魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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ルナと温泉を出てから


第三十四魔弾

 ルナと共に温泉を出てから。既に子供にとっては夜遅いと言える時間だったため、ルナとシャーレイは二人で寝るための布団を先に敷き、二人で既に就寝していた。ひなたも最初はもう寝てしまおうかと思ったが、中々寝付ける事が出来ず、結局は煙草と酒を手に端に寄せた座椅子に座って偶々見える窓の外を見ながら酒を飲んでいた。

 月見酒は乙なものだ。何となくそれを感じながら呆然と窓の外を見続ける。二人の寝息と外の月を肴に飲む酒は何処か美味しく感じ、しかし寂しく感じた。

 ルナの言葉。それを聞きひなたは自分を諦めるなと……自分に対して卑屈になるなと言った。それに関しては全面的に受け入れなければいけないだろう。そうしないと、多分ひなたは何時か壊れる。シャーレイという拠り所に全てを預けてしまい、ひなたはもう人として終わってしまう領域にまで足をズブズブと入れ込んでしまうだろう。というか、その領域にもう片足突っ込んでしまってるのだから手遅れ感はあるが、それでもまだ全てを依存せずにはいれている……気がする。もう手遅れかもしれないけど。

 自分を諦めないこと。それを胸にこれから先を生きていく。それがどれだけ難しい事か分からないが、自分が求めるハッピーエンドを常に追い求める。ひなたとシャーレイが生き残り、その周りも出来るだけハッピーエンドであり続ける。なんとも難しい注文だった。だが、それがルナの遺言のような物になるのなら……それを胸に刻み込んで生きていこう。自分とシャーレイの幸せのために。

 

「……シャーレイにはなんて言うべきかな」

 

 だが、その前に一個だけ壁がある。 

 シャーレイに、ルナの事をどうやって説明するか、だ。これを説明できなければシャーレイはルナを離すことは無いだろう。話したとしても、何でそんな事を黙っていたのかと怒るだろう。

 ひなたはシャーレイの悲しむ顔が見たくなかった。言う度胸が無かった。信じ切る事が出来なかった。だから、シャーレイに温泉から戻ってきても言うことは出来なかった。こんな事言ったら幻滅されるかもしれない。そう思うけど……そう思ってしまうから、言うことが出来なかった。

 まだ、弱いままだ。シャーレイが傷つく事を怖がり……それ以上にひなた自身が傷つく事を恐れている。自分が大事な余り、度胸が出ない。

 許してくれるかな。そんな不安が胸の中に募っていき、酒を飲む速度が上がっていく。気づけば、普通よりも小さな酒瓶はもう残りが殆どなく、残り一口程度になってしまっていた。顔と身体の火照りも確かにいつもより酷い気がする。これは一旦寝て、明日シャーレイに全てを打ち明けた方がいいかもしれない。そう思い、ひなたは最後の一服として煙草を咥えた。

 

「……ひなたちゃん?」

 

 そして、ライターの火を付けた所でシャーレイが起きた。彼女は寝ぼけ目を擦りながら煙草を咥え顔が真っ赤なひなたを見ている。

 

「……起きちゃった?」

「うん……」

 

 きっと、布団が初めてで自然と目が覚めてしまったのだろう。仕方ない子だな、とひなたはライターの火を消して咥えていた煙草を箱の中に戻す。

 その様子を見たシャーレイは小首を傾げながら上半身を起こしてまだハッキリとしていない意識のままひなたの方を見ている。その視線に困ったような笑顔を浮かべながらひなたはシャーレイの隣まで移動し、シャーレイの体を軽く押さえつけて再び布団の上に転がらせる。

 

「寝てていいよ」

「……んぅ」

 

 最早人の言葉を発していないのに笑いを堪えながらも寝ころんだシャーレイの頭を撫でる。

 

「……大丈夫だから、大丈夫」

 

 それは、自分に対しての言葉だったのかもしれない。シャーレイに向けるという体裁を保った嘘偽りの言葉それを発しながらもシャーレイの頭を撫でていく。

 シャーレイの寝ぼけ目が再び閉じかけた時。ひなたの左手が……左手のあった場所が疼いた。

 

「だい、じょうぶ……」

「……ひなたちゃん?」

 

 そして、その疼きは徐々に痛みへと変わっていき、耐え難い痛みが左手から発せられる。

 幻肢痛だった。一年前のあの日から絶えず夜に起こるもう無い筈の左手の痛み。昨日は寝ていたため、幻肢痛をスルー出来ていたが、こうして起きていては幻肢痛はどうしてもやってきてしまう。何時もなら素面で誤魔化す事も出来るそれだが、酒で心の内側が出やすくなっている今は違った。

 痛みに耐える事が出来ず、左手の断面を抑えながら蹲る。あの日、剣で左手を切断された痛みが熱さと疼きで思い出すことを強制され、その痛みに顔を歪めて息を荒げて転げまわっても痛みは止まるどころか増していく。回復魔法も意味をなさないそれはただひなたが痛みに何分も耐える事でしか消えることはない。

 

「ひ、ひなたちゃん? もしかして、幻肢痛?」

「う、ん……」

 

 荒い息を隠しながらも、しかし隠しきれずにシャーレイに打ち上げる。

 最初はどうしようかとシャーレイは寝ぼけた頭で考えていたが、すぐに何かを思い出すと自分の浴衣を軽く肌蹴させた。何を、とシャーレイの行動に回らない頭で疑問を持ったが、すぐにひなたに何をさせようとしているのかが理解できた。

 

「血、吸って?」

「い、いの……?」

「何時もの事でしょ? ほら、ルナちゃん起きちゃうかもしれないから」

 

 シャーレイの頭はもう普段通りに回転していた。それ故に、ルナを起こさないように小声でひなたに吸血をするように言うと、蹲らせていた上半身を起こしたひなたを抱き寄せて自分が下になるように押し倒させた。

 いつもの吸血の光景。ひなたの長い銀髪がシャーレイの顔にかかり、くすぐったさを覚え、ひなたの荒くなった吐息がひなたが発情して襲い掛かってるようにも見えてしまい、シャーレイの何処とは言わないが、下半身のとある部分が疼く。

 何となく、シャーレイは自分も興奮しているように思えてしまい、軽く顔を赤くする。だが、ひなたはそれに気付かずにシャーレイの首元に顔を埋める。そして、首筋にくすぐったさを覚えて数瞬。ひなたの犬歯がシャーレイの首筋の皮膚を突き破り、体の中に入って吸血を始める。それと同時に感じた痛みはすぐに快楽へと変わり、血を吸われる事に快楽を感じ始める。

 

「ん……ぁっ、ぁぁ……」

「ふーっ…………はぁ、ちゅっ……」

 

 シャーレイの小さな喘ぎ声が漏れ、ひなたの息を荒げながらもシャーレイの首筋に口づけをする音が小さく響く。それが何分か。シャーレイの下半身が次第に疼き、ひなたの痛みが収まってきて。

 ひなたが自ら首筋から顔を離し、再び髪の毛の先がシャーレイの顔と体にかかる。ひなたの顔は酒によって赤くなり、瞳は吸血によって赤に。シャーレイの顔は吸血によってもたらされた快楽によって上気している。その状態で見合っていると、ひなたの方が先になんとなくの恥ずかしさを覚えてしまう。

 

「……ご、ごめんね」

「……」

 

 恥ずかしがるひなたとそれを無言で見つめるシャーレイ。その瞳が何を思っているのかはわからないが、ひなたは何となく居心地の悪さを感じる。

 

「す、すぐに退くから。おやす――」

 

 体を持ち上げ。シャーレイの上から退こうとした時。

 ひなたの体がシャーレイの手によって押さえつけられ、ひなたがその力に負け倒れかける。そして、シャーレイの体がそれと同時に動き、二人の位置が一瞬にして逆転する。

 

「……えっ?」

 

 ひなたの顔が間抜けなまでに困惑に包まれる。対してシャーレイの顔は赤くなっており、ひなたの酔っ払いの目とは別に、なにやら危険な……淫蕩を孕んだような眼をしていた。

 その視線と現在の位置関係。なんとなくだがヤバいのではないか、と思ってしまう。主に体的な意味で。それに恥ずかしさやら妄想やらが絡まってひなたの顔が酒とは別の物で赤く染まっていく。こんな歳になって六つも年下の少女に押し倒されてこんな顔を赤くするのは何となく恥ずかしさの他にも色々と感じてしまうが、そんな妄想も次に出てきたシャーレイの言葉で考えられなくなってしまう。

 

「――私ね、吸血の後ってずっとムラムラしてたの」

「は、はい?」

 

 それって、どういう事? と思ったのも束の間。シャーレイの手がひなたの胸元を伝って浴衣の中に入ってくる。

 

「あ、あの、シャーレイさん?」

「欲求不満の解消に付き合うって私言ったよね?」

「い、言いましたけど……」

 

 何となくシャーレイが怖くて敬語になってしまう。だが、今のシャーレイにとってはそれは些細な事らしい。シャーレイの手が下着にも包まれていないひなたの胸を優しくまさぐる。だが、それにひなたの頭がついていかない。

 

「……つまり、私の欲求不満の解消に付き合ってもらってもいいよね?」

「しゃー、れい……?」

「正直、もうムラムラが限界なの。ひなたちゃんだってそうでしょ? 欲求不満で変なこと言っちゃうくらいに」

「そ、そうだけど……こ、怖いよ?」

 

 そっと抜け出そうと腕を動かす。が、シャーレイが手首を掴んで体重の何割かをかける。それによってひなたの体が固定され、足を動かしても体が動くことなくシャーレイの思うがままの状態になる。

 シャーレイの視線に変な笑いが出て、身体の危険……というよりも、貞操の危険のような物を本能がビンビンに警告してくる。が、現状をどうにかする手段なんてなく、シャーレイに胸を揉まれてそれによる気持ちよさを感じてしまっている自分がいる。

 

「……食べちゃうね?」

「ま、待とう! 一旦落ち着こう!!」

「もう無理。待てない。ひなたちゃんよりも私が限界」

「我慢して! ね!? シャーレイだって勢いだけで済ませるのは嫌でしょ!?」

「大丈夫。ひなたちゃんの欲求不満も解消してあげるから」

「全然大丈夫じゃないんだけどぉ!!?」

 

 真っ赤な顔の二人。片方は顔が完全に発情していて片方は満更でも無いけど恐怖によって顔が軽く引き攣っている。

 ひなたの微かな抵抗はシャーレイによって力づくでねじ伏せられ、ルナはそっと内風呂へ離脱し……夜は乱れて更けていく。




続きは日付変更と同時に公開されるR-18verの方で

別に見なくても大丈夫なように次の話は書きますので二人の濡れ場とかシャーレイの本質とかひなたの本質とか色々と見たい方だけはそちらへ

ただ、R-18の小説って書くの初めてなんで楽しんでもらえるかは分かりませんけどねw

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