美城家の子供に転生!?   作:お菓子

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第16話 日高舞襲来

 今回のオーディションはHIT-TV、各節1位のみ☆をもらえる厳しいオーディションだ。 歌う曲は{Janne Da Ar〇}A級になっても届けたい曲はまだまだある、もっともっと歌っていきたい。 

 

 346プロの中堅のみんなは壁にぶつかっている。 その正体は西園寺プロやこだまプロで、オーディションに勝ったり負けたりを繰り返し、その中でライバルになったり、友情が芽生えたりとドラマが生まれてる。

 

 壁にぶつかっているのは、カワイイボクと142's・凸レーション・ファスト・ロックザビーストなどで、それを越えるアドバイスや励ましているのが美嘉・卯月・美波さんである。

 

 そんな面白いイベントが起きてるのに忙しくて絡めない、せめてアドバイスをと一言二言伝えるのが精一杯だ、こういう時はプロデューサーの職業がうらやましいな。 幸高Pか…アイドルとしての寿命が尽きたら次の仕事にいいかも、何年後あるいは何十年後の話かわからないけど。

 

 そんな風にみんな、曲の力だけじゃなく、色々な経験を積んで一歩一歩確実に力をつけている。 倒れそうな仲間が居れば全員で支えあう、346プロの中堅の層は厚くなって頼もしいかぎりだ。

 

 

 今クールの長かった収録も終わり、新たにシロヤンの合格者としてデビューが決定した、緒方智絵里・三村かな子・関裕美・黒川千秋それとアイドル候補生だった佐久間まゆと片桐早苗ので六人で{モーニン〇娘}抱いてHOLD 〇N ME! でデビュー、ユニット名はハロモニ娘に決定した。

 

 合格者の皆には隙をついて恒例のおめでとうと感激したフリをしながら一人ひとり抱きしめる。

 和久井さんは後ろで渋い顔をしてるが、止める前に智絵里に先に抱きついてしまったので、止められなくなっているのだ、スピードの勝利である。 

 

 ちえりんチョップが出なかったのが残念だが、小動物の様なリアクョンも良かった。

 かな子は柔らかく抱きしめがいがあったし、裕美は離れた時の顔が真っ赤で、何より上目遣いで見る瞳はとても魅力的だった。

 千秋さんだけは「抱きしめられた時は、どうすれば正解なのかしらと」余裕だったが。

 

 シロヤン合格者じゃないので抱きしめるのはここまでと、まゆを見てみると満面の笑みで両手を広げて、受け入れ態勢に入っていた。 罠な予感がするがエサはとても美味しそう、檻の中に入る動物の気持ちでそっと抱きしめてみる。 

 

 「うふふ、ユキさん、ユキさ~ん、ユキさ~~ん」もう離さないとばかりに抱き返してくる、やはり罠だったか! 美少女なのに、柔らかいのに、背中の冷や汗が止まらないのはなんででしょう。

 

 早苗さんは初めて会った時に抱きしめたら、予想通りシメられた。 残念だが今回は自重しようとしたら、「あれお姉さんは無視かな? シメるわよ」と言ってくる。

 うーん、普段抱きしめるのはNGだけど、皆を抱きしめてる中で自分を無視されるとシメてくる、複雑な乙女心なんだろうな。

 とりあえず心を込めて抱きしめた、後で和久井さんから説教されるだろうが気にしない、今日は良い日だ。

 

 早苗さんとまゆは候補生としてレッスンを充分してるが、シロヤン合格者勢は即デビューで時間がない為、集中的に強化レッスンが行われることになる。 

 その中で特に力を入れたのはなんと言っても千秋さんの「ねぇ笑っ〇」このシーンだ! ヤンデレのようなとても難しい表現が必要だ。

 

 僕の中でヤンデレといえばまゆと智絵里のイメージがあるが、洒落にならなくなりそうなので、千秋さんに白羽の矢が当てた。 

 レッスンではトレーナーの邪魔…ではなく協力をして、立派なジョンソンにしてやると頑張った結果、見事にジョンソンにすることに成功。

 

 歌番組出演の時には司会者のネタにしてもらい、僕もプロデューサーも良い仕事をしたとお互いに握手して大満足だ。

 

 

 候補生からデビューした松永涼が{安室 奈美〇}Chase the Chanc〇 でいきなりの大ヒットを飛ばす、始めはもっと簡単な曲でいくつもりだったがそのことを伝えると

 

 「ユキさん、アタシはソロでアイドルになってるんだ、半端なことしたらまだ候補生の皆に申し訳ないよ。 どんな曲でも大丈夫、アタシの心は熱くなってるんだから」

 

 惚れてまうやろー! 最近僕よりかっこいい女性が増えてきて困ってしまう、そこまで言われたらChase the Chanc〇 を渡さざるを得なかった。 

 そして彼女は見事に期待に答えた、彼女がどれだけ頑張ったか知ってるだけに、自分のことのように嬉しかった。

 

 

 

 オーディションも順調にいき、少し早いが昼食を食べようと楽屋のドアを開けてすぐに閉める。 …あれ? 目がおかしくなったかな?

 もう一度開けると笑顔でこっちを見ながら手を振る日高舞がいる、とりあえずもう一度閉める。 …このまま逃げてもいいかな。

 

 「何してるのユキ君?」

 変な動きをしてる僕に和久井さんが聞いてきた。

 

 「中に日高舞さんがいるみたいなんでけど、ドッキリですか?」

 

 ピクリと眉が動きながら「誓ってそんなドッキリ仕掛けてないわよ」

 

 一瞬考え込んだと思ったらすぐに携帯を取り出して

 「ユキ君先に楽屋に入って挨拶してて、電話が終わったらすぐに私も入るわ。 変な約束とか挑発されても乗ったらだめよ」

 

 何処かへ連絡を始めた、これ以上待たすわけにはいかない。 とりあえず言われた通り中に入って笑顔で挨拶することにした。

 

 「初めまして会えて光栄です、美城幸高と申します」

 

 「へぇ、あなたが幸高君…私は日高舞知ってるわよね?」

 

 オーラがすごい出てる、不敵な笑みを浮かべながら立ってる姿を見ると、ここに来た意味も大体わかるな。 敵対しないように笑顔で対応しよう、日高舞と戦うのはS級になる時にしてほしい。

 

 「勿論ですよ、小さい頃によくテレビで拝見しました。 舞さんを見てアイドルになろうと決めたぐらいです」

 

 「そう、うれしいわ。 立ち話もなんだから座って」

 僕の楽屋なのに勝手に中に入って待っていたり、ナチュラルに椅子を勧めてきたり、本当に破天荒な人だな。

 

 「サインをもらえるかしら、娘の愛があなたのファンで欲しがってるのよ」

 

 「勿論構いませんよ、僕も舞さんのサイン頂いてもよろしいでしょうか? やっぱり憧れなんで」

 

 お互い和やかにサインを交換し合う、このまま友好的に終われればいいんだが、やはりそうもいかないみたいだ。

 

 「ところで世間の評判では幸高君は私の次の後継だと言われてるわね、曲では私をすでに越えているとも聞いたわ」

 

 「越えたと言われるのは過大評価だと思いますが、舞さんが築いたアイドルの世界をより輝かせようと日夜精進しています」

 

 「良い心がけね、ただ何もしてないのに私を越えたと思われるのは面白くないわよね。 ちゃんと白黒はっきり着けるのが良いと思うんだけど、どう?」

 

 笑顔なんだが目に力がある、ここまでプレッシャーをかけてくるとは。 ええい、旧伝説のアイドルは化け物か! 戦慄している時に救いの手が、待ちに待った和久井さんがノックと共に来てくれた。

 

 「初めまして、私は美城幸高のプロデューサーをしていると和久井と申します。 アポも何も伺っておりませんが、本日はどのような御用でしょうか?」

 

 毅然としながらも戦う雰囲気を出してるな、舞さんも空気を察したのかプレッシャーが強くなった。

 

 「今ちょうど話してたんだけど、幸高君は世間の中で曲では私を越えてるとか聞いたわ。 次の後継とか言われてるみたいだし、特別に私が試してあげようと来たのよ」

 

 「用件はわかりました、ではこちらの方とお話しください」

 素早くノートPCを開き画面に出てきたのは

 

 「お話しは聞かせていただきました、私は北米美城のゼネラルマネージャーをしています、美城幸高の姉でございます」

 

 お姉ちゃんだった、化粧こそ薄いが姿はすでに美城常務バージョンになっている。 モニター越しでもわかるぐらい凄いオーラが出てる、アメリカで何があったのか知らないが相当修羅場をくぐり抜けてるみたいだ。

 

 「幸高と勝負したいのであれば、全ての事は美城の決定に従うとサインしていただきます」

 

 「何を言ってるのかしら、たとえばどういうこと?」 

 

 従うと言う言葉を聴いて額に血管が浮き出てきた、歯をむき出しにしながらお姉ちゃんを睨んでいる、これがオーガか。 大してお姉ちゃんはまったく相手にしていない、余裕で見下している感じさえあるぐらいだ。

 

 「こちらの指定した日時で、指定した場所でライブを行います。 あなたは一切口出しできません。 安心して下さい、衣装ぐらいは希望を聞いてあげますし、それなりのギャラも払いますよ」

 

 「へえ、私にそんな口をきくなんて面白いじゃない。 私のファンにはテレビ局のお偉いさんから会社の社長までいるわ、勿論私の純粋なファンもね、わかっているの?」

 

 「そのテレビ局のお偉いさんや社長は自分が滅ぶ覚悟があるのかしら、あなたのファンだって引退したアイドルにどれだけ熱を持ってるのかしら。 勘違いしているみたいだから言うけど、幸高はただのアイドルじゃないわ、美城財閥の長男よ。 普通のアイドルならお互いのメンツが立つように調整して終わらせるけど、かわいい弟に手を出すなら美城の総力を挙げて叩きのめしてやるわ」

 

 凄いゴジラVSキングギドラだ。 なら和久井さんは自衛隊で、僕はモスラかな、糸を吹いて援護したいけどこれは無理、羽化するまで待っててください。  

 

 「それじゃ、どんなに頑張ってもあなたの弟は私の下ね、彼は伝説にはなれないわよ。 でも私がチャンスをあげようと言ってるのよ」

 

 「いらないわ、伝説なんて目指してないし。 決定権はこちらが決めることよ、サインするの? しないの?」

 

 見てるこっちが怖い、ゴジラが放射熱線を出したらキングギドラが引力光線を出す、自衛隊が後ろからミサイルというプレッシャーを撃っている、…よし、とりあえず僕はサナギになって様子を見よう、場所は東京タワーがいいな。

 

 「…いいわ、そっちのホームで勝負してあげるわ。 後輩のアイドルにハンデぐらいあげないとね、ただし本気でいくから」

 睨みつけながらすごい殺気を出している。 うわー、この人と戦うの僕?

 

 「大変結構です。 書類は後日、こちらの者が改めてご挨拶に行く時に持たせますので、その時にサインをお願いします」

 

 「ユキ君終わったわよ」

 

 喧嘩をやめて~、二人を止めて~、私の為に争わない〇~ ……あれ?終わったかな、怖すぎて意識が歌う方にいってた。 パソコンの方を見るとお姉ちゃんが微笑んでいた。

 

 「話たいことは沢山あるが日本に帰る時までお互い我慢しよう、何か困ったことがあったらすぐに連絡しなさい。 父にも今回の件は伝えとくから、また」

 

 「うん、ありがとうお姉ちゃん、またね」

 

 「…ふーん、あんな顔もできるのね」

 面白くなさそうな顔の舞さんがこっちを見てた、姉ちゃんがいなくなったから少し落ち着いたみたいだ。

 

 「とりあえず、聴いたとおりよ、場所とか細かい話が来るのを待ってるわ。」

 

 「あっはい、よろしくお願いします」

 

 「そんなに固くならなくていいわ、愛に怒られちゃうし。 今回会ってみて幸高君はそんなに嫌いじゃないわ、あなたのお姉さんは大嫌いだけど、二度と会いたくないわね」

 

 やっぱりお姉ちゃんとの相性は悪かったか、でも僕に対する悪印象はないらしくてホッとした、敵に回すと怖い人だしこのまま笑顔で別れるのが正解だろう。

 

 「本当はやさしいお姉ちゃんなんですけど立場がありますからね。 ライブでは胸を借ります、全力でいきますので覚悟して下さい」

 

 「わかってるわよ、私だって愛にいきなり勝負だ! と言いながら家に乗り込んで来る奴がいたら叩き潰すしね。 それとは別に勝負楽しみにしてるわ、それじゃまた」

 

 手を振りながら帰ってくれたのを見届けた瞬間、力が抜けて椅子に体を預ける。 

 

 「お疲れ様ユキ君」

 

 とりあえず無事に乗り切ることに成功した。 細かい話は後日の重役会議で決まるのだろうが、今は微笑みながらやさしく頭を撫でてくれる和久井さんに身を委ねて、ゆっくりと休むことにしよう。 




 記念すべき20話目に無事達成しました、10話目で一度打ち切ってるだけに、倍プッシュまでいけてうれしいです。

 立ち直ったきっかけも、ここまで続いたのも皆様の応援とやさしさがあったからだと思っています。

 これからも稚拙な小説ですが、よろしくお願いします。 

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