魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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書き溜め尽きそうだから急いで書き上げているけどテストとレポートの二つの壁が書く時間をゴリゴリ削っていく……助けてドラ○もん……一日を三倍くらいにする装置出して……


第二十六魔弾

 ひなたは現世からさようならした筈だったが、気が付いたら現世に復帰していた。肉体に戻ってきた意識で体を動かして目を開けると、心配をそのまま表したような表情を作ってシャーレイが寝ているひなたを覗き込んでいた。一瞬天使かな? なんて思ってしまったが、すぐに正気を取り戻した。

 

「……おはよう、シャーレイ」

「よ、よかったぁ……生きてた……」

 

 八割くらい死にかけてたけどね、と言いかけたがシャーレイの安心のために黙っておくことにした。

 が、何で生きているのかは自分でも不思議だった。シャーレイに抱きしめられアバラが全滅した筈なのにこうしてまた生きている。しかもアバラが再生しているなんて有り得ないとしか言えなかったが、ミラと呼ばれた少女が飲ませた秘薬と呼ばれる薬の効果なのでは、と考えると一応この状況に説明がついた。

 あの秘薬はリジェネ効果を持っているのではないか、と。回復魔法はその時点で負った怪我だけを治す魔法だが、もしもあの秘薬が再生効果を一定時間付与するリジェネ効果を持っているのだとしたら、この状況にも納得がいく。

 これに関しては感謝しなくてはならないかもしれないが、現状ミラは敵でしかない。秘薬を飲ませてくれた事には感謝しなければならないのかもしれないが、素直に礼を言う事は無いだろう。

 

「そう簡単には死なないよ。それで、今朝保護した子は……」

 

 聞きながら周りを一通り見ると、馬車の壁際で寝かされている子供を発見した。胸が上下に起伏している事からちゃんと生きているのは分かる。が、あの様子だと一回も目が覚めていないだろう。相当疲れていたのか眠かったのか。そのどちらかだ。

 

「あの子、ちょっと魘されてて……お母さん、お母さんって何度も呟いてて」

「親とはぐれた? それとも、さっきの二人組に……」

 

 殺されたのかな。その言葉は口から出る事は無かったが、シャーレイには伝わった。

 そうかもしれない。あんな歳で、親を失い一人で逃げてきたのかと思うと、同情や哀れみを覚えてしまう。が、まずはこの子から色々と聞いてみない事には始まらない。これから先はあの子が目が覚めてからだ。

 シャーレイがひなたの元から離れて子供の元へ向かい、眠っている子供の頭を持ち上げて自分の膝の上に乗せた。それがヤケに様になっていたのは謎だが、ひなたは死の淵から生還したばかりなので移動するのも怠く、馬車の壁を背にしてシャーレイと子供の反対側に座った。

 

「……この子の持ち物を漁ってみたら財布があったんだ。それで、失礼だったけど中を見たら、名前と歳だけは分かったんだ」

「親の名前とかは?」

「分かんなかった」

「本人の情報だけか……」

「うん。名前はルナ・スプラウト。歳は九歳で女の子だって」

「九歳……」

 

 そんな歳で命を狙われている。一体どんな人生を送ってきたのか皆目見当がつかない。が、分かるのはこの子……ルナが何かしら人とは変わっている特殊な人間だという事。もしくは、何かの秘密を握ってしまった子だという事だ。

 親とははぐれたのかそれとも死別してしまったのかは不明だが、なるべくすぐに親の元に届けなければ親も心配しているだろう。だが、もし死別してしまっているのだとしたら、どうすればいいのかひなたとシャーレイには分からない。少なくとも温泉街から帰るまでは保護はしておいてその間に母親が見つからなかったり情報が集められなかった場合は公的機関のお世話になるしかない。

 

「取り敢えずは起きるのを待とう。ボク達に出来る事は今は少ないから」

「うん、そうだね……」

 

 子供を見捨てるなんて出来ない、という人としての良心がルナを保護するという結論を導き出しているが、守れるという保証はない。

 またミラが襲ってきた場合は多分、守り切れない。彼女が少し本気になれば吸血した時のひなたであろうと秒殺してルナを殺すという事を簡単に成せる。そう考えると彼女を公的機関に預けるのが一番いいのかもしれないが、もしもミラが公的機関が相手だろうと容赦をしない人間だったらルナは確実に殺される。そうなると、温泉街から出ていくまでの間だが、時間を稼げるひなたとシャーレイの元の方に居た方がまだ余計な被害が広がらなければ逃げ切れる可能性もある。またひなたが死にかけるのが確定するが。

 それでも血を吸っていれば多少は人よりも頑丈になるし回復魔法も使える。少なくともまたアバラが全滅してもまだ生き残る事は出来る。最近アバラがよく折れるなぁ、なんて遠い目をしながらルナが目覚めるのを待つ。

 ルナを拾ってミラと戦闘をしたのが明け方で、今は太陽が半分程上っている。時間的には九時か十時辺りだろう。そう考えるとひなたは結構寝ていたという事が分かった。そうすると、もうすぐルナは目覚める筈だ。胸に違和感があるが、ひなたはそれを気にせずに煙草を咥えて火を付ける。肺に落ちていく煙がこれまた気持ちいい。

 

「あ、そういえば。御者さん、この子の事をお願いって言ってた」

「あー、交代したの? っていうか、お願いする位なら自分で保護を……いや、流石にあんな事があった直後じゃ仕方ないか」

 

 ミラが襲ってくる可能性があるのにルナを保護するなんて戦闘能力がない人間では難しい事は考えたらすぐに分かった。ひなただって同じ状況なら戦える人間にルナを任せてその場から逃げる。だから、あの御者の男を恨んだりする事はなく、仕方ないの一言で済ませた。

 煙を吐いてボーっとしながらも外を見て時間を潰す。

 そんな時間が流れていき、煙草を一本吸い終わって数分のインターバルを挟んでもう一本の煙草を咥え火を付けた所でルナが小さく唸った。

 

「ぅ……ぅん……」

「あ、ひなたちゃん!」

「目が覚めたかな?」

 

 シャーレイが小さく唸ったルナの頭を撫で、ひなたは特に何もせずにルナの目覚めを待つ。

 ルナが頭を撫でられてから数秒後。彼女はすぐに自ら目を開けた。

 

「……ここ、どこ?」

 

 小さく呟いた。どうやら、気が付いたら馬車の中にいたのに疑問を持っているらしい。そして、寝ぼけているのかボーっとしながら不安げにルナの顔を覗き込んでいるシャーレイを見て知っている人間ではないとようやく認識したらしい。

 

「誰?」

 

 目が覚めたら知らない人間がそこに居た、というのはある種の恐怖になるやもしれなかったが、ルナは寝ぼけ眼を擦りながら起き上がり、そう端的に聞くだけだった。

 どうやら、必要以上の警戒はされていないらしい。これならすぐに彼女の信用を得られそうだとホッとした。ひなたは立ち上がってからルナの近くで腰を下ろしてルナと目線を合わせる。こうする事でなるべく無意識下の警戒等を解こうと考えていた。

 

「ボク達は道端で倒れていた君を見つけて助けたんだ」

「倒れてた…………あっ」

 

 言われてから思い出したのか、ルナは小さく声を上げた。そして、すぐに表情を暗くした。やはり、倒れる前後に何か悲しい事があったのだろう。それを思い出させてしまったのは少し申し訳ないが、自分の現状を彼女自身に把握させる事はしなくてはならないので仕方の無い事だ。

 多少心が痛んだが、致し方なし。ルナの頭を撫でながら優しく諭すようにルナからミラに狙われていた理由を推測するための情報を聞き出そうとする。

 

「思い出した?」

「うん……」

「じゃあ、何であんな道端に倒れちゃったのか、教えてくれるかな?」

 

 不安にさせないように、なるべく笑顔で。ルナの頭を撫でながら聞く。しかし、ルナはひなたの質問を聞いても黙りこくったままだ。やはり、何処か言いにくさがあるのだろう。それか、何かがトラウマになって彼女が話す事を拒んでいるか。どちらにしろ、話したくないのなら話さなくても構わない。ひなただって未だにシャーレイには一年前のあの日の全容は全て話していないのだから。

 言い淀んでとても申し訳なさそうな顔をしているルナの頭を撫でながら大丈夫だよ、と言って彼女を安心させる。警戒心を解いていけばその内話してくれるかもしれない。だから、今はこうして安心させてあげる。

 

「大丈夫。嫌なら話さなくてもいいよ」

「……ごめんなさい」

「謝らなくてもいいって」

 

 申し訳なさそうに顔を俯かせるルナの頭を撫でてから片手でルナを抱きしめる。そうすると、人肌が恋しかったのかルナはひなたを抱きしめ返した。が、すぐにルナはひなたの体が人とは少し違う事に気が付いたのかひなたの左手があった場所を触った。

 そして腕の断面を触ってビックリした顔をひなたに向けた。どうやら、左腕が無いというのは結構ショッキングだったらしい。

 

「あぁ。左手? 実は去年に取れちゃってね」

「と、取れて……?」

「そう。ポロって」

 

 冗談だが。笑いながらそう言うと、自分にもそんな事が起こるかもしれないと思ったのかビクビクと震えた。

 流石に簡単には取れないよー、と笑いながらルナを抱きしめるようにして撫でていると、先ほどよりも強くひなたを抱きしめ返した。

 よしよし、とルナを撫でているとシャーレイが何かにビックリしたのか目を丸くしてひなたの方を見ていた。

 

「……おばあちゃんみたいな顔してる」

「表出て殴り合う?」

 

 遠回しに老けていると言われたと思って若干ムカついたひなただった。シャーレイ的には凄く優しい顔している、という意味だったが。

 

 

****

 

 

 それから数分後。ひなたに若干心を許したのか、ルナは馬車の中でひなたの横に座ってひなたが買っておいた干し肉を齧っていた。ルナは腹ペコだったのか、シャーレイが買っておいたパン類の半分を一人で食べてしまい、朝食が途中で終わってしまったひなたは余り食べる事が出来なかった。

 そして反対側にはシャーレイがもたれかかってボーっとしている。正に両手に花。幸せな気持ちでルナの事をよしよしと撫でていた。

 シャーレイはルナにばかり気を向けているひなたが何となく気に入らないようで構ってと時々ひなたの体にかける重さを増やしたりしてみたが、そこそこ鍛えているひなたには誤差程度にしか感じないようであまり効果は無かった。左手があれば変わったのになぁ、と思わなくもなかった。

 どっちにしろ、今のひなたはルナが警戒心を解いてくれるようにしてくれている真っ最中だ。手は離せられないだろう。シャーレイとしてもこんなに大きくなったのに人に甘えている所を見られるのは少し恥ずかしいしみっともないと思ってしまう。普段なら確実に甘えに行くのだろうけども。

 

「えっと、ルナちゃんだったかな」

「う、うん……」

 

 ひなたが急にルナに向かって言葉を放った。優しい声色だったので怖がられて何も言葉を返されないという事は無かったが、ルナはどこかビクビクしていた。

 

「ルナちゃんのお母さんかお父さんってどこに住んでるのかな?」

 

 親が居るのなら、ひなたとシャーレイが送っていく事も出来る。先程までは一人であんな所で倒れていたためか、親等はいなくて彼女自身に何か暗い物があるのではないかと思い込んでいたが、もしもミラが何かをやらかしてしまい、それを見てしまったスプラウト親子が散り散りで逃げているのだとしたら、この子は役所ではなく衛兵に任せた方がいい。

 それか、スプラウト親子ではなく、ルナだけが見てしまったというのなら、一人で逃げていたのもある程度は納得が出来る。その場合は親にルナを届けて衛兵の元に二人を連れていけばいい。

 ルナはひなたの質問を聞いて表情を暗くして俯いた。

 

「……居た、けど」

 

 居た。つまり過去形。

 それが示すのは、親はもういない、という事だった。それを聞いたひなたはすぐにルナの頭を撫でた。

 

「ご、ごめんね。変な事聞いちゃって」

 

 辛い事を思い出させてしまったかもしれない。そう思い、すぐにルナの頭を撫でると、ルナは少し泣いていたがうん。と呟いて目を拭った。どうやら、親に関しては触れない方がいいかもしれない。

 だが、こうなるとルナの親はミラに殺されたのでは、と思ってしまう。ルナの体は汚れているが、かつてスラムで生きていた時代のシャーレイ程ではない。スラム特有の悪臭は感じる事が出来ず、代わりに感じるのは泥の臭いや土、葉の臭い。そして、ひなたのような吸血鬼、それに近しい種族にしか分からないが、濃い血の臭い。ルナの服はワンピースだけだが、襟元やスカートの一部には赤いシミのような物がある。きっと、血を被った後に川に飛び込んでそれを洗い落としたのだろう。泥や葉の臭いはその後にすぐ逃げた際についた物だろう。

 ひなたはルナを慰める振りをしてローブをルナに着せた。

 

「……ルナちゃんさ、これからボク達はこの先の街……あー、温泉が沢山ある街に行くんだけど、住んでいた街っそこかな? それとも、他の街?」

 

 ここから一番近い街は温泉街だ。だから、そこに住んでいたのだとは思うが、一応聞いておく。

 

「温泉の街……? わたし、そこに住んでたよ?」

「そっか。なら良かった」

 

 親は既に亡き人に。だが住んでいた場所はちゃんとあった。としたら、ミラはそこで張っている可能性がある。彼女の足なら、もしかしたら馬車よりも速く温泉街に着いている可能性がある。

 なら、彼女を家に近づけるのは危険だ。宿で共に泊まるしかない。もしものために余分に金を稼いでおいて正解だった。

 

「ならさ、お姉ちゃん達と一緒に宿でお泊りしないかな? 明後日には帰っちゃうけど、その間だけでもさ」

「お泊り……? いいの?」

「うん。その後は大人の人にルナちゃんの事は任せちゃうけど、いいかな」

「うん! お泊りしたい!」

 

 大人に任せるとかはよく分かっていないっぽいが、これで確実にルナを保護する事は出来る。予約制なのに当日で一人増えちゃったけど追加料金で何とかなるかなぁ、とちょっと後先考えない提案に後悔しながらもはしゃぐルナの頭を撫でる。

 いつもこうやって時々後先考えない事をするのはひなたの悪い癖かもしれない。若干のこれからの不安についつい煙草を取り出して吸ってしまう。

 

「煙草?」

「うん、煙草。ごめんね、嫌だったかな」

 

 嫌だったら今日明日の禁煙生活のスタートが無慈悲にも切られてしまうが、ルナは首を横に振った。

 

「煙草、大人しか吸っちゃ駄目なんだよ? 何で吸ってるの?」

「……これでも大人だからね、ボクは」

「嘘ついちゃ駄目なんだよ?」

「嘘じゃないんだな、これが」

「えー。でも、おっぱい無いし背も凄くちっちゃいじゃん」

「流石に泣くぞ!!?」

「ひっ」

「あ、ちょ、ごめんって。いきなり大声だしたボクが悪かったから」

 

 子供というのはズバズバと物事を言ってくる。流石にコンプレックスを指摘されて泣きかけたが、ルナが怯えてしまったため、ひなたはすぐに冷静になってルナの頭を撫でた。

 

「……じゃあ、何でお姉ちゃんは自分の事をボクって呼んでるの? 男の子なの?」

「女の子だよ。これは癖っていうか……自分で引けないラインだからさ」

「あ、ホントに女の子だ」

「だからと言って人の股間を触るのは止めようか」

「凄い男の子っぽいのに」

「それ、ボクの目が外見相応じゃないって言いたいのかな? それとも半分死んだ目をしてるって言いたいのかな? それとも煙草のせいかな? それともマジで胸がぺったんこだからかな? Aカップもないからかな?」

「全部」

「きっちぃ……」

 

 修羅場経験した合法ロリなんてこんなモンだよ、とへこんだ。そしてそれを聞いて一人笑っていたシャーレイにはかなり弱めの魔弾を一発お尻に撃ち込んだ。

 だが、男っぽいと言われて悪い気はしなかった。こんな外見でも少しは男っぽいのなら元男で精神は今も男であるひなたにとってはそこまで悪口と感じる事は無かった。

 せめて胸が欲しかった。




その後

ル「おっぱい、凄く小さいよね」
ひ「止めてくれ。その言葉はボクに聞く。止めてくれ」
ル「わぁ、本当にちっちゃい」
ひ「だからと言ってガッシリと手を当てないでくれないかな」
ル「……揉めない」
ひ「やっべぇ、この子的確に人の傷を抉ってくるよ。後、揉めないのは服とローブがあるのが原因だから。揉めるくらいあるから」
ル「あ、ちょっとだけ揉めた」
ひ「あー心折れそ……」
ル「すっごくちっちゃーい」
ひ「って言いながら結構勢いよく揉む……んっ」
ル「お母さんと全然違う」
ひ「だ、だからってそんなに激しく……ぁんっ……」
シャ(なんかひなたちゃんが幼女と変なプレイしてる……)
ひ「しゃーれ、たすけ、にゃぁ!?」
ル「先っぽ硬くなってきたよ?」
ひ「ほ、ほんとにだめだから……ふにゃぁっ!?」

これ以上はヤバいから割愛

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