夢で、忘れた頃に   作:咲き人

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5.「急に、宣戦布告された頃に」

「宣戦布告です博麗の巫女!」

 

「すいません寝起きなんです帰っていただけませんか?そういう宗教的勧誘とかいいんで」

 

「ちょ、ちょっとまともに話聞いて下さい!」

 

ブンブンハ(中略)!はい!今回はモン○トの新モンスターの降臨の超絶級をやって……はっ!俺は一体……?あ、そうでした。朝起きて着替えて神社から出たら目の前に緑色の巫女がいて、宣戦布告吹っ掛けられたんだった。それでつい、現実逃避をして……な、何ィ!?ここは!?さっきまで見ていたy○utu○eは……!何を言っているのやら……私はここで宣戦布告しただけだ。

この一通りのネタを脳内再生できるということは俺はまだ正常だ。

 

「んで?誰よ」

 

「やっと本題入れる……私は『東風谷早苗』、外の世界から来た……」

 

「お茶入れたけど……いる?」

 

「入りません!というか、ちゃんと私の話を」

 

「折角二つ入れたのに……」

 

「い、いります!分かりました飲みますから!」

 

なんか話すと長そうな人だったからカルシウム足りないのかもと思いながら俺は彼女の話を遮ってでも落ち着かせようと、お茶を用意したから効果てきめーん!だ。カテキンで健康的になれるぞ!

 

「ごくごく……いいですか?私は……いえ、私達『守矢神社』の神は博麗神社の役目を譲渡してもらいたく、代表として私は貴女に会いに来ました」

 

博麗神社の役目の譲渡……恐らくは外の世界と幻想郷を繋ぐ結界の管理のことか……譲渡。ふむ、譲渡するメリットはこちらにない。そしてあちらに管理が行った場合、幻想郷は混乱を招く……のだろうな。だってこんな勢力が幻想入りしたんでしょ?やばばやん?

 

「丁重にお断り。まず、第一に幻想郷の賢者に話を通し、許しを乞いたかしら?」

 

「していません。ですが、私は博麗神社がなくても代わりとして守矢神社がその役目をきちんとしていれば賢者も納得するでしょう」

 

「随分と傲慢な考えね。だから外の世界で失敗したんじゃない?」

 

「……何ですって?」

 

「外の世界で失敗した。だって人は神を信仰していないし、神は人を信頼していない……あんたのその態度を見れば一目瞭然」

 

流石に煽りすぎたか早苗はぶちギレた。すくっと立ち上がると、先程の表情のままこっちをディスってきた。

 

「そんな貴女はどうなんですか!聞くところによるとこの神社に参拝客はおらず、倒すべき妖怪とお茶をして過ごす毎日らしいじゃないですか!人里の人間の信仰心も博麗神社に向けられてなんていなかった!信仰ない神とそれを祀る神社なんていらな……」

 

早苗がそこまで言いかけたところです俺も怒りモードにモードチェンジした。

 

「だからお前らがここに来た!それをこの神社と重ねるな!」

 

「っ!」

 

「信仰がない?だから要らない?そんなことあるわけない!……確かに神社はボロボロだし、信仰はないに等しく底辺かもしれない……でもね!人の信仰と人への信頼は(イコール)で繋がってる訳じゃないんだっつーの!」

 

早苗は何も言い返せなくなった。いえ、言い返させる隙は与えない……悪いがシミュレーションゲーム的にこのまま追い詰めさせてもらうぜ。

 

「この神社に信仰はなくてもこの神社は信頼されている。それをあんたに分からせることは面倒だからしないけど、私はこの状況を変えたくない。変えれば崩れる気がするから……あんたの言い分も分からない訳ではないけどね。キャリアも積んでいなければ、人里から超絶な信頼をされていることもないあんたらが、私を殺そうったってそうはいかないのよ!」

 

殺されるというワードを使うのは抵抗があったが、博麗神社が無くなる→博麗の巫女がなくなる→博麗霊夢の社会的死……といった感じで繋がってしまう。あの……怒りながら女言葉を使うというのが本当にしんどくて死んでしまいます。早苗さん、そろそろ心打たれて帰っていって下さいお腹すいたんです。

 

「……分かりました」

 

おお、ようやく……

 

「よろしいならば戦争だ!」

 

てめええええええ!ゾンビ兵の「クリーク!」連呼が無かっただろうが!それなのに何故その結論に至るのだ!くっ、早苗のボケにノリたい……!だが、ここでノったら正体がバレてしまう。

 

「霊夢さん!私が勝ったら先程の話の通りに、逆に貴女が勝ったら先程の話は無し!それに謝罪も含めます。ですからこの世界のルールでぶつかり合いましょう。守矢神社は妖怪の山の中腹から少し上の辺りにあります。そこまで来て下さい拒否権はありません」

 

拒否権下さい。まぁ、売られた喧嘩は買うだけだし?巫女ヤンキーJK的に。なんかチャラいな俺。

そして、早苗も言っていたこの世界のルール的戦争……『スペルカードルール』と呼ばれるもので、弾幕ごっこ(力をメテオにしてぶん投げるゲーム)で勝敗を決めるそうだ。昨日の夜に紫が話してくれた。その弾幕の中で必殺技があり、それがスペルカードとなっている。こういったのは全部霊夢が考案したらしい。ふむ、考案者に乗り移った俺に喧嘩を売るとは……お馬鹿かな?主に俺。

 

「ふふ、それじゃあぶっ潰してあげるで覚悟しててくださいね霊夢さん」

 

「あんたも今からその首から上が消えてなくなる覚悟で首洗って待ってろよ……!」

 

「ヒィッ!?」

 

なんか物騒なこといったらやばい奴だと思われたのかそそくさと逃げていってしまった。根はいいやつなのかもしれないが、ちょっと目の前で人の悪口を高らかに言われてこっちも苛立ちを隠しきれないのでお灸を据えます慈悲はない。

 

……さて、結局妖怪の山は初期の目的地だったし、早苗倒してから初期の目的を果たして……いや、途中で河童に強化外骨格作ってもらってから倒した方が確実やな。よし、霊夢のスペルカードってどこにあるのかなぁ……と、俺は再び神社内を捜索することにした。

 

 

 

私は少し思い違いをしていた。外の世界と幻想郷の文明レベルは大きく違う。故に人の進化もそれほど違うとそう考えていた……先程までは。だが、彼女に会って考えは覆された……世界が変わった、変わって見えた。博麗霊夢……私と同じ巫女で、同じ境地にいたと思っていた。人々からの信仰はない……元々外の世界は科学技術の発展に反比例して神や幽霊などの非現実的なものの信頼度は下がっていったから当然と言えば当然だった。私はそれを良しとするわけにはいかなかった。信仰なくして神は生きられないから……守矢神社の二神も消滅寸前だった。その時、八雲紫の幻想郷移住案を提案してきた。それに乗ってこの世界にきた。

 

「……私だって神なんだ」

 

私はそう自分に言い聞かせて自分を奮い立たせた。そう、私は人間で、巫女だった。でも今は神となった。現人神となったんだ。ただの巫女に……しかも貧乏巫女に負ける訳にはいかない!巫女として、神として……勝たなければ生き残られないんだから……でも、博麗霊夢は一筋縄ではいかないことは今日分かった。よく理解した。怖い……舐め腐っていたらとんでもない人物だと気付かされた。恐怖心が増大する……何を馬鹿な事を……私は神だ!ただの貧乏巫女の人間風情に負けるわけがない……負けたくない。

 

「私は……!幻想郷一の神になる!そうでなければ……再興なんてできやしない……!」

 

覚悟はあの巫女よりも強い。私の『奇跡を起こす程度の能力』は強い想いに反応する。私の意志が覚悟が強ければ強いほど私の能力と合わさり私自身が最強となれるんだ……二人の手を煩わせる訳にはいかない。これは私の戦いなんだ!

 

 

 

「よし、準備完了……初めての飛空体験……行ってみようか!」

 

お、おお!?……と、飛んでる!空飛んでる!?ジャンプしまくってたらなんか飛べたんだけど!イエーイじゃんこれ。俺やりましたよ。人でも飛べるんです!そう、幻想郷ならね!

 

「おーい!」

 

遠くから魔理沙一名入りまーす!どうした魔理沙、ご注文はスペルカードですか?喫煙席はお勧めしませんよ?ってそんなことはどうでもいいですね。魔理沙にも弾幕ごっこに参加してもらおう。だって、一人じゃ寂しいもん。

 

「実は魔理沙、かくかくしかじか」

 

「まるまるうまうまと……分かったぜ!私も手伝うぜ!あ、でもこっちも影に用事があるから早めに終わらせようぜ」

 

フラグかな?それにしても用事ですか……なんか分かったのか、手伝ってほしいことなのか。まぁ、どちらにせよ今回で魔理沙に貸し一つだな。

 

「よし、行くか」

 

「おう!」

 

俺たちはゆっくりとだが、一直線に妖怪の山へと飛んで行った。凄い、これが空を飛ぶ程度の能力……うむ、はっきり言って最高だなこれは……人が何の装置も使わず飛びたい時に飛べるようになる……時代は封じ込まれていてもここはやはり幻想郷。時代の先端は人々からすれば幻想の域だ。幻想郷に無いはずが無い。

 

ん?あっちに紅葉色の服を着た金髪のチャンネーいません?

 

「誰あれ」

 

「山にいる奴は大体妖怪だろ」

 

「失礼ね!私は秋の神!『秋静葉』よ!」

 

そう言ってこちらに近づいて来たチャンネーは茜色の上着に赤みがかったスカート。そのスカートの裾は楓の形に切り取られたのが連なっている。

ふむ、楓は秋だな確かに。なんか秋って話されると焼き芋食べたくなってきた。しません静葉さん、焼き芋にバター塗りたくった奴下さい。

 

「いやー、良い匂いね。焼き芋の匂い」

 

「それ私じゃなくて壌子の方ね、妹よ!」

 

「なら食べるなら妹の方か」

 

「そういうことだな!」

 

俺と魔理沙はそそくさと静葉の横を通りすぎようとすると、静葉は怒って通せんぼしてきた。まぁ、そりゃそうだよな。

 

「待てい人間ども!いくら秋っぽいからといっても神は神!」

 

ごめん、つかぬこと聞くけど秋っぽいって何?秋=神ってどういうことなの?

 

「人は神に供物を捧げる……これは昔からの習わしよ!巫女ならそこんとこ重々承知よね!」

 

「あー、うん。じゃあ供物として……」

 

俺と魔理沙は顔を見合わせる。そして互いに不敵な笑みを浮かべる。どうやら伝わったらしいな……よおし!

 

「「供物として弾幕を喰らって来な!!」」

 

「んな理不尽な!?」

 

二人で一斉に弾幕を放つ。ガードなんて間に合わない完全で完璧な不意討ちに静葉はどうすることも出来ずに、ピチューンというへんてこな効果音と共に墜落していく。若干可哀想ではあるが、悲しいけどこれ……戦争なのよね。ということで無慈悲に次へと進むのであった。

 

 

 

少し前……

私は自分の家に帰って来ていた。またの名を守矢神社に……焦っていた。何でか理由は分からない……ただ迎えに来てくれた二人がそう見えたと言っていた。

 

「妖怪たちがざわついている……そろそろ博麗の巫女が山に近づいて来ているか」

 

「それでー?どうだったの早苗?博麗の巫女は」

 

「ご心配には及びません『神奈子様』、『諏訪子様』。絶対に私が彼女を倒してみせます」

 

 

私の前にいる二神、それぞれ八坂神奈子様、洩矢諏訪子様だ。神奈子様はこの妖怪の山の神として、諏訪子様は土着神としてこの幻想郷に降り立った。だが、この山に人間は近づけない。妖怪たちを説き伏せ、微弱ながらも自分たちの力とするのが正直言って、今の精一杯の努力だった。

 

 

 

 

 

「よくもお姉ちゃんを~!覚悟~!」

 

所変わって影と魔理沙は静葉の妹、『秋壌子』と弾幕ごっこをしていた。3Dシューティングゲーム、しかも自機をジャイロ操作する形のものは初めてプレイするが、思いの外スムーズに弾幕を回避できている。まぁ、メタイ話だが1面ということもあって余裕があるのだろう。イマイチ当たりそうにない二人に対して壌子は遂に懐からある模様が描かれているカードを取りだす。

 

「もうあったまきた!」

 

「スペルカードか!」

 

「秋符『オータムスカイ』!」

 

発動されたスペルカードは消え、穣子の周りに赤と青の二種類の弾幕がまるで紅葉した落ち葉のようにひらひらと落ちてくる。地味に斜めから来る弾幕に動きを惑わされてしまう。……が、そこまでの量があるわけではなく、一度避けてしまえば次への弾幕には隙が生じる。そこに俺は紫が神社に書き置きと共にくれた札をぶん投げる。紫の書き置き曰く、「投げて当てりゃいいのよ!」だそうで……

 

「きゃあ!?痛っ!すっごい痛いんだけどその札!おかしいんじゃない!?なんで妖怪退治用の札で神が大ダメージを受けなきゃいけないのよ!」

 

「一ピチューンщ(゚Д゚щ)カモーン!」

 

「ふざけないでよ!豊符『オヲトシハーベスター』!」

 

本日2枚目のスペルカードは豊符『オヲトシハーベスター』!一体どんな商品なんでしょうか?おおっとーー!?これは光の柱のようなものをランダムにばら撒きつつ、細かい赤いスターフルーツの欠片を散らばせる商品だー!しかもしかも光の柱で大まかな回避ポイントを限定させて、複数のスターフルーツの欠片で完全に囲み倒すという計画性のある商品!こちらなんと!二セット+穣子特製焼き芋もつけまして!お値段!

 

「これで終わりだぜ!」

 

「ピチューン!」

 

おっと、俺が脳内で豊符『オヲトシハーベスター』という名前の商品紹介をしていたらいつの間にか穣子の近くまで弾幕を搔い潜っていた魔理沙が止めを刺し、先程と同じ間抜けというか気の抜けた音が鳴ってゲームは終了する。

 

「こんなんでいいのだろうか……」

 

何がとは言わないが俺は今日一日不安になってきた。

 

「よおしテキパキ進むぜー!」

 

「は~い……」




唐突に風神録編始動

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