チートサイキッカー八幡   作:モブキラー

4 / 8
――――平塚先生の運命や如何に。
そして愛の嵐が吹き荒れる。デュエルスタンバイ!



よく見りゃ平塚静って超イイ女じゃね?(後編)

――――見た感じ、平塚先生の出血はそこまで多くない。

 

となると、心肺停止状態の原因は、外傷によるショックだと思われる。

(まずは。傷口を塞がないとな)

先生の傷口に触れて、生命エネルギーを送り込み、自己回復機能を促す。

眩い光と供に血管が修復され、続いて臓器と腹部の破損個所が塞がっていった。

これが俺の超能力の一つ、治癒力(ヒーリング)である。

 

「す、すごー! ヒッキーすごー!」

 

後ろで、馬鹿っぽい声が聞こえた。ヒッキーって俺の事かい。

さて、輸血は後でするとして……次は心肺機能の回復だが。

三人娘が必死に心肺蘇生法を行ったおかげで、比較的に平塚先生のダメージは少ない。

(それにしても)

この規模の飛行機ならAED(自動体外式除細動器)が設置されていてもおかしくないはずだ。

だが、ここにいるクラスメートの三人娘は、手動の心肺蘇生法を行っていた。

 

「お前ら、AEDは使ったのか?」

 

尋ねると、三人娘が顔を見合わせる。

その後、赤ブチ眼鏡の女子が恐る恐る口を開いた。

 

「それが……壊れてるみたいで。だから手動でやってたんだよね」

「壊れてる?」

「他にも……電子機器が軒並み故障してるみたい。スマホとかも」

「……マジでか?」

 

ポケットから、スマホを取り出し確認してみると、俺のも故障していた。

(こ、小町の写真がぁ~~~~!!)

俺が撮り溜めた、1000枚を超える小町の写真データがパァになっていた。

まぁ、大半は自宅のパソコンにデータを保存しておいてるけども。

それにしても惜しい事をした。ショックだぜ。

しかし……電子機器の故障か。

ジェット機が墜落したのにも関係があるのかもしれない。

 

「おっと、今はそんな事を気にしてる場合じゃないな」

 

今は平塚先生を治す事だけ考えよう。

だが、ADEが使えないとなると……うーん。少し問題が。

 

「どうしたの?」

 

陽乃が少し焦った様子で声をかけてくる。

平塚先生が心配なのだろう。

 

「いや、問題無い」

 

うん。仕方が無いよな。今は非常事態だもんね。

細かい事を気にするわけにはいかないもんなぁ。

――ぷち、ぷち、ぷち。

ってなわけで、平塚先生の白いブラウスのボタンを外していった。

 

「へ、変態だー!?」

 

後ろでお団子が悲鳴を上げ、他の女子たちも軽蔑し切った視線を向けてくる。

 

「ちげーよ! 俺がAED代わりになるから、肌を露出させる必要があるだけだ!」

「……ふ~~~ん」

 

慌てて弁解するが、陽乃が上方から冷たい目で見下してくる。

俺は悪くねぇ! こんなの絶対おかしいよ!

 

「ええい、ままよ!」

 

躊躇せず、ブラジャーも外した。

ぽろん、と平塚先生の豊満な乳房が飛び出す。

(OH……! アメェィズィング……!)

それは大いなる美峰ジャパニーズ・フジヤマ。

こんな光景を見たら、俺の股間もエベレストになっちゃうよ!

しかし、意外と綺麗な乳首の色をしてらっしゃいますね。アラサーとは思えません。

ほっほっほっほっ。これは平塚先生への評価を改める必要がありそうですねぇ。

※実際にAEDを使う場合、ブラを外すかどうかは、指導者によって意見が分かれるそうです。

 

「……………………」

「はっ!?」

 

陽乃が無言で絶対零度のオーラをぶつけてくる。

な、なんだこのプレッシャーは!? こいつ人間か!?

いかんいかん、今は雑念は無用だ。続けていくぜ!

 

「うおりゃああああああああ!」

 

――もにゅううん!

男らしく、平塚先生の豊かな双丘を鷲掴みする。

そして、電気ショーック!

――びくん!

平塚先生の身体が跳ね上がる。

これぞ、パイロキネシスを応用したサイキック式AED!

電流や電圧を、AEDと同レベルに調節した電力を発生させたのだ!

 

「さらにいいいいいィィィィィィィ!!」

 

――――ズキュウゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!!

馬乗りになったまま、ダイナミックに平塚先生の唇を奪う。

気道の確保と心臓マッサージを念動力で行い、口部から空気を送り込み、呼吸器を刺激する。

同時に、脳や臓器に発生したダメージを探りながら、ナノレベルの念動メスを入れて修復していく。

 

これぞ――――サイキック式・心肺蘇生法!!

 

この優れた所は、救助者が体勢を入れ替えずに、全ての救命活動を行える事にある。

離れた場所から念動力を使用するよりも、できるだけ患部に接近して行う方が精度が上がる。

ゆえに、心臓や脳に近い場所に接触する事が望ましい。同時に手動の蘇生法を行えればなお良い。

だから乳房を掴む事も、馬乗りになってキスをする事も、全てが理に適っているのだ。

適っているのだが…………。

 

「「「「………………うわぁ」」」」

 

オーディエンスはどん引きである。

傍目からは、変態が気絶してる女に馬乗りになり、露わなおっぱいを揉みながら、無理矢理キスをしているようにしか見えないのだ……それが問題である。

 

「ム……ムム…………ふもっ!!????」

 

どうやら、平塚先生が気付いたようだ。

よかった、よかった。さて、問題はこの後だ。何せ、キス&おっぱい揉みだからネ。

なぁ小町よぅ、お兄ちゃん悲しい。人生って不条理だよなぁ…………。

 

「っっっきゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!?」

 

――――ゴギャアアアアアアアンンンンン!!

甲高い悲鳴と供に、躊躇の無い『衝撃のファーストブリット』が炸裂した。

だいたい8メートルぐらい吹っ飛ばされた。

これで怪物に負けたとか、嘘やん……。ゴリラだって余裕でしょ……。

 

 

 

 

 

「そ、そそそそ、そうか。比企谷が助けてくれたのか!」

 

バーサーク状態だった平塚先生だが、やっと落ち着いてくれたようだ。未だに挙動不審だが。

羞恥のせいで顔はトマトの様に紅い。こちらと視線が重なる度に、すごい勢いで顔を跳ね逸らされる。思春期の乙女か。

「し、しかし、それならもっと早く言いたまえ!」

言おうとしたじゃん! でも聞いてくれなかったじゃん!

まさかあの後に、『撃滅』と『抹殺』まで出してくるなんて! 酷いわっ!

 

「でも……本当に良かったぁぁぁ……うえええ~~~~~~ん」

 

お団子の女子が、泣きながら平塚先生に抱きつく。

赤ブチと金髪も平塚先生を囲い、その回復を喜んでいる。

陽乃も安堵した様子だ。優しい瞳で、その光景を見つめていた。

 

「こ、こら由比ヶ浜。もう……仕方の無い奴だな」

 

さすがは平塚先生。

普段は、皆からからかわれているが、やっぱり愛されている。

やはり彼女は、総武高校にとって必要な人なのだ。

 

 

 

平塚先生の指示で、俺と先生の二人だけで話をする事になった。

三人娘と陽乃が去った機内は、暗く静まり返り、先程の喧騒が嘘のようだ。

二人してヌルいコーヒーを啜りながら、窓の外を眺める。

視線の先では、葉山が指示を出しながら、2年生をどうにか纏めているようだ。

ただ、中には不満そうな連中もおり、集団のストレスは相当溜まっているように見える。

 

「それにしても。超能力か……」

 

穏やかな沈黙を先に破ったのは、平塚先生だった。

 

「以前、屋上で話をした事を覚えているか?」

「……ええ」

「あの時、君が語った『秘密』とは、そういう事だったんだな」

 

その通り。あの時は感染病に例えたが、俺の秘密はサイキッカーである事だ。

 

「……すまなかった」

「えっ?」

 

突然、平塚先生が深々と頭を下げた。

数秒経っても頭を上げてくれないので、こちらが焦ってしまう。

 

「飛行機の墜落を防いでくれた君を……明かせない秘密を暴露してまで我々を助けてくれた君を……理不尽に罵倒される君を……私は助けてあげる事が出来なかった」

「そんな」

 

そんな事を気に病んでいたのか。

教師にだって出来る事は限度があるだろう。気にする必要は無い。

 

「それどころか……恩人の君に恐怖すらした」

「……っ」

 

それは確かに感じていた事だ。

あの瞬間、俺を見つめる平塚先生の瞳は、驚愕と恐怖に染まっていた。

確かに、悲しみで胸が痛んだ。だが……。

 

「それは仕方無いです。あんなモノを見せられたら、誰だってびびります」

 

できる限り明るい声で、気にしていないように振舞ってみせる。

 

「すまないっ……!」

 

だが、そんな俺のフォローも、今の平塚先生には意味が無かったようだ。

平塚先生は、俯いたまま肩と声を震わせ始めた。

 

「何が……君の味方になるだっ。絶対に裏切らないだ。わ、私は……私は、情けないっ……!」

 

ぽろり、と一滴の涙が落ちた。

堪らなくなって、叫んでしまう。

 

「平塚先生は悪くないっ! あなたは良い教師ですよ!」

 

「教師……か」

 

平塚先生が、やっと頭を上げた。

しかし顔を見られるのが嫌なのか、こちらに背を向けたままだ。

 

「私は教師である事に誇りを持っていた。いや、胸を張れる教師であろうと努力してきたつもりだ。けれど……思い上がっていた」

「そんな事は……」

「いや! 違くはない!」

 

平塚先生が、俺の言葉を遮るように振り返った。

その目は真っ赤で、目尻からは涙が溢れている。

 

「分かっていたさ! 私は結局、愚かで未熟な理想主義者でしかない!」

 

不謹慎だが、俺はそんな彼女の姿を美しいと思ってしまった。

全力で生きて、全力でぶつかって、全力で後悔した人にしか流せない涙。

こんな風に泣ける彼女を、痛ましく、羨ましく、そして愛しく思う。

そして何よりも。これ以上、悲しませたくないと思った。

 

「――――いいじゃないですか。愚かな理想主義者でも」

 

「えっ?」

 

平塚先生が、驚いたようにこちらを見つめる。

そのまま俺の顔を見て、何故か更に驚いたようだ。

そうか。珍しく俺は微笑んでいるんだな。

 

「悔しいけど、あなたみたいな人がいるから、俺は人間が嫌いになれないんだ。いいんです。綺麗な夢をずっと見ていてください。その夢を信じ続けてください。そして、俺にしてくれたように、誰かに手を差し伸べてあげてください。その優しさで――ずっと生徒達を包んであげてください」

 

平塚先生が、何かを語ろうとし、出来ずに沈黙する。

察したのだろう。

この後に告げる――別れの言葉を。

 

「でも、でも……君だって……君だって私の生徒じゃないか」

 

彼女は台詞を絞り出すが、その声は弱々しく、今にも消えてしまいそうだった。

 

「俺の事は忘れるべきです」

 

「なん……だって?」

 

きっと俺は残酷な事を言っているのかもしれない。

でも、それが一番良い方法だ。

彼女の人生において、俺は不必要な異物。

その存在は、彼女が許容できる不幸のキャパシティを超えている。

 

「それが、あなたの幸せです」

「そんな、そんな事を言うなよぉ……!」

 

再び、先生の瞳から、ボロボロと涙が溢れ出す。

頼むから、泣かないでくれ。先生。

 

「比企谷八幡なんて奴はいなかった。それでいいんです」

 

先生は、嗚咽しながら顔を手で覆っている。

その隙に、彼女の頭部に手をかざし、記憶を――――。

 

「止めろおおおおおおおおおっ!!」

 

――――どんっ!!

思いっきり、突き飛ばされた。

 

「今、消そうとしたな! 私の中の君の記憶を消そうとしたなっ!! なんでそんな事をするんだっ! 馬鹿あああああああっ!!」

 

半狂乱になりながら、平塚先生は泣き叫んだ。

驚愕する。俺が精神操作……記憶の改ざんを出来る事は知らないはずだ。

それなのに気付いたというのか……勘というのも馬鹿にできない。

 

「そ、そうだ! 君が、社会で生きていく方法だって……きっとあるはずだ! 手順を踏んで話せば、きっと君の事を保護してくれる人もいる! いや、私が探してみせる!」

 

どうにかして、先生は俺との決別を拒否しようとしている。

どうして……ここまでしてくれるのだろう。

教師としての意地か。人間としての意地か。母性本能か。それとも……。

いや……何にせよ、俺の行く道は変わらない。

そして、俺の道に彼女を連れていくわけにはいかない。

 

「また例え話ですいませんが、少なくとも、虎の放し飼いは日本では認められていないでしょう。牙を抜かれ、首輪をつけられ、徹底的に無力化されて、初めてその在り方が許される。いや、それでも許されないかもしれない。俺はそうまでして、社会的立場を得ようとは思わないんです」

 

「だ……だけどぉ……比企谷ぁ……!」

 

「俺は、自由が良い。その代償が――――孤独だったとしても」

 

「そんなの……そんなの……! 君が救われないじゃないかあああぁぁぁッッッ!!」 

 

平塚先生が、がっくりと地に臥し慟哭する。

綺麗な黒髪と、端整な顔をぐしゃぐしゃにして。

ありがとう、先生。こんな俺の為に泣いてくれて。

ごめんなさい。あなたの心に傷跡を残してしまって。

 

「少しの間ですが、あなたの生徒でいられて良かったです」

「ひ、比企谷」

「今日まで、ありがとうございました」

「待て……行くな比企谷っ!」

 

「さようなら平塚先生。お元気で」

 

「――――あああ、ああああぁぁぁ…………ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陽乃か」

「…………っ」

 

搭乗口の傍で、陽乃が俯いて座り込んでいた。

その横顔は暗い。どうやら、先程のやり取りを聞いていたようだ。

 

「覗き見はよくないぞ」

 

「…………ごめん」

 

ずいぶん素直だな。なにか皮肉の一つでも言われると思ったが。

 

「比企谷くん。君は……強いね」

「…………? まぁ、サイキッカーだしな」

 

突然、陽乃が変な事を言い出した。

 

「そういう事じゃないよ。心の話」

「いや……そんなことねぇだろ」

「君は孤独を恐れないじゃない」

 

俺は望んで孤独を選んでるわけじゃない。

本当はぼっちとかは嫌だ。でも仕方無いから、そうしてるだけだ。

 

「んな事ないだろ。小町とか超大切よ? 嫁に行ったら超泣くよ?」

「そうかな。君は大切な人の為だったら、どこまでも自分を犠牲にする気がする。全てを失っても。そんな力を持ってるくせに、自分の欲を満たさない」

「………………」

 

「自分の幸福を諦めているから、何も望まないし、どんな不条理だって許せちゃうんだね」

 

そう言って、陽乃は寂しそうに笑った。

 

「…………まぁ、そうかもしれないな」

 

陽乃の言葉を否定するつもりは無い。

俺は多くを望まない。俺が何かを望めば、誰かを不幸にしてしまう。

だからただ、静かに生きていたい。その為に力を使い続けるだけだ。

まぁ、時には……人助けくらいはするかもしれんが。

 

「で、それを言ってどうしたい?」

「だよね……どうしたいんだろうね。私」

「は?」

「……はぁ。反則だよ君は。本当」

 

陽乃は謎の台詞を吐くと、そっぽを向いてしまった。

これ以上、会話を続ける気はなさそうだった。

 

 

 

 

 

「うわっ、化物だっ!」

 

飛行機から降りると、聞きなれた罵声が聞こえてくる。バリエーション増やせよな。

俺に気付いた多くの者達は、すぐに岩や障害物の陰に隠れたようだ。

ただ血気盛んな奴らは、俺にどうにか一矢報いたいようだ。何も恨まれる事はしてないが。

固い表情で、事態を見つめる陽乃から距離を取る。

 

「あっ……!」

 

何か言いたそうに陽乃が見つめてくるが、ここはシカトするに限る。

俺の仲間だと思われたら、陽乃はここで生きていくのが辛くなるだろう。

そもそも、彼女とは友人ですらない。三時間程前に会っただけの相手だ。

 

「ここから消えろ!」

「……痛っ」

 

誰かが投げた石が、背中に当たった。

振り返ると、アホ顔をした奴が、怯えたように茂みの中に逃げ込んだ。

ムカついたが、いちいち騒ぐのも馬鹿馬鹿しい。とっとと、ここから立ち去るのが吉だ。

しかしアホ共は、俺が反撃しないのを見て調子に乗ったのか、どんどん物を投げてきた。

総数は十五人程度か。石だの、瓶だの、スパナだの。危ないっつーの。

 

「失せろっ!」

「目がキモい!」

「この化物が!」

「どうせ、墜落もお前が仕組んだんだろ!」

 

あ、なるほど。そういう認識が広まっているわけか。

確かに、原因不明の墜落事故だ。超常的な存在である俺を疑う気持ちも分かる。

それと、謎の怪物とやらのせいで、攻撃的になっているのかもしれない。

(まぁ、俺がいなくなれば解決する事か。はいはい。いま失せますよーっと)

にしても、化物か。やっぱり傷つくぜ。

 

――ぞくり、と。何か嫌な予感がして、陽乃の方に目をやる。

 

(!!?)

陽乃は薄ら笑いを浮かべながら、アホ集団の後方に忍び寄っていた。

そして、その手には2メートル程の鉄パイプを持っている。

その目はイッている。完全にヤバいスイッチが入っている。

何故か俺の味方をしてくれるようだが、このままではいけない。

仕方なく、念動力でも使って、アホ共を軽くビビらせてやろうかと思った時――――。

 

「止めろ、この馬鹿者どもがあああああっっっ!!」

 

力強い怒声が、森の中に響き渡る。

声の方向に振り返ると、大岩の上に誰かがいる。

それは、白衣をはためかせ、眼光鋭く仁王立ちする平塚先生だった。

その気合に気圧されたのか、アホ共が狼藉を止める。

さすがは平塚先生。千葉県最強との噂は本当なのかもしれない。

 

「とうっ!」

 

平塚先生はヒーローのように、大岩から飛び降りる。

そして、真っ直ぐ俺の方に向かって来る。

何か文句でも言いたいのだろうか。それとも一発殴る気なのだろうか。

(き、気まずい……!!)

だが平塚先生は、俺の困惑など、どこ吹く風だ。

先程のやり取りの事など忘れてしまったのか、堂々と眼前に立つ。

そして、決意を瞳に宿し――――とんでもない事を言い放った。

 

「比企谷、決めたよ。私は――――教師を辞める!」

 

「――――は?」

 

何を言っているんだこの人は。

教師を辞める? 何で? どうして? あっ、脳障害かな? オペをミスったかな?

呆気に取られる俺や周囲を無視して、平塚先生は力強く語り続ける。

 

「私は……もう公平な大人を止める。不特定多数の生徒の味方である事を止める。君を永遠に失いそうになって……確かな自分の気持ちに気が付いたんだ」

「えっ、えっ…………えっ?」

 

さっきから、俺の頭は混乱しっぱなしだ。

どういう状況? この人は何を言いたいわけ?

 

「ふぅ……はぁ……よしっ!」

 

平塚先生は深呼吸した後、謎の気合を入れる。

真っ赤になった顔と、潤んだ熱っぽい瞳でこちらを見つめ、

そして――――止めの爆弾を投下した。

 

「今の私は……君だけの味方だ! 八幡……私は君を愛しているぞッ!!」

「はああああああああああっっっ!?」

 

――――何言ってんの、この人おおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

 

 




平塚、教師やめるってよ!!
なんかとんでもない事になってきました。
勝手にキャラと筆が走り出す。渡先生のキャラぢから凄いなぁ。
※感想いつも楽しく読ませてもらっています。感謝。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。