夢で、忘れた頃に   作:咲き人

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久しぶりの投稿


episode1~ghost~
1.「俺、気づいた頃に」


━━━━━幻想郷。この世界の狭間にあると誰かが噂する幻の別世界。ただし、桃源郷のような夢のような世界ではなく、人々は妖怪を恐れ、この世界よりも命を賭けて日々を過ごしていた。江戸時代辺りで文明は止まり、それ以上の文明開化は人間好きの妖怪の手、無くしては積み上がらなかっただろう。人間と妖怪、それに妖精や神……私たちが今いる世界よりももっと互いが密接し、互いに依存し、幻想郷は成り立っていた。

誰かが言った。時代には争いを修める……時代を平定にさせる者が必要だと。幻想郷でも同じだ。度重なる異常事態を解決し、平穏を創る人間がいた。「博麗の巫女」と彼女たちは呼ばれた。

これは、その中でも歴代最高の天才と呼ばれた「博麗霊夢」の物語……ではなく。

 

 

「……ぅ…ん」

 

小さな呟きが物語を動かす歯車であった。むくりと一人の少女は体を起こす。まだ満月が沈んでいない夜中……重い瞼をこすりながら彼女は目が覚めた。

 

「……ここ、どこ?」

 

あれ?本当にわからないや。こんな布団で寝てたっけ?てか、畳の部屋で寝たっけ?ていうか『俺』……

 

「こんな声高いか……?」

 

ちょ、ちょっと待って!いや、誰も待たせてないし、急いでなんかいないんだけどちょっと待って!今、大ヒット映画が頭をよぎったわ!どっちかというと大ヒット映画の曲が脳内再生して、ずっとリピートしてるんだけど……!君の前前……やめろぉ!見たくない!見たくない!具体的に言うと、自分の体、主に胸部辺りが見たくない!でも、見なきゃいけないんだろうなぁ……

 

「……(チラ)。意外と大きい……じゃなくて!」

 

こ、これは筋肉ですか?こんな凸型筋肉初めて見たわ!いやでもそういう可能性は捨てがたい!唯一の救いよ来い!

 

「……(ムニ)……俺、死んだ」

 

ごめんなさい!この体の本当の持ち主よ、俺はどうやらあの映画のように憑依してしまったようです!どうする!?腕に「お前は誰だ?」って書くか!?いやなに原作再現しようとしてんだ俺!

 

「と、取り敢えず顔洗おう……洗面台どこだ?」

 

少女(男)は自分が知っているあり得ないことが自分の身に起きてパニックになったかと思ったら、冷静になって体を起こそうとした……が、

 

「い、った……ひ、左腕に包帯?痛い痛い!この子、殴られでもしたのかよ!?」

 

少女の左腕は肌が見えないぐらいの量、包帯が巻かれていた。左手を支えとしてに立ち上がろうとした彼は痛みで倒れてしまう。今度は右手で体を立て直す。

 

「よく見たら……ぼろっちい家……でも広いな。この子の名前まで同じだったらしまいには笑うぞ。いや、そうだとしたら隕石降ってくるわ」

 

冗談を口にしているものの、体中の寒気は止まる気配はなく、彼はゆっくりと立ち上がり家の中へと足を進めた。

 

「……現代感なし。完全に田舎だな……薪をくべて燃やして調理……時代背景は江戸辺りか?でも寝間着は江戸時代のものじゃないな」

 

おっと、桶に水が入っている。暗くて見えないが汲みたてて一日も経ってないだろう。俺は桶の中の水を両手で掬い、顔を洗う。冷たくて目覚めの気怠さが一気に吹っ飛んだ。では、さてこんな夜中だが、やることがある。まず、この体の女性は何者かということ。そしてきっと原作通りじゃないだろうから「元に戻る方法」を考えること。この二つだな。いや、なんか申し訳ない気持ちでいっぱいだわ……主にレディーの胸を触ったことだな。元に戻れたらぶん殴ってもらおう。人間としてやってはいけないことをやってしまった。そして……

 

「痛っ!……この包帯に隠れた傷だな!左腕がまともに使えん……」

 

左腕を上げることは出来ても手を一本一本動かすことが出来ない。出来てグーかパーだ。それもぎこちない……取り敢えず、この家について詳しく調べないと……こんな小さな女の子。と言っても16、7歳くらいの子でも一人暮らしとは思えない。寝ている他の住人がいるかも……

 

「……床が完全にぼろいな。こういうのは恐怖心を掻き立てるって聞いたことがあるぜ……」

 

ギシギシと音を立てて暗い廊下を歩く少女。男の元の体であったのならば泥棒を撃退することはできただろうが、今は幼気な少女。仮に男が空手や護身術を持っていたとしても筋力に差がありすぎるため、今誰かに襲われれば撃退することは困難を極めるだろう。まぁ、相手が幽霊だったらどうしようもないことに拍車がかかるわけで、彼は泥棒よりもそっちに警戒を強めた。

 

「というか、本当に家か?ここ……部屋っぽい場所が少ないな……そうまるであの、海に生息する生物を名前の元ネタにしたあの一家のような人数での暮らしは無いと見た!」

 

そんなこと言ってたら久しぶりに見たくなった。あの、明日って日曜日ですか?違いますかそれ以前にテレビがないですかそうですか……orz

 

「あ、待て……なんか俺は現実を見ているのか凄く不安になっている」

 

俺の目の前にあるのは、暗くてよくは見えないが、これは……確実に……「賽銭箱」じゃないか?だってその上にあのガランガランする奴あるもん!縄で鈴鳴らす奴あるもんよ!つまり、彼女が住んでいたのはボロい家ではなく、ボロい神社だったのか……?ど、どこの狐の神様が祀られているボロ神社で生きた人形ちゃんですか。入浴中に呼ぶのはいけないことだぞ☆ってボケかましている場合じゃないわ!

でも、結構よく見ると地面は整備されてるように見えるな。朝になれば恐らく参拝者か誰か来るだろう……それまで……お腹空いた。なんか作ろう……食材がちゃんとあるといいんだが……

 

彼はまた神社に戻った。

 

 

これは博麗霊夢の物語ではなく、博麗霊夢に乗り移った何も知らない男の話……

 

 




四日おき辺りに更新したい(願望)

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