世界はシャボン玉とともに(凍結)   作:小野芋子

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連続投稿。漸く書きたい話の一つが書けたぜ!


大体うちはのせい

五影会談。

各里の長にして、最高戦力でもある影を背負う五人の強者が集う場。中立国である鉄の国が進行を務め、主に平和に向けてを話し合う場でもある。

 

だが今回の会談は少し違う。

 

最悪にして最強の犯罪者うちはマダラ。彼が九尾を否、世界を手中に収めんと動き出した。

 

マダラの戦力は各里の総戦力すらも上回ると言われ、三代目火影曰く、渡り合えるのは初代火影だけ。それほどの脅威が動き出した今、最早小競り合いなどしている暇はない。一時的にしろ恒久的にしろ五大国が手を取り合うのは必然のことであった。

 

それは火影を除く四人の影も——その実力を目の当たりにした土影は特に——理解しているのか、会談は滞りなく進み何事もなく終わる筈だった。

 

話題の当人であるうちはマダラが現れるまでは。

 

再度言うがこの場には各里を代表する五影が集っている。言い換えるのならば、忍界の頂点が集う場でもある。にも関わらずマダラが口を開くまで誰も気づくことが出来なかった。

 

その事実に五影は戦慄し、同時にマダラは失望する。

 

「五影も落ちぶれたものだな」

 

明らかな落胆。期待外れということはない。なんせそもそもマダラは今の忍に何も期待などしていないのだから。だがそれでも、マダラの襲来を感知する者が誰もいない事実に何も感じない訳ではない。

 

はじめに動いたのは雷影だった。

 

歴代の雷影が得意とする【雷遁チャクラモード】を用い、全身に雷遁を纏った状態での高速移動からの右ストレート。

時空間忍術でも使わない限り決して避けられることのない光速に近い攻撃に対し、マダラもまた反応できずに直撃を受ける。

いや、正確には反応したからこそ躱す必要がなかった。

 

マダラの周囲を覆う青い骸骨のような存在。濃密なチャクラによって生成されたそれは、雷影の一撃を受けてなお罅一つ入らない。

 

そのあまりの防御力に目を見張る雷影、その一瞬が仇となり次の瞬間には骸骨の腕が雷影を薙ぎ払っていた。受け身も取れない一撃に、さしもの雷影も動きを止める。

 

「……ほう」

 

薙ぎ払い終わったその隙をついての四方向からの同時攻撃。

正面からは火影が。最も得意とする忍術【螺旋丸】を右手に生成し、左手には時空間忍術の術式が施されたクナイを持って。

 

右からは水影が。尾獣化させた右腕に膨大なチャクラを貯めて

 

左からは風影が。砂鉄で生成された塊を周囲に浮かせ、マダラに右手を向けて

 

背後からは土影が。血継淘汰の忍術【塵遁 限界剥離】を両手の平の間に作り出して

 

或いはこれが並の忍ならば四度死んでも足りないだろう。だが、残念ながらマダラは並などという生易しいものではない。

なんせ彼は忍の神とすら渡り合う男なのだから。

 

刹那轟音が轟く。時空間忍術によってすぐ様退避したミナトは急いで周囲を伺う。それは他の影も同様なのか誰一人周囲の警戒を怠らない。

 

「少しはやるようだな。だが、その程度だ」

 

そんな警戒を嘲笑うかのように、嘲笑が木霊する。

 

先程まで五影たち会談の際に囲っていた机。その上にまるで何事もなかったかのようにマダラはいた。

 

「安心しろ、俺は今日話し合いをしに来ただけだ。でなければお前らはすでに死んでいる」

 

その言葉が事実かどうかを確かめる術はない。だが、その言葉と同時に放たれた殺気が如実に物語っている。マダラはまるで本気を出していないのだと。

 

「さて、では早速だが本題に入ろうか。俺の悲願『月の眼計画』についてな」

 

 

 

 

月の眼計画

それは月に己の眼を投影する大幻術【無限月読】を発動させ、地上にいる全ての人間に幻術をかける禁忌の術。

幻術にかけられた者は術者のコントロール下に置かれ、生きた屍と化す。

ある意味で平和な、それでいて最低な計画。

 

だが、当然それを成すためには超えなければならない壁も少なくはない。その一つが

 

「全ての尾獣を捕らえるだと?」

 

計画のために不可欠な要素の一つ十尾の復活。

そのためには九匹の尾獣を媒体である外道魔像に封じる必要があり、逆を言えばそれさえ防ぐことが出来れば計画の大本を潰すことができるとも取れる。

 

ならば、希望はある。少なくとも水影と火影の目には希望の光が宿った。なんせ人柱力の中にはマダラと対等に渡り合えるウタカタがいるのだから。

 

その希望にめざとくもマダラは気付く。そして同時に思う、それは面白くない、と。

ウタカタは現代で唯一マダラが認めた忍。

それを希望の光とするのはまだ納得もいく。だがそれでもつまらない。取るに足らない忍達が一方的な希望をウタカタに押し付けるなど、我慢ならない。

 

故に薄く笑う。ならば壊せばいい。その希望を絶望に変えればいい。人を絶望させることなどマダラにとっては何も難しいことではないのだ。

 

「ウタカタならば俺をどうにか出来ると思っているようだな」

 

水影の視線が僅かに鋭いものへと変わる。他の影たちも実際にその実力を目の当たりにした者は少ないだろうが、その名を知らぬ者はいない。

皆の視線が一様にマダラに注がれる。

それを受けてさらに嗤う。

 

「お前たちに問おう。この忍の世界に、果たして俺の存在に気づくことができる忍がいると思うか?」

 

「何が言いたい」

 

幼い見た目にそぐわないドスのきいた声。水影の怒りを受けてマダラはさらに笑みを深める。

 

「今の忍界に、俺と渡り合える忍がいると、本当にそう思うか?」

 

何となく、察することは出来る。マダラが何を言いたいのか、何を言おうとしているのか。同時に、水影はそれが嘘だとも思っている。それでも沸き出る怒りを抑えることが出来ずにいた。

 

「戦争を止められるほどの強者が、仙術を身につけられるほどの強者が、尾獣をコントロール出来る子供が、本当にいると思うか?」

 

「俺の計画に気付き、尚且つ単身挑んでくるような忍が本当に存在すると思うか?」

 

「誰も師に持たずあれ程の力を得られると、本気でそう考えているのか?」

 

もう限界だった。沸き立つ怒りをそのままに、拳を握りしめる水影。

 

だが、少し遅かった。

 

「ウタカタは俺の部下だ」

 

沈黙だけが場を支配する。水影は怒り故に、他の影は衝撃すぎるマダラの一言故に何も言えなかった。

 

それを分かっていて尚マダラは続ける。

歪んだ笑みをその顔に浮かべて

 

「本来であればあいつには内側から崩して貰う予定だったが、貴様らを見て気が変わった。貴様ら程度態々策を弄する必要もない。圧倒的な力で蹂躙する方が早いだろう」

 

「巫山戯たことをぬかすなああああ!!!!!」

 

怒りのままに振るわれた拳がマダラへと向けられる。だが、五影が揃っても手傷一つ負わせられないマダラに通じる筈もなく躱すでもなく、防ぐでもなく受け止められる。

 

「巫山戯たことだと?ならば聞くが、お前はあの餓鬼が一人であれ程の力を得たとでも思っているのか?そっちの方が巫山戯ているだろ?」

 

「黙れ!!!!」

 

「俺は親切にも事実を教えているまでだ。まあ、信じる信じないは貴様らが判断することだがな」

 

言い終わると同時に水影を投げ飛ばす。辛うじて受け身はとっていたが、ダメージは少なくない。体ではなく、心の。

 

それを見て更に嗤う。ああ何と楽しいことか。希望を絶望に変えることは。

絶望を浮かべる弱者を見下ろすことは。

 

「俺の用はもう済んだ。俺にもやることがあるからな、そうだな。決戦は20年後、月が最も地球に接近する日。せいぜい踊るがいい。それまでに貴様らがウタカタ相手に生きていたらの話だがな」

 

次の瞬間には、既にその場には誰もいなかった。まるで初めから誰も居なかったように。悪い幻術にかけられたように。

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

「さて、どうする気だ」

 

初めに口を開いたのは歴代最強と名高い三代目風影。嵐が過ぎたかのような静かな空間で堂々と発言出来るあたり、その評価も間違ってはいないのかも知れない。尤も最強(マダラ)相手に手も足も出なかったことを考えれば、歴代最強など取るに足らぬ肩書きでしか無いが。

 

「そんなこと決まっておる、危険分子は早々に排除するべきだ!」

 

声を荒げるのは四代目雷影。只でさえマダラという危険な存在が待ち構えている中、それと並ぶかもしれない強者を同時に相手取るなど自殺行為でしか無い。

 

「じゃが雷影よ。マダラに手も足も出んかったワシらが勝てると思っておるのか?」

 

異を唱えるのは三代目土影。その発言は一見弱気にも見えるが、事実彼らが手も足も出なかったことを考えれば妥当だといえよう。

 

「ならば、20年後マダラとウタカタを同時に相手取るのが正しいとでも言いたいのか!!そうなれば今度こそ終わりだぞ!」

 

「そもそもウタカタがマダラの部下と決まったわけではありません」

 

同じく異を唱えたのは四代目火影。冷静に情報を整理した上で、実際に言葉を交わした彼だからマダラの言葉には疑問を持たざるを得なかった。

だが、同時にクシナから聞いていることもある。

 

九尾の力を半分以上持っていかれたと

 

クシナが見た限りでは友好的な関係を築いていたようにも見えたらしいが、マダラの部下であるというのなら幻術の類も当然持ち合わせている筈。

ならば何処までを信じていいのか、或いは初めから嘘だったのか。

少なくとも、火影にはウタカタの身の潔白を示すものはない。この場で唯一それが出来る者がいるとすれば。

 

「水影、貴様はどうするつもりだ?」

 

先程から何も喋らない、霧隠れの里長に雷影が問いかける。

 

「俺は、ウタカタを信じている」

 

その姿からまるで魂が抜けているようであったが、それでも強い意志を感じさせる声だった。

水影はウタカタを信じている。誰よりも何よりも信頼している。あの日涙を流した子供を、戦争を止めた英雄を、暇さえあれば話しかけてくる友を信じている。

 

けど

 

空白の1年

 

その間に何があったのか、水影は知らない。

 

ウタカタは言った。仙術を身に付ける為に修行をして居たと。

ああ、それは事実だ。確かにウタカタは仙術を身につけていた、尾獣の力を操っていた。それに湿骨林のカツユは悪い噂を聞かない善を体現した存在だと聞く。それを引き連れているということは、それだけで身の潔白を証明できる筈だ。

 

——本当にそうか?

 

一度湧いて出た疑心感はそうそう拭えるものではない。疑い出して仕舞えば全てが信じられなくなる。

カツユが操られていたら。そもそもカツユもマダラの協力者なのだとしたら。

あり得ないと分かっている。それでもマダラを見て感じさせられた。

 

あり得ないなどあり得ないのだと

 

五影が揃って手も足も出ない存在など居る筈もなかった。だが、事実いた。この世の理すら嘲笑い破壊する絶対的強者が。

 

(それでも、あの笑顔が、あの涙が、嘘だとは思えない!!)

 

「俺はウタカタを——」

 

「別に貴様がどう思おうと構わんが、貴様、ウタカタを庇って民を犠牲にする覚悟はあるのか?」

 

信じている、そう続ける筈だった言葉は風影によって遮られる。否、影という立場が、やぐらの発言を許さない。

 

今ここでやぐらがウタカタを庇うのは簡単だ。だが、そうなればまず間違い無く戦争が起こる。

五大国間での戦争ではない、水の国と他四つの大国でだ。

そうなれば、幾らのウタカタとてどうにも出来ないだろう。いや、それ以前に、きっとウタカタはやぐらにそれを望まない。

 

ウタカタを庇って戦争になるくらいなら彼はきっと喜んでその身を晒す。ウタカタはそういう男だ。

 

最早水影に言葉はない。覆すコマも持ち合わせてはいない。あるのは信頼という形のない脆いものだけ。

 

その場に一人の忍びが乱入してきた。額当てを見る限り木の葉の忍。息も絶え絶えな様子から余程急いできたことがうかがえる。

 

「報告します火影様!六尾の人柱力であるウタカタが、うちは一族と交戦している模様!膨大な六尾のチャクラを感知班が感知したとのことです!」

 

それはある種の死刑宣告。この報告が何を意味するのか、分からぬ馬鹿はこの場にはいないだろう

 

「決まりだな。ミフネ殿、一応決を取ってくれ。後々になって文句を言われても困る」

 

木の葉の忍の報告も、風影の突き離すようなセリフも、もう既にやぐらの耳には届いてはいなかった。

 

「それではここに、中立国である鉄の国頭領ミフネが決を下す。

水の国霧隠れ。二つ名霧のウタカタを世界に牙を向く凶悪犯罪者として処分する

異論はありますまいな?」

 

やぐらは一人、無力な自分を呪った。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

そこは何処かの地下空間だろうか。木の根が壁を這うその空間で笑みを浮かべる者が一人。

 

「マダラ様〜、どうしてあんな嘘を?」

 

全身が白い生物——通称ゼツが間延びした声でマダラに声をかける。その内容は先の会談でのマダラの発言について。普段の冷静沈着なマダラからは考えられないその行動に疑問を感じていたのだ。

 

対してマダラはどうでもいいことのように、それでいて楽しげに返す

 

「実際にこの目で五影を見てわかった。アイツらがどう足掻こうと俺の足元にも及ばないとな。同時に、あんなぬるま湯にいてもウタカタは強くはならない」

 

だからこその救済処置だと、邪悪な笑みを浮かべて。

 

「忍達はウタカタと戦うことで、ウタカタは世界を敵に回すことで、お互いを高め合っていくことだろう」

 

「けど、それでウタカタが死んじゃったらどうするの〜?」

 

その質問になんだそんなことかと

 

「だとすればその程度の男だったというわけだ」

 

ウタカタは必ず生きて、戦場で相見えることを確信してマダラは笑う嗤う。

 

「それとマダラ様〜、どうやら長門がウタカタと接触しようとしてるみたいだよ〜」

 

「……ほう。そうか、それも面白いな」

 

今の——穢土転生体のマダラではウタカタに勝てないことなど火を見るよりも明らか。だからこそ、生身の人間に戻るために長門が——輪廻眼は必要である。死すらも超越する外道【輪廻転生】を発動させる為に。

だが、それは矛盾だ。長門がウタカタに接触しようとしている今、長門を手に入れようとすればウタカタとぶつかるのは必定。そうなればマダラは勝てない。少なくとも今の状態では。それにウタカタと戦うのはあくまでも20年後、戦場でだ。

それ以前に刃を交えるのはマダラの望むところではない。

なら

「長門はウタカタにくれてやれ。輪廻転生以外にも蘇る術など幾らでもある」

 

もっともその為には膨大なチャクラと時間が必要だが、幸運にもマダラにはまだまだ時間がある。穢土転生体によって得た尽きることのないチャクラも。

 

問題が一つあるとすれば

 

「ゼツよ、弟達の目を回収してこい。なに、全ては平和のため、アイツらも分かってくれる」

 

輪廻眼が再生出来ないことにあるが、マダラは一度開眼した男。加えて彼の周囲には柱間の細胞を持つゼツが山のようにいる。新たに開眼することも不可能ではない。

 

「ああ、今から楽しみだ。お前もそう思うだろう?ウタカタァ」

 

狂ったように、マダラは笑う、マダラは嗤う。




マダラ「いやーええ仕事したわー」
果たしてこれに対して主人公はどんな対応を取るのか⁉︎




どや?この展開は予想できひんかったやろ(エセ関西弁)
感想欄見ながらまだまだ甘いねーと嘲笑っていた性格の悪い作者です。
さーて崩壊していく崩壊していく♪

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