名探偵ミューズ   作:sunlight

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予告通り今回は町外れにある古い寺で起きた不思議な事件です。


暗闇寺幽霊事件 事件編

「え? 幽霊の出る寺?」

「そうや‼︎ 今夜みんなで行ってみいひん?」

 

開口一番にそう穂乃果に言ったのは希だ。他のメンバーも『急に何を言いだすんだ?』と言いたそうな顔をしていた。

 

「この街にそんな寺あったっけ?」

「さあ?」

 

希以外のメンバーは首をかしげた。

希は意気揚々と話を続けた。

 

「それがあるんや! 神社に来た参拝客が言うてたんやけどな。町外れにある古い寺に幽霊が出るらしいんや!」

 

希が言うとみんなは「嘘〜」や「幽霊なんていないわよ」と否定的な言葉を言った。希はその言葉を待ってましたとばかりに言った。

 

「そうやろ? せやから今夜みんなでその寺行って幽霊が本当にいるか確かめて見ようってことや!」

 

希が言うと、「私行きたい‼︎」と早速穂乃果が名乗りを上げた。

それを合図に他のメンバーも

 

「凛も行ってみたい‼︎ かよちんも行こうよ〜」

「ええっ⁉︎ わ、私も⁉︎」

 

凛も名乗りを上げ、いつものように花陽を誘う。

 

「全く、そんなことに付き合うなんて嫌よ。」

 

真姫は拒否しようとするが

 

「真姫ちゃん、怖いんだ〜」

「な! そんな訳ないでしょ!」

 

穂乃果が真姫に言うと、真姫が言い返す。

 

「無理するのは良く無いにゃ〜」

「怖がりはお家で大人しくしといたらええもんな」

 

「な⁉︎ 良いわよ。行ってやろうじゃない‼︎」

 

凛と希からも怖がりだと言われ負けず嫌いな真姫はすぐに乗せられた。

 

「他のみんなは?」

 

穂乃果が海未たちを見渡して聞いた。

 

「すいません。今日は親戚が家に来ましてその手伝いがあるんです…」

「私も今日はお母さんと約束があるし…」

「妹たちの面倒見ないといけないから今夜は無理ね」

 

海未、ことり、にこの3人が今夜は来れないと断る。

 

「絵里ちゃんは?」

 

穂乃果が聞くと絵里はガタガタ震えていた。

察した穂乃果たちが絵里は誘わないでおこうと思った瞬間!

 

「あれ〜、絵里ちはどないするん?」

 

希が絵里を空気を読まずに誘う。

 

「もしかして怖い〜?」

 

希がおちょくるように聞くと、

 

「そ、そんな訳ないでしょ……!」

 

否定したが震える声で顔を青くしながら言われても説得力はゼロだ。

その後も希がさらに絵里をおちょくるので、穂乃果はさすがに絵里が可哀想になったのか困り顔でフォローを入れる。

 

「やめなよ、希ちゃん、怖がりな人を無理矢理連れて行くのは良くないよ」

 

穂乃果はフォローのつもりで言ったが、かえって絵里のプライドを傷つける言葉となったのか絵里はフラッと立ち上がり。

 

「こ、怖くなんかないわよ… 行ってやろうじゃない……!」

 

全然大丈夫には見えなかったがここで何かまた言ったら絵里が暴走すると判断した花陽が「じ、じゃあ、集合とかどうします?」と無理矢理話題を変えた。

 

「そやなぁ〜、じゃあ、今夜深夜1時半にその寺の近くに大浦公園っていう公園があるから、そこで待ち合わせや!」

 

希が言うと、穂乃果と凛は「はーい!」と元気に返事をして頷き花陽と真姫は苦笑し絵里はガタガタ震えていた。

 

 

 

 

 

 

ー深夜1時半 大浦公園ー

 

「はぁ、はぁっ、間に合ったよ〜」

「遅いわよ! 穂乃果!」

 

深夜になり、大浦公園に集まったμ’sのメンバー、いつものように遅刻癖のある穂乃果に真姫が怒る。

 

「本当にごめんね。ちょっと寝坊してね〜…」

「まったく…」

 

頰を掻きながら謝る穂乃果に真姫が呆れる。

 

「あはは…」

 

このやり取りを見て花陽は苦笑し、希は微笑ましそうに見ていた。

 

「ね、ねぇ…やっぱり行くの?」

 

そんな中で絵里が震えた声で聞いくと、希が「当然‼︎」と返す。

絵里が絶望したような顔になった。

 

「まあまあ、とにかく行ってみようよ。」

 

穂乃果が絵里を宥めて早くその寺に向かうように促す。それに従い全員が暗闇寺に向かって歩き出した。

 

 

暗闇寺は大浦公園の向かい側にあり、大きな木で入り口の石段も覆われており、寺が公園からは見えなくなっている。さらに廃寺になっているので、この街に住んでいる人でも知っている人は少ない。おまけに近隣の住民も、幽霊のうわさ話のせいで近寄らないでいるらしく、石段を登りおわった穂乃果たちは誰も手入れをしてないだろう寺を見て絶句した。

小枝や葉っぱがそこら中に散らばり、寺の壁にももひび割れた箇所がいくつもあった。

 

幽霊の出る心霊スポットにはもってこいのシチュエーションだった。

 

「うわぁ…、これは酷すぎだよ…」

 

暗闇寺のあまりの状況に思わず凛が呟いた。

 

「廃寺になるとこんな風になるのかしら?」

 

凛に続いて真姫も呟く。

 

「それにしても、こんな寺だと本当に幽霊が出そうだよ…」

 

花陽が不安げに言うと皆は震え上がった。

 

「の、希ちゃん肝心の幽霊は何処にいるの? 」

穂乃果が震えた声で聞いた。

 

「あ、あぁ、参拝客が言うには幽霊はここであることをすると出るらしいんよ。」

 

希が言うと全員が「あること?」と聞き返す。

希は持ってきたバッグの中から小型の蝋燭立てと蝋燭を取り出した。

 

「これは、5人でやるゲームみたいなもんでね、この一辺が30メートルくらいある暗闇寺の回廊の階段と4つの角のところに1人ずつ待機するんや。スタートはこの入り口の人からね。」

 

希は入り口を指差して説明を続けた。

 

「まずこの蝋燭を持った最初の1人が、入り口から入って反時計回りに向かって進み進んだ角を曲がったところに控えている人にこの蝋燭を渡すんや。最初の人から受け取った人は次の人が待っている角に向かって歩き出す。ちなみに蝋燭の受け渡しの時にお互いの顔を見せてはいかんで。そして、蝋燭を渡した最初の人は44秒数えたら自分が渡した人が待っていた角に移動して、グルっと蝋燭がリレーされていくのを待つんや。そして蝋燭を持って行った人は、次の角までたどり着いたら角の向こうを覗かず蝋燭を次の人に渡す。こうやって最初に蝋燭を受け取った人が、最初の位置に戻ってくるまでの蝋燭リレーを続けるというわけや!」

 

希の説明が終わった。

 

「でも、私たち6人いるよ。この蝋燭リレーは5人でやるゲームなんでしょ?」

 

穂乃果が希に聞くと

 

「大丈夫や。こんな事になると思ってクジを用意してきたで。ハズレをひいた人が不参加や。」

 

希がクジをバックから取り出し、みんなに見せた。

 

「さあ〜、みんな、どれでも好きなクジをとって」

 

全員がクジをとり一斉にひくとハズレをひいたのは希だった。

 

「あ! うちがハズレや!」

希が言うと、「相変わらずの運の良さね…」や「クジに仕掛けはなさそうだったしね…」と、いつものように希の強運に他の真姫と凛はぼやいた。

 

「ま、まあまあ、みんな位置につこうよ。」

 

穂乃果が言うと希を除いたみんなでじゃんけんををして順番を決めた。

 

じゃんけんの結果

 

1番目 絵里

2番目 穂乃果

3番目 花陽

4番目 真姫

5番目 凛

 

になった。

 

「それじゃあ私は2番目だからそこの角だね。」

 

「私はあっちね。」

 

「凛は最後だからむこうにゃ〜」

 

最初の絵里以外の4人は所定の位置につくために暗闇寺に入って行った。

絵里は希と一緒に入り口でスタートを待っていた。

 

「みんなが所定の位置に着いた頃合いを見計らって始めよか。絵里ち」

「参ったわねぇ…。 意地を張ってこの寺に来たはいいけど結構苦手なのよね… こういうの… 特にこういうお寺とかって…」

 

絵里が言うと希もかえした。

 

「ウチは平気やけど、幽霊は出ないと思うで。参拝客の言っていたシチュエーションとちょっと違うし」

 

「ええっ! そうだったの⁉︎ な〜んだ。」

 

希の言葉に絵里が安心した顔をした。

 

「そや! 怖がる必要はあらへん! そろそろいい頃合いやで。」

 

希が絵里に蝋燭を渡した。

 

「行ってらっしゃい。絵里ち。ウチはここで待っとるから」

 

「う、うん。」

 

絵里は暗闇寺に入って行った。

 

幽霊は出ないと希に言われても暗いところは怖いことには変わらない。

絵里は思わず身震いをした。

絵里は暗闇寺の廊下を歩き穂乃果のいる角に来た。

 

「ほ、穂乃果、蝋燭よ…」

 

絵里が震えた声で穂乃果に言った。

 

「うん!」

 

穂乃果がルール通りに顔を見せず手だけを出して絵里から蝋燭を受け取った。

穂乃果がそのまま行こうとしたが。

 

「ほ、穂乃果、やっぱり怖いわ…」

 

絵里が消えそうな声で穂乃果に言った。

 

「絵里ちゃん、大丈夫?」

 

穂乃果は歩くのを止まり絵里に聞いた。

 

「ご、ゴメンネ。私、やっぱり行けない…」

 

絵里が震える声で穂乃果に言った。

 

「そう…」

 

穂乃果は少し黙った後に絵里に言った。

 

「それなら絵里ちゃん。あの入り口のところで希ちゃんと一緒に待ってなよ!」

 

穂乃果が言ったら絵里の顔が輝いた。

 

「本当? 良いの⁉︎」

 

絵里が言うと穂乃果は優しい声で返した。

 

「平気さ! 1人抜けても出来そうだしね。それじゃあ私は行くね。」

 

穂乃果はそう言うと暗闇寺の廊下を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果に抜けても良いと言われた絵里は暗い暗闇寺の廊下を歩いて怖い思いをせずに済んだので大喜びで希のいる入り口に戻って行った。

 

「あれ? 絵里ち行ったんやないの?」

 

希が絵里が暗闇寺の入り口に戻って来たことに驚きながら聞いた。

 

「ええ… やっぱり無理みたいで穂乃果がこの入り口で希と待っててって言ったのよ。」

 

絵里が言うと希の顔が少し青くなった。

 

「じ、じゃあ、4人でやるの?」

 

希が聞くと絵里は「うん」と頷いた。

 

「ゴメン絵里ち、ウチ下の公園の自販機でちょっと飲み物買ってくるわ。」

 

希が暗闇寺の石段に向かった。

 

「ええっ⁉︎ ここに私1人で待ってるの⁉︎」

 

絵里が言うと、希もこう返した。

 

「ちょっと本当に怖くなって来たんや。参拝客の言っていた幽霊の出るシチュエーションとまったく同じシチュエーションなんやもん」

 

希が言うと絵里の頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。

 

「お、同じシチュエーション?」

 

絵里が聞くと希が返す。

 

「心配せんでもええ、絵里ちが抜けたらこの蝋燭リレー、最後まで続かずに1周で終了する筈やからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幽霊さえ出て来なければ………ね」

「え⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希はそう言うと石段を降りて行った。1人残された絵里は今の希の言葉を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこと? 同じシチュエーションって……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の暗闇寺の穂乃果は蝋燭を持って廊下をゆっくり注意深く歩いていた。

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

 

(さっきから床板の軋む音しかしない…。 真っ暗で何も見えない……。すごい不気味だよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

「遅いなぁ…」

 

 

穂乃果からの蝋燭が着くのを待っている花陽は穂乃果からの蝋燭が遅くてもどかしい思いをしていた。

 

「花陽ちゃん、蝋燭…」

 

「あ、ありがとう。穂乃果ちゃん。」

 

 

やっと穂乃果からの蝋燭が届き穂乃果にお礼を言い、花陽は次の真姫のいる角に歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

 

(本当に暗い廊下だなぁ…。 蝋燭がないと何も見えないよ……)

 

 

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

 

一方、花陽の次の角にいる真姫は、

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

(花陽の足音が近づいてくるわね…)

 

 

「真姫ちゃん、蝋燭……」

 

 

「ええ」

 

 

花陽からの蝋燭を受け取った真姫は次の角に向かって廊下を歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

 

 

(やっぱり不気味ね。この廊下は…)

 

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の凛も真姫からの蝋燭が着くのを待っていた。

 

「遅いにゃー そろそろ蝋燭が着く筈なのに…」

 

 

スッ

 

 

「うわっ!」

 

「何驚いているのよ…」

 

いきなり角から出てきた蝋燭に凛が驚くと真姫が呆れた声で言う。

 

「ゴメンにゃ。 これを次の人に渡せばいいんでしょ?」

「そうよ」

 

凛も次の角に歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

(やっぱり怖いにゃ… 早く終わりたいよ…)

 

 

 

ギシ… ギシ… ギシ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃入り口にいた絵里は凛が歩いて行くのを見ていた。

 

 

(あ、凛が通った… そろそろ1周ね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛が次の角に着いた。

 

「おーい、きたよ〜っ、早く蝋燭受け取ってー!」

「……」

 

スッ

 

返事は返って来なかったが代わりに手が出てきたので凛はサッと蝋燭を渡した。

 

 

 

絵里はずっとお寺の入り口で蝋燭リレーの様子を見ていた。

 

(花陽… 真姫… あ、穂乃果も通った… これで全員回ったわね…)

 

 

 

 

穂乃果が最初の位置に戻り、蝋燭リレーが終わった。

 

「ふ〜〜っ! 全員これで1周したからもう終わりかな? 絵里ちゃんそろそろ終わりにしよう! 今、みんなを呼ぶね。おーい!」

 

穂乃果の呼びかけに暗闇寺の中に入っていた3人が入り口に集まった。

「終わったね。」

 

「幽霊なんて出なかったわね。」

 

「本当に何もなくてよかったにゃー。」

 

暗闇寺から出てきた花陽、真姫、凛がそれぞれ言った。

 

「まあ、グルグル回るだけなんだから何もおきる訳ないわね」

 

真姫が言うとみんなが笑った。

 

「あれ? 希ちゃんは?」

 

穂乃果が言うと絵里が答えた。

 

「ああ、下にジュース買いに行っているわよ…」

 

絵里はそう言うと希が言っていた事を思い出しその事を穂乃果たちに話した。

 

「それにしても希、変な事を言っていたのよねー。」

 

絵里が言うと「変な事?」と4人が聞き返す。

 

「うん。なんか参拝客の言っていた幽霊の出るシチュエーションとまったく同じシチュエーションだから怖くなったって…」

 

絵里が言うと「同じシチュエーションってどういう意味?」と近くにいた真姫が絵里に聞き返した。

 

「さあ…? 私が最初に一抜けしちゃって残りの穂乃果、花陽、真姫、凛の4人でやるってことなんじゃないかしら? でも、こうも言っていたのよね…」

 

絵里は一呼吸置いて続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が抜けて4人になっちゃったら最後までいかずに1周で終わっちゃうはずだって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「えっ⁉︎」」

 

 

 

 

 

 

 

 

この言葉にいち早く花陽と真姫が反応した。

 

「絵里… あなたは抜けてたの…?」

 

真姫が言うと絵里が申し訳なさそうに言った。

 

「………うん。ゴメン…… やっぱりお寺の真っ暗な廊下を1人で歩くのはさすがに…」

 

絵里が言うと2人の顔からサーッと血の気がひいた。

 

「……ウ、ウソ! そ、それじゃあ出たってこと⁉︎ 本物が……⁉︎」

 

花陽はそれを聞いてガタガタと震えだした。

 

「えっ?」

 

「何? 一体どういうこと?」

 

「?」

 

意味の分かっていない穂乃果、絵里、凛の3人が真姫に聞いた。

 

「分からないの? あなたたち……」

 

3人が頷くと真姫は血の気の引いた青い顔のまま言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対にあり得ないのよ‼︎ 4人でこの蝋燭リレーが成立することは………!」

 

 

 

 




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