胆な犯人だな… こんな甲冑に身を包んでいたのなら客に見られたらそれこそ大騒ぎになっていたと言うのに…」

 

「「「⁉︎」」」

 

その言葉に敏感に2年生組が反応した。

 

「ちょっと待って! そういえば犯行のあったこの地獄の間に行く通路は立ち入り禁止立て札で塞がれていました!」

 

「ええっ⁉︎」

 

ことりが言うことに2年生組以外の全員が驚く。

 

「そうだね… あれは四時頃だったよね….?」

 

「でも5時半くらいに私たちみんなで行った時には無くなっていましたね…」

 

穂乃果と海未も頷く。

 

「そうね、防犯カメラの表示の時間も犯行時刻は4時半ごろね… 穂乃果たちが見たその立ち入り禁止の立て札は犯人が建てたものに間違いなさそうね…」

 

 

真姫が顎に手をあてながら呟いた。

 

 

 

「つまり状況を整理すると、犯人は立ち入り禁止の立て札を建てて人を遠ざけた後、甲冑を着てあの部屋に潜んであらかじめ呼び出しておいた祝迫オーナーを殺したと言うことになるけど…」

 

 

穂乃果は一呼吸置いて続けた。

 

「そう考えると犯人は立ち入り禁止の立て札や甲冑の保管場所や犯行現場の位置関係をよく知っているこの音ノ木美術館の関係者である人たちにいると言うことになりますね…」

 

穂乃果が言うと森警部が穂乃果たちに言った。

 

「それについては大丈夫だ、今、他の刑事たちが美術館の職員たちのアリバイを調べてるから…」

 

森警部がそう言うと「ん?」とずっと映像を見ていた真姫が声をあげた。

全員が真姫を見ると、

 

「このオーナー最初に斬りかかった弾みで甲冑を着た犯人が倒れたスキに何かなにかしているわよ?」

 

映像を巻き戻しながら言う真姫の言葉を聞いて全員がもう一度防犯カメラの前に集まる。

 

「ほら、何かに気づいて壁の札を取って… 机の上のペンを取って… ん? 何か驚いた顔をしてるわね…」

 

真姫がそこまで言った次の瞬間!

 

 

「「「「あ⁉︎」」」」

 

 

全員が驚いた。

 

それもそのはず祝迫オーナーが壁の札に机の上にあったペンで何か書いているのだ!

 

そして、その後祝迫オーナーはペンを投げ捨て紙を手でまるめて刺されたのだ。

 

「殺人の映像はここで終わり、つまり、まだあの紙は祝迫オーナーの手の中に…⁉︎」

 

穂乃果が言うと全員が殺人現場の地獄の間に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ー地獄の間ー

 

地獄の間では刑事たちが美術館の関係者たちにアリバイ調べをしていた。

穂乃果たちが死体の方に行こうとすると、すでに絵里と希がいた。

 

「絵里ちゃん! 希ちゃん! その手の中に何か紙がない⁉︎」

 

穂乃果が聞くと絵里と希は「あるわよ…」と考え込んでいるふうに言い紙を渡した。

 

「おい! 死体にはだれも近づけていないな!」

 

森が聞くと「はい!」と1人の刑事がこたえた。

絵里に渡された紙を全員が見るとそこに書かれていたのは…

 

 

 

【ナカハラ】

 

 

「ナ、ナカハラ⁉︎」

 

片仮名でナカハラと書かれていたのだ。

 

「えっ⁉︎」

 

声が聞こえたのだろう、中原は自分の名前が書かれていたことに驚いた。

 

「どうして、おれの名前が…」

 

中原が動揺していると石田が詰め寄る。

 

「フン、防犯カメラから正体を隠すために甲冑に身を包んだようだが、被害者は犯人の正体に気づいていたようだな…」

 

「ち、違う! 犯人はおれじゃない!」

 

石田が言うと中原は違うと必死で首を横に振り否定する。

 

「嘘をつくな! 防犯カメラを見る限り犯人はこの紙には一切触れていないし、死体発見後も誰も触っちゃいない! つまりこれはオーナーが死に際に犯人の名前を書き残したダイイングメッセージなんだよ!」

 

石田が中原に指を突きつけながら言うと森警部も中原に詰め寄る。

 

「それでは、聞きましょうか? 犯行のあった午後4時半ごろあなたは何処で何をしていていましたか…?」

 

「そ、その頃はたしか…」

 

中原が震える声で自分のアリバイを言う。

 

「い、飯山館長に頼まれた仕事を1人で事務室でしていました…」

 

中原が言うと「本当か?」と森が飯山に聞く。

 

「ハ、ハイ… 確かに中原くんに言いつけました…」

 

森の問いに飯山が頷く。

 

「『1人で」ということは、あなたの姿は誰も見ていないという事になりますね…」

 

森が中原に声を低くして聞くと、中原はブンブン首を横に振る。

 

「ち、ちょっと待ってくださいよ… そもそも何でおれが祝迫オーナーを殺さないといけないんですか… それに、祝迫オーナーを殺す動機なら飯山館長の方があるじゃないですか!」

 

中原が逆ギレ気味に森に言い返すと石田が首をふる。

 

「飯山館長は犯人ではないですよ、有馬と言う職員が飯山館長と一緒にいたと証言していますからね…」

 

石田の声に中原は目を見開いた。

 

「そ、そんな、バカな…」

 

中原が震えながら言うとその声を他の声が遮った。

 

「誤魔化しても無駄ですよ、中原さん…」

 

「あ、有馬…」

 

その声は中原の代わりに飯山館長に仕事を頼まれていて、飯山館長のアリバイを証人である有馬だった。

 

「どういうことですか?」

 

森が聞くと有馬は中原を睨みつけながら続ける。

 

「あなたが密かにこの美術館の美術品を密かに売りさばいていたことが前日発覚して、祝迫オーナーに多額の損害賠償を請求されていたではないですか!」

 

中原が言うと「本当ですか?」と石田が有馬に聞く

 

「ええ… 本当だったらこんな奴なんて即クビなんですが、飯山館長があと数日だから居させてやろうって…」

 

有馬が言うと石田館長再び中原に詰め寄った。

 

「成る程… それで金に困って祝迫オーナーを殺したと言う訳か…」

 

「ち、違う! 殺したのはおれじゃない! 信じてください!」

 

「フン、まあ良い… 今、部下の刑事たちに犯行に使われたあの甲冑を探させているからな… 見つかればハッキリするでしょう…」

 

森の言葉に中原は俯いて黙った。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、μ’sのメンバーは一通り情報が集まったため、全員で集まり事件について話し合っていた。

 

「ねえ、本当にあの中原って人が犯人だと思う?」

 

凛が全員に聞いた。

 

「いや、私は中原さんが犯人だとは思わないね」

 

「私も」

「私も」

「ウチもや」

 

穂乃果を始めとして全員が首を横に振った。

凛も同意見だったらしく首を縦に振った。

 

「だって、おかしいもんね、中原さんは美術館の人間だ… あの防犯カメラのことなんて分かっていたはずなのに… 何でわざわざ甲冑を着て正体を隠さないといけないこの地獄の間を犯行現場に選ぶわけがない」

 

「そうね、地獄の間のあの『天罰』と言う絵に重ね合わせるためと言えども、あの美術品を乱暴に扱った行動から見てあの中原って人はさほど美術品には関心がなさそうよね… そんな人がわざわざ絵に重ね合わせるためにわざわざあんな事をするかしら…?」

 

凛と絵里が言うとことりがくちを挟んだ。

 

「でも、あのダイイングメッセージは明らかな証拠だよ? 被害者が書くところも防犯カメラにはちゃんと映ってあったし、その後は誰も触れていない…」

 

「そこが謎なんだよ…」

 

ことりの言葉に穂乃果が腕を組んだ。

 

ダイイングメッセージの謎が解けないと前に進まない。

 

全員が難しい顔になる。

 

「アリバイはどうだった?」

 

穂乃果が防犯カメラを見ていない残りのメンバーに聞くと花陽がこたえた。

 

「アリバイは、警察の人が言うにはやっぱり美術館の関係者は中原さん以外は全員アリバイがあったらしいよ…」

 

花陽が言うと全員がまた難しい顔になる。

少しの沈黙の後、「あっ!」とにこが声をあげた。

 

「ねえみんな、さっき私、祝迫オーナーの死体の近くにこんなボールペンが転がっていたのを見つけたんだけど…」

 

にこがポケットから音ノ木美術館のロゴが入ったボールペンを見せた。

 

「それは今年、この美術館の50周年記念で作ったボールペンだよ、私たちもパンフレットと一緒にもらったじゃん」

 

ボールペンを見ながらことりがにこに言った。

 

「じゃあ、誰かが置き忘れたのね…」

 

そういうと、にこがパンフレットの表紙にサラサラとそのボールペンで自分の名前を書いた。

 

「ちゃんと書けるわね… うーん、色の太さもあの【ナカハラ】と言う文字とそっくりね。恐らくこれはこのボールペンと同じもので書かれたのね…」

 

そう言うと、全員が沈黙した。

 

 

 

 

 

「ねえ、もう一回防犯カメラを見てみようよ。 今度は全員で」

 

沈黙が続いた後、穂乃果が全員を見渡して言った。

 

その言葉に全員が頷き、μ’sの9人が再び防犯カメラの映像を見れる警備室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー警備室ー

 

警備室に戻ってきたμ’sは警官にことわりを入れ中に入れてもらい、再び防犯カメラの映像を再生させた。

 

「うーん… 見るからに特に変わった所はないわね…」

 

絵里が呟いた。みんなも同じ意見らしく難しい顔のままだ。

映像はちょうど祝迫オーナーが何かを書いているところだ。

 

「ん⁉︎ 今の所、もう一度!」

 

その時、突然に穂乃果が操作をしていた絵里の手からリモコンをひったくり映像を巻き戻した。

 

「ど、どうしたの?」

 

「何かに気づいたん?」

 

ことりと希が穂乃果に聞くと、穂乃果は「やっぱり…」と呟いた。

 

「何がやっぱりなんですか?」

 

海未が穂乃果に聞くと、ピタッと穂乃果が映像を止めた。

止めたところは祝迫オーナーが壁から札を取ったところだ。

 

「よく見て、壁から札を取ったときの祝迫オーナーの顔を…」

 

「「「「え?」」」」

 

穂乃果の言葉に全員が壁から札を取ったときの祝迫オーナーの顔を見る。

 

「「「「⁉︎」」」」

 

全員が驚いた、何故ならすごく驚いた顔をしていたからだ。

 

「こ、この表情はなに⁉︎ なんで犯人の名前を書くために取った札を見ただけでこんな驚いた顔をしているの⁉︎」

 

にこが言うと希も言う。

 

「それに書き終えた後、なんでペンを投げ捨てたんや⁉︎ 音がすれば犯人に気づかれるかもしれないのに…」

 

 

希がそれまで言うと穂乃果が何かを思いついたらしく、にこに聞いた。

 

 

「ねえ、にこちゃん、あのボールペンを拾ったときにペン先は引っ込んでたよね?」

 

 

「え、ええ… そうよ、最初から引っ込んでたわ…」

 

 

穂乃果はそう言うと「おかしい…」と呟いた。

 

 

「な、何が?」

 

まだ、よくわかってない他のメンバーが穂乃果に聞いた。

 

「おかしいじゃん! 普通、これから殺されるかもしれないという人間がわざわざ書き終えたあとペン先を戻すなんて…」

 

穂乃果が言うと、「確かに…」全員が納得する。

 

「あ‼︎」

 

全員が納得したとき穂乃果が再び声をあげた。

 

「も、もしかしたら!」

 

声をあげるなや否や穂乃果は警備室を走って出て行き、地獄の間のほうに戻って行った。

他のメンバーも出て行った穂乃果を慌てて追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー地獄の間ー

 

地獄の間に戻ると穂乃果は【ナカハラ】と書かれた紙を鑑識から見せてもらえるように頼んだ。

紙を見ると表面には何かでグリグリ【ナカハラ】という文字を抉った跡があった。

 

「なるほど… やっぱりそうだったのか…」

 

穂乃果が呟くと、「ちょっと、自分だけで納得してないで私たちにも教えなさいよ!」と、真姫が不貞腐れたように穂乃果に聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「森警部! 中原さんのロッカーから犯行に使われたと思われる甲冑が!」

 

「「「「「「「「「⁉︎」」」」」」」」」

 

 

 

1人の刑事が中原のロッカーから血まみれの甲冑を持ってきたのだ!

 

「成る程… やっぱり、犯人は中原さん、貴方のようですね…」

 

それを見て石田が中原に詰め寄った。

 

「そ、んな… 違う! おれは犯人じゃない!」

 

中原は必死に違うと言った。

 

「じゃあ、なんで、あんたのロッカーからこの血まみれの甲冑がでてきたんだ!」

 

石田が中原に言うと、中原は答えれずに押し黙った。

 

「答えは簡単だ! それは、中原さん! あんたが犯人だからだよ!」

 

中原を指差しながら石田はそう言うと続けた。

 

「あんたは、あらかじめこの部屋に呼び出しておいた祝迫オーナーを待ち伏せて刺し殺した。防犯カメラから正体を隠すためにわざわざあの甲冑を着てね‼︎ しかし、防犯カメラは別の証拠をしっかりと捕らえていた、 あんたのスキをついて祝迫オーナーが壁に貼ってあったこの札に文字を書き残す所をな! 防犯カメラの映像を見る限り犯人はこの紙には一切触れていない! 死体発見後も誰も触っていない! すなわち、これは、祝迫オーナーが死ぬ間際に犯人の名前を書いたダイイングメッセージなんだよ‼︎」

 

石田がそう言うと中原はそれでも違うと言う。

 

 

「まだ、しらを切るのか! おまけにあんたはこの美術館の職員で唯一アリバイがないじゃないか‼︎」

 

「だ、だからそれは… 飯山館長に頼まれた仕事を1人で事務室で…」

 

中原はそこまで言うと、「嘘をつくな!」とさらに石田たちから詰め寄られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マズいわね… このままだと本当に中原さんが…」

 

「あの人が犯人である可能性は極めて低いのに…」

 

絵里と花陽が言うと「違う」と横から言われた。

それは、穂乃果だった。

 

「中原さんが犯人の可能性が極めて低いんじゃない、中原さんが犯人なわけがないんだ…」

 

「でも、だったら犯人は誰なの? 美術館の職員は中原さん以外は全員、アリバイがあったのよ?」

 

穂乃果ににこが聞くと「それはまだ分からない…」と穂乃果は目を伏せた。

 

その時、

 

 

 

 

 

「にしても、あの甲冑が飾りつけようのレプリカで良かったなぁ、美術品だったら返り血を浴びて台無しだったぜ…」

 

「そういえばあの甲冑、昼間、中原が運んでたやつだよな!」

 

穂乃果たちの近くで美術館の職員たちが話していた。

当然、その声は穂乃果たちにも聞こえた。

 

「へぇー、あの甲冑はレプリカやったんや…」

 

「成る程… だから飯山館長は中原さんがあの甲冑を乱暴に台車に乗せても何も言わなかったのか…」

 

会話を聞いていた穂乃果と希が呟いた。

美術館の職員たちは会話を続ける。

 

「いやー、それにしても、犯行に使われた甲冑がレプリカだったのがせめてもの救いだよな…」

 

「ああ、他の美術品も難を逃れたようだし…」

 

「それにしても、祝迫オーナーが刺されて吊るされていたところにかけられていた絵画も命びろいしたよな!」

 

「そうね… 昨日、たまたま手入れのために外したもんね… あったら今頃血まみれよね…」

 

 

 

美術品の職員たちは安心したように話していた。

 

しかし、この会話で何かをつかんだ人間がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん⁉︎ そういえば、あの時、祝迫オーナーが取ったのは絵の説明の札…」

 

 

その会話を聞いていた穂乃果は防犯カメラの映像を思いだし、祝迫オーナーが刺されて吊るされていた壁を見た。

 

「⁉︎」

 

穂乃果は驚いた。

なぜなら絵だけ外されていて札しかなかったからだ!

 

(なんで… 手入れのために外したのなら普通は名札も一緒に外すのに… なんで名札だけ…?)

 

穂乃果はそう考えると、ピカッと頭の中に閃光が走った。

 

(そういうことか… 分かったぞ! 犯人のトリックが!)

 

しかし、すぐに引っかかりが出来た。

 

(でもまてよ、これは、中原さんのアリバイを消滅させないとできないトリック! となると犯人は…)

 

穂乃果は犯人と思われる人物を見たが、

 

(いや、美術館の職員には中原さん以外は全員アリバイがあるということは警察が調べたんだ… だったら、犯行はあの人には無理だ…)

 

穂乃果がそう考えていると、

 

 

 

ガシャーン!!!!

 

 

 

「「「「⁉︎」」」」

 

突然、大きな音が部屋に響き渡った。

みんながその方を見ると犯行に使われたという甲冑を警官が落とした音だった。

 

「あわわ…」

 

警官が落とした甲冑を慌てて拾おうとすると近くにいた花陽が手伝った。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

警官が恥ずかしそうに花陽に言うと、

 

「大丈夫ですよ、困ったときはお互い様です、何より1人より2人でした方が良いですから!」

 

花陽が笑顔で言うと、美少女に笑顔でそんなことを言われた警官は真っ赤になった。

 

 

 

 

そんな時、

 

 

 

 

 

「1人より2人…?」

 

穂乃果と花陽の言っていた言葉を考えていた。

 

そして、その時、穂乃果の頭の中で全ての謎が1本の線につながった!

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうか! そう言うことだったんだ! アリバイなんて調べても無駄だったんだ! 間違いない、犯人はあの人だ!)




次回は解決編です。
オリジナル展開を含みます。

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