美城家の子供に転生!?   作:お菓子

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第17話 作戦会議

 昨日は予想外の舞さんの奇襲攻撃で危なかったが、こちらも予想外、まさかのお姉ちゃんが登場。 舞さんから守ってくれたおかげで無事に乗り切ることができた。

 

 あの後すぐにお姉ちゃんは父に連絡を入れて今後の話し合いをしたらしい、日本とアメリカの時差は13時間あることを考えればお姉ちゃんが睡眠時間を削って頑張ってくれたのがわかる。

 

 今日はその結論を踏まえて重役会議が開かれる、アイドル部門だけでなく全部門の重役も参加。 今後の346プロの未来に関わることなので当然僕も特別顧問として参加する。

 

 基本丸投げだがアイドル部門初期から居り、基本方針も間違ってこなかった為、唯の七光りじゃなく346プロの一員と信頼もされているはず。

 

 まずは、和久井さんから昨日遭った日高舞襲来事件の説明を改めて行われ、日高舞VS美城幸高の勝負で次世代トップアイドルを決められること、そして僕が日本のアイドルの頂点に立つとハイテンションで説明している。

 

 和久井さんのテンションが移ったのか、会議はかなり熱が入ってる。 会場は日本一大きなドームで行い、

テレビ中継さらに記者を呼べるだけ呼んで、世代交代を全面的に世間にアピールすることで満場一致の結論が出た。

 

 問題になったのは、最後に行われる日高舞VS美城幸高までの間に、どのアイドルグループが会場を盛り上げるかだ。 世紀の対決だけにこれ以上のアピール場はない、各プロデューサー自分の担当アイドルを当然推してくる。

 

 日高舞に失礼にならないようにベテランを出すべきという意見もあれば、中堅を多数出して346プロの層の厚さをアピールすべきという意見もある、まだデビューして間もないグループを出して、一気に知名度を上げるべきという意見もある、個性の強いグループを出して世間の度肝を抜いてやろうと意見も出てきた。

 

 武内Pも淡々と自分の担当アイドルを出す旨を伝えて、後は退かない構えをみせている。 いつも協力して上手い具合に調整してきたのに、このレベルの仕事は各プロデューサー退けないらしい、余裕があるのは僕専属の和久井さんぐらいだ。

 

 ここで僕の考えたプランを出す、簡単にいえばアニメ最終回で武内Pが行った、ドーム内にレフトステージ・ライトステージを作るのを少し変えただけだが。

 

 内容はドームの外の施設も活用したり、空いてるスペースにライブステージを作り、各アイドルが歌うも良し、自分の個性や芸を披露するもよし、346プロアイドル全員がステージに上がれるようにする。

 

 つまり複数ステージによるライブとアイドルイベントの混合企画、これなら各プロデューサーも納得できるだろうし、まだ世間にあまり知られてないアイドルもステージに立てる。

 

 ドーム会場の席はコンサートチケットを買ってもらい、他の会場やステージには、入場券を買った人なら誰でも入れる自由席にする、勿論ドームのチケットを持ってる人も入れる。

 

 この案は丁度良い落とし所になり、この総責任者は今西部長、副責任者に武内Pが担当することになる。 他のプロデューサーや各スタッフにも当然動いてもらうがこの辺は口出しせず、役員に任せる。

 

 その他にも色々な意見が出てくる。 ドームのチケットが手に入れなかった人の為に、外に特大モニターを設置しようと意見があれば、アイドルイベントの為に小さなステージを増やそうなど様々だ。

 

 

 場所と方向性は大体決まった、次の問題は予算である。 ドームだけでもすごいお金が動くのにその周辺施設や空きスペースにステージを作る、さらに諸々の準備費用を合わせると。 これは美城プロダクションの予算すべて合わせても足りなくなってしまう規模だ。

 

 基本的な解決策として、346プロダクションではなく346グループ全体からお金を出してもらい、周りを巻き込んでいく作戦でいくことになった。

 食品や建設・スタッフなどありとあらゆる仕事を346グループで行えば安く済ませるだけではなく、お金も上手く回るらしい。

 

 人手が足りない所は友好関係な外部企業にも受注して安く済ませる、それでも足りないなら僕が父におねだりする、お姉ちゃんが状況説明してるだけに問題ないだろう。

 

 正直細かい値段はよくわからないが、僕はいざという時に父におねだりするだけ。 とりあえず細かい話はプロに任せてコーヒーを飲んでぼーっと聞いていると面白い案が出た。

 

 「別のプロダクションにも、このイベントに参加を打診したらどうでしょうか? こちらがギャラを払うのではなく、参加費用を払って貰えば予算も増えて、そのプロダクションのファンも来て万々歳です」

 

 「悪くない案だと思いますが、向こうからお金払ってまで来ますかね?」

 

 「伝説の日高舞の一日だけの復活・長年空白だった次の世代交代が実現するライブ。 話題性から発生する宣伝効果は類を見ませんよ、私が他のプロダクションでしたら出します」

 

 「話をするだけしてみてればいい、 来れば良し、来なくても346プロには何も損はありませんし」

 

 「外のステージでやる値段はリーズナブルに設定して、ドームへの参加の値段は、大金に設定してはいかがでしょうか? ドーム参加のプロダクションには日高舞への挑戦権が手に入るとなれば払うプロダクションも出るでしょう」

 

 「日高舞さんから勝手に勝負の相手を増やしたと、文句が来そうですな」

 

 「日高舞VS美城幸高は変えません、この名前でライブをするのですから。 ただ日高さんが歌う直前に歌う権利を売るのです」

 

 「なるほど、正式に勝負に参加できるわけではないが、間を置かないので勝手に勝負になるというわけか」

 

 「それに、美城の決定に従うと契約書にサインしてもらうんですから、大丈夫でしょう。 アメリカにいる美城お嬢様はいい仕事をしてくれました」

 

 

 ……何か、どんどん規模が大きくなってきたし、怪しい話になってきた感じがする。 この辺で一言言っておいた方がいいな。

 

 「勝負するのは覚悟決めたのでいいんですが、正直言うと相手は引退したとはいえ伝説のS級です、厳しい戦いになると思いますよ。 さらに他のプロダクション入れたら勝ち目はますます無くなるかと」

 

 「大丈夫ですよ、特別顧問が負けることは絶対にありません」

 

 「どういうことです?」

 

 上役の人が悪い顔を浮かべてる。 各プロデューサーは何かを察しているのか、苦い顔を浮かべるか無表情のどちらかだ。

 「ドームに入る観客の半分は346財閥の関係者を入れます、これで過半数は確実です」

 

 一気に頭が熱くなった、それはあまりにもありえない。

 

 「絶対に嫌だ! そんなことをするぐらいなら白紙に戻す! 舞さんには僕から話す、父だろうとお姉ちゃんだろう役員だろうと文句は言わせない!!」

 

 「………」

 

 普段、怒ったことがない僕が怒ったからだろうか、驚きから静かになる。

 

 「勿論、負けるとは思ってませんが念の為です。 ここで勝てば今後の346プロの地位は格段に上がりますし、特別顧問の評判も良くなります。 どうかそこは会社の為に曲げて下さい」

 

 「絶対に嫌だ」

 即答で答える。 会社から見れば八百長が正解かもしれない、僕の考えは綺麗事かもしれない。

 アイドルマスターの世界で生きて、アイドル達がどれだけ頑張って悩んで苦しんで、それでも負けずにファンを笑顔にしてきたか知っている。 これは受け入れられないし、受け入れたら僕の中の何かが終わる。

 

 重苦しい沈黙がしばらく続く、それを破ったのは今西部長だった。

 

 「元々、今回のライブは我々が主導権を握ったホームで行われるんです。 ドームチケットは美城幸高ファンクラブがまず最初の優先予約。 その後に346プロの他のアイドルのファンクラブが優先予約になり、最後に一般予約になる、そんな策を弄しなくても幸高君なら勝てますよ」

 

 やさしく微笑みながら、ゆっくりしゃべっている、空気がゆっくりと軽くなっていく。 

 

 「私もそう思います、アイドルを信じるのもプロデューサーの役目かと」

 

 「万が一負けても、次の機会を我々が作れば良い。 八百長したことがマスコミにばれたら、それこそ346プロの終わりになります」

 

 和久井さんと武内Pからも援護が来た、他のプロデューサーと何人かの上役も同調してくれる。

 

 「わかりました特別顧問、八百長の話は無しにしましょう。 失礼なことを言いました」

 

 「いえ、こちらこそ生意気な口を利きました、僕と会社の為に言ってくれた発言だとわかっています。 危なく高校生にもなって父の前で駄々を捏ねそうになりましたよ」

 

 「それは恥ずかしいですな」

 

 「でも見てみたいですよ」

 

 「ウチの子供なんか、回りながら駄々を捏ねて親として困ってしまうのですよ」

 

 冗談を言い空気を変えようとしたら、周りもそのことを察してどんどん乗ってくれ、笑いがおこる。

 良かった、わだかまりは無さそうだ。 八百長はともかくそれ以外は概ね話し合いの通りに決まっていく。

 

 

 日高舞と戦うんだから、他のアイドルを入れても変わらないか。 むしろホームで戦えるんだからチャンスとなる。

 

 会議も基本方針が決まったので終了、細かいところは追加で決まっていくだろう。

 各プロデューサーはタイムスケジュールを考える人、担当アイドルのデビューライブを考える人、自由ならどんなことが出来るかと考える人、各々やる気に満ち溢れながら移動している。

 

 この会議の結果をアイドルのみんなに伝えれば、とんでもない盛り上がるだろうし、レッスンにも気合が入るだろう。

 その中で僕が負けたら全てが台無しになるな、もう一度トレーナー姉妹に地獄の特訓をお願いするか。 そしてどの歌を歌うか決めとかないとな。

 

 「そうだ和久井さん。 765プロなんですけど、今回お金がなくて参加できないと思うんですけど、僕からの招待という形で参加させてあげれませんか?」

 

 「なんでそこまでユキ君が力を貸すのかわからないけど、346プロのライバルになるなら、あまり敵に塩を送りたくないわね。 もしかして水瀬さんの為?」

 

 少し考えてから、面白そうな顔で聞いてくる。

 

 「伊織の為だったら面白いんですけどね。 今回のイベントに呼ばなくても、すぐにアイドルランクを上げて来るんなら、まだ苦しい今のうちに恩を売っておこうと思いましてね、他のアイドルの刺激にもなりますし」

 

 「そう、ユキ君がそうしたいなら反対しないわ。 恩を売るなら電話で済ませないで、直接765プロに行った方が効果的ね。 

 ただし細かい所まで全部決まって、日高さんが契約書にサインするまでこの件は話しちゃ駄目よ、それが終わったら一緒に行きましょう。 それまではレッスンだからね」

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 さすが和久井さん話がわかる。 やることは多いけど今までにない規模のイベント、必ず成功させないと。


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