魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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ひなたが140前半の身長でシャーレイが140後半の伸長。しかしひなたは成長がとっくに止まってシャーレイは成長期の模様。

あと、シャーレイは身長の割には胸が大きいです。ひなたは絶壁です


第四魔弾

 安宿は、案外近くに見つかった。

 スラムから出て、少し歩いた場所に、少し寂れたような宿があり、朝夜の飯がついてるのにも関わらず、かなり安い値段で部屋を借りることが出来た。ひなたは態々ツインべットの部屋を借りるのも無駄に金がかかるため、食事だけ二人分を頼んで一人部屋を二人で使うことにした。

 部屋はかなり狭いかと思ったが、結構広く、二人でもそんなに窮屈な思いをせずに過ごせそうだった。それに、ベッドもひなたがかなり小柄である事から、枕が一つでも狭すぎて枕の争奪戦になる、という事は無いだろうと予想もできた。中々いい宿を見つけることが出来た。

 

「シャーレイ、後で服を買いに行くよ。流石に下着丸出しはマズいから」

 

 主に、ひなたの理性的な問題で。

 シャーレイは女同士なんだし、気にすることはないんじゃ、といった顔をしていうるが、ひなたの心はまだ男のままだ。いつ発情してシャーレイを押し倒しにかかるか分からない。

 

「でも……ひなたちゃんに服まで買ってもらうのは……」

「駄目、買うの。どうせ、迷惑だから盗んでくるとか言うんでしょ?」

 

 今、シャーレイに盗みを働かれたら、ひなたまでしょっぴかれる可能性が出てきてしまう。やっていなくても保護したのなら、責任を持てと説教をされる可能性がかなり高いため、彼女の生活費もひなたが出さなくてはならない。実に面倒だし金がかかるが。

 だが、拾ってきてしまったものは仕方がない。彼女の身の回りの世話と衣食住の確保はひなたがやらなくてはならないだろう。そう思うと、情報屋に行くための金が飛んでしまうのが実に勿体なかった。

 情報屋から情報を買うための金は馬鹿にはならない。それこそ、ちょっと贅沢な生活を一週間送れる位には金が飛んでいく。しかも、ひなたが求めている情報なら、きっと郊外に家が建つ位は必要かもしれない。今のひなたの全財産は丁度それくらい。情報屋に行ったらお財布がすっからかんになる可能性が高い。そこから安物の服やらの代金を差っ引いても雀の涙程度しか減らないが、そこからひなたは旅の路銀等も稼がなくてはならない。そして、宿にも五日以上泊まるのなら追加料金も払わなくてはならない。それに、昼食代も出さなくてはならない。これでは駆除にかなり力を入れないと情報屋のための金がガリガリ削れて行ってしまう。

 魔力をかなり使った後遺症故かかなり思考回路が纏まっていないが、ひなたは情報屋へ持ち込む予定だった金を詰め込んだ袋から金を幾らか取り出し、個人用の財布にそれらを突っ込むと、それをシャーレイに投げ渡した。

 

「えっ、えっ?」

「それ使って必要な物買ってきて。ボクは一旦寝て魔力回復させるから。あ、髪を軽く結ってくれない?」

 

 シャーレイの前で眠るのは少し不用心すぎる気がしないでもないが、荷物を盗まれたらジェノサイドバスターでお仕置きをするだけの事だ。戦闘能力がないシャーレイに対して警戒なんて殆どしない。

 無駄に伸びてきた銀色の髪をシャーレイに頼んで軽く結ってもらい、ひなたは色々と入った鞄をベッドの脇に置いた。

 

「うん、いい感じに纏まってる。じゃ、シャーレイはお風呂にでも入ってきてから服買ってきてね。寝間着も含めて」

「な、なんか凄い申し訳ないんだけど……」

 

 それでも、ひなた本人が言って居るのだから、シャーレイが口を挟む事は出来なかった。もうひなたは魔力不足から来る眠気でかなり意識が朦朧としているらしく、シャーレイがいるのにも関わらず着替えを始める程だった。太腿に着けた起爆銃の収められたホルスターまで外している始末だ。

 シャーレイは少し困惑してからひなたの財布を片手に部屋の外へとタオル片手に出て行った。

 

 

****

 

 

 目が覚めたひなただが、かなりマズい状態だった。

 腕の断面を隠すことなく、上半身を隠すことなく起き上がらせ、片手で頭を抱えるひなたの現状は傍から見たら勘違いされても全く可笑しくないという状況だった。

 

「な、何これ……朝チュンならぬ夕チュン? いやいや、まさかそんな……いや、魔力不足の状態で本能的に動いた可能性がワンチャン? いやいやいや……」

 

 その状況は、正しくひなたの言った通りだった。これが朝なら朝チュンと言われるような状況。

 ひなたが全裸でベッドに潜り込んでおり、その隣ではシャーレイが寝ている。それも、全裸で。どういう状況かと言われれば、最早事後としか言いようがない。ひなたの体は結構汗で気持ち悪い事になっているが、それがひなただけの汗かと言われると確固たる自信を持って返せない。

 よく少し前の事を思い返してみると、ひなたはシャーレイが外に出て行ったあと、着替えるのすら面倒になり適当に服を脱ぎ散らかして寝たのを覚えている。が、それだけだ。それだけしか覚えていない。

 確かに、服を脱いだ時に下着も纏めて脱いだ気がしないでもないが、よく覚えていない。

 己の恥部に手を当ててみたが、濡れた感触はない。が、乾いたと言われればもうそれまでなのだが。

 取り敢えずどうすべきか。この状況をどうやって切り抜けるべきか。どうやったら切り抜けれるのか。

 

「まず服を着ます」

 

 そう、ここからだ。まずは服を着ることから始めないといけない。隣に寝る少女に視線を落とし、一瞬ドキッとしてからベッドから降りる。やはり、まだ男としての意思は残っている。しかし、立ち上がって下を見ると足元までをストレートに見える自分の体に何となくの虚しさを覚えてしまう。

 貧乳回避出来るからいいもん、と自分に言い聞かせてから脱ぎ散らかされた服を拾うため、しゃがみこむ――ところで後ろで全裸のシャーレイが目を覚まし、上半身を起こした。

 

「ふあぁ……あれ、ひなたちゃん?」

「え、えっと……」

 

 ヤバい、もう隠ぺいが不可能だ、となってしまい、ひなたは急いで手探りで下着だけを探し出すと、目を擦っているシャーレイの隙をついてちゃちゃっと下着を身に着け、ついでに太腿にホルスターも着け、緩いシャツも着た。

 

「あ、あのさ……な、何で全裸で寝てるのかな?」

「……ひなたちゃんが裸で寝てたから、そっちの方がいいのかなって」

「あ、あぁ……そう……ボクが暴走した訳じゃないんだね」

 

 安心した。間違いを犯していなかった事に。濃厚な百合の花が咲き乱れていないことに。

 それに、よく見れば椅子の上にシャーレイのであろう服がキチンと畳まれて置かれている。ひなたが無理矢理脱がせたのなら、もっと酷い状態で服が散乱しているはずである。よく考えれば分かった事なのに錯乱してしまったのは朝チュンへの耐性の無さ故か。

 改めて部屋の中を見てみると、シャーレイが買ってきたのであろう服が壁際に寄せてあり、一旦外に出て服を買ってきたのは明白だった。昼前にこの宿に入り、今が夕方なのでひなたは数時間ぐっすりと寝ていたことになる。きっと、シャーレイもひなたが起きるのを待っていたら眠くなってしまい、そのまま寝てしまったのだろう。ひなたの真似をして全裸で。

 

「……取り敢えず、全裸で寝るのは止めよう? これはボクがボーっとして全裸になっちゃっただけだからさ……」

「うん……?」

 

 寝起きはかなり弱いのか、シャーレイはかなり眠そうだ。

 その姿を見ると、ドキッとしてしまう。それに、上半身を上げたことによって曝け出されてしまったシャーレイの双丘が目に入ってしまい、心臓がかなり早く動き始める。きっと、ひなたの顔は真っ赤になっているだろう。シャーレイの畳まれた服の中から下着を探し出してポイッとシャーレイに投げた。

 

「わぷ」

 

 下着を投げられたシャーレイはそれが何かを理解すると、モソモソとそれを着け始めた。全く、理性に悪い。

 ひなたも自分の鞄の中からシャツとショートパンツを取り出すと、それを着て完全にリラックスモードになった。いつもローブの下はもう少し動きやすい白色の服を着ているのだが、その時もショートパンツを着ているため、何気にスカートはそんなに履かないのがひなただった。というか、ホルスターを太腿に着けるスタイルで起爆銃を携帯している以上、ショートパンツかスカートの二択になってしまっている。

 スカートなら起爆銃を隠す事も出来るが、男としての最低限のラインがスカートは履かないという事と決めていたため、スカートは履かずにショートパンツを履いている。スカートを履いたら、男としての何かが終わりそうだ。生足をかなり晒すショートパンツも恥ずかしい事には恥ずかしいが。

 

「そんなに無警戒だとボクの理性が外れるかもしれないからやめてね……」

 

 鞄の中からとある物を取り出してひなたはそうシャーレイに忠告した。が、シャーレイはそれを聞いてもきょとんとした顔を浮かべるままだった。

 そして、シャーレイが爆弾を投げつけた。

 

「私はひなたの言うことなら何でもするって言ったし、何されても文句言わないよ?」

「げっふぉ!?」

 

 思わず咽た。ゲホゲホと気管に入った異物を取り除くために咳を何回かしてから、ひなたは手に持っていたそれを改めて口に咥えた。

 

「あー……ホントに理性持つかなぁ、これ」

 

 咥えた物にライターで火をつける。そして口の中に入ってくる煙を味わいながら、肺に溜まった煙を溜め息を吐くかのように吐き出す。

 そう、ひなたが鞄から取り出して火を付けたのは、日本でもよく見た紙で包んだ煙草だった。気持ちを落ち着けたい時に吸うそれだが、何やかんやで煙草の煙を吸うと落ち着くのは確かだった。

 

「……煙草?」

「んー? あぁ、つい数か月前からね。吸い始めたの」

 

 煙草の煙を肺に入れる事がかなり心を落ち着けてくれる。だが、視界の端に写るシャーレイが少し慌てているような気がする。

 

「ふぅ……何?」

「え、えっと……子供が煙草吸うのは流石に……」

「あー、ボクこれでも二十歳だから。成人してんだよね」

「えぇ!?」

 

 息を吐くとともに煙が口から吐き出される。煙草を吹かしているだけでかなりストレスを忘れる事ができる。この世界の煙草はそこまで高くはないため、結構気軽に手を出すことが出来た。日本に帰れた場合、この煙草の味を忘れられるのか、禁煙出来るのかは不明だが、今は今だ。煙草を吸って吐くことでそんなマイナスな事を忘れる。

 そんな癒しタイムに浸っていると、やはりシャーレイの視線が気になった。服はちゃんと着ているが、やはり外見はシャーレイよりも年下なひなたが煙草を吸っているのは、やはり違和感があるようだ。

 教育的にも悪いから吸うのを止めろ、と言われるのかも知れないが、知ったことか。煙草は嗜好品だ。

 

「……驚いた? こう見えても合法なんだよ?」

「う、うん……年上だったんだ……」

「身長低いし胸も無いからね。まぁ、ボクも名前しか明かしてなかったし、勘違いしても仕方ないよ」

 

 そんな身体的コンプレックスによる自虐すら簡単にしてしまうほど煙草を吸うのは気分は良かった。

 結局、その日は何時もは一本しか吸わない煙草を二本も吸ってしまった。 




実は喫煙者だったひなたさん。外見はロリなのに喫煙とかいろんな意味でマズいですよ!!

けど、急に天涯孤独状態になって見知らぬ地にTS化させられてポイされたら煙草吸ってストレスを紛らわせない限り何時か壊れると思うんだ

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