Fate/kaleid god   作:疾走する人

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ウルスラグナの一人称が難しい………


2話

衛宮家の人々と仲良くなってからは、ウルスラグナの日々はますます人間味を増し、充実していった。

イリヤと同じ学校の同じクラスに通い、何人かの友達もでき、放課後はイリヤの家でイリヤたちと遊ぶ。

そうして時間を過ごすウルスラグナは、傍から見ても、ただの小学生のようで、まつろわぬ神としての残虐性など欠片も見られなくなっていた。

 

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そうしてウルスラグナが人間らしさを持ち始めた頃に、事件は起きた。

 

衛宮切嗣とアイリスフィール·フォン·アインツベルンの子供であり、とてつもない程の魔術の才能と、聖杯としての器を持っていたイリヤに、とある魔術結社が利用価値を見出し、誘拐したのである。

 

その結社の名は、All black company。組織内のメンバー全員が黒の装束を着て闇の仕事をこなす、通称「黒の組織」であった。

 

 

 

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イリヤは、現在、とても混乱し、恐怖心が湧き上がっていた。

彼女は、公園で遊んでいるところをいきなり何人もの黒い服を着た体格のいい大人たちに囲まれ、無理やり車の中に連れ込まれたのである。

 

今の彼女には、ただただ自分の未来を想像し、怯えることしか出来ないのであった。

 

(助けてよ…誰か…助けてよ…早く助けに来てよ…

ウルスラグナーーー‼)

 

現状に怯え、心の中で助けを呼ぶしか出来なかった彼女の脳裏に浮かび上がったのは、大好きな父親でも母親でも兄でもメイドでもなく、額に何かの紋様が刻まれていて、人と呼ぶには神々しすぎる気を纏った幼馴染の少年であった。

 

彼女はただひたすら、心の中で助けが来ることを願うのであった。

 

そうして目をつぶって祈っていると、いきなり後ろからハンカチを口に当てられ、その匂いを嗅いだ瞬間、彼女は自分の意識が眠気に沈んでいくのを感じたのだった。

 

「ーーボーー。イリヤーーイールーーンツベルンを眠ーーせることにーーー功しまーーーーしたーー」

 

途切れ途切れに耳に入ってくる誘拐犯たちの声を聞きながら、イリヤは眠り始めるのだった。

 

 

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ウルスラグナは、怒っていた。

 

以前の自分では考えられないくらい、怒っていた。

 

理由は簡単である。

たった少し前にイリヤの友達が泣きながらイリヤの家に入ってきて発した言葉。

「イリヤが誘拐された」「黒服の男たちが誘拐した」

というものである。

 

イリヤや衛宮家の人々との生活は、既にウルスラグナの中で日常の一環へと変化していた。

 

ーー日常の中心であるイリヤを我の前から持っていくだと…?ふざけるな!他の誰が許そうとも、我が許すものか!ーー

 

彼には、イリヤが誘拐された理由が、イリヤの持つ魔術の才能と、聖杯としての器である、ということはわかりきっていた。

 

何より、自分が一番彼女の中に眠る力の危険性に気付いて、気にかけていたつもりだったのに!

 

彼は、イリヤの友達の証言と、周りに残る魔力の残滓をもとにイリヤの探索を開始した。

 

自分の日常を失いたくないが為に。

 

権能までも行使して、出来る限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果たして一時間後ーー

 

ようやく彼は、イリヤの現在地と、周辺の状況、敵の数などを把握した。

 

今も必死に探索を続けているであろう切嗣たちに位置の情報を送り、彼は一人でイリヤが軟禁されている場所、町外れの廃工場へと向かった。

 

 

「…あそこか……」

 

そう呟いて、ウルスラグナは廃工場の扉を「怪力」の権能で破壊し、中へと入ってゆくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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ガコン。

 

ドガン。

 

廃工場の奥で、椅子に縛り付けられていたイリヤが最初に聞いたのは、遠くで何かが破壊される音と、自分を誘拐した黒ずくめの男たちの慌てたような声だった。

 

ーーガコン!!ーー

 

ーードガン!!ーー

 

どんどんと何かを破壊する音はこちらへと近づいてきている気がする。

 

ーー私を誘拐した人達が慌てているってことは、今こっちに近づいてきているものは、あの人たちでさえも知らないような化物なのかな?ーー

 

ーーごめんね、パパ、ママ、お兄ちゃん、セラ、リズ、ウルスラグナ私、もうみんなと会えないかもしれないよーー

 

心の中で自分の大切な人たちに別れを告げたイリヤは、恐怖で震える心を無理やり奮い立たせ、音が近づいて来る方向を見つめた。

 

そしてついに、自分の目の前にある扉が開かれた。

 

 

せめて最後は自分を殺す相手の顔くらいは見ておかないと、という気持ちで前を向いたイリヤの眼に最初に写り込んだものを見て、イリヤは安堵の涙を流した。

 

その視線の先にいた者は、先程までイリヤが心の中で必死に助けを求めていた自分の幼馴染その人だった。

 

 

 

 




若干ウルスラグナが人間らし過ぎな感じがありますが、そこはご容赦を。

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