夢で、忘れた頃に   作:咲き人

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8.「神と、相対する頃に」

霊夢(影)と魔理沙……異変解決組と呼ばれる彼女らは様々な異変を解決してきたが、全て力を合わせて戦ったらしいものは殆ど無く、「どちらが先にボスを倒し異変を解決できるか」という競争の形で二人は個々の力のみで戦ってきた。故に協力した二人の実力は測り知れず、タッグならば敵無しとも噂されていた……だが、

 

「あはははは!どうしましたお二人さん!止まって見えますよ!」

 

幻想郷の中でも最強の部類に入る天狗、射命丸文は強敵であった。弾幕の量こそ手加減されているのが見え見えだが、彼女自身の速さが尋常ではなく、とてもじゃないが追い付けないし、目で追うことすら出来ない。

 

「ち、こうなったら一瞬でもアイツを止めなきゃ勝てないぜ……!」

 

「そうね……!(もう色仕掛けは通用しないだろうし、新たな策を用意しないとな)」

 

俺としてももうこんな色仕掛けもしたくない。恥ずかしくて死んぢゃいそう。しかし速すぎるなあのブンブン……くっ、片仮名でブンブンっていうとあの敵キャラになっちゃうから止めよう。

 

「いっ!?こんな時に……!」

 

「おい、嘘だろ霊夢!?」

 

突如またもや激痛が左腕を襲う。昨日ぶりだね激痛さん!強化外骨格を付けて慢心していたらこれだ……!やっぱり紫の言う通りに永遠亭とやらに行けば良かったかもな……だが、これは逆にチャンスだ。咄嗟に作戦が思い付いた、普通なら成功率は低めな作戦だが、あくまでも文は手加減しているならどうにかなるかもしれない。状況は変わらず最悪だが……

 

「おやおや~?霊夢さん戦線離脱ですか~?」

 

地味に腹立つなあの煽り……まぁ、ちょうどいい……魔理沙もあのスピードには参っていただろうし……

 

「魔理沙、私に構わず全力で行きなさい」

 

「だ、大丈夫なのかぜ?」

 

「獲物くれてやるって言ってんのよ!さっさと倒して来なさい!」

 

「……!おう!分かったぜ霊夢!」

 

これが俺が考えた対文の策……その名も作戦放棄!……というのは半分冗談。詳しくはwebで!

 

「よぉし、軽くぶっ飛ばしてやるから覚悟しな!」

 

「魔理沙さん一人で大丈夫なんですか~?」

 

「このイライラはお前に当てるから全然大丈夫だぜ!」

 

やってしまいなさい魔理沙さん!弟の仇をとるのです!(神の声)

 

「弾幕はパワーだぜ!」

 

これが魔理沙の通常弾幕……結構広範囲に星形の弾幕をばら蒔いて文の動きを妨げようってことか……うぅむ。魔理スターがどうしてもキラリン☆レボリューションに……なんかパッと思い付いた。

 

「ちょこまかと鬱陶しいぜ!」

 

いや、どちらかというと君の弾幕の方が鬱陶しい気がするんですがね。まぁ、一々ツッコミを入れるのは野暮だし、脳内でツッコミさせてもらうぜ。

 

「くっ!」

 

文のスピードがみるみるミルトンしているうちに下がってきている。うん、そろそろ怒られた方がいいな俺!それはさておき、文のスピードダウンに反比例して魔理沙の弾幕は過激さを増していく。計 画 通 り……やはり魔理沙は文よりも手加減していた。恐らく俺が近くにいたからだ。これが俺の策よ!それは俺が弾幕ごっこから抜けることだ……なんて最低で底辺な作戦なのだろうか。後で魔理沙に目の前で愚痴を言われても仕方ないレベル。しかし、結果が全てだ!何をしようと勝てばよかろうなのだあああ!

 

「これでもっと邪魔してやるぜ!恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

 

これは酷いスペルカードだな。四つの玉が表れたかと思うと魔理沙の周りを回りながらレーザーを放って来ている。つまり文は回転に合わせて動かなければならず、レーザーの速度に合わせるということは自然とスピードはその速度と同じになる。考えたな魔理沙!因みにノンディレクショナルとは無指向性……主の送受信器の寸法と波長の関係で、波長の方が長い場合がノンディレクショナルだ。因みにマイクロホンとかそういった系統のものは指向性で、無指向性というのは指向性のような一ヶ所に強い音波を放てるようなものではない。つまり、考えるな感じろ、全部ブッパしちまえば関係ねえ!という脳筋ワードなのであった。なんでこんなの覚えてんだろ俺……

 

「捉えたぜ!」

 

文を射程に収め、今すぐ撃ち抜こうとする姿勢に入ったが、文もただやられる訳にもいかないと懐からスペルカードを手に取る。

 

「ち、『幻想風靡』!」

 

速い……一番最初に無意識的に呟いた言葉はそれだった。魔理沙の前に文がいるのは分かる、理解できる。だが、速すぎる……文が高速で移動しているために軌道が文の姿を塗りつぶしている。魔理沙も認識出来ていないだろう。だが、どれだけ速く移動していると言っても同じような場所を何度も行ったり来たりしているだけだ。今、攻撃すれば……いや、魔理沙が攻撃が中断するわけがない……いくらか当たっているはず……なのだが、いつもの腑抜けた音楽は鳴らない。

 

「まさか無敵?」

 

「これは耐久スペカだぜ……!」

 

耐久スペルカードだと!?やはりただ者ではないなあのあやや!つまりスペルカードの効果時間まで魔理沙が避け続けなければ文は倒すことが出来ないのか。だが、高速で移動し続ける文もこちらを狙っての攻撃なんて難しいはず……いや、だからこそ、被弾率の高い米粒みたいな弾幕をおかしい量を飛ばして来ているのか。勿論、米粒のような形なだけで随分と大きい。

 

「望むところだぜ!目には目を!速さには速さを!彗星『ブレイジングスター』!」

 

魔理沙が持つ妙な小道具を箒の穂先に付ける。大噴出する魔力。魔法を目の前で見たことのない俺でもよく分かる魔力の奔流。魔理沙の本気が、このスペルカードか……名前の通り彗星のような速度で魔理沙がそこから姿を消した。本来魔理沙の箒は魔力で細かな移動も可能にしていたがこれは豪快の域に入る。彼女ですら制御出来ない程だろう。ブーストしている小道具からは先程よりも大きな星形弾幕が放たれており、文がばら蒔く米粒型弾幕を蹴散らしていく。

 

「そこだああああ!」

 

魔理沙も馬鹿じゃなかったか、文のスペルカードが切れる時間を計算して自分もスペルカードを発動した。右から左、左から右と一定の規則性がある以上、時間を測れれば文のスペルカードの効果時間が切れた時に文が何処にいるのかはすぐ分かる。そしてそこへ全力の一撃を与えればいい。脳筋でもここまで行けます。そうライザッ○なら!

 

「流石……ッ!」

 

文も観念して真っ正面から喰らった。サッカーの試合のホイッスルの代わりにピチューンという気だるさを促進させる音が終了を知らせる。

 

「やったぜ!」

 

「お疲れ様、魔理沙」

 

やっと左腕の痛みも和らいで来た。ナイスタイミングだ私の腕。でも魔理沙とのハイタッチは右手で行った。右手も痛くなったが魔理沙も強敵あややを倒せてついつい力が入りすぎたのだろう。

 

「……では、私を倒した褒美に守矢神社まで案内しますよ」

 

「ロングスk」

 

「分かりました!次会ったらそれにしておきますから!」

 

ふふふ、今訳ありで戦えなかった俺をからかった罰ゲームだ。きっと一生ネタにしてやる戒めてやる。

 

 

時刻は大体お昼ちょっと過ぎ辺りか。小腹が空くが用事が先だ。あの緑髪の巫女神様ぶっ飛ばす……?ああ、首から上を無くすって本人に言ってあげたんだった。よし、あの女の首から上なくそう。いやいや……流石に物騒で、しかも霊夢の姿でやるとなると抵抗があるので止めておきましょう。

 

「突然彼女たちはここに現れて自分たちの力を説いたのです」

 

「へぇ……」

 

「霊夢さんを挑発したのが『東風谷早苗』という巫女……人間と神の奇跡である現人神。そして山の神『八坂神奈子』と土着神『洩矢諏訪子』の三人が守矢神社の三柱です」

 

「ま、煽ってきたのはその早苗ってやつだけだし、他は無視よ無視無視。それにアイツはタイマンを望んだからね。私がぶん殴ってやんのよ」

 

「あはは……」

 

文は笑っているように見えるが顔が引き攣っている。どうやら俺の口の恐ろしさ思い知ったようだな……あ、口臭のことじゃないぞ?お喋り力よ、最近はJK力って言うの?アタシJK力マックスバリューだから~……みたいな?うん、JK分かんない☆教えて早苗さん!

 

「着きました。では、私はこれで~」

 

「おう、じゃあな文」

 

「ばいばい」

 

俺と魔理沙の簡単な挨拶を簡単に受け取って文はどこかへと飛んで行った。きっと、自分の家か、これからアポとってあった場所へ取材にでも行ったのだろう。さてと、俺……いや、私は前にある神社を睨みつけた。はぁ、随分とウチ(博麗神社)とは異なってお綺麗ですこと(素直に褒めてる)。どこが外の世界でやっていけていないから幻想郷に来たのだろうかと疑問符が浮かぶほどだ。

 

「来ましたね霊夢さん……」

 

そう言って上からふわふわと降りてきたのは朝挑発行為をしてきた早苗ちゃんじゃないですかー!よし、全面戦争(弾幕ごっこ)だ。

 

「待たせたわね。でも、ま……フルパワーで遊んであげるから覚悟しなさい」

 

「それはこっちのセリフ……いえ、こちらにとってのソレは遊びではありません。弾幕ごっこではありますが、文字通り命を懸けた戦いです!」

 

「……あ、そ」

 

一気に俺のテンションが下がっていき、ボソッと今の言葉を呟いた。プチン……あ、やっちまったな。と反射的に思ったがもう遅い。目の前で対峙している早苗の怒りのボルテージが一気に最高峰を超えたのを感じ取った。

 

「貴女だけには……絶対に……負けるものか!」

 

「!」

 

超巨大な星型弾幕を怒り狂った早苗は大量に放ってくる。あれ、ちょっと待って?まだ5ステージ目だよね!?(メタい)あ、いや待て……星型弾幕というのはちょっと分かりにくいな。通常の弾幕がくっつきあって☆の形を象っている。つまり、何が言いたいかと言うと……非常に避けにくいッ!

 

「……!雨?」

 

まさか、早苗さんの怒りが天候すらも動かしているのか!?どんどん曇天へと雲が移動してきている……早苗さんはどこの古龍種ですか!?

 

「秘術『グレイソーマタージ』!」

 

「いきなりスペルカード……」

 

またあの星型弾幕か……と思ったが、捻じれて解れたかのように小さな弾幕に分裂する。先程の文の幻想風靡と比べればこれは大したことはない……が、幻想風靡を突破したのは俺じゃないし、これもきついことには変わりないがな

!それでも突破は突破じゃい!

 

「ぬるいっての!」

 

お返しだ、俺は紫から貰った「当たれば痛いよ札」を両腕で投げつける。数は少ないがホーミング機能は捨てがたいし、早苗にとっては厄介なはず……何だが、ギリギリを回避されてしまった。こちらが攻撃に転じれる機会は少ないってのに!

 

「奇跡『白昼の客星』!」

 

早苗の両サイドからレーザーが照射されたかと思ったら別の弾が交差するように撃ってきているじゃありんすかー!?因みに客星というのは一時的に明るくなる星のことで、明るくなるのは近くの巨大恒星の爆発や彗星の接近などの別の光源によるものだそうです。ついでにあくまで一時的な明るさというのは宇宙空間でのことであり、早苗のスペルカードの白昼っていうのは1024年に現れた客星で1年と10ヶ月もの間、光り続けていたそうです~!以上、現場からでした!だから何でこんなの覚えてんの俺!?

 

「はぁ……はぁ……(体力を温存しとかないと……アイツの連続スペルカードは堪えるぞ!)」

 

「!(息切れ!チャンスだ!)」

 

早苗は霊夢の微かな隙を見つけるとチラッと自分の残りのスペルカードの枚数を確認した。今ここで必殺技連打すれば勝てるかもしれない……いや、まだ温存して置かないとまずい。霊夢は一度もスペルカードを使っていないのに比べ、こちらはもう二枚も使っている。

 

「……」

 

「……」

 

一時の沈黙が周囲を支配する。これは準備のための無……一瞬の瞬きにも近く、一回の呼吸にも等しい。その沈黙も次の瞬間には弾幕が魅せる光景が音の代わりにかき消した。

 


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