「安藤倫理さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にもなくなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」
真っ白な部屋の中、俺は唐突にそんなことを告げられた。
「はっ?」
思わず声が漏れる
「ですから安藤倫理さん、あなたはつい先ほど不幸にも死んでしまったのです」
再び帰ってくる答え、ますますわけがわからない。
目の前に立つ天使のはような容貌の女性。ここでの天使とは日本、いやオタク間で多用される可愛らしいキャラクターの例えではなく、聖書や西洋の芸術に描き表されるような方のことだ。
しかしそれとは別に、先程から気になっていることがある。
「あの……ひとつ聞きたいことがあるんですが」
「はい、なんでしょうか」
彼女は天使のような美しい微笑みを向けて、そう返した。
「では失礼して、さっきから俺のことを安藤倫理と呼んでるけど、俺の名前は安芸倫也ですよ」
「…………えっ……?」
俺と彼女との間に気まずい空気が流れる。
「えーっと倫也君にそちらの方、とりあえずお互いの情報でも照らし合わせてみない?」
聞き慣れた声を頼りに後ろを振り返るとそこには恵がいた。ということは、さっきからまでずっといたというかとか。彼女は以前のようなオールステルスではなくなったが、その代わり最近では、消えるときはどこまでも希薄に、そしてここぞという時には誰よりも強く存在を示すようにと逞しく変わっていた。
コホン、女性がわざとらしく咳払いをした。
「では改めまして、私はセリエル。水の女神アクアに変わって、地球で亡くなられた若者の魂を導く仕事をしています。どうぞよろしくお願いします」
「俺が安芸倫也でこっちが加藤恵だ、こちらこそよろしく。どうして俺の名前を一方的に知っていながら、それを盛大に間違えたのか教えてもらえるか」
「えっと、どこから話したら良いものか……」
セリエルさんがしどろもどろに語り始める
俺が聞いた話を要約するとこうだ
『あなたに似た名前の人が死んじゃって、魂持ってきたんだけど間違えちゃった。女の子の方も近くにいたから巻き込んじゃったよ』
とのことらしい、ちなみに口調や態度は記者会見をしている議員並みに丁寧なものだったとここに追記しておく。
「今直ぐにでもお二人を元の世界へ返したいのですが、手続きにかなりの時間がかかりそうなのです。なのでお二人にはそれまでどうしているのかを選んで欲しいのです。まず一つ目、『何もしない』つまり食事もせず、睡眠もせずただひたすらに時間が経つのを待ってもらいます。二つ目、『異世界転移を体験する』こちらは剣と魔法の世界で冒険を楽しむということです」
俺だってオタクの男子高校生、セリエルさんが言い終わる時にはすでに答えは決まっている。
「俺は……