ここ(ハーメルン様)はよく覗いていたんですが、投稿するのは初めてです。
拙い所は多々あると思いますが、お手柔らかにお願いします。
俺の名は比企谷八幡。見た目は普通の高校二年生だ。
……いや、嘘をついた。
キモくて目付きが悪く、ぼっちと評判の高校二年生だ。
待ってくれ。ぼっちなのには理由があるのだ。
俺には人に言えない秘密がある。
それは……ぶっちゃけ、俺はサイキッカー(超能力者)なのだ。
それも、ただの超能力者ではない。
かなり強力なレベルのサイキッカー。チートサイキッカーなのである。
ワンパンで車を爆発させる事ができるレベル。ヤバイよ。
故に、俺がぼっちなのはどう考えても超能力が悪い。
この能力さえ無ければ、俺はきっとリア充学生ライフを送っていたに違いないのだ。
パラレルワールドがあったら、縦巻金髪ガールとか彼女にして、童貞だって余裕で卒業しているはずだ。
世界中から「それはねーわ」とツッコミをもらった気がするが、きっと気のせいだ。
とにかく子供の頃から、俺はずっとこの力を隠し続けてきた。
この力を知っているのは、俺の家族くらいのものだ。
家族には感謝している。こんな俺を恐れずに、しっかりと育ててくれた。
特に我が最愛の妹・小町は至高だ。結婚してくれと言っても過言にはなるまい。
法律なにそれ? やんのかオラァ! かかってこいよ。
しかし家族はさておき、世間はそういかないはずだ。
この力の事を知れば、きっと俺を迫害する人間が出てくるだろう。
そして、世間から隔離され、きっと俺は日常を失う。
当然だ。どんな賢い虎や像だって、檻の中に隔離される事によって人間社会で生存を許されるのだから。
だから、決してこの力はバレてはいけない。
そんな事は当然だ。
自分の命と自由は何よりも大切なものだ。
けれど……それなのに。
「化物…………!」
百を超える視線が俺に突き刺さる。
そこからは、未知の者に対する恐怖。そして異物を排除しようとする敵意を感じる。
皆が怯えている。俺を恐れている。不安が現実になってしまった。
(……馬鹿が)
どうして、バレてしまったんだ。
いや、自業自得だろ。
なにせ、自分からバラしてしまったんだから。
――――――空が青い。海だって青い。
白い砂浜。少し強いが心地好い日差し。振り返れば南国の森。
見事な異郷感と非現実感。こんなの映画でしか見た事ない。
「マジでヤシの木とか生えてんのな」
少しテンションが上がってしまうが、そんな事はどうだっていい。冷静になれ。
「無人島に遭難とか……嘘だろぉ~~~~~~!」
ついつい大声で独り言を叫んでしまっても仕方ないはずだ。
ありえない。ベタベタやん。夢なら覚めて!
この事態の原因は、総武高校の修学旅行にあった。
なにやら雪ノ下建設のコネで、格安で海外旅行に行ける事になったという。
雪ノ下建設と言えば、国内有数のスーパーゼネコンである。就職したら超勝ち組なのだ。
どうやら、総武高のOGが雪ノ下建設の御令嬢だったようで、彼女のはからいらしい。
なんでも、かつて圧倒的カリスマで生徒会長を務め上げ、幾多の伝説を作ったとかどうとか。
……ぼっちなんでよう知らんけどな。
強引に言ってしまうなら、今回の事故の遠因は彼女にあると言ってもいいのかもしれない。
そんな屁理屈で、彼女を責める奴がいるとは思えないが。
ジェット機の総員数は約300名と聞いた。
その多くが総武高校の2年生。
それ以外にも抽選で選ばれた別学年の生徒、総武高卒業生や他校生もいるらしい。
天国から地獄。今思えば不運な奴等だ。
「とにかくそれで……飛行機が墜落したと」
先程までのトラブルを思い返し、「化物」と呼ばれた事を思い出して凹む。
そう。飛行機が墜落したのだ。
原因は分からない。ただ、騒ぎの中で機長の姿は見えなかった。
俺限定で言うならば……脱出しようとすれば楽勝だった。
だってチートサイキッカーだから。
瞬間移動して、空中浮遊をしてしまえばいい。
後は、適当に島を経由しながら、陸地を目指せば楽勝だ。
――――だが、それはできなかった。
見てしまったのだ。
死に怯える、同級生達の姿を。
聞いてしまった。生徒を心配する教師の心を。
だから……俺は。
守ってやりたくなってしまった。
「けど、何も外から飛行機を持ち上げる必要は無かったわなぁ」
俺は、非常に分かり易い方法で皆を助ける事を選んだ。
瞬間移動で外に出て、空中浮遊をしながら念動力で墜落を防ぎ、この島まで運んだのだ。
その時に、窓から空中浮遊している所をバッチリ見られた。
俺自身もパニックになっていたので、瞬時に他の方法が思い浮かばなかった。
よく考えれば、目立たないやり方も他にあっただろうに。ドジった。
「まぁとにかくこれで、全部バレちまったと」
さぁ、どうするかね。
もう、自分の事だけ考えるべきだろう。
あいつらを墜落から救ってやった。
そして、奴等は俺を拒絶した。もう助ける義理もあるまい。
正直「化物」は辛かった。キツかった。
きっと中には、俺に対して感謝してくれる奴もいるんじゃないかと思っていた。
だが、あそこに居た全員の心から、大きな恐怖と嫌悪を感じた。
大きな力を持つ者に対する、どうしようもない心の隔絶があった。
目の前に野良ライオンがいたら誰だってビビる。それと同じだ。
(もうあそこにはいられない)
記憶を操作する事も出来なくはないが、相手は300人を超えている。
集団に対しての、微細な精神操作は不可能だ。やりすぎれば、廃人にしてしまう。
今は、俺がここから去るのが一番揉めないはずだ。
一瞬、暗い邪念がよぎったが、すぐに振り払った。
このまま置き去りにしてしまえば、俺の秘密を知る問題のある人間は居なくなる。
だから、捨てておけばいいじゃないかと。薄情な恩知らずどもなんだからと。
「……馬鹿、んな事できるか。小町が泣くだろ」
俺は自分の力に溺れる事だけは絶対にしない。
欲望のまま、本能のままに力を振るってしまえば、それはモンスターだ。
俺は人間なのだ。そして、愛すべき小町の兄なのだ。
あいつに対して、家族に対して、恥ずべき事だけは絶対にしないと決めている。
これからの俺の行く先は、苦難の連続だろう。
けれど、俺には大切な家族がいる。
ここで自棄になっちゃいけない。
この先どうすべきかは、帰国中にでもじっくり考えればいい。
「とりあえず、あいつらは……どうするかな」
何日、何十日後になるか分からないが、日本に着いたら漂流地点の報告くらいはしてやろうか。
自棄になって争いなんてしないように、今のうちにそれだけは約束してやるのがいいだろうか。
っていうか、ナイスガイだな俺は。小町が知ったらきっと惚れんじゃね?
そして結婚へ。夢がひろがりまくりんぐ。
そんな事を考えていた時だった。
「ひゃっはろ~。超能力者くん。」
暢気な鈴のような声が、俺の背にかけられた。
驚き振り向くと――そこには絶世の美女が立っていた。
「はじめまして、かな。私は雪ノ下陽乃っていうんだけど、聞いたことない?」
そう自己紹介しながら、彼女はにっこりと笑ってみせた。
それは俺に対する恐怖を微塵も感じさせない――――美しく完璧な笑顔があった。
プロローグはこんな感じで。頑張れ八幡。
いきなりはるのんが出てきましたが、別にメインヒロインというわけではありません。
あくまで、ハーレムを目指していくつもりです。感想お待ちしています。