三門市に引っ越しました   作:ライト/メモ

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Θ月

 

 

 

Θ月*日

 

 

 待ちに待った狙撃手限定夏休み特別訓練に参加してきた。

 

 捕捉&掩蔽訓練と銘打たれた訓練で、内容は己以外の狙撃手は全員敵のサバイバル戦。戦場は仮想空間の市街地。使用トリガーはイーグレット・ライトニング・アイビスのどれか一つだけで、弾は通常とは違ってペイントの弾丸だ。撃ったら+5点で撃たれたら-2点の制限時間制で、最終的な持ち点を競うゲーム式。

 

 おそらく夏休み限定なのは、たたでさえ少ないスナイパーを集めやすくする為だろう。もっと日頃からスナイパーの数が増えれば夏休み限定じゃなくなりそうだ。先に隠れる場所・狙撃ポイント・射線の切り方などの基本をC級とB級上がりたての隊員へ教えることから始まり、最初はスナイパー年長組だけでゲームに入った。

 

 私も最初の組で、転送されてまず行うのは簡単な周囲の安全確認。狙われる射線をある程度予測をつけてきっちりと切っていく。次いで地形の把握をしてから狙撃チャンスを待った。さすがに年長組は忍耐強いし隠れるの上手いし人数少ないしでなかなか得点が動かなかったが、誰かが銃声を上げると一斉に弾丸が飛び交った。私も3発貰ったが、その分命中させたし貰った分は全部急所を外してるから実戦なら戦闘続行できる。それに意外にも得点をあまり上げていなかった東さんと並べた。

 

 次にC級だけ。基礎はまだまだだしどちらかといえば『当てる』ことに集中していると思った。当てた時の喜びようも微笑ましい。そんな中で何名か既に頭角を顕している者もいる。東さんも感心したように「あいつらは伸びる」と言っていた。

 

 3回目はB級。年長組にもB級がいるけど、それは除外されての3回目だ。結果はピンからキリまで。これを休憩と反省を挟みながら繰り返し、最後は慣れてきただろうから全てのスナイパーで仮想空間に入った。

 

 とても充実した内容だったし、他のスナイパーの動きも良く見ることが出来たので満足満足。全体的なスナイパーのスキルアップにも繋がったと思う。

 

 

 

Θ月*日

 

 

 今日の特別訓練ではチーム対抗戦だった。くじ引きで二手に別れてチーム全体の持ち点を競う。公正なるくじ引きだったが、何故か私以外の年長組が固まってしまいB級も大半あちらになった。敗戦が濃厚だなぁと思ったけど、くじ引きだし訓練だしと割り切った。

 

 最初の15分間にチームのミーティングが入る。個人戦とチーム戦では勝手が違うのでそれを説明し、オペレーターがいないし無線も出来ないので簡単なハンドシグナルを決める。

 主に私より年上な隊員に作戦を練ってもらっていたが、私にも意見を出せと促された。

 狙撃で大事なのは情報戦、ということで私は観測者(スポッター)を作ることを提案した。索敵・狙撃距離・情報伝達をしてもらう。チームの半分をスポッターにして狙撃手とコンビを組み、スポッターは別のスポッターにハンドシグナルで情報を伝達して敵の発見率を上げる。もちろんこの作戦だと1人が見つかれば2人ともやられる心配があるが、個人戦のようにマップ全体に広がるより発見される可能性が低くなる。更に狙撃後の移動ルートも出来るだけ決めて移動中のコンビを別のコンビに援護してもらったり、スポッターの伝達をスムーズにする必要もある。

 

 訓練だし思いついたことはどんどん言ってみようということで、15分間目一杯使ったミーティングだった。私の案であるスポッターは採用されて実践。慣れないハンドシグナルで情報が読み取れなかったり移動ルートがズレたりとスムーズな作戦にはならなかったが、得点は僅差で負けた。悔しかったけど、全員手応えは感じたみたいでもう1回挑戦。

 

 前回での反省と次に備えてのミーティングは合わせて30分設けられた。伝わりにくかったハンドシグナルを変えたり追加したり、バレた移動ルートの変更や敢えての囮を頼んだり、狙撃手と観測者を交代したりなどなどまたもや時間いっぱいのミーティング。結果は僅差で勝利。

 

 その後も勝ったり負けたり、最終的に負け数が多くなったが経験や地力の差なので仕方なし。それでも少しでもチーム戦の楽しさを知ってもらえたようで満足です。驚いたことに皆狙撃よりもスポッターの役割がやりごたえを感じたようで、色んな先輩に索敵のコツを聞きに行っていた。

 

 

 

Θ月*日

 

 

 特別訓練は全日程で5日間だった。個人戦とチーム戦を交互に行う。個人戦でもマップを変えたりしてた。一番難易度が高いマップは砂漠の砂嵐だね。実際にあり得そうにない戦場だけど、マップ設定が出来るならせっかくだから、と実行した。

 

 平らに見える砂漠だが結構凹凸は激しい。さらに『ここが一番高い砂丘かな?』と錯覚してしまったり、砂嵐で狙撃姿勢が崩されたり、と大変だった。トリオンの弾丸はあまり風の影響を受けないのだが、流石に砂嵐は砂の質量があるので微妙に着弾地点をずらされた。

 砂漠マップでは私は常に匍匐前進したり、横たわったままの姿勢で狙撃してたり、時には砂に埋もれて隠れたりしてた。生身だったら絶対に干からびてるよ。

 

 総数を半分に割ったチーム戦とはまた別に2人~3人の少数チーム戦も試みた。本来なら前衛と後衛でバランスよく編成するところだが狙撃手限定なので戦略が偏ってしまうのは仕方ない。オペレーターもいないので即席の連携が合わなかった時もある。それでも参加した皆で作戦を出し合うのは熱が入った。

 

 あっという間の5日間だった。終わり頃には新人さんたちが積極的にチームについて検討していたのが印象的だ。

 

 年長組はエンジニアさんたちから労いの言葉とお茶を奢ってもらった。今回の訓練で色々なデータが取れたらしい。

 

 

 

Θ月*日

 

 

 とうとうパズルが完成した。

 

 達成感がヤバい。キッチリと糊付けして額縁に入れて、殺風景だった壁に飾った。爽やかな青色に夏の暑さが心なしか軽減されたように思う。色彩って大事。次は緑いっぱいのパズルを飾ってみようかな。

 

 久しぶりにモンハンを起動した。モンスターの攻撃モーションを覚えてなくて被弾ばっかりだった。プレイヤースキルが落ちてしまったな。ネコ飯を見てるとお腹がいっぱいという気持ちになった。夏休みだから寝込んでも学校に支障ないけど、防衛任務に支障が出るのでしっかり食べなきゃ。香辛料増し増しの麻婆豆腐にした。

 

 

 

Θ月*日

 

 

 課題が去年より倍の量な為にまだまだ終わらない。家だとダレてしまうので市の図書館に行ってみた。書棚巡りになって結局進まなかったのでボーダーのラウンジに向かった。空調設備があって飲食も可能だからそれなりに家にいるより進んだけど、他の隊員から話しかけられて疲労が溜まった。

 でも先輩や大学生組に分からない部分をすぐに訊けるのはいいな。話しかけられるのは大変だけど、ちゃんと課題が進むから出来るだけボーダーで勉強しようと思う。

 

 出水くんに勝負を挑まれた。随分と久しぶりだと感じるソレを受けると、とうとう負けた。どうやら空白の時間を合成弾の調整に費やしていたようで、さらに戦闘スタイルが変わっていた。

 前のスタイルは"弾をガンガン精製して見える範囲すべてを爆破!"みたいなだったが、今回は"一見、前のスタイルと見せかけて本命の一射を当てる”という追い込み型だった。なんというか、新しいスタイルはどことなく二宮さんに似ている気がする。それと今までの記録に残っている私の戦闘を勉強していたらしい。

 

 記録に残っているのは沢村隊のデータなので個人戦とはまた別だと思うが、それで私の動き方の癖でも見つけたのかもしれない。10戦中4勝6敗。負けちゃったなぁ。でも不思議と悔しく思わなかったのはきっと『近いうちに負ける』と確信してたことと今まで懸命に挑んできた出水くんのことを知っているからだと思う。

 

 出水くんには「またお願いします!」と言われたので私も応えた。

 

 

 

Θ月*日

 

 

 課題が終わると同時に二宮さんから話しかけられた。出水くんに負けたのは本当か、と。もちろん本当なので頷くとどこか満足そうに頷いて去って行った。謎だ。

 

 東さんから暇なら新人育成を手伝ってほしいと頼まれた。手伝いと言っても私に任されたのは指導より書類作成や資料を纏めるなどの雑用が主だ。基礎はちゃんと説明できる東さんから教えてもらった方が良いからね。

 それに他人と接するの苦手なのでこの仕事内容は満足である。将来ボーダーに就職した際の下積みっぽいなとイメージした。

 

 

 




トリオン体の視界なら射程距離は自動で算出されると思いますが、スナイパーとスポッターの声掛けの一環で八神は入れました。
視界にはっきり正解が示されているなら自信持って伝えられるはずなので、意思疎通の糸口になれば、と。

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