……まぁ正確には『キャラクター及び基礎設定持ち越しで完全に別物を作る』に等しいんですがね!
詳しくは活動報告にて……
んま、それはともかくとして本編ドゾー。
いやぁ、やっぱり正々堂々正面からの殴り込みはいいね。爽快感があるよ。
そんなことを考えつつ、俺は
目指すはジジイの居る所のみ。正面から殴り込んでやるのさベイベー。もはや怒りで脳味噌が支配されてて妙なテンションになってきたけれど気にせず直進、ジジイに生まれてきたことを後悔させてやるのさ!
俺にとって母さんは命よりも大切なんだ。だから俺から母さんを奪った奴は200回ほど殺しても殺し足りないほどに憎い、憎くて憎くて仕方がない。
かと言って本当に殺してしまうと母さんに叱られてしまうので、殺すわけにもいかないのだが。
………母さんが何かされていた場合はその限りじゃないがな。
まぁそんなもしもの話は一旦横に置いておくとして、ひとまず今は目の前の現状に視線を向けるとしよう。
門が破壊されたことによって警報が鳴ったのか、それとも破壊された音に気付いてやってきたのか、黒服が3人。
全員ががっちりした体格で明らかに侵入者捕縛などの訓練を受けていそうな雰囲気だ。引きこもりで運動不足かつそもそも運動の出来ない俺は愚か兄貴あたりでも勝ち目がなさそうだ。
多分この黒服たちをなんとかしようと思ったら俺が30人くらいは必用だろう。
………だが、慌てることはない。これまでこういう状況には幾度となく追い込まれてきた。
幼稚園の時は兄貴がオカルト結社の首領の孫娘におせっかいを焼いたせいで巻き込まれて怪しげな儀式に巻き込まれ。
小学校では幾度となく兄貴の引き起こしたトラブルに巻き込まれてオカルト的な生贄にされたり実験台にされたり。
特に酷かったのが危うく右手によく分からん………
あれ以来とある秘密結社と太いパイプを持てるようになったけれども、それでもあれは本当にヤバかった。
その移植手術が開始した途端に機会が全部故障して続行不可能になった直後に兄貴が殴り込んだから事なきを得たが本当にスレスレだった。
あんなもん二度と体験したくないわい………なんて思ってた中学でも兄貴は問題を引き起こし、どういうわけか世界を危うく滅亡させかけてしまった。
幸いなことにあの時は元凶に攫われた俺が躓いて踏み潰した試験管に世界滅亡のカギになるらしかった生命体が入っていたためにあっさりと世界滅亡は阻止されたからいいが………俺がもし足元に気を配っていて転ばなかったらと考えると本当に恐ろしい。
………んで、これまでの酷い巻き込まれ経験から俺が得たものはただ1つ。
「お、おいあんなところにUFOが居るぞ!」
堂々と相手をバカにして時間を稼ぐ技術だ。
相手次第では命の危険があるが、しかしそれでもこうして露骨にバカにしたような口調で言ってやることで手に入るものもある。
それはあまりに堂々とした態度で言われたことによって発生する混乱と、僅かな隙。
あとはそこを突いて唯一の取り柄である逃げ足と、引きこもり故に存在感がオミットされた結果である影の薄さを利用する。
ハーッハッハッハッハッハ!警備員よ!これが引きこもり歴9年の力だ!見たかぁ!
そう叫び出したい衝動を抑え、俺は静かに駆けていく。
無論黒服たちも平静を取り戻して追ってくるが、一度逃げる側に回ってしまえばこちらのもの。
俺はここに来る途中で拾った複数の小石を適当にバラ撒き、叫ぶ。
「門を壊したからもう要らねぇし、全部くれてやんよ!」
まず俺が行ったのは小石を先程の破壊の原因となった爆弾だと思わせて時間を稼ぐ作戦。
これで一人でも黒服を減らせれば万々歳だが……残念ながらそう都合よく減ってくれることも無さそうだ。
黒服たちは以前として人数を保ったまま、こちらに向かって猛進してくる。
しかし、黒服たちが走るスピードと俺の逃げ足では僅かに俺の方が勝っているのか、段々と黒服たちの足音が小さくなってきている気もする。
このままなら捕まる前に目的地に辿り着ける……
「止まれ侵入者!止まらなければ身の安全は保証しない!」
「バ、バカ!急に目の前に出てくんなぁぁぁぁぁ!」
と、思ったところで急に拳銃を持った黒服が出てきて俺に銃口を向けたが、生憎と俺の足は一瞬で停止できるほどブレーキ性能がよくないために、止まることが出来ずにそのまま突き進んでしまう。
……まずいな、これは銃撃されるパターンだ。
そして、そう思ったのも束の間、背後からパァン!という発砲音が聞こえてきて、俺の体の横を銃弾が通り過ぎていく。
流石に銃弾を気合いで避け続けるなんてゲームみたいな芸当は無理なんですけど!?
絶叫しながら、どうせ止まったら止まったで撃たれるのは目に見えているので止まることも出来ずに俺は走り続ける。
それに、動いている的に当てるのは上級者でも難しいと言うし、走っていた方がまだ生存率が高い気もする。
本当に気のせいだったりすることがないことを祈ろう。
右左右左右…と見せかけて直進ジャンプ体勢を低くしてから左左カーブして右……もはや自分でもどう動いているのか分からなくなってしまうほど素早く動き、俺は黒服に照準を合わせる隙を与えなかった。
もうこれギネス記録認定でいいと思う。
「クソッ……こうなったら……」
だが、俺の奮闘も虚しく黒服たちは狙いを付けるのではなく数撃ちゃ当たる作戦に切り替えたのか突如背後からの発砲音が増加する。
まずいな……いくら当たりにくい動きをしていると言っても乱射されたら流石に当たる気しかしねぇ。
残念なことに俺は兄貴と違ってよく分からん急所命中絶対回避的な運命力を持ってないからもしも当たればかなりの確率で死ぬ。
母さんを助けられないどころか母さんを悲しませるとか最悪だよ。
かと言って状況を打破する方法なんて思い付きもしない。
それに、もうそろそろ日頃の運動不足が祟ったのか足が動かなくなりそうだ。
多分この状況で動けなくなったりしたら死ぬだろうがね。
主に銃撃プラス止まりきれない黒服たちによる踏みつけで。
かと言って状況をどうにかする手だてがある訳じゃない。それこそこっちも適当にやって当たるのを期待するしかないんだよ。
「おい見ろ!あんなところに首吊ってるヤツが居るぞ!」
「「「「なにっ!?」」」」
まずは適当に首吊ってる人が居ると言って騙す。
それで視線を向けてくれればその間に逃げられるから万々歳という訳さ。
まぁ首吊る人間なんてそうそういないからこれで騙すのは無理だろうし、次の方が本命……
「追跡は中断だ!今すぐ緊急時対応マニュアルに従って各自行動!コードはD-M!」
「了解!侵入者はどうしますか?」
「……大丈夫だ、どうせすぐに無力化するから放っておけ!今はそれよりこっちが最優先だ!急げぇぇぇ!」
……そういや、居たな。首吊ってそうな人。
とはいえ不審者を放っておくなんてうっかりな警備員も居たものだぜ。
だがあえて言おう、ありがとう。お前らのお陰で前に進めるよ。
俺は、駆けていった警備員たちを見て祈りを捧げながら新たな一歩を踏み出した。