今回からシリアスになります。
μ’sとミラクルが市営バスに揺られること十数分、バスは路地下のトンネルに止まった。
このトンネルはトンネル内のライトの故障により工事中だ、そのため、現在は片面通行になっておりその手前の工事現場の信号で停止したのだ。
トンネル内のライトが壊れているためトンネル内は真っ暗で何も見えないためトンネル内では減速が義務付けられている。
工事現場の信号が青になりバスはガタン、ガタンと音を立ててゆっくりとトンネル内に入っていった。
「うわぁ、本当に真っ暗で何も見えない…」
「互いの位置すら掴めないわね…」
トンネル内に入るとやはり真っ暗で互いの位置すら掴めない状況だ。
声で判別するしかなく今のは陽と真姫の声だ。
このトンネルは案外長いに加え減速が義務付けられているためトンネル内にバスがいる時間は普通と比べて長い。
真っ暗なトンネルは酷く不気味でまるで心霊スポットのようだった。
ガタガタとバスは義務付けられている通りに減速しながらトンネルを進んでいく。
真ん中くらいまで来ただろうか、まだトンネルの出口が見えないその時にそれは起きた。
『フフフフハハハハハ!! μ’sノ皆サン! ミラクルノ皆サン! 私ノ支配スルトンネルヘヨウコソ…』
「⁉︎」
「な、何⁉︎ この声⁉︎」
トンネル内に突如不気味な声が鳴り響いたのだ。
機械で声を変えているため男性か女性かも分からない。
謎の声は続けた。
『私ハアクアシティデ君タチニ予告状ヲ出シタ張本人デス! 今カラ予告通リ貴女タチノ勇樹ヲイタダキマス! コノトンネルデ彼ハ一瞬ニシテ消滅シマスヨ』
「「「「「「「「「「「「⁉︎」」」」」」」」」」」」」
その言葉に全員が戦慄する。
他の乗客たちもこの只事ではない事態に騒ぎ始めた。
「な、なんだ⁉︎ 今の声は⁉︎ 一体このバスで何が起きてるんだ⁉︎」
「勇樹! 勇樹は大丈夫なの⁉︎」
「誰か! 勇樹君は⁉︎」
バスの中は大騒ぎになった。
トンネルの中は真っ暗に加えこの市営バスは明かりがないため誰も周りの状況を把握できない。
そして、その時!
キラッ
「…え?」
暗闇の中で何かが光るものを穂乃果が見た。
それとほぼ同時に、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
勇樹の悲鳴がバスの中に響き渡った。
普段の彼なら考えられないほどの悲鳴だ。
「な、何!」
「勇樹⁉︎」
「勇樹! クソッ! これじゃあ真っ暗で周りの様子が分からない!」
「こうなったら… 先生! 勇樹のメカのカメラのフラッシュだ!」
「え? ああ‼︎」
パシャッ!
トンネルの中は真っ暗で場所が掴めず陽が先生に勇樹のメカのカメラのフラッシュで辺りを照らすように指示を出した。
突然の指示に先生の反応と理解がワンテンポ遅れて車内が一瞬明るく照らされる。
しかし…
「ええっ⁉︎」
全員が一瞬のフラッシュにバスの状況を把握した時に目を見開いた。
何と、今のフラッシュの同じように勇樹の姿がバスの中から跡形もなく消えていたのだ。
それと同時にトンネルから市営バスがでる。
ふたたびバスの中は太陽の光に照らされ明るくなる。
明るくなり全員が市営バスを見ると、何とそこには、勇樹の姿が跡形もなく消えていたのだ!
「ゆ、勇樹君が消えた⁉︎」
「な、何で⁉︎」
ことりとにこが驚きの声を上げる、他のみんなも同じように驚いたり外を見回したり呆然としたりしていた。
市営バスは慌ててトンネルの付近の脇道に急停車する。
この脇道は今は使われていない古い公園に面していて人がいないため大型のバスでも停車できるのだ。
その中で穂乃果は市営バスを見る。
(っん…! この市営バスの窓は事故防止のためにはめ殺しで開かない! 進行方向隣の前のドアにはことりちゃんと小森ちゃん! 後ろのドアには山村さんがいる… ドアが開いた様子も窓が割られた様子もないよ!)
穂乃果が考えていると別の方から母が飛ぶ。
「な、なんや⁉︎ この手紙と札⁉︎」
希が窓に貼られた手紙と札を見つけた。
札には【攻取強奪】と書かれていた札だった。
「これって【攻取強奪】⁉︎」
「ええっ⁉︎ 【攻取強奪】ってあらゆる手で奪うって意味の四字熟語⁉︎」
希と絵里が貼られてあった札に気を取られていると幹子が手紙を開いて読み始めた。
「これ… 『少年少女タチヨ! 私ノ消失現象ハイカガダッタカナ? 君タチノ天才発明家ハ私ガ消滅サセテシマッタヨ! 私ハ実ハ超能力者ナンダヨ… 忠告シテオクガ私ノコトヲ暴トハ思ワナイコトダネ! 君タチモ勇樹ミタイニ消シチャウヨ〜? マア、マダアキラメナイノナラトンネルノ中二彼ハ留マッテイルカモ知レナイカラ探シテ見ルト良イネ〜?』っだって!」
「ってことは、勇樹君はまだあのトンネルの中に…?」
「「「「「「「「「「「「っ‼︎」」」」」」」」」」」」」」」
案内役の山村さんの声でμ’sとミラクルのメンバー全員が我に帰り、非常口のドアを開けてすぐにバスを飛び出した。
運転手と他の乗客もその後についていきトンネルの方へと走り出す。
そして、トンネルの入り口近くにいた作業員に声をかける。
「すいません! 工事中に… 中に友達がいるんです!」
「ええっ! バスの中から降りたのかい?」
福音が作業員に言うと、作業員は驚いた顔をした。
「本当なんです! 仕事中すいませんがトンネルの中を探させてください!」
陽が言うと作業員は他の作業員やそこの頭らしき人を呼び集めた。
1分くらい話し合った後、作業員たちの頭らしき人が穂乃果たちの元にやって来た。
「分かった、工事も今日は丁度終わったところだからトンネルの反対側の作業員たちに連絡してトンネルを一時封鎖して君たちの友達を探そう、ただし封鎖は20分が限界だ。 それに封鎖が終わったら反対側の作業員たちと一緒に私たちも探すのを手伝おう」
頭の好意に全員が心の底からお礼を言った。
その後、トンネルの工事中には欠かせない懐中電灯が何人かに手渡された。
作業員たちはヘッドライト付きのヘルメットで探す。
作業員の1人が【通行止め】の看板を出して赤旗を振って車を停めるようにトンネルの反対側の作業員に連絡している。
片面通行だったのは幸いだった。
そして、作業員たちと一緒にμ’sとミラクルはトンネルの中に入った。
とは言っても、懐中電灯は数に限りがあり4人と3人のグループに分かれて探すことになったが…
ー20分後ー
μ’sとミラクルは愕然としていた。
あれからトンネル内をいくら探しても勇樹は見つからなかったのだ。
作業員たちも封鎖の限界が来て車を通さなければならない、頭が外に出たのかもしれないと出入り口の作業員に聞くが、「人っ子一人としてトンネルから歩行者は出てこなかった」と言うばかりだった。
そうなると、勇樹はこのトンネルから出ていないと言うことになるがトンネルには勇樹の姿は跡形もなかった。
「そ、そんなバカな…」
「う、嘘でしょ……?」
「な、なんで…⁉︎」
全員が信じられなかった。
途中から案内役の山村さんや市営バスの運転手や他の乗客も手伝ったが、勇樹は見つからなかった。
まるで一瞬のうちにトンネルの暗い闇の中に溶け込んでしまったかのように…
穂乃果は必死にこめかみを叩きながら考えていた。
(勇樹君はこのトンネルにはいないと言うことはさっきの車の中に勇樹君を連れ込んだことはあり得ない! トンネルにいないと言うことはどうやって勇樹君を一瞬のうちに犯人は消したんだ⁉︎ 第一、あの市営バスの中からどうやって勇樹くんを外に連れ出したんだ⁉︎)
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ………!
必死に穂乃果は勇樹が消失した謎のことを考えていると突然、トンネルの中から強い風が吹きつけてきた。
「⁉︎」
穂乃果は驚いてトンネルを見るがトンネルは何も答えず、今の強い風が吹きつけてきたことなんて素知らぬ振りをしているかのように佇んでいた。
穂乃果は思わず身震いをした。
今の風の音はまるで人を1人飲み込んだ恐ろしい悪魔のトンネルの声のように聞こえたからだ。
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