やはり彼に研究は向いていない   作:かんごりん

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 初の2次創作です。
 至らぬ点がありましたら、どんどん意見よろしくお願いします。


彼は彼女の実験からなんとか逃れる

 俺の名前は比企谷八幡、今はお気に入りの屋上で飯を食べているところだ。

 簡単な自己紹介をしておくなら、俺は水上学園都市『六花』の一つ『アルルカント・アカデミー』に在籍している生徒だ。

 前の学校である出来事があってから自分が《星脈世代》だったということが判明し、この学園に去年から転校することになった。

 この学園に入るまでは前の学校でぼっち生活を送っていたので、ここでもぼっち生活を送るはずだった。

 

 

 

 ・・・あの女に見つかるまでは

 

 

 

 「あ、いたっ! はっちまーん、次はこの子と戦ってー」

 

 「げ、エルネスタ」

 

 笑顔で下にゲル状の生物を従えながらあの女ことエルネスタ・キューネはこちらに駆け寄ってくる。

 こいつは転校してきたばかりの俺にいきなり話しかけてきた女子だったので、ぼっちでコミュ障だった俺は最初の方はどうすればいいかわからずに戸惑った。

 しかし、エルネスタは陽気で快活な性格だったのでそう時間はかからずに打ち解けることができた。

 その後はエルネスタに色々とこの学園のシステムについて教えてもらったり、今まで喧嘩も碌にやったことなかったので全く知らなかった戦いの仕方も指導してもらった。

 その甲斐あって今では学園生活にも慣れて、ある程度はまともに戦えるようになった。

 そう、ここまでは良かったのだ。

 

 

 

 ・・・・・・ここまでは

 

 

 

 「もう実験は懲り懲りだって言ってんだろ!」

 

 俺はエルネスタにそう叫びながら慌てて立ち上り逃げ出す。

 

 「おっと、逃がしませんよー」

 

 俺が逃亡しようとしているのを見たエルネスタはゲル状の生物に何かを命じる。

 すると、ゲル状の生物はその見た目からは考えられないような速度で俺の方に迫ってくる。

 

 「嘘だろ!?」

 

 あまりの速さに思わず目を剥き慌ててスピードを上げるが、忌々しいことにそれに合わせて相手のスピードも上がりやがった。

 

 「来るなあぁぁ!」

 

 ほぼ全力疾走に近い速度で逃げているのに追い付いてくる相手にとうとう《星辰力》まで使って学内を駆け抜ける。

 途中、他の生徒たちにこの光景を見られるが全員が全員クスクスと笑って「ああ、いつものか」という呟いているを何度も耳にした。

 それだけならまだ少し恥ずかしかった程度で済んだのだが、知った顔を目にし、すぐさま俺の状況を理解したそいつが腹を抱えて笑っいるのを見て、殴りたい衝動に駆られる。

 

 (くそ、他人事だと思いやがって、後で覚えてろよ)

 

 振り向いて睨み付けてやろうかと思ったが、後ろにまだゲル状の生物がいるのを確認してしまい慌てて向き直る。

 

 「つーか、お前しつこすぎだろ!」

 

 あまりのしつこさに思わず文句を言うが、相手はそもそも人間じゃないので通じるはずもない。

 

 (俺の方はそろそろ体力の限界が近いんだが、あんなのにそもそも体力なんてないだろうな・・・)

 

 どうするべきか悩んでいると、ふとある事を思い出す。

 

 (そういや、あいつって人型じゃなくないか?)

 

 ちらりと背後を窺うと、そこにはやはりどう頑張って見ても人の姿には見えない生物がいた。

 俺はその事実に今まで気づかなかった自分に思いきりツッコミたかったが、今はこの状況の対応を優先する。

 

 (どっかその辺に・・・・・・あった)

 

 逃げながらも辺りを見渡し、目的のものがないか探すと、流石はアルルカントすぐに見つかった。

 俺はそれを見て思わずにやりと笑みを浮かべ、すぐさま目的地へと直進していく。

 その後ろを奴は追ってくるが、この中に入ればこっちの勝ちだった。

 俺がその中に入った瞬間、奴と俺を遮るように“それ”が現れる。

 

 

 

           ガンッ!

 

 

 俺の思惑通り、奴は突然現れた“それ”に対処できずに思いきりぶつかる。

 その後も何度も奴がぶつかる音は聞こえるが、一向に目の前の“それ”が開く気配はない。

 “それ”の正体とは、

 

 「まだまだ甘いなエルネスタ、流石のあいつもまさかいつも対策していた“自動ドア”を盾にして逃げるとは思っていなかっだろ」

 

 そう、“自動ドア”だ。

 アルルカントは『六花』の中では変わり種で、研究クラスと実践クラスに分かれており、圧倒的に研究クラスの方が立場は有利だ。

 それの影響もあり、ここは設備だけはどこの学園よりも最先端という、まさに理想の環境だ。

 俺か? 俺は残念ながら実践クラスの方なんだよ。

 俺みたいなひきこもりが何で実践クラスなのかって? その答えは単純だ。

 

 

 ーーー研究クラスにいったら毎日のようにエルネスタと顔を会わせてしまうからに決まってるだろ

 

 

 研究クラスの方ではあいつは普段自分の研究室にいるらしいが、何故かは分からないが俺に興味を持ったらしいあいつは態々そこから出てきて俺のところに来るようになった。

 エルネスタはあいつが所属している『彫刻派(ピグマリオン)』では天才としてカリスマ的人気を持っている上に、他の学部からも畏敬の念を抱かれているので『アルルカント・アカデミー』ではあいつを知らない奴なんていないくらいの有名人だ。

 ちょっと研究のことになると、頭のネジが何本か飛んでるエルネスタだが、それにさえ目を瞑れば見た目と性格はいい?ために一部の男子から告白されたこともあるらしいが、未だに誰もエルネスタが誰かと付き合ったという話を耳にしたことがないという。

 そんなあいつが俺みたいなぼっちニートに毎日のような会いにきたらどうなると思う?

 簡単だ、男子共の嫉妬により何度か命を狙われ、女子の一部からは散々詳細について聞かれた。

 しかも、そのやり口はアルルカントならではとしか言いようがなかった。

 少しだけ例を挙げるとしたら、『彫刻派』の連中のやり口は朝の通学路に“偶然”設置されていた戦闘用ロボットが“偶然”起動し、“偶然”俺を攻撃してくるものだったし、『獅子派(フェロヴィアス)』の連中なんかは自分達の作った《煌式武装(ルークス)》を裏の連中に金と一緒に渡して、そいつらから攻撃を受けた。

 『思想派(メトセラ)』の女子達なんてやばかった、教室に入るなりいきなり洗脳をかけてきたからな。

 

 その他諸々の派閥からも攻撃されてきたが、もちろん全て返り討ちにしてやったが。

 

 だが、長々と続いてそれらもエルネスタに騙されてでた《王竜星武祭(リンドブルムス)》で準優勝してからはなくなった。

 エルネスタのスパルタ特訓により、驚く程強くなってしまった俺はそんな大会のセミファイナリストにまでなってしまったのだ。

 俺が何故そんな目立つような大会に出た理由は純情な俺はエルネスタに騙されてしまったからだ。

 まず、事の始まりはエルネスタの特訓は本当にやばかったことからだ。

 特訓方式は至極単純の実戦訓練で、あいつ自身は全く動かないのだが、あいつの作ったパペットはもう本当に人間が反応できるギリギリのレベルで俺をガンガン痛めつけてきた。

 

 だが、あいつ自身が弱いかと言えば全くそうではない。

 

 一度その特訓での恨みを込めて背後から不意打ちしてみたのだが・・・、

 

 「おやおや〜、どうしたのかな八幡君?」

 

 とんでもなくニヤニヤ顔で軽んくいなされて、そのままボコられてしまった。

 女子にボコボコにされるという経験にしばらく凹んでいたが、その屈辱をバネに俺は強くなった。

 その後、自分でも実感できるくらい強くなったと感じた俺がエルネスタに再戦を求めたら、

 

 「いいよー。 じゃあ、この日のこの時間にこの場所に来てね〜」

 

 と、言われたので俺はおとなしくそれに従った。

 思えばおかしいことだらけだったが、その日の俺はエルネスタと戦うことしか頭になかったために頭の隅に追いやっていたのだ。

 明らかに普通じゃない人数の人がいたし、テレビなんかでよく見る顔も沢山あった。

 だが、それらの全てを無視してエルネスタから指定された場所に時間ぴったりに着いたら、

 

 「さあ! やって来ました《王竜星武祭》第一回戦! 『アルルカント・アカデミー』の期待の新人、比企谷八幡選手! 序列外ですが、事前情報によると相当な実力者のようです! どんな戦い方をするか今から楽しみですねぇ!」

 

 そんなアナウンスが流れて来た。


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